婚前契約書に盛り込める内容とは?財産・生活費・子どもに関する取り決めを丁寧に解説

2025年07月10日

婚前契約書に盛り込める内容とは?財産・生活費・子どもについて解説

結婚を控えたカップルの中には、「婚前契約って実際どんな内容が書けるの?」「財産や生活のルールを文書で取り決めておいたほうが安心かな」と考える方が増えています。

特に、財産に差がある場合や、再婚・子連れ婚など特別な事情があるカップルにとっては、トラブル防止のためにも事前のルールづくりが重要です。

この記事では、婚前契約書に盛り込める具体的な項目と、それぞれの法的な有効性や注意点をわかりやすく解説します。

さらに、弁護士に相談することで得られるメリットや事例、よくある質問まで幅広くご紹介。結婚前のモヤモヤや不安を解消し、安心して新生活をスタートさせるためのヒントになれば幸いです。

婚前契約に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

婚前契約とは?

婚前契約とは、結婚前に二人の間で将来の生活や財産のルールを文書で決めておく契約のことです。法律上は「夫婦財産契約」とも呼ばれ、婚姻前に、契約書を作成したり、公正証書にしたり、登記をしておくことで一定の法的効力が生まれます。

以前は、芸能人や資産家の間でよく見られましたが、近年は共働き夫婦の増加や再婚・連れ子のある家庭の増加により、一般のカップルにも広がりつつあります。

「結婚前にそんな話…」と気が引ける方もいるかもしれませんが、お互いが信頼し合い、将来への不安をなくすための前向きな準備と考えることができます。

盛り込める内容とその有効性

婚前契約では、次のような内容を盛り込むことが可能です。ただし、すべてが法的に強制力を持つわけではないため、それぞれの項目で有効性を確認することが大切です。

財産に関する取り決め

  • 結婚前の財産は各自の所有とする
  • 結婚後に得た財産を共有にするか、個別に管理するか決める
  • 離婚時にどのように財産を分けるか(例:折半、持ち分比率など)

このような財産に関する条項は、一定の範囲で法的に有効とされる部分であり、婚前契約の中心的な内容となることが多いです。

ただし、財産分与の額を不当に低く定める場合は、公序良俗に反して無効とされる可能性があります。そのため、弁護士に相談をしながら作成することをオススメします。

生活費(婚姻費用)の分担

  • 家賃や食費、光熱費の負担割合
  • 子どもが生まれた場合の費用分担の見直し

生活費の分担についても、具体的な金額や割合を明記すれば、合理的な範囲で有効性が認められます。

なお、夫婦の同居義務や扶助義務を否定するような条項は公序良俗に反して無効となる可能性があります。そのため、弁護士に相談をしながら作成することをオススメします。

家事・育児の分担ルール

  • 掃除、洗濯、料理などの分担
  • 子どもの送り迎えや習い事への対応

家事や育児の分担については、法律的には努力目標としての位置づけになりがちですが、文書化しておくことで将来的な認識のズレを防げます。

働き方に関する取り決め

  • 転勤にどう対応するか(同居 or 単身赴任)
  • 妊娠・出産後も共働きを続けるかなどの方針

このような項目は、実際の生活設計に役立つものですが、内容によっては制限が強すぎると無効とされることもあるため注意が必要です。

子どもに関する方針

  • 教育方針(例:私立か公立か)
  • 将来の居住地や子育ての体制

子どもに関する条項も含めることはできますが、離婚後の親権や養育費など、将来の状況に大きく左右されることを一方的に決めるのは無効となる可能性があります。

盛り込めない・無効になる内容

婚前契約には自由な取り決めが可能ですが、次のような内容を含めると法的に無効とされることがあります。

極端な罰則や制裁

「浮気したら全財産を失う」「1億円を支払う」といった過度な罰則は、個人の権利を過度に制限するものとされ、公序良俗に反するため無効になることがあります。

離婚時の親権や面会の一方的な指定

親権や養育費など、子どもの福祉に関わる内容は、将来の事情や子どもの利益を踏まえて判断されるべきであり、事前に一方的に決めることはできません。

プライバシーの侵害につながる内容

「スマホの中身を常に見せる」「家族と会う頻度を制限する」などの内容は、個人の尊厳や自由を侵害する可能性があり、無効とされるリスクがあります。

契約書に書く前に、「この内容は公平か?」「常識的な範囲か?」と立ち止まって確認することが大切です。

弁護士に相談するメリットとは

婚前契約はネット上のテンプレートなどを参考に作成することもできますが、弁護士に相談することでより安心・確実な契約を作ることができます。

法的に有効な文面に整えてもらえる

せっかく契約しても、いざという時に「無効」となってしまっては意味がありません。弁護士は法律の観点から内容をチェックし、有効性の高い文案に整えてくれます。

個別事情にあわせたアドバイスがもらえる

カップルによって抱える事情はさまざまです。弁護士であれば、それぞれのケースに応じた条項の設計を提案してもらえます。

話し合いの仲介役になってもらえる

金銭や子どもの話などは、直接話し合うのが難しいこともあります。第三者である弁護士が入ることで、感情的にならず冷静な話し合いがしやすくなります。

公正証書化や登記までしっかりサポート

婚前契約は公正証書にしたり登記をしたりすることで、法的効力が高まります。弁護士に依頼すれば、公証役場との調整、登記申請の代理や必要書類の作成も含めてトータルで支援してもらえます。

よくある状況と対応例

再婚での財産トラブルを防ぐために契約

50代男性の例です。再婚を控えており、不動産や金融資産などの個人財産を多く保有していました。

一方、相手には過去に借金歴があり、将来のリスクに不安を感じていたため婚前契約を検討。弁護士に相談し、「結婚前の財産は各自に帰属すること」「一方の借金について連帯責任を負わない」旨を明確に記載し、登記もしました。

これらの対応により、安心して新生活をスタートすることができました。自分たちだけで契約していたら、財産トラブルや連帯責任に巻き込まれていた可能性もあります。

共働き夫婦の生活費トラブルを未然に防止

30代女性の例です。結婚を機に同居を始めましたが、生活費や貯金の負担割合についてパートナーと意見が食い違い、不安を感じていました。

弁護士に相談し、生活費の分担ルールや家賃・教育費の負担方法などを婚前契約に具体的に明記。話し合いもスムーズに進み、「先に決めておいてよかった」と二人で納得。 

自分たちだけで曖昧なまま生活を始めていたら、将来的なストレスや衝突の原因になっていた可能性があります。

よくある質問(FAQ)

Q:婚前契約は口約束でも有効ですか?

 →いいえ。書面にしないと証明が困難で、効力が弱くなります。公正証書にしておくことで法的に強い効力が得られます。

また、登記をしておくことで夫婦間での効力以外に、第三者に対しても効力を主張できるようになります。

Q:自分たちだけで婚前契約を作ってもいい?

 →作成は可能ですが、法的に無効な内容を入れてしまうリスクがあります。不安な場合は弁護士に確認してもらいましょう。

Q:婚前契約を提案したら相手に嫌な顔をされない?

 →提案の仕方が大切です。「信頼を形にする準備」として、前向きな気持ちで伝えると良いでしょう。

Q:一度作った婚前契約は変更できますか?

 →はい。結婚後でも、お互いの合意があれば再契約や修正が可能な事項はあります。

ただし、結婚後は、夫婦関係が破綻するまでの間は夫婦の一方の意思表示でいつでも合意を取り消せることとされていますので、結婚後にした「婚前契約を変更する合意」は取り消されるリスクは残ります

また、夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は変更することができないこととされています。

Q:弁護士費用はどれくらいかかりますか?

 →事務所によりますが、ヒアリング~契約書作成、登記申請、公正証書化まで含めて10〜20万円程度が一般的な目安です。

まとめ

婚前契約は、結婚生活に関するルールをお互いに確認し合い、安心して新たな生活を始めるための大切な準備です。
財産のこと、生活費、家事・育児、働き方など、あらかじめ話し合っておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
ただし、法的な有効性を考えると、専門家である弁護士のサポートを受けるのが確実で安心です。
もし内容や進め方に迷ったら、まずは気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

婚前契約に強い弁護士はこちら

婚前契約のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。