解雇を専門弁護士が解説!企業が押さえるべき実施方法と対策を詳しく紹介

最終更新日: 2024年02月26日

解雇を弁護士が解説!企業が押さえるべき解雇の種類や不当にならない方法などを詳しく紹介

  • 従業員が重大な問題を起こし、懲戒解雇を検討している。解雇するとき会社側には何らかのリスクがあるのだろうか?
  • 従業員の能力の欠如を理由として解雇できるのだろうか?
  • 解雇した従業員が不当解雇と不満を言っているようだ。裁判を起こされるかもしれない。

従業員が就業規則に違反した・犯罪行為をした等という場合は、会社の秩序や信用を保つため、解雇を行うケースもあります。

しかし、解雇された従業員が不当解雇と主張し、裁判に発展することも想定されます。

そのため、解雇をするときは、従業員の行動が法律や就業規則等に違反していることについて、関係者の証言や証拠をしっかりと収集する必要があります。

そこで今回は、多くの労務問題に携わってきた専門弁護士が、解雇の種類や、不当な解雇と判断されかねない状況等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 解雇には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇がある
  • 従業員の職務懈怠、従業員の能力不足という理由だけでは、不当解雇と判断されるリスクがある
  • 不当解雇と主張する元従業員から、職場復帰の請求や解雇後の賃金請求を受けるおそれがある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

解雇の法的概念を弁護士が解説

解雇とは、いわゆる「クビ」にすることを指します。解雇は使用者から従業員に対する一方的な雇用契約の解消であり、従業員側の承諾は不要です。

解雇の法的な根拠は、民法に明記されています。

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」(民法第627条第1項)

ただし、解雇は労働基準法や労働契約法で制限されており、正当な解雇理由がなければ認められません。

また、民法に根拠が明記されているといっても、一方的な雇用契約の解消は従業員から大きな反発を受ける可能性があります。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

解雇の種類を弁護士が紹介

解雇には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇の4種類があります。

こちらでは、それぞれの解雇の特徴について解説しましょう。

普通解雇

懲戒解雇、整理解雇、諭旨解雇以外の通常の解雇です。

従業員が「悪質で重大」とまではいえない問題を起こした場合にも、解雇事由に該当する可能性はあります。

正当な解雇事由に当たるかどうかは、基本的に次の3点で判断します。

  • 就業規則で解雇に関する規定が明記されている:就業規則を策定して所轄の労働基準監督署に届け出て、労働者に周知されている必要がある。
  • 就業規則の内容が合理的:会社の業種・規模等に合わせ解雇が規定されている。
  • 解雇が相当である:就業規則に該当するだけでなく、解雇という処分が重すぎないか考慮する必要がある。

整理解雇

会社の経営上の理由により労働契約を解消する場合です。一般的に「リストラ」と呼ばれています。

整理解雇の可否について裁判所がチェックするのは主に次の4点です。

  • 人員削減の必要性:売上減・コスト増で利益が著しく減少、大幅な赤字になっている等
  • 解雇を回避する努力:早期退職者を募集、経営陣の報酬減額を実施等
  • 解雇する従業員選びの合理性:解雇の基準を設けてそれに基づいた恣意的ではない選定が行われた等
  • 労働者への説明・協議:社内文書で周知、従業員説明会を開催、組合や従業員代表と協議を重ねた等

懲戒解雇

従業員が悪質で重大な問題を引き起こした場合に適用されます。

従業員が犯罪行為をして会社に重大な影響を与えた場合は、懲戒解雇となりえます。主に次のようなケースが該当します。

  • 横領:役員や従業員が会社の資金を横領したケース等。刑法上も「業務上横領罪(刑法第253条)」に該当する可能性がある。
  • 背任:自分や第三者の利益を図り、任務に背く行為。刑法上も「背任罪(刑法第247条)」に該当する可能性がある。

他の従業員(部下等)への強制わいせつや暴行、脅迫等の行為があったときも懲戒解雇事由に該当しうるでしょう。

また、従業員が過失で起こした問題でも、懲戒解雇にあたるケースがあります。

たとえば、トラックで貨物を運送中に運転者の不注意により自転車で通学していた児童を轢いていまい重傷を負わせたという場合は、被害者側に及ぼした影響や会社の賠償責任等の重大性を考慮し、懲戒解雇はやむを得ないと解される場合があるでしょう。

諭旨解雇

懲戒解雇に該当するものの、従業員の事情を考慮して温情的に懲戒解雇を軽くする処分です。

会社が従業員に退職届や辞表を出すよう勧告した上で、一定期間内に提出しなければ懲戒解雇する方法です。ただし、就業規則に諭旨解雇が可能な旨を明記していなければなりません。

従業員が重大な問題を起こしたものの、真摯に反省していると判断できる場合は、諭旨解雇を行う可能性があります。

不当な解雇と判断されかねない状況

就業規則に懲戒解雇となる事由が明記されており、内容が合理的であっても、無効と判断される場合があります。

こちらでは、従業員から不当な解雇と主張され、トラブルとなりそうな懲戒解雇事由について説明しましょう。

職務懈怠

上司の許可なく休む無断欠勤、欠勤が目立つ出勤不良、出勤時間に遅れてばかりいる遅刻過多、勝手に職場を出ていく職場離脱等が「職務懈怠」に該当します。

このような問題のある従業員は、口頭や書面で厳重注意を行う「戒告」等比較的軽い処分となる場合が多いです。

就業規則で職務懈怠が甚だしい場合は解雇すると定めていても、「職務懈怠で解雇はやりすぎだ」と従業員が強く反発し、裁判に発展する可能性があります。

裁判となった場合、会社の言い分が認められるためには「入社してから一度も出勤していない」「職務懈怠の他にも会社で深刻な問題行動を起こした(例:同僚や部下への暴力やセクハラ行為)」等、解雇もやむを得ないと判断されるような、関係者の証言や証拠が必要です。

従業員の能力の問題

従業員の能力を問題にして解雇する場合です。

次のようなケースが該当します。

  • 他の従業員との協力関係を築けないため業務に支障が出ている
  • 会社側が予定していた能力を持っておらず、勤務成績が悪い

就業規則で能力の欠如が甚だしい場合は解雇する旨を明記していても、解雇された従業員は納得できず訴訟を提起する可能性があります。

その場合、裁判所からも配置転換等で対応するのが妥当と判断され、解雇は無効と判示されるおそれもあります。

会社側の言い分が認められるためには、従業員の能力の欠如が原因で、業務に深刻な事態を及ぼしている点について立証する必要があります。

不当解雇と考えた元従業員が請求してくる内容

元従業員が解雇した会社に対して損害賠償請求を行い、責任を追及してくるケースが考えられます。

その他に、元従業員が職場復帰を希望する場合や、解雇後の賃金請求を行う場合もあります。

職場復帰の請求

解雇の無効を主張する元従業員には、復職を求める権利があります。

裁判所が元従業員の主張を認めた場合、以前と同じ条件で会社に復職が可能です。

会社が敗訴した場合、復職した従業員に対し、減給や他部署への異動といった不利益な措置を行うことはできません。

解雇後の賃金請求

元従業員が職場復帰を求める場合は、会社に対して賃金の請求も可能です。

裁判所から解雇は無効であると認められた場合、雇用契約は今も有効に継続している状態となります。

雇用契約が有効に継続しているとされた場合は、支払われていない解雇日以降の賃金の支払いを請求するのは元従業員の権利です。

たとえ解雇後は働いていなくとも、働けなくなった原因を作ったのは会社側なので賃金を請求する権利があると主張できます。

民法では次の規定が明記されています。

「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」(民法第536条第2項)

この規定を根拠に解雇後の賃金請求が可能です。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

解雇の対応に必要な弁護士費用

解雇の処分が適正かどうか心配な場合や元従業員が訴訟を提起したという場合は、速やかに弁護士と相談しましょう。

こちらでは、相談料、着手金、成功報酬について説明します。

相談料

会社側が解雇に関してのアドバイスを求めたい場合や、元従業員が裁判を起こした場合は、法律事務所で相談をしましょう。

まずは弁護士から対処法をよく聞いたうえで、代理人を頼みたい場合は委任契約を締結します。

着手金

着手金とは、弁護士に依頼した場合に必ず支払う費用です。解雇に関する交渉が不成立になっても、裁判で敗訴しても、基本的に支払ったお金は戻ってきません。

着手金の額は各法律事務所が自由に設定できます。金額の目安は、下表の通りです。

交渉・裁判等

着手金の額

交渉

20万円~

労働審判

30万円~

裁判

40万円~

労働審判とは、会社側と従業員間の労働関係トラブルの解決に特化した裁判所の紛争解決制度です。

成功報酬

弁護士が解雇問題の解決に成功(交渉成立・裁判での勝訴等)した場合、依頼者が支払わなければならない費用です。弁護士が問題解決に失敗した場合は請求されません。

会社側の成功報酬の目安は、表の通りです。

交渉・裁判等

成功報酬

交渉

20万円~

労働審判

30万円~

裁判

40万円~

成功報酬は一律の金額が設定されているわけではなく、「賠償金等の額の10~20%」という形で算定する事務所もあります。

解雇でお悩みなら当事務所にご相談を

今回は多くの労務問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、不当な解雇と判断されかねない状況への対応の仕方等を詳しく解説しました。

解雇は従業員に重大な影響を及ぼす措置です。諸事情を判断し、冷静に解雇するか否かを検討しましょう。

解雇などの労働問題の解決は、弁護士の助力を受けながら、慎重に話し合いを進めましょう。

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