介護事故の報告書を概要・書き方・注意点まで施設・家族の両面から徹底解説

介護事故の報告書を概要・書き方・注意点まで施設・家族の両面から徹底解説

2021年04月30日

介護者が細心の注意をしていても、施設内で事故が起きてしまったら、安心して大切な家族を預けているはずの施設で事故が起きてしまったら…

事故の時、施設内で一体何が起こっていたのか、知りたいと考えるのは当然でしょう。

また、事故が起こった後、施設側からの説明をどのように受け止めればよいのかわからないと感じるご家族もいらっしゃることでしょう。

ここでは、介護事故報告書の概要から、作成や報告を受ける際の注意点まで、施設・家族の両面から介護問題専門の弁護士が徹底解説をしていきます。それでは早速参りましょう。

この記事を監修したのは

弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所に勤務
春田法律事務所 入所

介護事故の報告書とは

まず、介護事故報告書の概要を説明したうえで,介護事故報告書を作成する理由・意義を考えてみましょう。

介護事故報告書に記載される内容は?

介護中の事故は、転倒、転落、誤嚥などが考えられます。

提供されるサービスの種類によって、根拠となる基準省令は異なりますが、介護事故が発生した際の状況やその際に採った処置について記録することが義務付けられています。

たとえば、指定訪問介護事業者(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第4条)は、同基準第37条により、介護事故発生について市町村に連絡すると共に(同条1項)、事故状況や採った処置を記録すること(同条2項)を要求されています。

最近では、令和3年3月19日に、厚生労働省老健局が、「介護保険施設等における事故の報告様式等について」と、介護事故の報告について、新たに周知を図っています。
その中では、以下の事案については、原則として全て報告をすることが求められるに至りました。

死亡に至った事故
医師の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故

また、これまで市町村ごとでバラバラであった報告書の書式に、統一書式が導入されています。

この統一書式では、事故の状況、事業所の概要、対象者の要介護度や日常生活自立度、事故の概要や発生時の状況、事故の原因分析を記入する欄が設けられています。

介護事故報告書を作成する目的は?

介護事故報告書は、介護事故の発生・再発防止及び介護サービスの改善や向上のために、作成されるものです。

有名な「ハインリッヒの法則」というものがあります。1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には300件のいわゆるヒヤリハットが隠れているというものです。事故内容を共有することが、重大な事故を防止する近道となります。

また、事実確認し、記録するという意味でも、介護事故報告書は施設、ご家族両者にとって、大変重要なものです。介護事故報告書は、介護事故について、施設に法的責任があるかどうかを判断するための重要な資料なのです。

さらに、どのような事故だったかを記録しておくことで、時間が経過した後に、事故に遭った利用者の状態が急変した際にも、適切な対応ができる可能性が高まります。

このように、介護事故報告書は、事故の再発防止や、事後の紛争防止、利用者の急変に対する備えを目的とするものであり、決して、介護事故を起こしてしまった職員や介護施設に対する懲罰的な目的で作成されるものではありません。

介護事故報告書による施設・家族のメリット

ここでは、介護事故報告書による施設・家族の両面から見たメリットを解説していきます。

施設側

以下は施設側からみたメリットの4選です。

メリット4選・施設側
  1. 介護事故の再発を防止につながる
  2. 介護の質の向上につながる
  3. 万が一の時に、適切な対応をしていたことを証明し、施設や職員を守ることができる
  4. ご家族とのトラブル防止につながる

1.介護事故の再発防止につながる

事故が起こった原因を、介護者全員がしっかり共有できれば、再発を防止できます。原因が判明していればその点を改善し、さらに検討を重ねて、更なる改善をする。
これこそが、介護事故報告書の真の目的です。

原因究明,改善,検討,再度の改善を繰り返すことで、事故の要因を適切に分析することができ、その結果、新たな事故発生を防止することにつながるのです。

なお、検討の際は、事故を起こした当事者だけでなく、他の視点からのチェックを受けることも大切です。当事者であるからこそ見落としてしまう事実もあり、関係者全員で原因と予防策を考えることが肝心です。

2.介護の質の向上につながる

情報の共有で、介護者の意識が向上すれば、その施設の介護の質をも向上させることができます。

今後も高齢化の一途をたどる日本で、介護の質の向上は、早急に取り組むべき課題といえます。事故が起こらないことが一番ですが、今後に繋げるためにも、事故報告書から、原因と予防策を考え、マニュアル化をすることで、よりよい介護が実現できるでしょう。

3.万が一の時に、適切な対応をしていたことを証明し、職員や介護者を守ることができる

事故発生時に介護者が最善の適切な対応をとっていたとしても、その証拠がなければ事業所の管理能力や介護者の対応が適切で十分だったとは証明できません。

事故報告書に、事実を、より細かく正確に記載することで、介護者や介護施設が適切な対応をしていたことを示すことができます。

4.ご家族とのトラブル防止につながる

介護事故をめぐるトラブルは、訴訟に発展するケースも少なくありません。お互いが納得のいく話し合いをする為に、事故当時の情報を証拠として提示する為にも、介護事故報告書の適切な作成は重要です。

報告書によって家族と事故の内容を共有し、協力関係を築いていくこともできます。

家族側

ここまでは施設側のメリットでしたが、続いて家族側のメリット3つです。

メリット4選・家族側
  1. 施設側の事故についての認識がわかる
  2. 証拠として残すことができる
  3. 弁護士への相談・依頼の際に共有できる

1.施設側の事故についての認識がわかる

介護事故について事故の経緯や原因が書面でまとめられていると、施設側の認識する事故の状況や原因が明らかになります。

また、事前に事故報告書を確認していれば、施設側との面談の際にも、その場で具体的な質問をすることもでき、施設側に更なる調査を要望できる場合もあります。

2.証拠として残すことができる

口頭での説明だけでなく、施設側が残した書面として存在することは、今後責任を追及するうえでも大切な証拠となります。

3.弁護士への依頼の際に共有できる

介護事故の状況を第三者である弁護士に説明するのは難しいものです。

事故報告書をお持ちでしたら、それを拝見することで、スムーズに弁護士と事故状況について認識を共有することが可能です。

介護事故報告書の種類・施設側

 

介護事故の報告書の種類についてです。主として、以下3つの報告書があります。

    • 市町村に提出する報告書
    • 保険会社に提出する報告書
    • 内部統制のための報告書

それでは、それぞれ見ていきましょう。

市町村に提出する報告書

上記のとおり、統一の書式が周知されることになりました。

もっとも、各市町村の様式を用いることが禁止されているわけではありませんので、今後も各市町村の様式が利用されることもあるでしょう。

事前に、事業所を所管する市町村の様式を確認しておくと作成はスムーズでしょう。

保険会社に提出する報告書

介護事故が発生した場合、速やかに保険会社にも報告書を提出しておくことが望ましいといえます。

施設が、事故について損害賠償責任を負う場合には、施設が加入している賠償責任保険から支払いがなされることがほとんどです。

そのため、保険会社に事故の状況を正確に伝えることで、責任の有無や賠償の要否について、判断を求めることができます。

内部統制の為の報告書

先ほど説明したとおり、介護事故報告書の作成目的は、介護事故の再発防止や介護の質の向上にあります。

そのため、施設内部でも介護事故報告書を作成し、原因分析や、改善点や課題の発見に努めることが重要であり、施設内部用の書類を作成している事業所も多く存在します。

介護事故報告書による報告の対象・施設側

介護事故として報告する対象は、どういった事故・事象なのでしょうか。

報告の対象についての基準は、各自治体の取扱いに委ねられています。

その中でも、多くの自治体では、次のような内容を報告するよう求めています。

  • サービス提供中(送迎、通院も含む)に、利用者がけがまたは死亡した場合。転倒、転落に伴う骨折や出血、誤嚥、異食及び誤薬等で医療機関を受診(施設内での医療処置を含む)、または入院した場合。ただし、比較的軽度な擦過傷や打撲などは除く。

  • 感染症、食中毒、結核及び疥癬等の発生
    本報告のほか、法律等により関係機関(保健所等)への届出等の義務があるものについては、これに従うこと。
  • 事業者と利用者及び家族の間で、問題が生じる可能性がある事故が発生した場合
  • 利用者等が傷病により死亡した場合であっても、死因等に疑義がある場合
  • 職員(従事者)の法令違反・不祥事等が発生した場合
    利用者の個人情報の紛失、送迎時の交通事故、横領、虐待など。
  • その他
    利用者の行方不明や自然災害、火災、盗難等の発生により、利用者に影響のあるものなど。

 

介護事故報告書の開示について・家族側

続いては、家族側から、ご家族が巻き込まれてしまった介護事故の情報を、どのようにして手に入れればよいのか考えてみましょう。

家族が介護事故について知る方法はこれからご紹介する3つの方法があります

1.直接の面談

まずは、直接、施設側と面談し、介護事故について説明を受けることが考えられます。
その場で質問ができ、施設側の温度感などが伝わるというメリットもある反面、言った言わないとい争いになってしまうデメリットもあります。

感情の対立が激しければ、その場でトラブルにつながってしまうおそれもあります。

2.介護事故報告書を施設に開示してもらう方法

施設に介護事故報告書の開示を求めることは可能ですが、これに任意に応じてくれない施設もあるでしょう。

その場合には、利用者本人またはご家族が、施設側が市町村に提出した事故報告書を、個人情報に該当するものとして、条例に基づき市町村に開示請求をすることが可能です。
詳細は、各役所のホームページをご参照ください。

3.証拠保全について

証拠保全とは、民事訴訟法234条の規定により定められている手続で、裁判の前に、証拠が利用できなくなってしまう事態を避けるため、事前に証拠調べをすることができます。施設側の証拠の改ざんや破棄などを防止する効果が期待できます。

介護事故報告書の書き方・施設側

厚生労働省から出されている介護事故報告書の書式には

介護事故報告書の書式項目
  1. 事故の状況
  2. 事業所の概要
  3. 対象者
  4. 事故の概要
  5. 事故発生時の対応
  6. 事故発生後の状況
  7. 事故の原因分析
  8. 再発防止策
  9. その他(特記事項)

などの項目が書かれています。細かい基準設定は各市区町村に委ねられています。施設のある市町村の規定に従ってください。

介護事故報告書を作成する際の注意点・施設側

報告書作成の際の注意点についてです。

    • 物事が起こった順に時系列で記載する
    • 箇条書きにする
    • 出来る限り詳細に記載する
    • 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して書く
    • 主観的ではなく、客観的に記載する
    • 専門用語は多用せず、誰もが理解できる内容にする
    • 施設独自の用語は使用しない
    • 推測は(推測)と記載し、具体的な内容の記載を心がける

介護事故報告を受ける際の注意点・家族側

介護事故報告を受ける際の家族側から見た注意点です。

・できる限り早めに面談を実施してもらう
事故から時間が経過してしまうと記憶も介護者の記憶も曖昧になる可能性もあります。疑問や不信感を早めに解消する為にも、事故後、早期に面談を実施してもらうとよいでしょう。

・報告書(書面)での報告
言った言わないというトラブルを避けることができます。また、必ずしも行政への報告書を求めるわけではなく、施設内部での調査結果など、事故の状況などが詳細にわかる報告書を求めて、客観的な事故状況を把握することが大切です。

まとめ

介護事故で悲しい思い、痛い思いをする人を世の中から減らすためにも、介護事故報告書の作成、共有はとても有意義なことといえます。

介護の現場において、どうしても介護事故は発生してしまいますが、避けることができたはずの事故を、少しでも減らすためにも、適切に介護事故報告書を作成し、活用していきたいものですね。

この記事を監修したのは

弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所に勤務
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