介護老人保健施設における広告の規制とは?判断ができない場合の対応策まで弁護士が解説

最終更新日: 2023年11月29日

介護老人保健施設における広告の規制とは?判断ができない場合の対応策まで弁護士が解説介護老人保健施設とは、要介護度1以上の認定を受けた高齢者の自立支援や在宅復帰・在宅療養支援を行うための施設で、老健と略されることもあります。看護や介護だけでなく、リハビリテーションや栄養管理などのサービスも提供されます。

介護老人保健施設は公的施設であるため、通常は集客を目的とした広告は必要ありません。また、介護老人保健施設が広告を出すときには多くの規制があります。

そこで今回は、介護業界に詳しい専門弁護士が、介護老人保健施設における広告の規制や広告の規制対象になるか判断しかねるときの対応策について解説します。

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この記事を監修したのは

弁護士 南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部卒業
京都大学法科大学院卒業
大阪市内の総合法律事務所勤務
当事務所入所

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介護老人保健施設には広告の規制がある

介護老人保健施設では、「介護保険法」によって広告できる項目に制限が設けられています。

介護老人保健施設は、介護保険法において看護・介護を医学的管理下で提供する「医療施設」と位置づけられているからです。

ちなみに、デイサービスなど介護老人保健施設以外の介護サービスにおける広告に関する規制は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第34条に基づいて行われますが、介護老人保健施設に対するものよりも規制は緩いと解釈できます。

介護老人保健施設では、介護保険法98条によって掲載できる項目が厳しく定められています。介護老人保健施設以外の介護サービスとは適用される基準などが異なるため、注意しておきましょう。

介護老人保健施設に関して広告できる事項

ここでは、介護保険法98条に定められている介護老人保健施設で広告できる項目を厚生労働省の資料から抜粋しました。

同条文では、「文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない」記載されています。これは、チラシやダイレクトメールなど広告媒体を問わず、適用されることになります。

第 一 老人保健施設に関して広告できる事項について
老人保健施設に関する広告については、老人保健法(昭和五七年法律第八〇号。以下「法」という。)第四六条の九の規定により制限が設けられており、同条第一項各号に掲げる事項を広告できるほか、同条第二項により厚生大臣が特に必要と認める事項に限りその定める内容について広告することができることとなつている。
また、広告できる事項として厚生大臣が特に必要と認めるものについて昭和六三年三月厚生省告示第八七号(老人保健法第四六条の九第二項の規定に基づき、広告し得る事項を定める件)により、老人保健施設に関して、法第四六条の九第一項各号に列記するもののほか、次の事項について広告できることとされている。
(一) 施設及び構造設備に関する事項
(二) 職員の配置員数
(三) 提供されるサービスの種類及び内容(医療の内容に関するものを除く。)
(四) 利用料の内容
具体的な取扱いについては、左記のとおりであるので留意されたい。

一 施設及び構造設備に関する事項
老人保健施設の施設及び設備構造に関する事項について、その内容を広告できること。具体的には、以下の内容のものについて広告できること。
イ 療養室(広さ、個人用ロッカー、洗面所等の設備)
ロ 機能訓練室(広さ、機械・器具等の設備)
ハ 痴呆性老人加算承認施設については、その旨及び定員
ニ 痴呆性老人専門棟を有する老人保健施設については、その旨及び定員、施設設備
ホ 食堂(広さ、設備等)
ヘ 談話室、レクリエーション・ルーム(広さ、テレビ・ソファー等の設備)
ト 浴室(特別浴槽等の設備)
チ 当該老人保健施設の協力病院及び協力歯科医療機関
リ 当該老人保健施設に在宅介護支援センターを設置している場合は、その旨及びその事業内容等
ヌ 当該老人保健施設に老人訪問看護ステーション又は特別養護老人ホーム等を併設している場合は、その旨及びその事業内容等
ル その他特色ある施設(ボランティア・ルーム、家族介護教室等の設置状況)

二 職員の配置員数
老人保健施設に配置される職員の職種ごとの員数を広告できること。広告できる職員の員数は、常勤換算した場合の員数とすること。なお、医師又は看護婦の技能又は経歴に関する事項についても広告できること。

三 提供されるサービスの種類及び内容
(一) レクリエーション、理美容その他日常生活上のサービスの内容について広告できること。具体的には、以下の内容について広告できること。
イ レクリエーションの内容
ロ 生活上のサービスの内容…入浴回数、機能訓練の回数等
(二) 初老期痴呆患者を受け入れることができる老人保健施設については、その旨を広告できること。この場合においては、初老期痴呆患者の利用可能数及びその費用負担の方法についても広告できること。
(三) デイ・ケア等(老人保健施設デイ・ケア、特別老人保健施設デイ・ケア及び長時間デイ・ケアをいう。以下同じ。)を実施している老人保健施設については、その旨を広告できること。この場合においては、デイ・ケア等の定員数及びその実施時間についても広告できること。
(四) 利用料の徴収できる「特別な療養室」を有する施設については、その旨及びその室数について広告できること。
(五) 医療の内容に関する事項は広告できないこと。

四 利用料の内容
老人保健施設において徴収する利用料の費目及びその額について広告することができること。
五 その他
広告内容は虚偽であつてはならないこと。

介護老人保健施設に関しての広告で判断ができない場合

ここでは、介護老人保健施設に関しての広告で判断ができないときに取るべき方法を2つ解説します。

  • 保健所に確認する
  • 弁護士に相談する

それでは、1つずつ解説します。

保健所に確認する

取るべき方法の1つ目は、保健所に確認することです。

介護老人保健施設の広告についての規制を定めている介護保険法は、厚生労働省の管轄です。そのため、広告の内容については厚生労働省の出先機関である地域の保健所に問い合わせるとよいでしょう。

ただ、保健所に問い合わせても満足のいく回答が得られなかったり、「広告についての個別の対応はしない」と断られたりすることもありえます。また回答に時間がかかり、広告の出稿に支障が出る可能性もあります。

弁護士に相談する

取るべき方法の2つ目は、弁護士に相談することです。

保健所に問い合わせても明確な回答が得られないときは、弁護士に相談しましょう。法律には、具体例の記載や固定のパターンがないことも珍しくありません。

そのときは、条文の解釈や過去の判例を基に、広告に掲載してよいか判断する必要がありますが、経験のない方にはなかなか難しいでしょう。

そのため、広告の判断に迷ったら専門家である弁護士に相談すると確実です。弁護士であれば過去の判例などを基に、根拠に基づいた判断を提案してくれます。また、法的支援も期待できるでしょう。

まとめ

今回は、介護老人保健施設における広告の規制や広告の規制対象になるか判断しかねるときの対応策について解説しました。

介護老人保健施設における広告には厳しい規制があり、掲載の判断が難しい場合もあります。作成したい広告について不明点があれば、事前に確認することがおすすめです。

掲載についての判断を早く確実に行いたいときには、介護老人保健施設における広告の規制について専門知識と経験が豊富な弁護士に依頼するようにしましょう。

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