調停離婚とは?メリットとデメリット・ポイントを押さえた進め方を弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月04日
- 調停離婚とはなにか?
- 調停離婚のメリット・デメリットが知りたい
- 調停離婚の流れは?
話し合いで離婚の合意に至らなかった場合に離婚を進める場合は、家庭裁判所の手続きに頼ることになります。
一般の方からすれば、家庭裁判所の調停離婚という制度を知っていたとしても、どこの裁判所でどのような手順で手続きをするのかといった詳細については理解できていないことが多いものです。
そこで今回は、離婚専門の弁護士が、調停離婚の基礎知識・メリット・デメリット・流れ・弁護士に依頼することの効果について解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続による離婚方法
- 調停離婚のメリット・デメリットの一例を挙げると、メリットは「話がスムーズに進む」、デメリットは「長期化する可能性がある」などがある
- 調停離婚の流れは、家庭裁判所に申し立てを行う→調停期日→合意
調停離婚の基礎知識
はじめに調停離婚を考えるにあたり、調停離婚の基礎知識を得ることが重要です。ここでは、以下の3点から解説します。
- 調停離婚とはなにか?
- 申し立てるタイミング
- 裁判離婚との違いは?
1つずつ見ていきましょう。
調停離婚とはなにか?
調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続による離婚方法です。
離婚について当事者間の話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合でも、いきなり離婚訴訟を提起することは認められておらず、かならず調停を起こす必要があります。
離婚調停は、1人の裁判官(家事調停官)と、最高裁判所から任命された2人以上の家事調停委員で構成される調停委員会が、当事者双方の言い分を聞きながら話し合いを進め、問題を解決する手続きです。
申し立てるタイミング
調停離婚の基礎知識の2つ目は、申し立てるタイミングについてです。
離婚調停を申し立てるのは「話し合い(協議)が決裂したとき」です。
離婚に関して夫婦間で話し合いがまとまらないときは、まずは家庭裁判所に離婚の調停を申立てて離婚を進めることになります。これらが離婚調停を申し立てるタイミングになります。
ただし、以下のような場合は協議離婚の成立は難しいでしょう。
- 夫婦のどちらかが離婚したくない場合
- 裁判上の離婚事由があるが、相手方が離婚に応じない場合
- お互いに離婚には合意しているものの、養育費・財産分与・慰謝料などの金銭的な問題や、子どもの親権者といった、条件についてもめた場合
- 相手方のDVやモラハラなどがひどく話し合いができない場合
裁判離婚との違いは?
調停離婚の基礎知識の3つ目は、裁判離婚との違いについてです。
離婚調停で話し合いがまとまらない場合、あるいは、家庭裁判所の審判にも納得がいかない場合、それでも離婚をしたいと望む側は、最終的には離婚訴訟を提起して離婚を求めることができます。これが裁判離婚です。
ただし、離婚訴訟を提起する場合は、法定された離婚事由(法律が定めた離婚理由)がなければなりません。民法770条1項は、離婚事由として以下のように定めています。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
どちらも、家庭裁判所で行う手続きであることには変わりありませんが、調停離婚は「話し合いによる手続き」であり、裁判離婚は「裁判所によって一方的に判断がなされる手続き」であるという違いがあります。裁判離婚は、離婚調停で合意できなかった場合に行うことが可能です。
調停離婚のメリット
調停離婚で手続きを進めるとどのようなメリットが得られるのかを押さえておくとよいでしょう。ここでは、調停離婚のメリットを以下の3点から解説します。
- 話がスムーズに進む
- 顔を合わせることなく話を進められる
- プライバシーが守られる
1つずつ見ていきましょう。
話がスムーズに進む
調停離婚のメリットの1つ目は、話がスムーズに進むことです。
離婚調停では、調停委員が客観的・中立的な立場で、夫婦それぞれの意見や主張を聞いたうえで問題を整理し、双方が納得できる解決策を提示するなどして、話し合いを進めてくれます。
当事者は、第三者である裁判官や調停委員が間に入ることで冷静に話ができますし、調停委員が法律に則った解決策を示してくれますので受け容れやすくなる傾向があります。
また、当事者だけで話し合いを続けるよりも話がスムーズに進むことにより、離婚が成立する可能性が高まります。
万が一、離婚調停における話し合いの内容に納得ができない場合は、離婚の合意が成立せず、調停不成立ということで終了することも可能です。
顔を合わせることなく話を進められる
調停離婚のメリットの2つ目は、顔を合わせることなく話を進められることです。
家庭裁判所は、当事者双方ができるだけ顔を合わせないですむよう配慮がしてあり、待合室も別々になっています。
離婚調停では、調停を始めるとき、当事者双方に調停の手続きや進め方、調停委員会の立場や役割等について説明が行われます。
なお、この説明については、当事者双方を同席させて行うのを原則としている家庭裁判所と、別々に行うことを原則としている家庭裁判所があります。
精神的に不安定で、相手方と同席することに耐えられない場合は、事前にその旨を家庭裁判所に伝えておくと、よいでしょう。
調停期日における話し合いは夫婦別席が原則であるため、調停委員は夫婦それぞれを別々に調停室に呼び、順番に話を聞いていくので、お互いの主張は調停委員を通して 聞くことになります。
したがって、顔を合わせることについて心配しすぎる必要はありません。
プライバシーが守られる
調停離婚のメリットの3つ目は、プライバシーが守られることです。
離婚調停の手続は、非公開とされています。調停委員は、離婚調停にかかわることで、当事者のプライバシーに関する事柄を知るだけでなく、当事者が他に知られたくない秘密を知ることになります。
こうした秘密は、必ず守られなければなりません。調停委員が正当な理由なく職務上知り得た秘密を他に漏らしたときは、刑罰が科せられることになっています。
調停離婚のデメリット
調停離婚にはさまざまなメリットがありますが、デメリットについても理解する必要があります。ここでは、調停離婚のデメリットを以下の2点から解説します。
- 長期化する可能性がある
- 合意するまで家庭裁判所に出頭する必要がある
1つずつ見ていきましょう。
長期化する可能性がある
調停離婚のデメリットの1つ目は、長期化する可能性があることです。
離婚調停では、一方が離婚に反対していたり、離婚条件で譲歩できない点があったりする場合は、合意できるまで調整を重ねるため、長期にわたって話し合いを続けなければならない可能性があります。
また、当事者の中にはさまざまな人がいます。調停委員会のいうことに耳を貸さない人・自分で判断することができず常に迷っていたり、調停委員会のいうとおりにするから、どうしたらよいか教えてほしいなどという方もいます。
また、毎回主張が変わり矛盾する主張を述べる人・感情調整ができず泣き出したり、興奮状態になったりする人もいます。
このような場合、調停の進行が非常に困難になり、長期化する可能性が高くなります。
合意するまで家庭裁判所に出頭する必要がある
調停離婚のデメリットの2つ目は、合意するまで家庭裁判所に出頭する必要があることです。
離婚調停は、裁判ではなく、当事者双方が家庭裁判所に出頭して、話し合いにより問題を解決する手続きです。そのため、当事者は、調停期日に出席して、双方の対立点がどこにあるのか、なぜそのような対立が生じているのかを説明しなければなりません。
また、当該調停期日における双方の言い分や主張についての対立点については、次回までに検討する必要があります。そして、当事者は自分で解決方法を決め、どこまで譲れるかなどを判断し、次回の調停期日に出席し、自分の意見を述べなければなりません。
調停離婚は1回だけで成立することはほとんどなく、平日の日中に時間を割いて度々機会を設けねばならず、大きな負担になりかねません。
調停離婚を進める場合の流れ
調停離婚のメリット・デメリットを押さえたら、実際にどのように調停離婚を進めるのかを確認しましょう。ここでは、調停離婚を進める場合の流れを以下の3つの順番で解説します。
- 家庭裁判所に申し立てを行う
- 調停期日
- 合意
1つずつ見ていきましょう。
家庭裁判所に申立てを行う
調停離婚を進める場合の流れの1番目は、家庭裁判所に申立てを行うことです。
夫婦の話し合いで離婚が合意に達しなかったり、離婚条件が合わなかったりする場合、離婚の意思のある方は、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」(事件名・離婚)を書面で申し立てます。
申立て先は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。また、夫婦が合意のうえで決めた家庭裁判所にも申立てができます。
調停期日
調停離婚を進める場合の流れの2番目は、調停期日についてです。
離婚調停の場合、調停期日の初回は、申立てを行ってから3週間から1か月前後に指定されますが、特別な事情があれば、もっと早い期日が指定されることもあります。
当事者からの事情聴取は、当事者の感情面にも配慮しながら、1回あたり20分から30分程度をめどとして、できる限り聴取時間が平等になるように配慮されています。
次回の調停期日については、調停期日に候補日が告げられて調整されますが、おおむね1か月をめどに設定されます。
また、当事者双方が弁護士に委任しており、弁護士同士の日程調整がなかなかできないなどの理由で、今後の調停期日の指定の調整が困難になることが予想されるときは、連続して数回の調停期日を設定することもあります。
このように、調停期日を何度か繰り返しながら、調停離婚の合意に進むことになります。
合意
調停離婚を進める場合の流れの3番目は、合意についてです。
調停委員会が当事者間の調整をした結果、当事者間に合意が成立すれば、裁判所書記官がその内容を記載した調停調書を作成します。
合意内容が調停調書に記載されると、調停が成立したものとして、訴訟事項については家事事件手続法268条1項に基づいて、確定判決と同一の効力を有します。
調停調書は、法的な強制力があるため、強制執行も可能で給与や預金を差し押さえることが可能になります。
なお、調停離婚では、協議離婚の場合と異なり、調停調書が作成された時点で離婚が成立します。調停の申立て人(調停の内容によっては相手方)は、調停成立後10日以内に、夫婦の本籍地または届出人の住所地の市区町村に、調停調書の謄本を添えて、調停で離婚した旨の届出をする必要があります。
調停不成立の場合は審判離婚・裁判離婚も!
調停不成立の場合に、離婚が成立する次の手続きとしては審判離婚・裁判離婚があります。ここでは、調停不成立の場合の手続きを、以下の2点から解説します。
- 審判離婚とは?
- 裁判離婚とは?
1つずつ見ていきましょう。
審判離婚とは?
調停不成立の場合の手続きの1つ目は、審判離婚です。
審判離婚とは、家庭裁判所の調停手続きが成立しなかった場合に、家庭裁判所の離婚を認める審判が確定することによる離婚方法です。
家庭裁判所の審判には、2つの手続きがあります。
1つは、離婚調停が不成立となった場合に、当事者が改めて審判の申立てをしなくても、原則として、自動的に審判手続きに進み、家庭裁判所が判断(審判)をするものです。
審判は、当事者が審判の告知を受けたとみなされる日から2週間以内に即時抗告をしなければ確定し、離婚が成立します。
もう1つは、調停が成立しない場合において、家庭裁判所が相当と認めるときは、一切の事情を考慮したうえで職権にて、解決のため必要な審判をするものです。これを「調停に代わる審判」といいます。
ただし、調停が調停委員会で行われている場合には、その調停委員会を組織する調停委員の意見を聴かなければなりません。調停に代わる審判は、「当事者が審判の告知を受けたとみなされる日から2週間」以内に異議の申し立てをしなければ確定し、離婚が成立します。
裁判離婚とは?
調停不成立の場合の手続きの2つ目は、裁判離婚です。
裁判離婚とは、離婚の訴えを家庭裁判所に提起し、確定判決を得ることによる離婚方法です。
離婚について調停で夫婦の合意ができない場合には、離婚訴訟を起こすことになります。
離婚訴訟では、未成年の子どもの親権者・子どもの養育費・財産分与・年金分割などについても審理可能です。
離婚の訴えに係る訴訟についても、訴訟上の和解が認められているため、審理途中での和解による解決も可能です。
なお、離婚訴訟の判決が確定した場合、離婚訴訟をすることはできません。判決が確定すれば不服があっても覆すことができないのです。
調停離婚をスムーズに進めるためには弁護士の介入がおすすめ!
調停離婚をスムーズに準備を進めるためには弁護士の介入が必要です。ここでは、調停離婚をスムーズに進めるために必要な弁護士の介入によるメリットを以下の3点から解説します。
- 有利な話し合いが進められるようアドバイスがもらえる
- 代理人として手続きを代行してくれる
- 調停期日に同行してくれる
1つずつ見ていきましょう。
有利な話し合いが進められるようアドバイスがもらえる
メリットの1つ目は、有利な話し合いが進められるようアドバイスがもらえることです。
離婚調停を進めるときは、いろいろな判断を要求されます。どこまで妥協すべきか、相手方にどういった提案をすべきか、相手方の提案を受け容れるべきかなど、決断を迫られる場面も多くあります。また、離婚事由を裏づける証拠も必要になります。
弁護士に依頼して離婚調停に臨めば、適宜にアドバイスがもらえて迅速に対応できるため、話し合いを有利に進めることも可能になり、不利益を受けるリスクが低くなります。
多くの案件を取り扱っている弁護士であれば、養育費・慰謝料などの相場も理解しているため、より適切なアドバイスが期待できます。
弁護士に依頼すれば、的確なアドバイスにより有利な話し合いが進められるようになります。
代理人として手続きを代行してくれる
メリットの2つ目は、代理人として手続きを代行してくれることです。
離婚調停を申し立てるときは、さまざまな書類が必要です。自分でも申立書を作成できますが、弁護士に依頼すれば、必要書類の収集、調停申立書の作成や裁判所への提出など、面倒な手続きをすべて代行してくれます。
その後の家庭裁判所とのやり取りや調整、追加資料提出要請への対応や相手方から家庭裁判所に提出された書類の謄写、必要な証拠収集なども、すべて代行してくれます。
調停期日に同行してくれる
メリットの3つ目は、調停期日に同行してくれることです。
離婚調停では、調停期日に裁判所に出頭して調停委員と話をしなければなりません。自分だけではなにを話していいかわからなかったり、うまく希望を伝えられなかったりする場合もあります。
弁護士に依頼すれば、調停期日に家庭裁判所に同行し、調停委員に対して依頼者の意見を代弁してくれます。また、自分の言い分や主張を理論的に構成して調停委員を説得してもらうことも可能になります。
調停成立のときには、調停条項を定める形で合意をしますが、その合意をするときに、弁護士のアドバイスを受けることができ、間違いのない形で調停を成立させることができるでしょう。
まとめ
今回は、調停離婚の基礎知識・メリット・デメリット・流れ・弁護士に依頼することの効果について解説しました。
家庭裁判所の調停離婚を活用し、調停委員の仲介により離婚の手続きを進めることは可能です。しかし、調停期日を重ねる中で離婚成立に行きつくまでは、時間が必要であり、精神的にも気苦労が絶えないことでしょう。
特に、離婚条件については、当事者の今後の生活にも影響する事柄だけに、その解決にはさまざまな困難を伴うことが多いものです。そのような当事者に寄り添い、大きな力になってくれるのが専門家である弁護士です。
調停離婚により解決を望まれている方は、弁護士にあらかじめ相談し、適切なアドバイスや支援を受けることによって、調停離婚の成立の可能性が高まりますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。