殺人罪で示談は可能か!?問われる罪と対策を専門弁護士が徹底解説
最終更新日: 2023年03月16日
- 殺人事件を犯してしまい悩んでいる
- 示談や自首によって殺人罪の減刑はできるのか
- 殺人事件はどのような弁護士に相談するのがよいのだろうか
殺人罪は逮捕されるとほぼ起訴され、裁判で懲役刑あるいは死刑判決の可能性もある重大な犯罪です。しかし、殺人罪で示談や自首により減刑されるかを知る人は多くないでしょう。
そこで今回は、これまでに多くの殺人事件を扱ってきた刑事事件専門の弁護士が、殺人罪で示談は可能なのか、問われる罪と刑罰、また示談が難しい場合であってもとるべき対策について解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 殺人罪では示談は難しい
- 殺人罪では逸失利益、慰謝料、自首を弁護士と検討するべき
- まずは殺人罪での対応実績が豊富な弁護士に相談することが大切
この記事を監修したのは

- 代表弁護士春田 藤麿
- 愛知県弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
示談はできるのか!?「殺人」が問われる罪と刑罰
殺人罪で示談はできるのか、「殺人」が問われる罪と刑罰について解説します。
- 殺人罪
- 同意殺人罪
- 殺人未遂罪
それぞれについて見ていきましょう。
殺人罪
殺人罪とは、殺意をもって人を殺したときに成立する犯罪です。
刑罰は、死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役刑です(刑法199条)。有期懲役の上限は、懲役20年です(刑法12条)。
殺人罪の構成要件は、
- 人を殺すこと
- 殺意を持っていること(故意)
です。
殺意がなくて人を殺した場合には過失致死罪が成立します(刑法第210条)
殺人罪の人を殺したときの「人」とは、胎児の体が母体から見えた段階から人とみなされます。呼吸と心臓が停止し瞳孔反射がなくなったときに、死亡と認定されるのが一般的です。ただし、臓器移植法に見られるように脳死説をとる場合もあります。
殺人罪では「殺意の有無」が重要になります。たとえば、相手を殴って死亡させてしまった場合、殺意がなければ傷害致死(刑法205条)が成立し刑罰が軽くなります。
同意殺人罪
同意殺人罪とは、相手が殺されることに同意していた場合(同意殺人)、相手に頼まれて殺してしまった場合(嘱託殺人)に成立する犯罪です(刑法202条)。
同意殺人の刑罰は、6ヶ月以上7年以下の懲役または禁錮刑です。未遂も処罰されます。
同意殺人罪は、同意・承諾する能力のある者が自らの意思に従い同意していることが必要です。たとえば、一家心中しようと、妻の同意を得たうえで殺害した場合に同罪が成立します。
しかし、被害者が幼児や精神障害者などであれば同罪は成立しません。その場合は、殺人罪に問われます。
嘱託殺人とは、他人から殺してほしいと依頼されて、その人を殺すことです。たとえば、介護の現場で、高齢者が介護者に殺してほしいと依頼して殺人が行われるようなケースです。
殺人未遂罪
殺人未遂罪とは、殺人の実行行為に着手したものの相手が死ななかった場合に成立します(刑法203条)。
殺人未遂罪の刑罰は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です。基本的には殺人罪と同じ刑罰ですが、未遂が考慮されて懲役3年から7年前後となることが多くなります。
殺人未遂罪が成立するためには、
- 殺意があること
- 人が死亡する危険のある行為をすること
が必要です。
殺意があっても、人が死亡する危険のある行為が認められなければ殺人罪は成立しません。たとえば、人を呪い殺そうとしてわら人形を刺しても人が死亡する危険はないので、殺人未遂罪は成立しません。
殺意がなければ、殺人罪は成立せず暴行罪や傷害罪の成立が問われます。
殺人罪での示談は難しい
殺人罪での示談は可能なのでしょうか?
殺人罪では被害者は死亡していますので、被害者本人との示談はできません。また、遺族の処罰感情も高いことが通常ですから、示談の難易度はとても高くなります。
そのため、被害弁償金の一部だけでも弁償したり、あるいは贖罪寄付を行うなど謝罪の気持ちを遺族に示すことが重要になります。
殺人未遂罪の場合は、初犯で被害者が1人でも10年以上の実刑判決になることもありますが、示談が成立していれば刑の減刑の可能性があります。
殺人未遂であれば示談の可能性はありますが、相手が死亡してしまった場合には、示談は非常に困難です。
殺人罪を犯した場合に必要なのは示談金ではなく「逸失利益」「慰謝料」
殺人罪を犯した場合に必要なのは示談金ではなく「逸失利益」「慰謝料」です。ここでは以下の3つの基礎知識について解説します。
- 逸失利益とは?
- 慰謝料とは?
- 慰謝料の相場
それぞれ見ていきましょう。
逸失利益とは?
逸失利益とは、被害者が生存していた場合に本来得られたであろう利益(お金)が事件によって得られなくなってしまった利益のことをいいます。
たとえば、会社員が事件の被害者となった場合、給与などの収入が死亡により受け取れなくなりますが、この場合の生きていれば受け取れたであろう金額が逸失利益となります。
死亡逸失利益の計算式は、以下のとおりです。
1年あたりの基礎収入Ⅹ(1 - 生活費控除率)Ⅹ就労可能な年数に対応するライプニッツ係数
30歳の年収約500万円の既婚男性会社員の死亡逸失利益は、以下のとおりです
560万9700円 Ⅹ (1-35%)Ⅹ 22.808 = 8316万4924円
慰謝料とは?
慰謝料とは人の死に対する悲しみや苦しみを金銭的な価値で代替して提供するものです。慰謝料は被害者の精神的苦痛に対して支払われるお金です。
示談金との違いは、示談金が殺人事件の示談の際に支払われるお金であるのに対して、慰謝料は殺人事件による精神的損害に対する損害賠償金となります。
慰謝料も示談金も、加害者が被害者側に支払う金銭であることは同じですが、その内容がそれぞれ異なります。
殺人事件は、人の生命を奪うという刑事事件の中でも非常に重大な事件です。したがって、殺人事件の慰謝料についても金額は高額になります。
慰謝料の相場
殺人罪を犯した場合に必要になる慰謝料の相場はどれくらいなのでしょうか?
これまでの裁判では慰謝料額は3,000万円から3,500万円が相場です。
ただし、この相場も事件の内容や社会に与えた影響、残された遺族の生活環境の変化なども考慮しながら、事件ごとに金額が異なるので注意が必要です。
慰謝料は、被害者本人だけではなく遺族に対しても支払うものであるため、被害者の遺族の人数によっても慰謝料額も異なります。
慰謝料が高額になりすぎて、加害者が支払えないこともあるでしょう。そのような際には、「犯罪被害給付制度」を利用して、遺族給付金を受け取ることも可能です。
示談が難しい殺人罪であっても行うべきこと
ここでは殺人罪で示談が難しい時でも、なるべく処分を軽くしてもらうために行うべき3つのことについて解説します。
- 自首
- 殺意がないことの証明
- 当時の精神状態の主張・証明
それぞれについて解説します。
自首
示談が難しい殺人罪であっても行うべきことの1つ目は、自首することです。
自首とは、捜査機関によって犯罪が発覚する前までに、捜査機関に自分の犯した罪を犯人が申告した上で、その処分に従うことを伝えることです。
自首することで情状が良くなるので、検察官が起訴不起訴の処分を決める場合、あるいは求刑する場合においても考慮してくれることもあります。
殺人罪で自首しても、必ず逮捕が回避されたり執行猶予となるわけではありませんが、刑事裁判の判決の際に刑罰の減刑をうける可能性は十分にあります。
殺人罪で自首をして刑が減刑されると、死刑は無期懲役または懲役10〜20年、無期懲役は懲役7年〜20年、懲役5〜20年は懲役2年6ヵ月〜懲役10年、となります。
殺意がないことの証明
示談が難しい殺人罪であっても行うべきことの2つ目は、殺意がないことの証明です。
殺人罪は殺意がなければ成立しない犯罪です。したがって、殺意がなかったことを証明できれば、殺人罪は成立せずに傷害致死罪が成立し、刑罰が軽くなる可能性があります。
殺人罪で殺意を争う場合、「殺そうとは思っていなかった」と主張するだけでは、殺意がなかったとは認められません。
殺意の認定にあたっては、殺意が人の内面的な意志であることから、認定は現場の状況や周辺事実などの状況証拠によって判断されます。
例えば、刃物を使用した殺人事件でも、日本刀で突き刺した場合は強い殺意が認定され、カッターナイフで切り付けた場合は殺意が否定されることもあるでしょう。
当時の精神状態の主張・証明
示談が難しい殺人罪であっても行うべきことの3つ目は、当時の精神状態の主張・証明をすることです。
殺人事件をおこしたような状況では、被告人の精神に障害があることが多くあります。
精神障害が認められると、心神喪失では犯罪が成立しないことになり、心神耗弱による刑の減刑が受けられるでしょう。
精神医学的な判断を前提にしつつ、殺人事件をおかしたときの精神状態を法律的な観点からも適切に見極める必要があります。
何らかの精神障害を主張できる根拠があれば、弁護士は被告人の精神鑑定を請求することも可能です。知識と経験値の高い弁護士のサポートを受ける必要があるでしょう。
殺人を犯したらすぐに弁護士に相談
殺人を犯したらすぐに弁護士に相談しましょう。
殺人罪や殺人未遂罪のような極めて重大な犯罪は、1人で解決することが非常に難しくなります。殺意がなかったことの証明や当時の精神状態の主張なども困難でしょう。
殺人罪では、初犯であっても執行猶予がつかずに死刑判決がでることもあれば、殺人未遂罪でも10年の懲役刑が科されることも多くあります。
殺人事件を多く扱ってきた刑事事件専門の弁護士であれば、殺人事件を犯した場合でも自首に付き添ってくれたり、あらゆる手段を使って刑の減刑にむけての弁護活動を行います。
まとめ
本記事では、殺人罪における示談について解説をしました。
殺人罪では被害者が亡くなっており、被害者の家族と示談を進めますが、ハードルは高いのが通常です。
殺人罪も殺人未遂罪も重大な犯罪であり、自分で解決を進めることは難しいと言えます。殺人を犯したらすぐに弁護士に相談しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。