離婚手続きをスムーズに!基本の流れと成功ポイントを詳しく紹介
最終更新日: 2024年11月08日
- 夫婦で話し合い、離婚は成立したが、離婚後に必要な手続きを知りたい
- 離婚に必要な手続きをしないと、何か不利益を受けるのだろうか?
- 離婚手続きを進めるとき、行った方がよい対策には何があるだろう?
離婚が成立しても、それに伴う手続きは非常に多く存在します。自分の事情に合わせ、滞りなく手続きを進めていきましょう。
うっかり手続きを忘れてしまうと、後々想定外のトラブルに発展する可能性があります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚が成立したら必要な手続き、手続きをしなかった場合の注意点等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚が成立したら離婚届や住民票異動届、連帯保証人の解除等、様々な手続きが必要
- 離婚に伴う手続きを行わないと、年金が満足に受け取れない事態や、元配偶者の借金返済までしなければいけない事態になり得る
- 夫婦の離婚に関する手続き内容は、公正証書にすると安心
離婚手続きの種類と基本的な流れ
離婚手続きはまず夫婦で協議し、まとまらないときは調停、調停不成立なら裁判で解決を図ります。
なお、いきなり離婚に関する裁判を申し立てる方法は、原則として認められていません。裁判前には調停を経ておく必要があります(調停前置主義)。
協議離婚
夫婦間の話し合いによって離婚手続きを進めるのが協議離婚です。
夫婦のどちらかが離婚を決意したら、他方に離婚を申し出ます。お互い感情的にならず財産分与や慰謝料、親権や養育費等を冷静に話し合いましょう。
なお、離婚届前に離婚条件が明記された「離婚協議書」を作成すれば、あなたも配偶者も条件内容を忘れずに済みます。
夫婦で話し合い離婚条件を取り決め、合意に達したら市区町村役場へ離婚届を提出します。なお、夫婦の合意による離婚届の期限は法定されていません。
ただし、離婚に合意したなら、速やかに手続きを進めましょう。離婚届が市区町村役場窓口で受理されれば、あなたと配偶者の法律上の離婚は成立します。
調停離婚
夫婦で話し合いがつかなかった、夫婦の一方が話し合いに応じてくれなかった、という場合は家庭裁判所で「夫婦関係調整調停(離婚)」を利用できます。
いずれかの家庭裁判所に調停の申立てを行いましょう。
- 相手方の住所地の家庭裁判所
- 夫婦の合意で定めた家庭裁判所
家庭裁判所に設けられた調停委員会が、相手方に出席するよう働き掛けをしたり、双方が合意できるよう調整に努めたりします。
夫婦が合意に達したら和解の内容をまとめた「調停調書」が作成されます。
ただし、調停は夫婦双方が裁判所に出席し、話し合いによる自主的な解決を図る制度なので、離婚に応じるよう強制はできません。
相手方が調停に出席しない場合、合意に達しなかった場合には、調停不成立として終了となります。
あなたが以後も離婚を求めたいならば、家庭裁判所に離婚の訴えを提起する必要があります。
裁判離婚
調停不成立となっても家庭裁判所に離婚の訴えを提起し、問題の解決を図れます。
原則として、夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所で裁判手続きが必要です。
裁判では、離婚したい原告(あなた)と被告(配偶者)が証拠を提出し、互いに主張・立証を行います。
たとえば、配偶者のDVが原因で離婚する場合、DVを行う画像・動画・音声、医師の診断書等、確実な証拠を提出できるならば、あなたに有利な判決となるでしょう。
なお、裁判官から判決前に和解案が提示される場合もあります。夫婦双方が和解案に合意したら、和解調書が作成され裁判は終了です。
和解案に合意しない場合、最終的には判決で離婚問題の解決を行います。判決後には判決書が作成されます。
離婚前に必要な手続き
離婚前に夫婦で決定しなければいけない重要事項は多くあります。
話し合いのときに重要事項が漏れてしまうと、離婚後にトラブルが発生する事態も想定されます。
夫婦の現状に合わせて、冷静かつ柔軟に話し合いを行い、離婚条件を決定していきましょう。
財産分与
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を、離婚のときに清算・分配する方法です。
婚姻中、一緒に形成した預貯金・不動産・有価証券等が共有財産に該当します。
財産分与の割合は夫婦で自由に決定できますが、夫婦で2分の1ずつ平等に分けるのが一般的です。
ただし、財産の全てが分与対象となるわけではなく、対象外となってしまう財産(特有財産)もあります。
- 独身時代に得た財産:預貯金・有価証券等
- 独身時代から保有している物:不動産や自家用車・動産
- 相続財産
- 贈与したい人を明示した贈与物
まずは共有財産・特有財産を冷静に確認しながら、財産分与の内容を取り決めましょう。
慰謝料
夫婦のどちらかが離婚の原因をつくった場合、慰謝料の取り決めも行いましょう。
慰謝料の金額は夫婦で自由に決定できます。なお、協議のときは慰謝料をあえて請求せずに、財産分与は5割を超える割合が受け取れるよう、相手を説得しても構いません。
一方、裁判で慰謝料請求を行った場合、慰謝料の金額は100万円〜300万円程度が相場です。
裁判所に慰謝料請求を訴える場合、配偶者が離婚の原因をつくったという証拠物の提出を行わなければいけません。
たとえば、配偶者の不倫が原因で離婚・慰謝料請求を行う場合、配偶者と不倫相手の性行為または性行為が推認できる画像・動画・音声等、確実な証拠を集めましょう。
確実な証拠が得られれば、あなたに有利な判決となる可能性が高いです。
親権
離婚のときは子どもの親権をどちらにするか、必ず決定しなければいけません。現在のところ親権者となるのは父母のどちらかに限定されます(単独親権)。
離婚届には親権者となる親の氏名を記載する必要があり、どちらが親権を持つか決めないと市区村町役場で届出が受理されません。
どちらが親権者となるかは夫婦で自由に決定できますが、子どもの意見も聞いておきましょう。概ね母親を親権者に定めるケースが多いです。
なお、改正民法(2026年までに施行)により「共同親権」が選択可能となります。
共同親権を選択した場合、離婚後も子どもに関する事柄は父母で共同して決めていきます。
養育費
子どもの生活費・教育費に関する「養育費」の金額・支払方法も決めましょう。
養育費は親権の無い方の父母が支払っていきます。
養育費の毎月の金額をどれくらいにするかは、夫婦で自由に決定可能です。金額の目安については、裁判所で養育費の算定表が公表されています。
算定表を参考に夫婦の経済状況、子どもの人数等も踏まえ養育費の金額を決めましょう。
なお、子どもの進学により現在の養育費では足りなくなる可能性があります。養育費の増額(または減額)を話し合うため、定期的に父母が面会し金額を調整する取り決めも行った方がよいでしょう。
面会交流
面会交流は親権の無い親と子どもが定期的に会える取り決めです。
面会交流は「片親を失った。」という子どもの喪失感を軽減できる効果があります。
面会交流の内容も夫婦の話し合いで自由に取り決めが可能です。
- 週に1回〇時~〇時まで、親権の無い親の自宅で子どもと面会できる
- 1か月に〇日間、親権の無い親の自宅に宿泊できる
- 夏休みは親権の無い親と子どもが〇日間、旅行に出かけられる 等
ただし、子どもが進学すると部活や塾通い、受験勉強に時間をとられる可能性があります。子どもの都合を考慮し、現状に見合った内容へ変更する必要もあるでしょう。
離婚後に必要な手続き
離婚が成立すればお互い一安心かもしれません。しかし、速やかに離婚後の手続きを進める必要があります。
こちらでは、離婚に伴う届出や様々な変更手続きを解説します。
離婚届
離婚の話し合いが成立した夫婦、そして調停・裁判で離婚が決定した夫婦も、届出人の本籍地または所在地の市区町村役場に、離婚届を提出しなければいけません。
なお、協議離婚のときは随時、調停・裁判離婚のときは確定した日から10日以内が期限です。
離婚がどのように成立(または決定)したかで提出書類は異なります。
- 協議離婚:離婚届(成年の証人2名の署名)、届出人の本人確認書類(例:運転免許証、パスポート等)
- 判決離婚:離婚届、判決の謄本および確定証明書(各1通)
- 調停離婚:離婚届、調停調書の謄本(1通)
- 審判離婚:離婚届、審判書の謄本および確定証明書(各1通)
出典:離婚届 | 法務省
住民票異動届
離婚のとき、住居を変更したら、通常の引越しと同様に住民票を異動しなければいけません。
市区町村外から引越した場合は転入届、市区町村内での引越しは転居届、市区町村外に引越す場合は転出届を、市区町村役場に提出します。
- 転入届:引越し先に住み始めた日から14日以内に提出、転出証明書および届出人の本人確認書類(例:運転免許証、パスポート等)を提示
- 転居届:引越した日から14日以内に提出、届出人の本人確認書類を提示
- 転出届:引越し予定日の約14日前に提出、届出人の本人確認書類を提示
世帯主変更届
離婚時に世帯主の変更があった場合、届出をしなければいけません。
変更のあった日から14日以内に市区町村役場へ、世帯変更届および本人確認書類を提示して手続きをします。
国民健康保険
離婚をして国民健康保険に加入する人、国民健康保険の被保険者で姓の変わった人が市区町村役場に届け出を行います。
14日以内に、国民健康保険に加入する人は健康保険等資格喪失証明書と本人確認書類を、姓が変わった人は変更前の保険証を持参しましょう。
自分が勤務先の社会保険へ入っている場合や、もともと国民健康保険に加入していた場合は、手続き不要です。
年金に関する手続き
自分が配偶者の扶養となっていた場合、国民年金への切り替え手続きが必要です。
14日以内に、次の書類を市区町村役場に提出します。
- 個人番号または基礎年金番号の確認できる書類
- 本人確認書類
- 扶養から外れた日がわかる書類(健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書等)
自分が勤務先の厚生年金へ入っている場合や、もともと国民年金に加入していた場合は、手続き不要です。
婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、それぞれ自分の年金にできる「年金分割」も行えます。
年金分割は次の2種類です。
- 合意分割:当事者間の合意等で按分割合を定めたとき、婚姻期間等の保険料納付記録を当事者間で分割する方法
- 3号分割:離婚等をしたとき、被扶養者等からの請求で、第2号被保険者の厚生年金保険の保険料納付記録を、強制的に2分の1で分割する方法
年金分割の手続きは原則として、離婚をした日の翌日から2年以内に行います。
主に次の書類を年金事務所に提出する必要があります。
- 年金分割のための情報提供請求書
- 標準報酬改定請求書
- 年金分割の合意書
- 戸籍謄本(1か月以内に請求したもの)
- 請求者の基礎年金番号通知書または年金手帳個人番号カード 等
名義変更
財産分与のときに自動車等を取得した場合、名義変更手続きを行います。
自動車の名義変更手続きを例にあげると以下の通りです。
手続きは新所有者(自分)の管轄地域の陸運局(軽自動車検査協会)で、主に次の書類を提出します。
- 申請書
- 譲渡証明書(旧所有者の実印が必要)
- 旧所有者・新所有者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)
- 自動車検査証(車検証)
- 委任状(実印)
- 自動車保管場所証明書(発行後1か月以内のもの)
住所変更
自分が家を出る場合は、速やかにクレジットカード、キャッシュカード等の住所変更をします。
最近では金融機関等の窓口で手続きをしなくても、インターネットの「マイページ」から変更が可能です。
連帯保証人の解除
連帯保証人とは、主債務者(借金をした人)が借金を支払わないとき、主債務者の代わりに返済義務を負う人です。
自分が配偶者の連帯保証人となっている場合は、次のような方法で配偶者に連帯保証人を変更してもらいましょう。
- 連帯保証人の差し替え:離婚する自分の代わりに誰かを連帯保証人にたてる
- ローンの借り換え:現在ローンを組んでいる金融機関から、別の金融機関にローンを組み直し、連帯保証人から外れる
なお、ローンが残る自宅を売却する方法も、連帯保証人から解放される手段の一つです。
児童扶養手当・児童手当
児童扶養手当も児童手当も、児童が困窮しないように支給されるお金です。
児童育成手当は18歳に到達した年度末までの児童を養育していて、所得制限に該当し、父母が婚姻解消した場合等に利用できる手当です。
児童1人につき月額13,500円が支給されます。
申請するときはお住いの市区町村役場に次の書類を提出します。
- 申請書
- 申請者と児童の戸籍謄本:発行から1か月以内のもの
- 本人確認書類:マイナンバーカード等
- 預金通帳等
一方、児童手当は中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支給される手当制度です。
児童年齢によって支給額が異なります(1人あたり)。
児童年齢 | 支給月額 |
3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳〜小学校修了前 | 10,000円〜 |
中学生 | 一律10,000円 |
請求するときはお住いの市区町村役場に次の書類を提出します。
- 認定請求書
- 請求者の健康保険被保険者証
- 本人確認書類:マイナンバーカード等
- 預金通帳等
保育園申込
子どもを保育園へ預けて働く場合に必要です。
申込手続きの方法は、市区町村の窓口や入園(転園)先に問い合わせしましょう。
基本的に申込書や就労証明書等を準備します。
離婚報告
離婚時に会社に勤務しているならば、会社に離婚の報告をしましょう。
総務課等に報告すれば届出用紙を取得できます。必要事項を記入し提出すれば、扶養控除の変更手続き等は会社が行います。
離婚手続きをスムーズに進めるポイント
届出期限が明記されている手続きは、やはり期限内に提出した方がよいでしょう。
公正証書の作成
離婚のときに取り決めた内容を公正証書で作成すれば、強力な証拠書類となります。
公正証書は公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書で、原本は公証役場に保管され書類の破棄や改ざんのリスクもありません。
また、離婚公正証書へ金銭債務(慰謝料や養育費等)に関して、「強制執行認諾」の文言を定めておけば、支払う側に不履行があった場合、裁判手続を経ずに強制執行が可能です。
支払う側は強制執行をおそれ、離婚で取り決めた内容の誠実な履行に努めることでしょう。
弁護士への相談
離婚の話し合いを進める前に、弁護士と相談すれば有益なアドバイスが得られます。
弁護士は夫婦の事情を考慮し、どのように話し合いを行うのか、どのような手続きが今後必要になるのかをわかりやすく説明します。
また、離婚交渉に行き詰った場合、弁護士を代理人とすれば配偶者との交渉も任せられます。
離婚手続きなら春田法律事務所に相談を
今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚成立後の様々な手続き、離婚手続きを安心して進めるコツ等について詳しく解説しました。
離婚のときに必要な届出や手続きは多いものの、冷静に一つ一つ完了させていきましょう。
離婚手続きを円滑に進めたいなら、春田法律事務所に相談し、有益なアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。