家賃滞納で出て行かない!賃貸人が絶対に避けるべき行動と対処ステップを詳しく解説
2024年11月13日
- 賃借人が家賃滞納をしている。正直腹立たしいので強制的に追い出したい。
- 賃借人の家賃滞納を理由とした退去要求は、どのような手順を踏めばよいのだろう?
- 家賃滞納トラブルを避けるため、気を付けなければいけない行為について教えて欲しい。
賃借人の家賃滞納が長期化し、苛立っている賃貸人の方は多いことでしょう。
しかし、賃貸人が腹を立て、強引に賃借人を追い出す方法は、後日大きなトラブルに発展するおそれがあります。
そこで今回は、家賃滞納トラブルの解決に携わってきた専門弁護士が、家賃滞納をしている賃借人が出て行かない場合の対処法、賃貸人が絶対に行ってはいけない対応等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 賃借人へ家賃滞納による退去要求をする場合、法律に則った方法で進める必要がある
- 賃貸人が一刻も早い退去を望んでも、強引な対応は禁じられている
- 賃貸人の独断で賃借人を追い出した場合、損害賠償請求や刑事告訴されるリスクがある
家賃滞納で出て行かないとき追い出せるのか?
賃借人が家賃滞納を継続している場合、賃貸人は立ち退き要求が可能です。
家賃滞納は賃貸借契約違反であり、退去させるとき、賃貸人は立退料の支払いも基本的に不要となります。
ただし、立ち退きを要求するには、賃借人に滞納分の家賃支払いを説得するため、督促や催告を行う必要があります。
賃貸人が交渉を求めても、賃借人が家賃支払いや自主的な退去に応じなかったならば、裁判所へ賃貸物件の明け渡し請求を行いましょう。
裁判所が判決で賃借人に明け渡しを命じた後、なおも賃貸物件に居座る場合、強制執行を申し立て、強制退去を実現させます。
家賃滞納で出て行かない場合の対処ステップ
賃借人の家賃滞納問題を解決するため、賃貸人はいろいろな方法で支払いを促し、交渉を求める必要があります。
各ステップを経たうえで、それでも賃借人に家賃支払いや退去を拒否されたなら、裁判による解決を図っていきます。
家賃の請求
賃貸人はまず賃借人に滞納家賃の支払いを請求しましょう。
賃借人が家賃支払いを忘れているだけと考え、電話やメール、手紙で滞納家賃が発生している事実と、速やかに家賃を支払ってもらいたいという希望を告げます。
家賃の請求をしたにも関わらず1週間以上、賃借人が支払いに応じない場合、今度は「督促状」を送付しましょう。
1回目の督促状では指定期日までに指定口座へ家賃を振り込む旨、2回目以降の督促状では指定期日までに支払わないと、連帯保証人や家賃保証会社に連絡する旨を記載します。
賃借人が「連帯保証人や家賃保証会社に連絡されるのは嫌だ。」と感じたら、素直に滞納分の家賃支払いに応じる可能性があります。
連帯保証人への連絡
督促状を何度か送付しても、賃借人が支払いに応じようとしない場合、賃貸人は連帯保証人に家賃支払いの請求ができます。
なぜなら、連帯保証人は賃借人(主債務者)の債務(家賃支払い等)を保証する役割があるからです。
連帯保証人が滞納分の家賃支払いに応じたならば、賃貸人は賃借人に支払いの請求も、追い出す手続きも不要となります。
また、賃借人が家賃保証会社と保証契約を締結している場合もあるでしょう。家賃保証会社に家賃の滞納を連絡すれば、賃借人に代わり家賃の支払いを行います。
内容証明郵便
賃借人に督促状を送付しても対応しない、連帯保証人に要求しても支払いに応じない、という場合は、催告書を内容証明郵便で送付します。
受取人は賃借人でも連帯保証人でも構いません。いずれかが家賃支払いを行えば、家賃滞納問題は解決します。
催告書には指定期日までに家賃支払いを要求する他、指定期日に支払わない場合は賃貸借契約を解除し、法的措置をとると明記しましょう。
内容証明郵便で送付しても、支払いを強制する効果は得られません。しかし、賃借人にプレッシャーを与える効果の他、賃借人へ催告を行ったという証明も得られます。
内容証明郵便の控え・配達証明書は、裁判所に明け渡し請求訴訟を提起するとき、提出する必要があります。
契約解除
内容証明郵便を送付しても、指定期日までに賃借人の家賃支払いはおろか、賃借人から自主退去を話し合う旨の申し出もない場合は、賃貸借契約を解除します。
賃貸借契約を解除した事実は賃借人に通知しておきましょう(内容証明郵便による送付が好ましい)。
賃貸借契約を解除すれば、賃借人を賃借物件から追い出す法的措置が可能となります。まず裁判所に提起する明け渡し請求訴訟の準備を進めましょう。
ただし、家賃滞納が原因となる明け渡し請求の場合、滞納期間が3か月以上継続していないと、裁判所が賃貸人の主張を認めない可能性もあります。
そこで、まだ滞納期間が3か月未満ならば、督促状や催告書で家賃支払いや自主的な退去を働きかけましょう。
滞納期間が3か月以上経過したタイミングで、裁判所に訴えれば、賃貸人が勝訴する可能性も高まります。
明け渡し請求訴訟
契約解除後、賃貸人は賃貸物件の所在地を管轄する裁判所に訴えます。
基本的に地方裁判所へ訴訟提起を行いますが、賃貸物件の財産上価額が140万円以下なら簡易裁判所に提起も可能です。
裁判では賃貸人が原告、賃借人が被告となります。賃貸人の主張が裁判所に認められれば、判決により賃借人へ明け渡し命令が言い渡されます。
また、判決前に裁判所から和解を勧められる可能性もあるでしょう。和解案に賃貸人・賃借人が合意すれば和解調書を作成し、裁判は終了です。
強制退去
賃借人が裁判で明け渡し判決を受けた後や和解に合意した後も、賃貸物件に居座り続けた場合、賃貸人は裁判所に強制執行の申立てが可能です。
裁判所から申立てが認められたら、いよいよ強制執行が開始されます。ただし、執行前に裁判所の催告書を受け取った賃借人が、催告に応じて退去したならば強制執行は行われません。
賃借人が催告書にも従わなかった場合、執行官・専門業者が賃借人宅を訪問し、居座る賃借人の強制退去、家財道具の撤去を実行します。
家賃滞納で出て行かない場合賃貸人が絶対に避けるべき行動
家賃滞納は賃貸借契約違反となります。ただし、賃借人の契約違反を理由に、賃貸人が実力を行使し、賃貸物件内から賃借人を締め出したり、家財道具を撤去したりする行為は違法です。
賃貸人が強引な対応を行えば、賃借人から損害賠償請求や刑事告訴を受けるおそれがあります。
侵入・無断搬出
家賃を滞納しているからと、賃借人宅に無断で侵入し家財道具を撤去する方法は禁止です。
賃借人宅のドアの鍵を開錠し、家財道具を撤去できるのは強制執行のときの専門業者です。賃貸人が、法律に則った申立て手続きを行わず、自身で強引な撤去を行えば、次のような罪に問われます。
・賃借人宅に無断で侵入→住居侵入罪:3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法第130条)
・家財道具を撤去、破損させた→器物損壊罪:3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料(刑法第261条)
鍵の無断交換
賃貸人が賃借人宅のドアの鍵を無断で交換する行為も禁止されます。
賃借人は鍵を無断で交換されてしまうと、自宅に入室できなくなってしまいます。室内の家財道具を持ち出せないまま、賃借人は自宅を締め出される状態となるでしょう。
賃貸人の嫌がらせのような行為で、賃借人が精神的苦痛を受けた場合は、不法行為責任を理由に、損害賠償を請求される可能性があります(民法第709条)。
暴言・脅迫行為
賃借人に滞納分の家賃支払いを求めるとき、暴言や脅迫行為を行ってはいけません。
家賃の支払われない状況に苛立つ気持ちはわかりますが、感情を爆発させて賃借人に「家賃滞納をお前の仕事場に言いふらすぞ!」「家賃を払わなければ、家財道具ごと建物を取り壊す。」等という発言は違法行為です。
・賃借人の生命や身体、財産、名誉に害を加えると告知した→脅迫罪:2年以下の懲役または30万円以下の罰金(刑法第222条)
・賃借人を恐喝し、家賃を支払わせた→恐喝罪:10年以下の懲役(刑法第249条)
恐喝罪に問われると、最悪の場合は10年の懲役刑に処される可能性があります。長期間にわたり、刑事施設に収容されてしまう場合もあるので注意しましょう。
深夜・早朝の連絡
賃貸人がわざと深夜・早朝に賃借人へ連絡し、滞納分の家賃支払いを求める方法も避けた方がよいです。
「昼間や夕方に賃借人が電話に出ないので、深夜・早朝に連絡しているだけだ。」と、賃貸人にも言い分はあるでしょう。
ただし、深夜・早朝を狙い何度も連絡すれば、賃借人は「嫌がらせ行為を受けた。」と考え、不法行為責任を理由に、損害賠償の請求を行う可能性があります。
なお、メールの場合は深夜・早朝でも迷惑にはなりませんが、1日に何回もメールをすれば、やはり嫌がらせ行為と思われてしまいます。
電話やメール、SNSで連絡しても反応が無い場合は、督促状や催告書を郵送し、支払いを促す方法に移った方がよいでしょう。
催告書の掲示
賃借人宅のドアや外壁に催告書を貼り付ける行為も禁止です。
催告書を貼り付ければ、同じ賃貸集合住宅の住民や、一軒家ならご近所の方々が、家賃滞納の事実を知ってしまいます。
当該行為は賃借人に対する名誉を毀損するので、不法行為による損害賠償を受けたり、名誉毀損罪に問われたりする可能性もあるでしょう。
名誉毀損罪で有罪判決を受ければ、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条)。
賃借人のプライバシーに配慮し、催告書は内容証明郵便で送付しましょう。
自力救済
自力救済とは、賃借人の家賃滞納で損失を被っている賃貸人が、裁判手続きによらず実力で損失の回復を果たす行為です。
前述した侵入・無断搬出、鍵の無断交換等が該当します。その他にも自宅から賃借人を締め出すとき、暴力を振るうと重い罪に問われる可能性があります。
- 賃貸人が賃借人の胸ぐらを掴んだ、小突いた→暴行罪:2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料(刑法第208条)
- 賃貸人が賃借人を殴り負傷させた→傷害罪:15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第204条)
家賃滞納で出て行かないで困っているなら弁護士に相談を
今回は、家賃滞納トラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、賃借人を退去させる方法、自力救済を行った場合のリスク等について詳しく解説しました。
賃借人の家賃滞納に苛立ち、裁判手続きを得ていないにもかかわらず、実力で賃借人を追い出してしまうと、ケースによっては賃貸人が重いペナルティを受ける事態となります。
賃借人の家賃滞納に悩んでいるならば、法律のプロである弁護士に相談してみましょう。弁護士は賃貸人の事情をヒアリングし、的確なアドバイスを提供します。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。