障害者の夫・妻と離婚できる?専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月15日
- 配偶者が身体障害を患い、介護するのがつらい
- 身体障害を理由に離婚できるのか?
- 離婚時の財産分与や養育費についても知りたい
配偶者が事故や病気などで体が不自由になってしまうと、生活が大きく変わってしまいます。配偶者の介護をするなかで、肉体的・精神的な限界を感じて、果ては夫婦間にも亀裂が入り、離婚を決意することもあるかもしれません。
そこで今回は、多数の離婚問題を解決した実績を持つ専門弁護士が、身体障害を理由に離婚できるのか・離婚時の財産分与・養育費・障害年金についても詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- たとえ愛情を感じる相手であっても、介護に伴う金銭的な負担や、将来への不安から離婚を決意することもある
- 身体障害を理由にした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 配偶者の身体障害を理由に離婚したとしても、それまでに協力して財産を築いてきたのであれば、財産分与の割合に影響を与えることはない
夫・妻が障害者になって離婚を考えるときとは
配偶者が病気や事故の後遺症などで身体が不自由になると、介護生活が始まり夫婦関係にも影響を与えてしまうことが考えられます。
たとえ愛情を感じる相手であっても、介護生活が長引けば介護を受ける側も行う側も肉体的・精神的に疲弊してしまうことがあります。また、介護に伴う金銭的な負担や、将来への不安から離婚を決意することもあるでしょう。
他にも、配偶者が身体障害になる前から不仲だったケースでは、介護を回避するために離婚を切り出すことも考えられます。
夫・妻が障害者になったことを理由に離婚はできる?
身体障害と一言でいっても、人によって症状の種類はさまざまです。ここでは、身体障害になったことを理由に離婚できるのか、下記の3つのケースに分けて解説します。
- 相手が意思決定できて離婚に合意する場合
- 相手が意思決定できて離婚に合意しない場合
- 相手が意思決定できない場合
相手が意思決定できて離婚に合意する場合
配偶者に身体障害があったとしても、離婚の意味を理解して意思決定ができる状態であれば、夫婦間で話し合ったうえで離婚の手続きを進められます。
協議離婚であれば、夫婦で話し合い、離婚や離婚条件などを調整したうえで離婚が成立します。双方の意見があまりにも食い違い、協議離婚が成立しなかった場合は、離婚調停へと進みます。
離婚調停では、裁判所の調停委員が夫婦の間に入り、話し合いを行います。離婚だけでなく離婚条件についても話し合いを進めて解決できるという特徴があります。
相手が意思決定できて離婚に合意しない場合
配偶者が意思決定できる状態でも、相手が離婚に反対していると協議や調停では離婚が成立しません。
その場合は、裁判で離婚を認めてもらう方法を目指します。裁判で離婚を成立させるためには、法定離婚事由が必要です。法定離婚事由には、以下の5つが民法770条1項に定められています。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
身体的な障害の場合、夫婦のその他の事情も考慮し、5の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると考えられ、離婚が認められるかどうかがポイントになります。
相手が意思決定できない場合
配偶者が高次脳機能障害や意識障害などにより意思決定できない場合は、成年後見人を選任したうえで離婚裁判を進めなければなりません。
成年後見人は、意思決定できない人物の財産管理や契約締結を行う人のことをいいます。家庭裁判所へ申立てを行い、審査されたのちに決定します。
選任される成年後見人には、親族が選ばれるケースが多くみられます。成年後見人が選任されたのち、離婚を検討している方が訴訟を起こし、裁判を行います。裁判所は身体的な障害がある配偶者の状態や離婚後の生活面を総合的に考慮し、判断を下します。
障害者の夫・妻と離婚したい!財産や養育費は?
離婚するときには、今後のお金の問題についても解決しておきたいものです。ここでは、身体障害のある配偶者と離婚するときの財産や養育費について、下記の2つを解説します。
- 財産分与は?
- 子どもの養育費は?
財産分与は?
財産分与とは、結婚生活を営む中で夫婦が蓄えた財産を分ける制度のことをいいます。離婚時に、結婚期間で蓄えた財産を2分の1ずつ分けるのが原則です。
配偶者の身体障害を理由に離婚したとしても、それまでに協力して財産を築いてきたのであれば、財産分与の割合に影響を与えることはないでしょう。
財産の中でも、株や投資などの資産については取り分の割合が変わる可能性があり、割合が修正されるケースもあります。なお、結婚期間の前に蓄えた財産は、財産分与の対象にはなりません。
子どもの養育費は?
配偶者に障害があるケースであっても、収入がある場合は支払ってもらうことが可能です。養育費とは子どもを育てるために必要な費用のことをいいます。対象となるのは、経済的に自立していない子どもです。
養育費は、配偶者の収入などを考慮したうえで金額が決定します。具体的な養育費の例としては、食費・衣服代・住居費など、日常生活で必要なものが挙げられます。
障害者の夫・妻と離婚したい!障害年金は?
配偶者に障害があり日常生活に支障が出る場合は、障害年金を受け取れる可能性があります。離婚前と離婚後では、障害年金の受給はどうなるのでしょうか。ここでは、身体障害のある配偶者と離婚するときの障害年金について、下記の2つの時期に分けて解説します。
- 離婚前
- 離婚後
離婚前
離婚前に受け取った障害年金は、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。給付額は、配偶者の家族の生活を維持することも考慮された額が支給されているためです。
離婚後
離婚後に受け取る障害年金については、財産分与の対象にはなりません。障害年金を含めた離婚後の年金は、年金分割の制度で解決する仕組みになっており、財産分与とは関係がないと捉えられるためです。
まとめ
今回は、多数の離婚問題を解決した実績を持つ専門弁護士が、身体障害を理由に離婚できるのかと、別れるときの財産分与や養育費についても詳しく解説しました。
離婚するときには、財産分与や養育費についても夫婦間で協議する必要があります。身体障害を理由に離婚を検討している方は、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士に相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。