器物損壊で逮捕される?逮捕後の流れや弁護も専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月07日
- 器物損壊を犯したらどのような刑罰が科されるのか
- 逮捕されたらどのような扱いを受けるのか
- 有罪にならないためにはどう対処すればよいのか
器物損壊は適用される範囲が広いため、このくらい大丈夫だろうと甘くみていると逮捕される可能性があります。しかし、器物損壊は適切な対処をすれば有罪を回避しやすい犯罪です。
そこで本記事では、器物損壊の事案を数多く解決に導いてきた専門弁護士が、器物損壊について刑罰や逮捕要件、逮捕後の流れ、対処法などを詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 器物損壊罪が成立するためには故意(認識)が必要である
- 器物損壊罪の示談交渉を弁護士に相談すると法的なサポートを受けられる
- まずは器物損壊事件の実績が豊富で交渉力のある弁護士に相談することが大切
器物損壊で逮捕される前に整理しておきたい前提の知識
「器物損壊」の意味する範囲は、一般的に思われている以上に広いため注意が必要です。ここでは、器物損壊で逮捕される前に整理しておきたい前提の知識として、器物損壊の定義を解説します。
- 器物損壊とは
- 器物損壊と器物破損の違い
器物損壊とは
器物損壊とは他人の物を損壊すること、または他人のペットなど所有する動物に傷害を負わせることです。損壊とは物理的に「物を破壊すること」だけでなく、心理的に「物の効用を失わせること」も意味します。
たとえば他人の車に対して、フロントガラスを叩き割ることはもちろん、排泄物を塗りつけて嫌がらせをすることも損壊です。また、たとえ車が無傷であっても、どこかに隠してしまうことは物の効用を失わせるため損壊にあたります。
器物損壊と器物破損の違い
「器物損壊」と「器物破損」に意味の違いはありません。日常会話で多く使われているのは「器物破損」ですが、法律用語として正式に使われるのは「器物損壊」です。
器物損壊で逮捕された場合の刑罰
器物損壊で逮捕された場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。また、どのような場合に器物損壊と認められるのでしょうか。ここでは、器物損壊罪について概要を解説します。
- 器物損壊罪
- 器物損壊には故意が必要
- 器物損壊罪は親告罪
器物損壊罪
器物損壊罪は、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」もしくは「科料」が科されます(刑法261条)。
科料とは、1,000円以上1万円未満の金銭を納付する刑罰です。器物損壊罪の根本的な要因として「お酒」「対人トラブル」「性的欲求」などがよく挙げられます。
たとえば、泥酔して店先の立て看板を蹴って壊す、同僚にムカついて制服を隠す、女子高生に痴漢して体液をかけるなど具体的なケースはさまざまです。
器物損壊には故意が必要
器物損壊罪は故意であることが成立のポイントです。たとえば、飲み屋でグラスを手から滑らせて割ってしまっても、わざとでなければ器物損壊にはなりません。
ただし、過失(不注意によるミス)ではあるため、刑事事件として罪にはなりませんが、民事事件として損害賠償を請求される可能性はあります。
また、たとえ酔っ払っていて何も覚えていなくても、故意にグラスを壁に投げつけて割ったときは器物損壊罪に問われます。
器物損壊罪は親告罪
器物損壊罪は親告罪です。親告罪とは、被害者が刑事告訴をしなければ起訴されない犯罪です。たとえ告訴されたとしても、起訴される前に示談交渉して被害者に告訴を取り下げてもらえれば、不起訴になり前科はつきません。
注意点は、いったん起訴されると、ほぼ確実に有罪になることです。親告罪の告訴には6か月の時効期間があります。
そのため、被害者が加害者を知ったときから6か月を過ぎれば告訴できず、起訴されることもありません。また、起訴自体も器物損壊を犯したときから3年で時効が成立します。
器物損壊の逮捕率
令和4年版の犯罪白書にある「刑法犯 認知件数・発生率・検挙件数・検挙人員・検挙率(罪名別)」の統計表によると、令和3年の器物損壊罪の検挙率は14.9%です。刑法犯全体では46.6%なので、器物損壊罪の検挙率は著しく低いといえます。
しかし、現行犯で逮捕されたり、被害届が出されて捜査が進み後日逮捕されたりするケースは多いです。器物損壊罪は刑法が定める犯罪のなかでも比較的軽い刑罰とはいえ、甘くみてはいけません。
器物損壊で逮捕されるのはどのような場合?
器物損壊を犯した場合、どのようにして逮捕されるのでしょうか。ここでは、よくある3つの逮捕ケースを解説します。
- 器物損壊している現場での現行犯逮捕
- 犯人が特定され後日逮捕(通常逮捕)
- 警察に自首してからの逮捕
器物損壊している現場での現行犯逮捕
器物損壊罪は、被害者によって現行犯逮捕されることが多いです。現行犯逮捕とは、犯行中や犯行直後の犯人を逮捕することを指します(刑事訴訟法212条1項)。犯人を間違えにくいため、逮捕状なしに一般人でも逮捕が可能です(同法213条)。
犯人を長時間拘束すると逮捕した側が逮捕監禁罪に問われる可能性があるため、現行犯逮捕後は直ちに110番通報して警察官に身柄を引き渡す必要があります。
犯人が特定され後日逮捕(通常逮捕)
後日逮捕は、通常の逮捕状による警察官や検察官による逮捕です。
器物損壊罪は親告罪のため、被害者からの告訴がなければ逮捕されにくいですが、被害届が出されれば警察の捜査が入ります。防犯カメラの映像などから犯人が特定されれば、その時点で逮捕状による逮捕が可能です。
また、在宅捜査で警察から任意の呼び出しを受けて、取り調べの結果逮捕されるケースもあります。
警察に自首してからの逮捕
警察に自首した後に逮捕されることもあります。自首とは、犯人として特定される前に罪を認め、自発的に刑事処分を求めることです。
反省の意思があるとみなされ、犯行が悪質でなく、逃亡や証拠隠滅を図るおそれもない場合は逮捕されないケースもあります。さらに、減刑につながる可能性も高くなります。
犯人として特定された後に警察に出向くことは、自首ではなく出頭と呼ばれます。出頭の場合、減刑は法律で規定されていません。
器物損壊で逮捕された後の流れ
器物損壊で逮捕されると、どのような流れで処分されるのでしょうか。逮捕されると想像以上に自由が制限されてしまいます。
ここでは逮捕された後の流れを、逮捕 ・送検・勾留・起訴・公判の5つのパートにわけて解説します。
逮捕
器物損壊で逮捕されると、警察署内の留置場もしくは拘置所に身柄を拘束されます。外出はもちろん、弁護士以外の人との面会や連絡も一切できません。
この制限は勾留決定まで最長3日間(72時間)続きます。
取り調べで身柄の拘束が不要と判断されたり、被害者との示談が成立したりすると釈放されます。状況が変わらない場合は、翌日か翌々日(48時間以内)に身柄が検察庁に送致され、検察官による取り調べが続きます。
送検
身柄が検察庁に送致されることを、身柄送検といいます。検察官は、釈放するか勾留するかを決定するために取り調べを行います。逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると判断すれば、裁判官に勾留請求をします。
勾留請求は24時間以内にする必要がありますが、釈放ではなく勾留請求となる流れがほとんどです。勾留請求のあった当日か翌日に、勾留質問と呼ばれる裁判官が被疑者の陳述を聴く機会が設けられます。
その結果により勾留すべきかどうか判断されますが、基本的には勾留決定となるケースが多いです。
勾留
裁判官により勾留決定がなされると、被疑者は原則として10日間拘束されます。勾留期間中は、警察官や検察官による取り調べや証拠収集が続きます。
10日間の初回勾留期間で捜査が不十分な場合、検察官は再度裁判官に勾留請求をして、さらに最長10日間の勾留延長が可能です。合計で最長20日間の勾留期間になります。
勾留が決定した段階で、初めて外部との連絡が許されますが、電話連絡のみと限定的なものになります。
起訴
検察官は捜査内容に基づいて、勾留期間中に起訴・不起訴を決定します。起訴の場合は、公判請求もしくは略式請求がなされます。
不起訴処分になった場合はそのまま釈放となり、刑事事件として罪に問われることも、前科がつくこともありません。不起訴処分は「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3つに分かれます。
嫌疑なしは、証拠がない場合やアリバイがある場合になります。嫌疑不十分は、証拠が不十分な場合です。起訴猶予は、嫌疑はあるが罪の重さや被疑者の状況により起訴不要な場合です。
公判
検察官が裁判所に起訴状を提出して公判請求をすると、公開法廷で審理されます。いったん起訴されると、ほぼ確実に有罪となるのが実情です。
初犯であれば執行猶予がつくことも多いですが、前科があったり、執行猶予中だったりすると実刑判決になる可能性が高くなります。
略式請求の場合は、被疑者に同意を得た上で法廷は開かずに、書類のみの審理で罰金刑が下されます。ただし、有罪であるため前科はつきます。
器物損壊で逮捕されたときの弁護のポイント
器物損壊で逮捕されたときは弁護のポイントがあります。何も知らないと不利な状況に追い込まれる可能性が高いです。ここでは、有罪にならないための適切な2つの対処法について解説します。
- 早急に釈放に向けた活動をする
- 示談に向けた交渉をする
早急に釈放に向けた活動をする
器物損壊で逮捕されたときは、直ぐに釈放に向けた活動をすることがポイントです。
器物損壊は重罪ではありませんので、逃亡や罪証隠滅の可能性が低いことを弁護士から捜査機関や裁判所に説明をすれば直ぐに釈放されることも多くあります。次の示談交渉に余裕をもって臨むためにも早急に釈放に向けた活動を行うことが重要です。
示談に向けた交渉をする
器物損壊罪は親告罪のため、被害者と示談に向けた交渉ができれば、起訴されない可能性が高くなります。被害感情をやわらげることがポイントのため、誠実に謝罪して民事的に賠償することが重要です。
示談交渉は不慣れな当事者同士で行うと話がまとまらないことがあります。落としどころがわかる弁護士を通したほうが示談は成立させやすいでしょう。また、被害者側に弁護士がついた場合でも、不利になることなく対等に交渉ができます。
まとめ
今回は器物損壊について、器物損壊の定義から対処法まで詳しく解説しました。器物損壊は、物理的な破壊だけでなく心理的なものにも適用されます。
被害者の被害感情が強いと刑事事件に発展するなど話が大きくなりますが、起訴される前に示談が成立すれば有罪にはなりません。
しかし、いったん起訴されてしまうと、そのまま有罪になってしまう可能性が極めて高いため、示談は早急に成立させる必要があります。適切に対処するには法律の専門家のサポートが重要です。お困りの方は相談してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。