器物損壊で逮捕される?罰則や逮捕後の流れを弁護士が解説
最終更新日: 2025年10月14日

結論からお伝えすると、器物損壊は刑法上の「器物損壊罪」にあたり、場合によっては逮捕され、前科がつく可能性があります。
ただし、すべてのケースで逮捕されるわけではなく、被害弁償や示談が成立すれば逮捕や起訴を避けられることも少なくありません。
本記事では、器物損壊の定義、罰則、逮捕されるパターン、逮捕後の流れ、そして逮捕や前科を防ぐためのポイントを弁護士の視点から解説します。
器物損壊とは?
「器物損壊」という言葉は日常的によく使われますが、法律上の罪名は「器物損壊罪」です。刑法第261条では以下のように規定されています。
「他人の物を損壊し、または傷害した者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金もしくは科料に処する」
つまり、他人の所有物を壊したり、傷つけたりした場合に成立します。
具体的な例としては、
- 酔って店のグラスや椅子を壊す
- 口論の末に相手のスマートフォンを投げつけて壊す
- 腹いせに隣人の自転車を蹴って壊す
- 嫌がらせで車に傷をつける
- ペットに危害を加える(「物」には動物も含まれるため)
といった行為が器物損壊にあたります。
器物損壊の罰則は?
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または科料です。
実際の処分は以下のように分かれます。
- 初犯かつ被害が軽微な場合:不起訴処分や罰金刑にとどまることが多い
- 被害額が大きい、悪質な動機がある場合:拘禁刑が科される可能性もある
- 再犯の場合:刑が重くなる傾向がある
刑事罰以外にも、被害者から損害賠償請求(修理費や慰謝料)を受けることがあります。
器物損壊で逮捕されるケース
「器物損壊くらいでは警察は動かない」
「現行犯でなければ逮捕されないから逃げ切れる」
と考える人もいますが、これは誤解です。被害届が提出されれば警察は捜査を開始し、防犯カメラの映像や目撃証言などから身元が特定されれば、現行犯でなくても逮捕される可能性は十分にあります。
器物損壊で逮捕に至る典型的なケースは、次の3つです。
現場での現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、犯罪を行っている最中や直後にその場で逮捕されることを指します(刑事訴訟法212条)。この場合は逮捕状が不要で、一般の人でも逮捕して警察に引き渡すことが可能です。
器物損壊では、被害者やその場に居合わせた人により現行犯逮捕されるケースが少なくありません。
具体例:
- 飲食店で酔って備品を壊し、店員に取り押さえられる
- 口論になり相手のスマホを壊して周囲の人に取り押さえられる
- 近隣トラブルで他人の物を壊し、被害者に現場で逮捕される
捜査の結果、後日逮捕される場合
「現行犯じゃなければ逮捕されない」と思う人もいますが、それも誤りです。警察は被害届が出れば捜査を行い、証拠が揃えば逮捕状を請求します。裁判所が逮捕令状を発行すれば、後日自宅に警察が来たり、任意の呼び出しから逮捕されることもあります。
典型的には、
- 防犯カメラの映像から犯人が特定される
- 周囲の証言によって身元が判明する
といった流れで後日逮捕に至ります。
また「過失で壊したから罪にならない」と思っていても、捜査の過程で「故意」と判断されれば器物損壊罪に問われる可能性があります。
自首した場合の逮捕
自首とは、警察などに自ら出頭し犯罪事実を申告することを指します。刑法42条により、自首は刑を軽くする事情として考慮されます。
器物損壊の場合、悪質でなければ「逃亡や証拠隠滅のおそれが低い」と判断され、逮捕を回避できることもあります。もっとも、犯行態様が重大な場合は自首しても逮捕される可能性は残ります。
したがって、「自首すれば必ず逮捕されない」と自己判断するのは危険です。自首を考える際は、まず弁護士に相談することをおすすめします。
器物損壊で逮捕された後の流れ
逮捕された場合、通常は次のような流れになります。
現行犯逮捕・通常逮捕
警察に連行され、取り調べを受けます。
警察から検察へ送致
逮捕後48時間以内に検察へ送られます。
勾留の決定
検察官が勾留を請求した場合、裁判官が最長20日間の勾留を認めることがあります。
起訴・不起訴の判断
検察官が証拠や示談状況を考慮し、起訴するかどうかを決めます。
裁判または釈放
不起訴となれば前科はつかずに終了。起訴されれば刑事裁判へ進みます。
逮捕や前科を防ぐためのポイント
器物損壊事件で最も重要なのは、被害者との示談交渉です。示談が成立し被害者が処罰を望まない意思を示せば、不起訴になる可能性が高まります。
その他のポイント:
- すぐに被害者に謝罪し、修理費や弁償に応じる
- 再発防止を約束する
- 弁護士を通じて誠意を伝える
よくある状況と対応例
飲食店での器物破損
Aさんは居酒屋で酒に酔った勢いで、店のグラスや皿を壊してしまいました。
店員に通報され警察が駆けつけましたが、弁護士にすぐ依頼したことで、弁護士が店側と交渉に入りました。結果として修理費・損害賠償を支払い、示談が成立。
被害者が処罰を望まない意向を示したため、検察は不起訴処分としました。
車への悪質ないたずら
Bさんは隣人とのトラブルから腹いせに車へ傷をつけ、防犯カメラから特定され後日逮捕されました。勾留の可能性が高まりましたが、弁護士が速やかに接見に入り、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張。さらに被害者との示談交渉を進め、被害弁償を行った上で謝罪文を提出しました。その結果、勾留は回避され、最終的に不起訴処分となりました。
飲み会の帰り道で建物の自動扉を損壊
Cさんは飲み会で酔っ払い、自宅と間違えて他のマンションのエントランスに侵入、自動ドアが開かないため扉を叩いてしまいドアが破損しました。
管理組合から警察に被害届が出され、修理費について民事裁判を起こされそうになりましたが、弁護士が粘り強く示談交渉をしたことで、修理費の支払期限を延ばしてもらうことができ、被害届も取り下げられて無事不起訴となりました。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
弁護士に相談するメリット
器物損壊で逮捕や前科を避けたい場合、弁護士に相談することが極めて有効です。
- 被害者の連絡先を調べ、示談交渉を代行できる
- 勾留回避や早期釈放を求める活動ができる
- 起訴猶予・不起訴の可能性を高められる
- 捜査機関とのやり取りをサポートし、不利な供述を避けられる
FAQ(よくある質問)
Q. 器物損壊で必ず逮捕されますか?
いいえ。軽微なケースやすぐに弁償した場合、逮捕されずに在宅事件として処理されることもあります。
Q. 初犯でも前科がつきますか?
起訴され有罪判決を受ければ初犯でも前科がつきますが、示談成立や情状酌量により不起訴となる可能性もあります。
Q. 弁護士をつけるタイミングはいつが良いですか?
逮捕前でも逮捕後でも早ければ早いほど有利です。示談交渉や勾留回避のため、可能であればすぐに依頼することをおすすめします。
Q. 被害者と直接示談交渉しても大丈夫ですか?
相手の感情を逆なでするリスクがあるため、弁護士を通す方が安全でスムーズです。
Q5. 未成年が器物損壊した場合も逮捕されますか?
未成年であっても重大事件では逮捕・勾留されることもあります。
まとめ
器物損壊は刑法上の犯罪であり、場合によっては逮捕や前科に至る可能性があります。ですが、被害者との示談や早期の弁護士依頼によって、不起訴や前科回避を実現できるケースは少なくありません。
もし不安を感じている方は、一人で悩まず弁護士に相談し、最適な解決策を探ることが重要です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





