老朽化したマンションの建て替えに伴う立ち退き問題を専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月03日

マンションの建て替えに伴う立ち退き問題を専門弁護士が解説

  • 老朽化したマンションを建て替えたい
  • 立ち退き交渉の進め方を知りたい
  • 立ち退きを求められたがどうすれば良いのか

近年社会問題になっているのが、マンションの老朽化です。老朽化によって壁が崩落したり、建物が倒壊するようなことは避ける必要があります。

国土交通省によると、南海トラフにおいて30年以内にマグニチュード8~9クラスの巨大地震が発生する確率は70~80%だそうです。老朽化マンションの建て替えは、今や避けて通れない問題なのです。

今回は、老朽化したマンションの建て替えに伴う立ち退き問題について専門弁護士が解説します。大家側だけでなく、立ち退きを求められる賃借人の方のためにもなる内容となっておりますのでぜひご一読ください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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老朽化したマンションの建て替えに伴う立ち退き問題

老朽化した賃貸マンションの建て替えにともなう立ち退きについて3つの点から解説します。

  • 建物の老朽化は正当事由の1つ
  • 借地借家法に定める事前通知が必要
  • 立ち退き料の算定とその相場

建物の老朽化は正当事由の1つ

1つ目は、建物の老朽化は正当事由の1つだという点です。

建物の老朽化により建て替えを行う場合、賃貸人から入居者に対し、賃貸借契約の更新を拒絶することによって契約を終了させ、立ち退きを請求する必要があります。

そのためには、借地借家法28条が求める更新拒絶の正当事由が必要です。実際の裁判においても「建物の老朽化は借地借家法28条に言う正当事由にあたる」という判決は多いです。現況を考慮し、取り壊しの緊急性が低いと判断された事例もありますが、立ち退きを請求する正当事由として主張することは可能です。

ただし、老朽化の理由のみをもって正当事由が認められるケースは少なく、大半のケースでは立ち退き料の支払いがあって初めて正当事由が認められています。

借地借家法に定める事前通知が必要

2つ目は、借地借家法に定める事前通知が必要だという点です。

立ち退き請求を行う場合、借地借家法26条に則って手続きを進める必要があります。更新せずに賃貸借契約を終了させたい場合、契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、入居者に対して更新しない旨の通知しなければなりません。その通知期間を過ぎてしまうと、契約更新となってしまいます。

ただし、大家と賃借人の双方納得の上であれば、賃貸借契約はいつでも合意で解約することは可能です。

立ち退き料の算定とその相場

3つ目は、立ち退き料の算定とその相場です。

先ほども少し触れましたが、更新拒絶をして賃貸借契約を終了させるためには借地借家法が正当事由の存在を求めています。

この正当事由の存否は、マンションの老朽化、建て替えの必要性、賃借人の物件使用の必要性、従前の賃貸借の経緯などの事情を考慮して判断されます。これらの事情だけで正当事由が認められるケースもありますが、大半のケースではそれだけでは不足で、賃借に対する補償として立ち退き料を支払うことで初めて正当事由が認められています。

この立ち退き料の金額がどうやって決まるかについて法律には計算式は定められていません。過去の判例では、「移転費用+移転先の契約金(仲介手数料と礼金)+移転先の家賃が高い場合は差額賃料の1年分から3年分」という計算式が一応の参考とされることがあります。この計算式で一律に立ち退き料が決まるのではなく、あくまで参考程度ということには注意が必要です。

立ち退き料の相場ですが、一般的な住居であれば概ね100万円から200万円が相場と言ってよいでしょう。もちろん相場ですからケースによってはそれ以上になることもあります。

老朽化したマンションの建て替えと立ち退き交渉の進め方

老朽化した賃貸マンションの建て替えと立ち退き交渉の進め方について以下の3つの点から解説します。

  • 立ち退きの正当事由と立ち退き料の提示
  • 転居先の情報の提供をサポート
  • 余裕ある立ち退き期間の提示

立ち退きの正当事由と立ち退き料の提示

1つ目は、立ち退きの正当事由と立ち退き料の提示です。

立ち退きを請求するには、借地借家法26条に定めるとおり、契約期間満了の6か月前から1年前に更新拒絶等の通知をする必要があります。その通知の中で正当事由として老朽化によるマンション建て替えの必要性を説明します。賃借人の理解を得られやすいような丁寧な説明が必要です。

この更新拒絶の通知の中で立ち退き料の金額提示まで行うケースも見られますが、賃借人の中には立ち退き料無しで退去の合意をしてくれる場合もあります。立ち退き料の予算には限りがありますから、最初から立ち退き料の提示をしていくことは得策とはいえないでしょう。

転居先の情報の提供をサポート

2つ目は、転居先の情報の提供をサポートです。

多くの賃借人にとって転居先を探したり、転居の準備をすることはストレスです。賃借人が希望する条件の物件探しを賃貸人において行って、転居のサポートをしてあげることで立ち退き交渉が円滑に進むことは多くあります。

余裕ある立ち退き期間の提示

3つ目は、余裕ある立ち退き期間の提示です。

現実に立ち退きを請求するのが数年先の計画だとしても、早めに伝えておくことでリスクを回避できる可能性が高まります。入居者としては、立ち退きを迫られた場合に納得できる転居先を見つけたいのは当然であり、それにはある程度時間が必要です。

入居者に子どもがいる場合には、学区変更の問題なども考えられますので、余裕を持って伝えておくことで、数年後を目途に新居計画や引越計画を立てることができます。

しばしば2、3か月後の転居を求めるという通知がなされているケースが見れらえますが、賃借人の怒りを買ってしまい立ち退き交渉が難航することは必至ですので、退去までの期間は余裕をもって提示することが重要です。

マンションの建て替えによる立ち退き交渉が難航した場合

老朽化した賃貸マンションの建て替えによる立ち退き交渉が難航する場面は以下の2つです。

  • 入居者が納得しない場合
  • 入居者が退去しない場合

入居者が納得しない

1つ目は、入居者が納得しない場合です。

入居者が納得しない場合、何が問題なのかを詳しく知る必要があります。たとえば、立ち退き料に納得していない、転居先が決まらないなどの理由があるかもしれません。問題を把握した上で、賃貸人として協力できることがあれば提案し、協力して1つずつ問題を解消していく必要があります。

話合いにならないようなら無理に直接話を進めようとはせず、早期に弁護士に依頼し、立ち退き料も含めて交渉を進めることで、費用的にも労力的にも負担は小さく済むでしょう。

入居者が退去しない

2つ目は、入居者が退去しない場合です。入居者が退去しない場合には、法的手続へ移行します。

賃貸借契約が解約された上でも退去しない場合、入居者は不法に占有していることになります。しかし、賃貸人自ら追い出すことは違法になりますので、訴訟手続きを経て退去してもらうことになります。

まとめ

今回は、老朽化したマンションの建て替えに伴う立ち退き問題について解説しました。

立ち退き交渉には立ち退き料の算定や交渉があり、専門的な知識と経験が求められます。円滑な建て替え計画の遂行、納得のできる立退き条件の獲得のためには立ち退き問題の専門弁護士にまずはご相談ください。

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