家賃滞納で裁判を検討中の賃貸人必見!手続き前に知るべき対策・費用・リスク

最終更新日: 2024年11月08日

家賃滞納で裁判を検討中の賃貸人必見!手続き前に知るべき対策・費用・リスク

  • 賃借人の家賃滞納の問題を解決したい、よい方法はないだろうか?
  • 強制退去を行う前に、家賃滞納の問題を穏便に解決できる方法が知りたい。
  • 家賃滞納の解決を図るには、やはり弁護士に相談した方がよいのだろうか?

賃借人の家賃滞納で悩んでいる賃貸人は多いことでしょう。

家賃滞納を解決する方法はいろいろとあります。状況に合わせた方法を試し、冷静に対応していきましょう。

そこで今回は、賃貸借のトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、柔軟な家賃滞納の解決方法、裁判の手順等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 裁判の前には、支払いの督促や内容証明郵便の送付等、様々な方法を講じてみる
  • 強制執行(強制退去)を望むなら、裁判所で諸手続きを進める必要がある
  • 賃貸借のトラブルに詳しい弁護士から助言を受けつつ、家賃滞納の解決を図った方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

家賃滞納の裁判前にすべき対応

賃借人の家賃滞納を裁判所へ訴える前に、様々な方法で解決を図ってみましょう。

家賃を支払うよう督促する方法や、内容証明郵便による方法、和解交渉などがあげられます。

支払いの督促

賃借人に家賃滞納を連絡し、自主的な支払いを促しましょう。次のような方法を利用します。

  • SNS:スマートフォンで利用できる。若者の普及率は高く、賃借人のアカウントがわかっていれば、SNSで連絡すると督促に気付きやすい。
  • メール:賃借人のメールアドレスがわかっていれば利用可能。SNS同様、コストがかからず便利。
  • 電話:確実に家賃の支払いを口頭で伝えられる。ただし、連絡がなかなか取れない場合もある。
  • 郵送:賃借人が手紙で家賃滞納の事実を確認するという意味では、視認性が最も高い。ただし、督促状を作成する手間や郵送コストもかかる。

各連絡方法を併用しても構いません。しかし、1日何回も連絡を試みる等、執拗に賃借人へ督促すると嫌がらせを受けていると見なされ、反感を持たれてしまうおそれがあります。

内容証明郵便の送付

賃借人や連帯保証人へ連絡が取れない場合、内容証明郵便を送付します。なお、支払い督促で郵送により家賃滞納を連絡する場合、内容証明郵便にするのも効果的です。

内容証明郵便とは、郵便物の内容・差出人・宛先を郵便局が証明するサービスです。

内容証明郵便を送付しただけでは、家賃支払いを強制する法的効果はありません。

ただし、強制退去を裁判所に申し立てるときに、賃借人に督促していた証明となります。

和解交渉

賃借人と話し合い、家賃滞納の解消を図りましょう。

賃借人が病気やケガで入院している、仕事を探している等の理由で、家賃を滞納してしまう場合があります。

ある程度支払いを猶予すれば、賃借人が家賃を払い込める場合、一定期間にわたり支払期日を延長するのもよい方法です。

なるべく早く賃借人から退去して欲しい場合は、未払いの家賃の免除、賃貸人側が立退料も支払う旨を提案し、自主的な退去を促す方法があります。

自主的な退去で解決した方が、裁判や強制退去を実行するより、費用を軽減できることでしょう。

家賃滞納に対する裁判手続きの流れ

家賃滞納の問題を裁判で解決したい場合は、賃貸人の主張が認められる判断基準等をよく確認しつつ、手続きを進めていきましょう。

裁判手続きの準備や訴訟・申立ては、弁護士のサポートを受けた方が支障なく行えます。

タイミングの判断

賃借人の家賃滞納期間がどれくらいなのかを必ず確認しましょう。

家賃滞納期間が3か月未満ならば、たとえ裁判所に訴えても、明け渡し請求を認める判決は得られない可能性があります。

1~2か月程度の滞納では、裁判所から「支払いはまだ期待できる余地がある。」と判断される傾向があるためです。

そのため、1〜2か月程度の滞納ならば、賃借人と交渉を継続し、3か月を経過した時点で裁判所に訴えると決めておきましょう。

建物の明渡訴訟

賃借人の家賃滞納が3か月を経過したら、裁判所に訴訟を提起します。

訴えの提起は、賃貸物件の所在地を管轄する地方裁判所か簡易裁判所(賃貸物件の財産上価額が140万円以下の場合に可能)で行いましょう。

賃借人(被告)が裁判を欠席し、反論する答弁書も提出されていないと、賃貸人(原告)の主張が認められます。

一方、賃借人(被告)が裁判に出席し、滞納した家賃を支払うと主張したら、裁判官は和解案を原告・被告に提案する場合があります。

和解案に互いが合意すれば裁判は終了します。ただし、和解案で合意できなければ、最終的には判決で問題の解決を図ります。

判決

賃貸人(原告)の明け渡し請求が認められれば、賃借人(被告)に賃貸物件から退去し、建物の明け渡しを命じる判決が下されます。

ただし、明け渡しを命じられても賃借人に不服がある場合、判決日の翌日から2週間以内であれば控訴が可能です。

明け渡しを命じる判決が出ても、被告人が期限内に控訴しないばかりか、賃借人が賃貸物件に居座り続けている状態なら、強制執行で賃借人を退去させます。

強制執行

賃借人が判決に従わないときは、裁判所に強制執行を申し立てましょう。

申立てが認められた場合、裁判所は賃借人に対し催告書を送付します。催告書とは、「期日までに賃貸物件を明け渡しなさい。」という催告を記載した文書です。

催告書に明記した期日となっても、賃借人が賃貸物件を明け渡さないならば、いよいよ強制執行が開始されます。

裁判所の執行官と専門業者が強制執行の対象となる賃貸物件に向かい、物件内にある賃借人の家財を撤去します。

その後、強制執行した日を明記した催告書・公示書を掲示し、物件の鍵を交換すれば強制退去は完了です。

家賃滞納で裁判を起こすときの費用

賃借人の家賃滞納を解決するために裁判を起こすときは、基本的に賃貸人が費用を負担しなければいけません。

弁護士にサポートを依頼する場合は弁護士費用が、自分で訴えを提起する場合も裁判所に納付する費用が必ずかかります。

弁護士費用

賃貸人が弁護士のサポートを受け、家賃滞納の解決を目指す場合、40〜70万円程度の弁護士費用を負担する必要があります。

弁護士費用の内訳は次の通りです。

  • 着手金:20~30万円
  • 成功報酬:20~40万円
  • 必要経費(日当等):ケースによる

着手金は弁護士に依頼したとき必ず支払う費用です。裁判で賃貸人側の主張が認められず敗訴したとしても、返還されません。

成功報酬は裁判で賃貸人側の主張が認められて勝訴した場合、弁護士に支払う必要があるお金です。主張が認められなければ支払う必要はありません。

必要経費には、弁護士の裁判所への出廷・出張に関する日当、交通費、宿泊費等が該当します。

自分で起こす場合

建物の明渡訴訟は賃貸人だけでも提起できますが、手続きの費用は次のようにかかります。

  • 通信費(督促、解除の内容証明郵便):1,500円程度
  • 裁判所に納める印紙代および切手代:印紙代15,000円(固定資産税評価額400万円の賃貸物件の場合)、切手代6,000円~
  • 強制執行申立ての費用(予納金):65,000円
  • 強制執行の実費(執行官の出張費、業者の費用等):30万円前後

弁護士費用を除いたとしても、概ね40万円程度かかるケースがほとんどです。

家賃滞納における裁判のリスク

家賃滞納に関する裁判で、賃貸人の主張が認められる可能性は高くとも、かかった費用の回収が必ずできるとは限りません。

また、賃貸借契約の解除から裁判を経て強制執行(強制退去)が実現できるまで、それなりに時間がかかってしまいます。

回収の見極め

裁判で賃貸人が勝訴した場合は、賃借人へ強制執行にかかった費用等の請求が可能です。

ただし、賃借人は家賃を滞納するほどお金に困っているわけですから、請求しても必ず費用回収が見込めるわけではありません。

裁判で解決を図る場合、「最初から費用回収は見込めない可能性が高い。」と割り切って、手続きを進めた方がよいでしょう。

高額費用の負担を避けたいなら、粘り強く賃借人と話し合い、自主退去を促した方が無難です。

必要な時間

賃貸借契約の解除後、裁判を経て強制執行(強制退去)が実行されるまで、スムーズに手続きが進んでも2か月くらいはかかります。

賃貸借契約の解除から強制執行の申立てまで早くて1週間程度、申立てから賃借人への催告までが2週間程度、催告から強制執行(強制退去)の実行まで1か月程度となります。

建物の明渡訴訟のとき、賃借人(被告)側が賃貸人(原告)側の主張に反論等を行えば、裁判所の審理に時間がかかる可能性もあるでしょう。

家賃滞納の裁判における成功のポイント

家賃滞納に関する裁判を支障なく進めるため、前もって証拠の収集や、裁判所へ提出する書類の準備を行っておく必要があります。

裁判の準備は、弁護士のアドバイス・サポートを受けながら対応した方がよいでしょう。

証拠収集

内容証明郵便の送付に対し、家賃の支払いに応じなかったり、無視したりすれば、「支払いの催告や期限を延長しても賃借人が応じなかった。」という証拠となります。

そのためにも、裁判前には忘れずに賃借人へ内容証明郵便を送付しておきます。

内容証明郵便を準備するとき、用紙の種類や大きさの規定は自由ですが、A4用紙で支払いの催告書を作成するのが一般的です。

賃貸人の控え用・賃借人への送付用・郵便局の保管用、計3枚の書類を用意しましょう。

書類の準備

裁判所に訴訟提起する場合、必要な提出書類は主に次の通りです。

  • 賃貸借契約書
  • 家賃が滞納されている賃貸物件の不動産登記簿謄本
  • 家賃が滞納されている賃貸物件の固定資産税評価証明書
  • 内容証明郵便:支払いの催告、解除通知
  • 予納郵便切手、収入印紙

賃貸人が所有する物件であるとわかる不動産登記簿謄本、賃貸物件の価値がわかる固定資産税評価証明書も準備します。

不動産登記簿謄本は法務局で、固定資産税評価証明書は市区町村役場で取得可能です。

相手の財産状況の把握

賃借人の財産状況を賃貸人が勝手に調べることはできません。

あくまで賃借人の同意を得たうえで、状況を確認できるにとどまります。次のような書類の提示を求めてみましょう。

  • 課税(非)課税証明書:どのくらい所得があるのか、他者へ証明する場合に利用可能
  • 預金通帳等:家賃の支払いを賄えるだけの金額があるかどうか確認可能

当然ながら賃借人に拒否された場合、強引な財産状況の確認はできません。

弁護士への相談

家賃滞納に関する裁判を進めたい場合は、賃貸借契約のトラブルに詳しい弁護士へ相談してみましょう。

弁護士は賃貸人から詳しい状況を聴いたうえで、次のアドバイスを提供します。

  • 裁判前に賃借人と協議する必要性
  • 家賃支払いの催告を内容証明郵便で送付するポイント
  • 裁判の方法や手順
  • 強制執行の申立て方法
  • 弁護士を代理人にたてる有効性

裁判所へ訴えを提起する前に、弁護士にサポートを依頼したならば、賃借人との家賃支払い・自主的な退去の交渉も任せられます。

賃貸人と賃借人が直接話し合う必要はないため、感情的にならず、理性的な解決を図れる可能性もあるでしょう。

家賃滞納で裁判を検討するならまず弁護士への相談を

今回は賃貸借のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、家賃滞納に関する裁判の手順等を詳しく解説しました。

賃借人が家賃を滞納していても、賃貸人は焦らず冷静に家賃の支払いを交渉していく必要があります。交渉に行き詰ったら、最終的な手段として裁判手続きを進めましょう。

法律事務所の中には初回相談を無料で受け付けているところもあります。賃借人の家賃滞納に悩んだら、気軽に弁護士と相談し、今後の対応を検討してみましょう。

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