離婚の不受理届とは?メリット・デメリットと申出する場合・された場合の対応をわかりやすく解説
最終更新日: 2024年10月31日
- まだ離婚の話し合い中なのに配偶者がいきなり離婚届を提出しないか不安だ
- 不受理届を提出されたので対応方法を知りたい
- 迅速に離婚手続きを進めるためには弁護士に相談した方がよいのだろうか
夫婦が話し合い離婚の合意をしないうちは、基本的に離婚届の提出は認められません。
しかし、中には一刻も早く離婚しようと、配偶者の合意を得ていないにもかかわらず、離婚届を提出しようとする人もいます。
そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、合意のない離婚届の提出を阻止する方法、不受理届を提出するメリット・デメリット等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 不受理届を提出すれば、配偶者からの勝手な離婚届の提出を防げる
- 不受理届を提出しても、離婚するか否かの話し合いがスムーズに進むとは限らない
- 円滑に離婚の協議を進めるため、離婚問題に詳しい弁護士と相談した方がよい
離婚の不受理届とは
不受理届は本人の知らない間に、配偶者から勝手に離婚届を提出されるのを防ぐ制度です。
離婚するか否かや離婚条件を決めていないにもかかわらず、配偶者から離婚届を提出されてしまうと、様々なトラブルが発生する可能性があります。
無断で離婚届を提出され、役場に受理されてしまった場合、あとから申し出て離婚届を無効にすることは基本的に不可能です。なぜなら、市区町村役場には一度受理した離婚届を、役場の判断で無効や取消にできる権限がないからです。
もしも離婚の無効を望むのであれば、家庭裁判所に協議離婚無効確認調停を申し立て、調停不成立の場合は訴訟で解決を図らなければなりません。
また、戸籍を訂正する手続きも必要です。そのときは、家庭裁判所に「戸籍訂正許可」を申し立てる必要があり、非常に手間と時間がかかってしまいます。
前もって不受理届を提出しておけば、安心して配偶者と離婚について話し合いができます。
不受理届が適用されるケース
市区町村役場では離婚届が提出されても、実際のところ夫婦の合意の有無は詳しく確認しません。書類として不備がないか確認するだけにとどまるため、離婚届に不審な点が見当たらなければ、そのまま受理されてしまいます。
そのため、次のケースを確認したなら、不受理届を済ませた方がよいでしょう。
- 離婚条件を取り決めていないのに、配偶者がすでに離婚届を作成し、保持している
- 相手が何らかの理由で離婚を急いでいる
- 離婚届に署名したが、離婚するのを保留したい・撤回したい
- 子どもの親権を互いに譲らない
不受理届の有効期限や注意点
不受理届の有効期限はありません。そのため「受理後〇か月経つと失効する。」という事態にはなりませんので安心してください。
ただし、夫婦が協議離婚に合意し、不受理届の効力が不要となった場合は取下げが必要です。
不受理届を出した申出人本人(基本的に代理人不可)が、市区町村役場で「不受理申出の取下げ書」を提出します。
その他、裁判により離婚成立となった場合、申出人が亡くなってしまった場合も不受理届の効力は失効します。
離婚の不受理届を提出するメリット
役場に不受理届を提出すれば、夫婦間でじっくりと離婚について話し合いができることでしょう。
また、重要な離婚条件の合意がないにもかかわらず、離婚届が受理されてしまう事態も回避できます。
夫婦が合意してから離婚できる
不受理届を提出しておけば、夫婦で離婚の合意に達しない限り、配偶者が勝手に離婚届を提出・受理される事態は起きません。
たとえば、財産分与や慰謝料支払いで揉めている最中に、勝手に離婚届を提出されてしまう場合があります。
離婚届が受理されれば離婚は成立するので、後日請求しても「話し合いのとき、そのような約束などしていない」と、配偶者から支払いを拒まれてしまうおそれがあるでしょう。
不受理届を提出していればそのような事態を回避できるため、夫婦で決めなければいけない重要な離婚条件を、安心して協議できます。
勝手に親権者となるを防げる
配偶者が勝手に親権者となるリスクを防止できます。
離婚届には子どもの親権者が誰かを記入するので、配偶者が勝手に親権者を自分にして離婚届を提出してしまったら、離婚成立とともに親権も配偶者に移ってしまいます。子どもの将来が不安定化する原因ともなるでしょう。
離婚届を無効とするには家庭裁判所での調停・訴訟が必要で、戸籍の訂正手続きも必要です。
子どもが安心して親の養育を受けるためにも、不受理届を提出しておいた方がよいでしょう。
離婚の不受理届を提出するデメリット
勝手に離婚届を提出させないための不受理届ですが、本人が届け出を行うときに気を付けなければいけない点もあります。
市区町村役場に届け出する前に、デメリットについても把握しておきましょう。
直接提出が必要
不受理届を市区町村役場に提出できるのは、申出人である本人です。代理人を立てての申請は基本的に認められません。
本人が市区町村役場に出頭できない、やむを得ない事情(病気・ケガによる入院等)があれば、郵送の届け出または本人以外の届け出が可能な場合がありますので役所に確認しましょう。
スムーズな協議ができない場合も
配偶者が不受理届をされていた事実に怒り、夫婦の話し合いが進まなくなるおそれもあります。
不受理届が受理されても、役場から配偶者に連絡がいくわけではありません。しかし、配偶者が無断で離婚届を出したときに職員に拒否されて発覚します。
夫婦の話し合いが進まなくなったら、弁護士を代理人にして協議を行いましょう。
第三者でかつ法律のプロである弁護士が、感情的となっている配偶者との交渉に当たれば、理性的に話し合いを進められる可能性があります。
離婚の不受理届を出して離婚するまでの7つのステップ
配偶者が勝手に市区町村役場へ離婚届を提出しそうなときは、速やかに不受理届を済ませておきます。
不受理届後、離婚合意し不受理届を取下げる流れについてみていきましょう。
書類の入手
まずは不受理申出書、および申出人の本人確認書類を準備しておきましょう。不受理申出書は市区町村役場窓口で取得可能です。
必要事項の記入
不受理申出書に必要事項を漏れなく記入します。
申出人の表示等の欄に申出人の氏名・生年月日・住所・本籍と、配偶者の氏名・生年月日・住所・本籍を記入します。
もし気になる事柄があれば、「その他」の欄に記入します。
不受理申出書は全国共通の書面であり、他の市区町村で取得した書類も使用可能です。
本人確認書類の準備
必要となる本人確認書類は、主に次のいずれかです。
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- パスポート
原則として顔写真付きの本人確認書類が必要です。
役所に不受理届を提出
市区町村役場が開庁している時間に、不受理申出書・本人確認書類等を提出します。
本籍のある市区町村役場へ提出します。ただし、役場が遠方にあるときは、住所地・所在地の役場にも提出できます。
原則として、提出は申出人本人が行わなければいけません。
なお、病気やケガで入院している場合、自宅療養で外出が困難という場合は、郵送または本人以外の届け出も可能です。
離婚協議と合意
夫婦が離婚条件を冷静に話し合い、合意を図ります。
決めなければいけない離婚条件は、主に財産分与・慰謝料・子どもの親権・養育費の支払い等と幅広いです。
離婚条件の内容は夫婦の自由な意思で決定できるものの、子どもの将来を不安にさせるような取り決め(例:資産・収入の状況を考慮せず、片方の親が養育費を全く支払わない等)は避けましょう。
協議後に「離婚協議書」を作成すれば、取り決めた内容を互いが忘れるおそれもありません。
不受理届の取下げ手続き
離婚に合意すれば、申出人が不受理届を取下げます。
取下げのときは次の書類を市区町村役場に提出します。
- 不受理申出取下書
- 本人確認書類:運転免許証・パスポート・マイナンバーカード等
不受理届の取下げに期限はないものの、取下げをしないと離婚手続きが進まなくなるので注意が必要です。
離婚届の提出
不受理届の取下げ後に離婚届を提出します。離婚届を提出し受理されれば離婚成立となります。
離婚届は市区町村役場の窓口で取得できます。離婚届用紙には夫婦の署名・押印の他、証人2人の署名・押印が必要です。
証人は18歳以上の成人であれば誰でもなれます。一般的に、夫婦どちらかの親や友人を証人とする場合が多いです。
離婚届提出時にも運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等、本人確認書類の提示が必要です。
離婚の不受理届を提出された場合の対応方法とは?
配偶者から不受理届を提出されてしまっても、離婚の話し合いで不利になるわけではありません。
動揺せず冷静に対応し夫婦間で離婚合意ができるよう、離婚条件の話し合いを進めましょう。
不受理届の確認方法
配偶者から不受理届を提出されたとしても、市区町村役場から自分に報告がくるわけではありません。
不受理届が済んでいれば、窓口で離婚届を提出しても職員に拒否されます。
ただし、離婚届を提出して確かめる方法は後々、夫婦間で大きなトラブルとなるので避けた方がよいでしょう。
不受理届が提出されても、提出されていなくとも、離婚に向けた冷静な夫婦の話し合いが求められます。
協議を進める
夫婦で離婚の話し合いをはじめましょう。
不受理届を提出されたとしても「なぜ提出したんだ!私を信用できないのか。」と、配偶者を責めてはいけません。
お互いの溝を丁寧に埋めていけば、離婚の話し合いは必ず合意に達します。
財産分与をどのような割合で分けるのか、慰謝料は支払う必要があるのか、子どもに関する取り決め等を、配偶者の意見も尊重しつつ冷静に進めることが大切です。
弁護士の活用
夫婦で感情的となり、なかなか話し合いが進まない場合は、弁護士を代理人に選任します。
弁護士は法律のプロであり第三者なので、理性的に配偶者と交渉を進められます。離婚問題に詳しい弁護士であれば、話し合いのコツも心得ているので、合意に達する可能性が高いです。
もしも、離婚の協議がうまくいかなかった場合は、調停の申し立てや訴訟の準備も弁護士に任せられます。
不受理届の取下げ交渉
離婚に合意できたら、配偶者に不受理届を取下げるよう説得します。
原則として不受理届の取下げは、配偶者本人が行う必要があります。取下げをしないと離婚の手続きは進みません。
もしも、話し合いに納得がいかず、配偶者が不受理届の取下げを拒否している場合、改めて家庭裁判所で調停を行い、合意を図る必要があります。
裁判所の介入による解決
配偶者から不受理届の取下げを拒否され、調停も不成立の場合は、家庭裁判所で裁判による離婚問題の解決を図ります(裁判離婚)。
裁判官は法律の定める離婚原因があるか等を慎重に審理後、必要であれば和解案を夫婦に提示し、最終的には判決を下し解決します。
ただし、自分が有責配偶者(DVや不倫する等して離婚原因をつくった人)の場合は、原則として離婚訴訟の提起はできません。
離婚の不受理届で困ったら弁護士にご相談を
今回は離婚成立に尽力してきた専門弁護士が、不受理届の提出方法や、提出するメリット・デメリット等を詳しく解説しました。
不受理届を出したいけれど不明な点がある・配偶者から不受理届を出され困っているという方は、離婚問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
法律事務所の中には、初回相談を無料で受け付けているところもあるので、気軽に有益なアドバイスが受けられます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。