離婚時の退職金は財産分与の対象になる?計算方法と請求手順を解説

2026年06月12日

離婚時の退職金は財産分与の対象になる?計算方法と請求手順を解説

「離婚するとき、夫(妻)の退職金は財産分与の対象になるの?」——この疑問を持つ方は非常に多いです。退職金は老後の生活資金として非常に重要であり、特に長年の婚姻生活を経た離婚では、退職金を適切に分与できるかどうかが離婚後の生活設計に直結します。

一方で、「まだ退職していないのに財産分与できるのか」「将来の退職金は計算が難しい」という疑問もあります。本記事では、退職金が財産分与の対象となる要件・計算方法・実際の請求手順について、具体的な数値例を交えながら解説します。

この記事のポイント

退職金は婚姻期間中に積み立てた部分が財産分与の対象。結婚前の勤務分は含まない 
すでに受け取った退職金は原則対象。将来の退職金は「支給が確実」なら対象になりうる 
③財産分与の請求は離婚後2年以内(2026年4月以降の離婚なら5年以内)。時効に注意

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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退職金は財産分与の対象になるか

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産(共有財産)を、離婚時に公平に分け合う制度です。退職金は、婚姻期間中の労働の対価として積み立てられる性質を持つため、「婚姻期間に相当する部分」については財産分与の対象となると解されています。

婚姻期間中に積み立てた部分のみが対象

退職金のうち財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に勤続した部分に対応する金額です。たとえば、勤続30年のうち婚姻期間が20年であれば、退職金全体の3分の2(20年÷30年)が財産分与の対象となるという考え方ができます。※その他の計算方法もあります。

婚姻前の勤務期間に対応する部分は、婚姻前からの固有財産として財産分与の対象外です。

すでに受け取った退職金の扱い

離婚前に退職金を受け取っている場合、その金額がまだ手元に残っていれば財産分与の対象になります。ただし、退職金をすでに生活費に使ってしまっている場合や、他の財産に変換されている場合(不動産購入など)は、その所在と現状を確認した上で対応が変わります。

相手が退職金を隠している可能性がある場合は、弁護士を通じた財産開示手続が有効です。

まだ受け取っていない将来の退職金の扱い

離婚時点でまだ退職していない場合、将来の退職金も一定の要件を満たせば財産分与の対象となります。裁判例では、「退職まで期間が短い(概ね10年以内)かつ退職金の支給が確実に見込まれる場合」に財産分与の対象として認める傾向があります。

定年まで20〜30年ある若い世代の場合は対象外となるケースもありますが、就業規則や退職金規程の内容によって判断が変わるため、弁護士への相談をおすすめします。

退職金の財産分与額の計算方法

退職金の財産分与額を算出するためには、まずベースとなる退職金の総額(または現時点での自己都合退職見込み額)を正確に把握し、その中から「婚姻期間」に相当する寄与分を切り出す作業が必要となります。

按分計算の基本的な考え方

財産分与の対象となる金額は、一般的に「退職金総額 × 婚姻期間 ÷ 全勤務期間」という計算式で算出されます。この算出された「共有財産部分」に対し、夫婦それぞれの分与割合(実務上は原則として2分の1ずつ)を乗じた金額が、一方が最終的に請求できる分与額の目安となります。

具体的な数値例を挙げると、退職金総額が2,000万円、全勤務期間が30年で、そのうち婚姻期間が20年の場合、対象額は2,000万円×20年÷30年=約1,333万円となります。この2分の1である約667万円が、財産分与として分けるべき金額の指針です。

将来退職金を現在価値に換算する(中間利息控除)

離婚時点でまだ支給されていない将来の退職金を対象とする場合、将来受け取るはずのお金を「今もらう」ものとして評価するため、現時点での価値に割り引く「中間利息控除」という処理が必要になる場合があります。法定利率(年3%)に基づいたライプニッツ係数を用い、定年退職等の支給予定時期までの年数に応じて現在の評価額を算出します。

この中間利息控除の計算は非常に複雑で専門的な知識を要するため、適切な分与額を算出するためにも弁護士等の専門家へ相談することを強くおすすめします。

公務員の退職金の特殊性

公務員の退職手当は、民間企業の退職金制度とは異なり、国家公務員退職手当法などの法律や条例に基づいて厳格に定められています。支給額は勤続年数や退職理由、職種、号俸といった細かな項目によって決定されるため、計算プロセスが民間よりも複雑になる傾向があります。

また、公務員の場合は退職金だけでなく、共済年金の加入期間に伴う「年金分割」も併せて検討しなければならないケースが多く、退職金と年金をセットにした総合的な財産分与の設計が不可欠です。

退職金を含む老後資金の財産分与と熟年離婚で後悔しないための備えについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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退職金の財産分与を有利に進めるためのポイント

財産開示手続を活用して退職金の存在を明確にする

相手が退職金の存在を隠している・開示しないという場合、裁判所の財産開示手続を利用できる場合もあります。また、弁護士を通じて会社に退職金規程・支給見込み額の照会を行う方法もあります。相手方の勤務先・退職金制度の内容が分からない場合でも、弁護士の調査により判明する場合があります。

相手が財産を隠している疑いがある場合の調査方法や法的な対抗手段については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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離婚後2年以内に財産分与を請求する

財産分与の請求は、離婚が成立した日から2年または5年以内(離婚時期によります。)に行わなければなりません(民法768条3項)。離婚協議の際に「退職金については後で決める」と先送りにしていると、この期間を過ぎてしまう可能性があります。

退職金を含む財産分与については、離婚成立前または離婚と同時に協議することを強くおすすめします。

自分の財産を守りながら離婚を進める方法や隠すことのリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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退職金を含む財産分与で弁護士に依頼するメリット

退職金の財産分与は計算が複雑であり、相手の財産状況の把握・証拠収集・交渉といった多くのステップが必要です。弁護士に依頼することで、適正額の算出、財産開示手続の活用、調停・審判・裁判での主張立証まで一貫して対応できます。

特に相手が弁護士をつけている場合は、こちらも弁護士をつけることで交渉力のバランスを保つことが重要です。

手続きの流れと弁護士費用の相場

手続き

内容

協議による合意

協議で離婚内容を合意→合意書(公正証書)を作成

調停

家庭裁判所離婚調停を申し立てる。

審判・裁判

調停不成立の場合、裁判所が金額・方法を決定

弁護士費用は事務所・事案の複雑さによって異なります。財産分与の着手金は20〜50万円程度が一般的な目安で、離婚時に成功報酬が加算されます。詳細は各事務所の費用ページをご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q:退職金がまだ出ていない場合、離婚時に請求できますか?

A:離婚時に財産分与の対象として主張できる場合があります。弁護士に相談することで適正額の算出、獲得が可能になる場合があります。

Q:退職金の財産分与を相手が拒否した場合はどうすればよいですか?

A:協議が整わない場合、家庭裁判所への財産分与調停の申し立てが可能です。調停でも合意できない場合は審判に移行し、裁判所が金額・方法を決定します。弁護士を代理人として立てることで、交渉・調停を効果的に進められます。

相手が離婚や財産分与に応じない場合の解決策については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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Q:離婚後に退職金が支給された場合、追加で請求できますか?

A:離婚成立から2年または5年以内(離婚時期によって違います。)であれば、財産分与の請求は可能です。ただし離婚時に「退職金については別途協議しない」という清算条項を設けていた場合は請求が困難になります。離婚協議書の内容を必ず確認してください。

Q:年金分割とはどう違いますか?

A:年金分割は厚生年金の保険料納付実績を夫婦間で分割する制度で、将来受け取る年金額に影響します。財産分与(退職金含む)とは別の制度ですが、離婚時には両方を同時に検討する必要があります。年金分割には離婚後2年または5年以内(離婚時期によって違います。)の請求期限があります。

Q:退職金が住宅ローンの返済に使われていた場合は?

A:退職金が住宅購入・ローン返済に充てられた場合、その資産(不動産)が財産分与の対象となります。

Q:相手が退職金の金額を教えてくれない場合はどうすればよいですか?

A:弁護士を通じて相手方の勤務先に退職金規程・支給見込み額の照会ができる場合があります。また、調停・審判の手続きの中で裁判所から相手方の会社に調査嘱託をかけることも可能です。財産の隠蔽が疑われる場合は早めに弁護士に相談してください。

まとめ

退職金は婚姻期間中に積み立てた部分については財産分与の対象です。すでに支給された退職金はもちろん、将来の退職金も対象となる場合があります。

財産分与の請求期限を過ぎると請求できなくなるため、離婚の話し合いを始めた段階から退職金の扱いも同時に検討することが重要です。

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