労災の病院探し方ガイド|指定病院リストと受診の流れを解説
2026年04月06日

労災事故に遭ってしまった際、まず何よりも大切なのは適切な治療を受けることです。
しかし、「どの病院に行けばいいのか」「手続きはどうすればいいのか」と不安に感じる方も少なくありません。
このガイドでは、労災の治療を受ける際に知っておくべき「労災保険指定医療機関」の選び方から、受診の流れ、必要書類、そしてケース別の対処法までを詳しく解説します。
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労災で受診するなら「労災保険指定医療機関」が基本
労災保険指定医療機関とは?
労災保険指定医療機関とは、都道府県の労働局長によって労働者災害補償保険法の定める療養の給付を行う者として保険指定された病院、診療所、あるいは薬局のことを指します。これは、厚生労働省が定める基準を満たし、労災患者の治療を円滑に行うための体制が整っていると認められた医療機関です。
全国には非常に多くの労災保険指定医療機関が存在し、一般的に規模の大きい総合病院だけでなく、皆さんの身近にあるクリニックや、調剤薬局なども含まれています。そのため、もし仕事中や通勤中に怪我をしてしまっても、住んでいる場所や職場の近くで、労災保険を利用して治療を受けられる病院が見つかる可能性は十分にあります。
労災保険指定医療機関を利用する最大のメリットは、治療費の窓口負担がなく、手続きも簡単であることです。怪我や病気で不安な時でも、経済的な心配をせずに必要な医療を受けられるようになります。
「労災病院」との違い
「労災保険指定医療機関」と「労災病院」は、名前は似ていますが運営母体や性格が異なります。
「労災保険指定医療機関」は、都道府県労働局長の指定を受けた一般的な病院や診療所を指します。全国に数万カ所あり、小規模な診療所から総合病院まで多岐にわたります。
一方、「労災病院」は、独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する医療機関で、労働者の健康管理や労災治療を専門としています。全国に32カ所と数が限られているため、地域によっては近くにない場合もあります。
どちらの医療機関でも労災の治療を無償で受けられるため、被災労働者にとっては大きな違いはないとも言えますが、労災保険指定医療機関の方が選択肢が広く、利便性が高い傾向にあります。
労災保険指定医療機関で受診する2つのメリット
治療費の窓口負担(立て替え)がない
労災保険指定医療機関で治療を受ける最大のメリットは、治療費を窓口で一時的に立て替える必要がないことです。労災保険から医療機関へ治療費が直接支払われる「現物給付」の形となるため、経済的な心配なく治療に専念できます。
一方、労災指定以外の病院を受診した場合は、一時的に治療費を全額自己負担し、後日労働基準監督署に請求して還付を受ける手続きが必要になります。
労災申請の手続きが簡単になる
労災保険指定医療機関を受診すると、その後の労災申請手続きが簡素化されます。
必要な書類を労働基準監督署のウェブサイトからダウンロードし、記入したものを治療を受けた病院に提出するだけで、治療費に関する手続きが進められます。
書類の作成や提出に際して、病院側が証明してくれる項目も多いため、被災労働者自身の事務的負担が軽減されます。
労災保険指定医療機関の探し方【全国対応】
厚生労働省の検索ツールを利用する
全国の労災保険指定医療機関を探すには、厚生労働省が提供している「労災保険指定医療機関検索」が非常に便利です。このツールでは、以下の方法で医療機関を検索できます。
医療機関の名称から検索
医療機関名を入力して検索します。複数のキーワードを入力する場合はスペースで区切ります。
所在地から検索
都道府県や市区町村を選択して検索します。労働基準監督署の管轄単位での検索も可能です。
診療科目から検索
希望する診療科目を選択して検索することもできます。
この検索ツールを利用することで、近くの労災指定医療機関の名称、所在地、電話番号などの基本情報を調べることができます。
病院のホームページや窓口で直接確認する
厚生労働省の検索ツール以外にも、医療機関が労災指定病院であるかどうかは、その病院のウェブサイトで確認できる場合があります。
また、直接病院に電話をしたり、窓口で問い合わせたりして確認することも可能です。かかりつけの病院がある場合は、直接問い合わせてみるのが確実です。
労災保険指定医療機関を受診する流れと必要書類
ステップ1:会社に労災があったことを報告する
労災事故が発生したら、まずは速やかに会社に報告し、労災であったことを伝えます。労災保険の申請には事業主の証明が必要となることが多いからです。
ステップ2:病院窓口で「労災」であることを伝え、健康保険証は使わない
労災保険指定医療機関を受診する際は、受付で「労災による受診である」旨を明確に伝えます。
労災の治療には健康保険は適用されないため、健康保険証は使用しないように注意しましょう。誤って健康保険証を使ってしまうと、後から労災への切り替え手続きが必要になり、手間が増える可能性があります。
ステップ3:会社から受け取った必要書類を病院に提出する
労災保険指定医療機関で治療を受ける際には、所定の書類を提出することで治療費の窓口負担がなくなります。主な必要書類は以下の通りです。
- 業務災害の場合: 「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」
- 通勤災害の場合: 「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」
これらの請求書は、労働基準監督署で入手できるほか、厚生労働省のウェブサイトからもダウンロード可能です。
記載例を参考に必要事項を記入し、病院に提出しましょう。初診時に提出できない場合でも、後日提出すれば預り金が返還されることがあります。
【ケース別】労災の病院受診に関するQ&A
Q:労災指定外の病院を受診してしまった場合はどうする?
A:労災指定外の病院を受診した場合でも、労災保険の適用を受けることは可能です。
この場合、被災労働者は一時的に治療費を全額自己負担する必要があります(健康保険は使えません)。その後、以下の書類を労働基準監督署に提出することで、支払った費用を還付請求します。
- 業務災害の場合: 「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」
- 通勤災害の場合: 「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)」
請求には領収書や診療明細書が必要になるため、必ず保管しておきましょう。
Q:間違えて健康保険証を使ってしまったら?
A:もし労災事故で受診した際に、誤って健康保険証を使用してしまった場合は、すぐに病院の窓口に申し出て「労災への切り替え」を依頼してください。
病院が切り替えに応じてくれる場合は、改めて労災保険に基づく療養の給付手続きを進めることになります。
病院での切り替えが難しい場合は、健康保険組合等に連絡し、労災への切り替え手続きを相談する必要があります。
Q:夜間・休日や救急車で指定外病院に搬送された場合は?
A:夜間や休日、あるいは救急車で緊急搬送された場合など、やむを得ず労災指定外の病院で受診することになった場合も、心配する必要はありません。
この場合も、上記「労災指定外の病院を受診してしまった場合」と同様に、一旦治療費を自己負担し、後日、労働基準監督署に療養の費用請求を行うことで還付を受けられます。
Q:別の病院に転院したいときはどうすればいい?
A:労災の治療中に別の病院へ転院することは可能です。
転院の理由は、自宅からの通いやすさ、より専門的な治療を受けたい、治療設備が充実している病院へ移りたい、引っ越しなど様々です。
転院する際には、いくつか準備が必要です。まず、転院先の病院でこれまでの治療を引き継いでもらうため、転院前の病院から紹介状を作成してもらうことが推奨されます。また、会社に転院することを連絡し、必要に応じて労災保険の申請書類に事業主の証明をもらっておくとスムーズです。
転院先の病院が労災指定医療機関か、そうでないかによって提出する書類が変わります。
労災指定病院から別の労災指定病院へ転院する場合
新しい病院に以下の書類を提出します。
- 業務災害の場合: 「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)」
- 通勤災害の場合: 「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)」
労災指定外の病院から労災指定病院へ転院する場合
新しい病院に以下の書類を提出します。
- 業務災害の場合: 「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」
- 通勤災害の場合: 「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」
これにより、転院先の病院では治療費の窓口負担がなくなります。
労災の手続きや会社とのやり取りで困ったら弁護士に相談
会社が労災手続きに協力してくれない
労災事故が発生した場合、会社には労災申請に協力する義務があります。しかし、労災保険料が上がることなどを懸念して、会社が労災申請に非協力的であったり、「労災隠し」を行ったりするケースも残念ながら存在します。
会社が協力してくれない場合でも、労災申請は労働者の権利であり、会社の許可や承認は不要です。このような状況では、労働基準監督署に相談するほか、弁護士に相談することで、必要な証拠収集のアドバイスや、会社との交渉を代行してもらうことができます。
適切な治療や補償が受けられるか不安
労災事故による怪我や病気の治療が適切に行われているか、受けられるはずの補償が正しく受けられるかなど、不安を感じることもあるでしょう。
弁護士は、労災保険給付に関する専門的な知識を持っており、適切な治療や補償が受けられるようにサポートしてくれます。煩雑な申請手続きの代行や、給付内容に関する相談も可能です。
後遺障害が残る可能性があり、将来が心配
労災による怪我や病気が完治せず、後遺障害が残ってしまう可能性もあります。後遺障害が残った場合、その障害の程度に応じて労災保険から「障害(補償)給付」が支給されます。
しかし、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、医師による正確な診断書や労働基準監督署への詳細な申請手続きが必要です。
弁護士に相談することで、適正な後遺障害等級認定が得られるように専門的なアドバイスを受けられたり、認定された等級に不服がある場合の不服申し立て手続きをサポートしてもらえたりします。これにより、将来への経済的な不安を軽減し、適切な補償を受けることが可能になります。
まとめ
労災事故に遭った際、安心して治療に専念するためには、労災保険指定医療機関の活用が非常に重要です。厚生労働省の検索ツールなどを利用して、お住まいや職場の近くにある指定医療機関を事前に調べておくことをお勧めします。
万が一、労災指定外の病院を受診した場合や、会社との間でトラブルが発生した場合は、速やかに労働基準監督署や弁護士に相談し、適切な手続きやサポートを受けることが大切です。
正しい知識と対応で、労災による怪我や病気からの回復、そして安心して社会復帰できるよう努めましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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