詐欺罪の刑罰は軽い?立証は困難?弁護士が解説します。

最終更新日: 2026年04月07日

詐欺罪の刑罰は軽い?立証は困難?弁護士が解説

詐欺罪の刑罰は軽いのでしょうか? ここでは、詐欺罪の罪の重さや立証について、弁護士が解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士

「家族が逮捕された」「示談したい」など、300件以上の刑事事件のご相談に対応してきました。(※2026年3月時点)これまでの実務経験をもとに、法律のポイントを分かりやすく解説しています。

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詐欺罪の法律

詐欺罪の法律詐欺罪の法律についてです。

  • 刑法の条文
  • 刑罰に罰金はなく懲役刑のみ
  • 詐欺に関するその他の法律

刑法の条文

刑法の246条に詐欺罪の下記条文があります。

  1. 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

  2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

第1項は物を交付させる詐欺行為、第2項は代金支払いを免れるなど財産上の利益を得る詐欺行為です。

刑罰に罰金はなく懲役刑のみ

上記条文のとおり、詐欺罪の刑罰には罰金刑はありません。

罰金刑よりも懲役刑の方が重い刑罰ですから、罰金刑の定めがないということは、犯罪の中でも詐欺罪は比較的重い部類の犯罪であることがわかります。

詐欺に関するその他の法律

預金口座の通帳やキャッシュカードの譲渡、譲受は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に違反し、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます(懲役刑と罰金刑の併科もあります。)。

また、他人のクレジットカード情報を利用して電子マネーをチャージするなど、人を騙すのではなく、機械に虚偽の情報等を入力して財産的利益を得る行為は、電子計算機使用詐欺罪として処罰されます。

詐欺罪の構成要件(成立要件)

詐欺罪の構成要件(成立要件)詐欺罪の構成要件は、「人を欺いて財物を交付させる」、つまり人を欺く行為(欺罔行為、ぎもうこうい)によって、被害者を錯誤に陥らせて、被害者に財産的処分行為をさせ、加害者が財産を受領することです。

詐欺行為の定義(意味)、窃盗と詐欺の違い

人を欺く行為(欺罔行為)は、被害者が当該事項について真実を知っていれば財産を交付しなかったであろう重要な事項について虚偽の意思表示をする行為です。

嘘をつけば何でも詐欺行為に該当するのではなく、被害者に財産を処分させるような嘘でなければなりません。

例えば、宝石店で「あっちのお客さんが呼んでますよ」と嘘を言って、店員が離れた隙に宝石を持ち去ったというケースは、詐欺罪ではなく窃盗罪になります。店員に宝石を交付させるような嘘ではないからです。

また、「仕事でミスをしてしまって会社から賠償を求められてるから、100万円を貸して欲しい。来月のボーナスで必ず返すから。」というケース。

相手にとってはお金をちゃんと返してくれるのかどうかが重要ですから、このようなケースでは、本当にボーナスで返す意思があったかどうかについて捜査の重点が置かれます。もちろん、本当に会社から賠償を求められているのかという点も裏付け捜査はなされます。

詐欺罪の故意の立証

詐欺罪の故意は、先ほどご説明した詐欺罪の(客観的)構成要件である、人を欺く行為によって、被害者を錯誤に陥らせて、被害者に財産を処分させ、加害者が財産を受領することの認識、認容です。

詐欺罪の故意を立証するための中心的な捜査は被疑者の取り調べです。犯行態様から詐欺罪の故意があることが争いようのないケースもありますが、被疑者が故意について自白しなければ故意の立証が困難なケースもあります。

例えば、知人からお金を騙し取ろうとしたというケースで、被疑者がお金を返すつもりだったと弁解し、故意を否認する可能性があります。

捜査段階でこのような弁解があったときには、捜査機関は、被害者の供述やその他の証拠を踏まえ、被疑者の自白を獲得しようとします。

また、犯行を認めている場合にも、「嘘がばれたらどうするつもりだったのか」などの質問をして、「その時は逃げるつもりだった」とか、「お金は返せないから刑務所に行けば良いと考えていた」などの供述を調書にして犯意を固めようとします。

なお、この詐欺罪の故意については、オレオレ詐欺の受け子の捜査ではほぼ必ず争点になります。「お金を受け取る仕事とは知らなかった」と被疑者は弁解をするからです。

振り込め詐欺の受け子、出し子

振り込め詐欺の受け子、出し子受け子と出し子についてです。

  • 受け子の詐欺の故意
  • 出し子の詐欺の故意
  • 詐欺に加担した受け子の罪は幇助犯?

受け子の詐欺の故意

オレオレ詐欺で逮捕されるのは、ほとんどが末端の「受け子」、つまり被害者から金銭を受け取る者です。

犯罪組織側の対策によって、逮捕された受け子は、ほぼ例外なく、「重要な書類を受け取る仕事だと聞いていた」と供述します。そのため、受け子の故意の立証が捜査では重要となります。

受け子の詐欺の故意とは、被害者が他の共犯者によって騙されていることを認識、認容し、そのために被害者が金銭を交付していることの認識、認容です。

この点について、普段着ないスーツを着て、偽名を名乗り、高齢者から封筒を受け取って、それによって報酬を得るという犯行状況などから捜査機関は立証しようとします。

確かに、単に重要書類が入った封筒を受け取るだけで数万円も報酬がもらえる健全な仕事があるというのは一般常識に反するので、受け子の上記のような弁解は通用しないと考えるべきでしょう。

また、「覚醒剤などの違法薬物を受け取る仕事と聞いていた」という弁解もあります。

しかし、よほど封筒等の中身が違法薬物であると確信する事情がない限りは、詐欺罪を含む犯罪行為である可能性を想定するのが普通ですから、やはりこのような弁解も通用しないと考えるべきでしょう。

出し子の詐欺の故意

共犯者から指示を受けてATMから預金を引き出す「出し子」も、逮捕されると「預金を引き出してきてくれと頼まれただけだ」と弁解し、詐欺罪の故意を否認します。

しかし、出し子についても、受け子と同様、面識のない人からお金を引き出してくるよう頼まれ、それだけで数万円の報酬が得られる健全な仕事など存在しないことは一般常識から考えて当然です。

そのため、このような出し子の弁解についても、よほど例外的な事情がない限り、受け入れられることはありません。

詐欺に加担した受け子の罪は幇助犯?

ほとんどのオレオレ詐欺の受け子は、犯罪組織の氏名不詳者らと面識がなく、指示されるままに行動する末端の者に過ぎませんので、詐欺を主導している氏名不詳者らの犯行を容易にしている幇助犯に過ぎないと評価されるのではないかとも思えます。

しかし、受け子が担う現金の受け取りは詐欺罪の成否を決する重要な役割です。また、被害者に電話をかけて詐欺行為をする他の共犯者と密接に連携して行動しています。

そのため、受け子の行為は、単に現金を受領したことにとどまらず、一連の詐欺行為に関わり、かつ、犯行を完遂させるために重要かつ不可欠な行為を担っていると評価されます。

よって、受け子であっても幇助犯ではなく共同正犯として立件される可能性が高いといえます。出し子についても同様です。

詐欺の未遂罪

詐欺の未遂罪詐欺罪は未遂も処罰されます。例えば、オレオレ詐欺の被害者が詐欺に気が付き、予め警察に通報して、お金の入っていない封筒を加害者側に受け渡した時点で警察が逮捕した場合、未遂となります。

このように、詐欺罪の未遂は、加害者が欺く行為を開始した時点で成立し、被害者が騙され錯誤に陥ったかどうかは問いません。

詐欺罪の公訴時効

詐欺罪の公訴時効時効の期間については刑事訴訟法に法定刑の重さによって定められています。

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役刑ですから、公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項3号)。

詐欺罪は非親告罪

詐欺罪は非親告罪器物損壊罪など一部の犯罪は法律上、親告罪とされています。親告罪とは被害者の告訴がなければ、検察官が起訴処分とすることができない犯罪です。

詐欺罪についてはこのような親告罪の規定はありませんので、起訴処分とするにあたり被害者の告訴は不要です。

告訴は不要とは言っても、被害者の供述がなければ詐欺罪の立証は困難ですから、被害届を始め、その後の被害者の捜査協力は必須です。

そのため、捜査の初期段階で加害者と被害者との間で示談が成立し、被害者が加害者の処罰を求めないとなったときには、起訴処分とすることは困難でしょう。

詐欺罪で逮捕された場合の流れ

詐欺容疑で逮捕されると警察による身柄拘束と取調べが始まり、身柄解放を実現するためには初動対応の質が非常に重要になります。

なるべく早く弁護士に依頼し、捜査に対して適切な姿勢を示すことが勾留回避や保釈につながります。

逮捕直後の対応と弁護士の役割

逮捕直後は、弁護士が被疑者の供述内容を整理し、取調べの録音・録画の有無、面会禁止の解除申立て、勾留の理由の是非などをチェックします。
黙秘権を含む権利を守ることで、誤った自白を防ぐことができます。

勾留期間が長引く場合には、短縮の可否を検討するとともに、身近な家族とのやり取りを仲介するなど、実務的な支援も行います。
弁護士が捜査段階から動くことで、不利な事情を整理しながら示談交渉にも着手できます。

起訴から判決に至るまでの弁護戦略

起訴後は、検察官の証拠構成を精査し、反省や被害弁償の状況などを整理することで量刑に影響を与える事情を明らかにします。
また、証拠の信用性に疑問がある場合には、争点化の方法を検討します。

被告人と協議した上で、供述方向や証拠の補強に取り組み、示談交渉の進捗や今後の生活再建の見通しなどを裁判所へ提示します。
情状証拠を積み重ねることで、執行猶予の獲得にも繋がります。

詐欺事件の逮捕について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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詐欺罪で実刑判決となるケース

被害金額が高額で被害者が多数に上る、あるいは複数回の詐欺行為を繰り返している場合には、裁判所は懲役刑の実刑選択をする可能性が高くなります。
また、被害者との示談が成立せず反省の態度が乏しいと判断されたとき、実刑判決となる可能性が高くなります。

組織的な犯行や余罪が明らかになっている場合、検察官は重い求刑をし、懲役実刑となる可能性がさらに高まります。
再犯や他の重大犯罪の前科があるケースでも厳しく判断されるため、弁護人はこれらの事情を軽減するための有利な情状の証拠を積み上げる必要があります。

執行猶予が付くケースと条件

初犯であり、被害額が限定的、示談が進んでいる、反省の態度が明確なときには、裁判所は懲役刑に執行猶予を付す場合があります。
被害者への弁償計画や更生への具体的な意志を示すことが重要です。

執行猶予の期間中は保護観察を受けることがあり、違反があれば猶予が取り消される可能性があります。
弁護人は、継続的な反省の姿勢や地域社会での貢献、就労の確保など再犯防止に向けた取り組みを示して支援します。

被害者への賠償と示談交渉

詐欺事件では被害者の損害回復が重要視されるため、加害者側からの誠意ある対応を示すことが弁護戦略として不可欠です。
賠償や示談に丁寧に取り組む姿勢が、情状証拠としても評価されます。

被害額全額の弁償が難しい場合には、分割払いの計画や可能な資力を説明することで示談交渉が進捗する可能性があります。
示談が成立すれば、裁判所が執行猶予や量刑軽減を考慮する材料になり得ます。

示談交渉では謝罪の言葉とともに、再発防止に向けた具体策や今後の生活再建の計画を示すことも大切です。
弁護士が被害者との橋渡し役を務め、合意内容を裁判所に提出して情状に反映させます。

詐欺事件の示談について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。

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詐欺事件の事例

詐欺事件の事例詐欺事件の事例を3例ご紹介します。

転売目的で携帯電話を購入した事例

Aさんは、携帯電話を高額で買い取ってくれるという話を聞き、転売する目的を秘して、携帯ショップで携帯電話機2台を約10万円で購入し、それを30万円で転売しました。

後日、詐欺グループの一味だった購入者が逮捕され、捜査の結果、売主のAさんも逮捕され、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けました。

 

オレオレ詐欺の事例

Bさんは、SNSで高額報酬のアルバイトの募集を見つけました。いわゆるオレオレ詐欺ではないかと疑いましたが、金欠だったBさんは1回だけならバレないだろうと思い、引き受けることにしました。

被害者の息子が仕事でミスをして会社からその補填を求められているというシナリオで、Bさんは被害者の息子が勤務する会社の従業員を装い、被害者から「100万円也」と大きく書かれた封筒を受け取りました。

その途端に、数人の警察官に取り囲まれ、逮捕されました。その後、Bさんは、懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けました。

盗んだカードで買い物をした事例

Cさんは、アルバイト先の更衣室で他人のクレジットカードを盗み、そのカードを使って百貨店で高級腕時計2本(販売代金合計約100万円)を購入しました。

覚えのないカードの使用履歴を見つけた被害者が警察に通報し、警察が百貨店の防犯カメラを捜査した結果、Cさんは犯人として特定され、逮捕されました。

その後、Cさんは、被害者と示談を成立させ、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けました。

まとめ

以上、詐欺罪の法律についてご説明しました。

詐欺罪は被害額が高額であったり、余罪がある場合には初犯でも実刑判決になる可能性があります。

詐欺罪は被害者の財産を侵害する犯罪ですから、被疑者となったときは、弁護士を通じて被害者と示談を成立させることが非常に重要です。

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