詐欺罪での逮捕の種類やその後の流れを専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月21日
- 詐欺罪による逮捕で待ち受けている刑罰とは
- 詐欺罪で逮捕されたあとの流れを知っておきたい
- 詐欺事件での逮捕を回避したいがどうしたらよいのか知りたい
オレオレ詐欺や振り込め詐欺など高齢者を狙った詐欺事件が増加しています。高収入アルバイトの謳い文句にのせられ、現金入り封筒を受け取っただけで逮捕されることもあります。
詐欺罪で逮捕されるとどうなるのか、そもそも詐欺罪とはどのような場合に成立するのか、詐欺罪についてよく知らないという方も多いことでしょう。
そこで今回は、詐欺事件を数多く解決してきた刑事事件専門の弁護士が詐欺罪で逮捕されるとどうなるのか、適用される刑罰や逮捕後の流れ、逮捕を回避するためのポイントについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 詐欺罪の刑罰では罰金刑や禁固刑がなく重い罰則が待っている
- 詐欺罪は現行犯逮捕よりも通常逮捕が多く、時間が経ってからも逮捕される可能性が高い
- まずは詐欺罪での対応実績が豊富な弁護士に相談することが大切
詐欺罪で逮捕されて適用される刑罰・罰則
ここでは詐欺罪に適用される法律と刑罰について解説します。
- 詐欺罪とは
- どのような刑罰を受けるのか?
それぞれ見ていきましょう。
詐欺罪とは?
詐欺罪とは、簡単に言うと被害者にうそをついてお金をだまし取る犯罪です。たとえば、振り込め詐欺などがわかりやすい例でしょう。
詐欺罪が成立するには、
- 相手をだます欺罔行為
- 被害者の錯誤
- 財産処分または財産上の利益の移転
- 因果関係
が必要です。ただ単に人に嘘をついてだましただけでは詐欺罪は成立しません。
ただし詐欺罪は、相手を欺く行為をした時点で未遂罪が成立します。たとえば、振り込め詐欺の場合、被害者がお金を渡す前に詐欺だと気づいてお金を渡さなかったとしても、詐欺未遂罪となります。
どのような刑罰を受けるのか?
詐欺罪の刑罰は、10年以下の懲役刑と定められています。詐欺罪の刑罰には、罰金刑や禁固刑の刑罰がありません。
これはつまり、詐欺罪で起訴されて公判で有罪判決が下されると、執行猶予がつかない限りはそのまま刑務所に収監されることになる重い罰則といえます。
また、パソコンなどに虚偽の情報や不正な指示を送り、他人の財産をだまし取った場合には電子計算機使用詐欺罪が成立します。刑罰は、詐欺罪と同じ10年以下の懲役刑です。
詐欺には、振り込め詐欺に見られるように電話やネットを使用した特殊詐欺から、保険金詐欺、結婚詐欺などが見られます。手口が多様で幅広い犯罪です。
逮捕される詐欺罪の事例・手口
ここでは逮捕される詐欺犯の事例・手口を見ていきます。
- オレオレ詐欺
- 給付金詐欺
- ワンクリック詐欺
それでは1つずつ見ていきましょう。
オレオレ詐欺
逮捕される詐欺犯の事例・手口の1つ目は、オレオレ詐欺です。
オレオレ詐欺とは、親族、警察官、弁護士等を装って、親族が起こした事件や事故に対する示談金等を名目にして金銭をだまし取る行為をいいます。
たとえば、子どもや孫のフリをして高齢者に対し「交通事故を起してしまい示談金がすぐに必要だから援助してほしい」などと言ってだまし、お金を振り込ませたりする詐欺です。
近年では、学生がアルバイト感覚で高齢者に電話したり集金したりと、詐欺事件の末端として関与するケースが増加しています。
たとえ詐欺であることを知らなくても、逮捕されると実刑を含め重い判決が下される可能性もあるので注意が必要です。
給付金詐欺
逮捕される詐欺犯の事例・手口の2つ目は、給付金詐欺です。
給付金詐欺とは、国からの給付金を不正な手段で受け取る詐欺のことです。近年の持続化給付金不正受給詐欺がよい例でしょう。
感染症拡大により持続化給付制度が始まり、給付金不正受給の指南役が支給要件を満たしているかわからない申請者をそそのかし、手数料名目で不正に報酬を得ていた事例です。給付金を不正に受給した申請者が逮捕される事態にまでなりました。
ワンクリック詐欺
逮捕される詐欺犯の事例・手口の3つ目は、ワンクリック詐欺です。
ワンクリック詐欺とは、Webサイトやメールに記載のURLをクリックしただけで、サービスへの入会契約が一方的に結ばれてしまい、不当に高額の料金が請求される詐欺をいいます。
ワンクリック詐欺はアダルト系や出会い系サイトに多く見られる事例です。巧妙な手口で利用者をおびき寄せて多額の料金を請求してきます。
ワンクリック詐欺を行うサイトでは、利用者が間違いやすいように契約する仕組みや、利用規約などをわざとわかりにくい場所に掲示するなどの細工をします。
近年、サイトを作成することは簡単にできます。しかし、気軽な気持ちでサイトを作成したとしても、そのサイトでワンクリック詐欺を行えば詐欺罪に当たるのです。
詐欺罪での逮捕の種類や逮捕までの期間
ここでは詐欺罪で逮捕されるパターンについて解説します。詐欺罪では、現行犯逮捕よりも通常逮捕される事例が比較的多くなっています。
- 現行犯逮捕
- 通常逮捕
それぞれ見ていきましょう。
現行犯逮捕
詐欺罪で逮捕されるパターンの1つ目は、現行犯逮捕です。
現行犯逮捕とは、現に犯行を行っている者または犯行を行い終わった者をその場で逮捕することをいいます(刑事訴訟法212条)。
通常は逮捕するのに裁判官の発する逮捕状を必要としますが、現行犯の場合は、犯人と犯行行為が明白であることから、裁判官の逮捕状は必要ではありません。
現行犯逮捕は、警察官のみならず一般人でもできます。たとえば、オレオレ詐欺でお金を渡した被害者や周囲の目撃者でも犯人を逮捕できるのです。
通常逮捕(後日逮捕)
詐欺罪で逮捕されるパターンの2つ目は、通常逮捕です。
通常逮捕とは、裁判官から発布された逮捕状を取得した警察官などの捜査機関による逮捕をいいます(刑事訴訟法199条)。
通常逮捕をするには、犯罪を犯したと疑うのに十分な理由と犯人の逃亡や証拠隠滅のおそれがなければなりません。
たとえば、詐欺行為の現場ではバレていなかったとしても、詐欺だと気づいた被害者が後日被害届を出すことで、逮捕の必要性が明らかになる場合があります。
また、アルバイトで被害者からキャッシュカードを受け取っただけでも、振込詐欺の共犯として後日逮捕される可能性もあるため注意が必要です。
被害届が出た後、警察において捜査を進め、ある程度証拠が揃った段階で逮捕状をとります。ですから犯行から後日逮捕まではそれなりに期間を要し半年ほど後に逮捕にされるというケースも多くあります。
詐欺罪で逮捕されたあとの流れ
詐欺罪で逮捕されるとその後はどうなるのでしょうか?詐欺罪で逮捕されると、以下の刑事手続きの流れになります。
- 警察による最大48時間の取り調べ
- 検察官による24時間の捜査
- 最長20日の勾留
- 起訴・不起訴の決定
それぞれ見ていきましょう。
警察による最大48時間の取り調べ
詐欺罪で逮捕されると、まず警察による最大48時間の取り調べが行われます。
警察による取り調べでは、警察官が被疑者から事件の内容や状況を聴き取り供述調書を作成します。供述調書は、その後の公判などでも重要な証拠となるものです。
警察での取り調べ時間は、最長48時間になります。警察官は、その期間内に取り調べを終えて事件を検察官に送致しなければなりません。
被疑者は、取り調べの最中は警察署内の留置場などに拘束されます。その期間は、原則として弁護士以外には面会できません。また、携帯品は全て没収されるため、外部と接触をとることもできなくなります。
検察官による24時間の捜査
警察による取り調べの後に検察官による捜査のため、被疑者の事件や証拠を検察官に引き継ぐための送検が行われます。
検察官は、さらに被疑者と面談を行って24時間以内に被疑者を起訴するのか、不起訴にするのか、あるいは釈放するのかを決定します。
24時間の面談だけでは事件の全容がわからないため時間を要する場合は、検察官は裁判官に勾留請求を行います。
検察官が勾留の必要がないと判断すれば、被疑者を釈放して在宅事件に切り替えます。
最長20日の勾留
検察官による24時間の捜査の後は、最長20日の勾留となります。
検察官が勾留請求を行い裁判官がこれを認めると、被疑者は10日間以内の身柄を勾留されます。さらに10日間の延長勾留の請求ができるので、最長20日の勾留になります。
詐欺事件では、組織的な犯罪など事件の全容が複雑な場合が多いため、勾留される期間も必然的に長くなりがちです。
勾留が決定すると、被疑者の身柄は検察庁から警察署の留置場などに戻され、さらに警察官や検察官の取り調べや面談が行われます。
逮捕後72時間が経過すれば、被疑者と家族との面会も可能です。ただし、組織犯罪や証拠隠滅・逃亡のおそれがあるときは、面会が禁止されることもあります。
起訴・不起訴決定
被疑者が勾留されている期間中に、検察官が起訴・不起訴を決定します。
検察官が被疑者を起訴すると、裁判所にて刑事裁判が行われます。起訴した時点で、被疑者は被告人と呼び名が変わります。
通常は、起訴してから約1か月後に1回目の公判が行われます。公判では、被告人の尋問や証拠調べが行われた後に、裁判官の判決が下されるのが通例です。
詐欺罪の罰則は10年以下の懲役刑であるため、罰金刑を科す略式裁判になることはありません。
検察官が被疑者を不起訴とすれば、即日で釈放されて事件が終了します。
詐欺罪での逮捕を解決するには弁護士に相談がおすすめ
詐欺罪での逮捕を解決するには弁護士に相談することをおすすめします。
思わぬことから詐欺行為を行ってしまい、万が一、逮捕されてしまったら、最長で23日間もの間、刑事施設に拘束される可能性があります。
また、起訴されてしまえば公判で判決が下され、10年以下の懲役刑で刑務所に収監される可能性もあります。たとえ初犯であっても、組織的犯行であったり被害額、あるいは事案の悪質性により執行猶予のつかない実刑判決が下されることもあるでしょう。
初動の早い弁護士に相談することで、逮捕の回避に向けた対応、また示談交渉の代行などが可能になります。また、解決するまで弁護士が精神的な支えとなってくれるでしょう。
まとめ
今回は、詐欺事件を数多く解決してきた刑事事件専門の弁護士が詐欺罪で逮捕されるとどうなるのか、適用される刑罰や逮捕後の流れ、逮捕を回避するためのポイントについて解説しました。
詐欺事件では、弁護士の初動が何よりも重要です。実刑判決を避けるためにも、弁護士に相談し被害者と示談交渉を進めたり、反省や再犯防止の意思表示を積極的に行っていくことが必要です。まずは、弁護士に相談することをおすすめします。