ストーカー事件で示談?示談金相場や不起訴の可能性についても解説
最終更新日: 2024年02月15日
- ストーカー事件を何とか穏便に解決したい
- ストーカー行為をしても示談が成立すれば、起訴されないだろうか
- 被害者との示談を目指す場合、弁護士はどのような活動をするのか
ストーカー行為で逮捕され有罪が確定すると、最長で2年の懲役刑を言い渡されるおそれがあります。
実刑判決を受けると、言い渡された刑期が経過するまで、ずっと刑務所に収容されます。加害者本人はもちろん家族にも、大きな影響を及ぼす事態です。
そのため、ストーカー行為で起訴される前に適切な対応をとって、不起訴処分や減刑を目指すべきです。
そのため、まずすべきことは、被害者との「示談」です。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、ストーカー行為に関しての示談金額の相場、示談交渉を行うメリット、示談交渉を弁護士に任せる有効性等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 被害者との示談が成立すれば、その他の事情も考慮したうえで、不起訴となる場合がある
- 示談を加害者本人が働きかけても、被害者が話し合いに応じない可能性が高い
- 示談交渉を弁護士に任せれば、法律の知識や豊富な経験を活かして、示談成立に尽力する
ストーカー事件の示談でおさえるべき基礎知識
ストーカー犯罪は深刻な社会問題となっている、世間の注目度が非常に高い犯罪です。
まずどのような行為がストーカー行為となるのか、一般的なストーカー行為に関する示談金額の相場について解説します。
出典:ストーカー行為等の規制等に関する法律 | e-Gov法令検索
ストーカー行為とは
ストーカー行為とは、特定の人に対する好意の感情、またはその好意がかなわず怨念の感情でつきまとい、まちぶせ、押しかけや無言電話等を繰り返す行為です(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条第4項)。
ストーカー行為として処罰の対象になるのは、つきまとい等を反復して行った場合です。
たとえば、被害者につきまとったのは初めてで、被害者からつきまとい行為をやめるように言われ、以後つきまといを思いとどまったのであれば、ストーカー規制法違反に問われることはありません。
示談金相場
「示談金額は〇〇万円」と、法律で決まっているわけではありません。ただし、ストーカー行為をした場合の示談金の相場は、一般的に30万円〜100万円程度といわれています。
実際には、犯行の悪質性や被害の程度、被害者の処罰感情の大きさ等を考慮し、示談金額を提示する必要があります。
加害者側から示談金を提示しても、被害者がなかなか納得しない可能性もあります。
結果として被害者が同意する金額が、ストーカー規制法で規定している罰金額の上限を上回るケースもあり得るのです。
ストーカー事件で示談交渉するメリット
ストーカー犯罪は非親告罪なので、被害者と示談を成立させても、検察官が起訴する可能性があります。
しかし、早く被害者との示談が成立していれば、不起訴処分や減刑も期待できます。
逮捕回避のメリット
加害者が逮捕前に示談交渉を始めれば、被害者が警察へ被害を申告する前に、示談できる可能性があります。
示談が成立すれば、被害者が警察へ被害を申告しない旨の取り決めができるので、事件化されずに済みます。
また、被害者が警察へ被害を申告しても、加害者がいきなり逮捕されるケースはまずありません。
警察はまず加害者を呼び出し「警告」します。警告後もストーカー行為をやめない場合は、公安委員会から「禁止命令」を受けます。
禁止命令が出た場合、加害者は直接示談交渉できません。弁護士に示談交渉を依頼し、示談成立を目指しましょう。
示談内容に従い加害者が示談金を支払い、以後つきまとい等をしなければ、逮捕されずに済む可能性も出てきます。
不起訴や執行猶予のメリット
逮捕後であっても、示談が成立したときは、不起訴または執行猶予付き判決が期待できます。
加害者が逮捕されても、逮捕前に弁護士に弁護を依頼していれば、逮捕直後から面会が可能です。
弁護士(私選弁護人)とすぐ面会して、警察の取り調べへの対応の仕方や、被害者とどのように示談交渉を進めるかについて説明を聞き相談しましょう。
弁護士の尽力で被害者と示談が成立すれば、検察官は加害者が初犯である点や、深く反省している点、悪質性が軽微である点等を考慮し、不起訴処分を行う可能性があります。
一方、検察官から起訴されても、裁判所は既に示談が成立している事情を踏まえ、執行猶予付き判決を言い渡す可能性もあります。
執行猶予付き判決であれば、たとえ有罪判決でも刑罰の執行を一定期間待ってもらえます。
たとえばストーカー事件で起訴され懲役刑となっても、執行猶予期間中は刑務所に収容されることはありません。自宅へ戻り、従前どおり日常生活を送ることができます。
問題を起こさずに執行猶予期間が経過すれば、刑の言渡しの効力が消滅し(刑法34条の2)、懲役刑は執行されません。
ストーカー事件で示談が困難なケース
ストーカー行為の示談交渉は、必ずうまくいくとは限りません。
こちらでは示談交渉が難しいケースを取り上げ、その対応策について解説します。
禁止命令が出ている場合
禁止命令とは、加害者がつきまとい等または位置情報無承諾取得等をして、更に反復してそれらの行為をするおそれがある場合に、公安委員会が、更に反復して当該行為をしてはならないと命じる措置です(同法第5条)。
この命令は被害者からの申し出により、または公安委員会が職権で行います。
禁止命令を受ければ、加害者本人が直接、示談交渉を進めることはできません。この場合弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者との交渉手続きを進めます。
早期の問題解決を図りたいのであれば、まずは弁護士と相談し、提示する示談条件・示談金額をよく話し合うことが大切です。
出典:ストーカー行為等の規制等に関する法律 | e-Gov法令検索
被害者の処罰感情が強い場合
加害者への処罰感情は、ストーカー被害者によって大きく違います。
「加害者が真摯に反省し、示談金を支払えば許す」と、すぐに示談へ応じる処罰感情が小さい被害者もいれば、「絶対に許すものか!」と強く憤る被害者もいるでしょう。
示談を何とか成立させるためには、被害者の処罰感情も考慮した示談金額の提示が必要です。
ストーカー行為を起こしたときに損壊した被害者の持ち物等を弁償するだけでは、謝罪とはいえません。
しかし、ただ示談金額を高くすればよいというわけでもありません。弁護士を通して被害者へ真摯に謝罪し、処罰感情を和らげてもらうことが大切です。
再犯の場合
加害者が、過去に被害者へストーカー行為をしており、再び同一の被害者に犯行を繰り返した場合は、被害者の処罰感情は一層高いでしょう。
弁護士が示談の申し出を行っても、なかなか話し合いに応じないでしょう。
しかし、弁護士は諦めずに被害者の感情も十分考慮した示談金額を提示し、また加害者が二度と被害者に近づかないこと、嫌がらせを絶対にしないことを確約するとともに、加害者が再犯防止のため必要な治療をしっかり受けることなどをアピールします。
このような決意が被害者にきちんと伝われば、示談に応じるかもしれません。
ストーカー事件で示談を成立させるための重要ポイント
ストーカー被害者との示談を成立させるためには、単に示談金額を支払えばよいというものではありません。真摯に反省し、自分から決して示談交渉の無理強いはしないようにしましょう。
こちらでは示談を行う上での加害者の心がけや、示談のタイミング、交渉を任せる弁護士の選任等について解説します。
冷静な対応を続ける
加害者はすぐにでも被害者と会い弁解したいと思うでしょう。しかし、被害者は度重なるストーカー行為で恐怖心や怒りを覚えている可能性があります。
この状態で直接会っては逆効果であるうえ、禁止命令を受けていれば加害者本人は直接交渉できません。
そのため、加害者本人は被害者に直接会わないようにし、示談交渉はすべて弁護士に任せましょう。その方が、被害者が、話し合いに応じる可能性が高くなります。
被害者の意見に耳を傾ける
示談交渉のときは自分の意思を一方的に伝えるのではなく、被害者の意見にも耳を傾けましょう。
交渉は基本的に弁護士が対応しますので、弁護士から被害者の意見が伝えられます。示談内容を取り決める場合は、被害者の主張をきちんと反映する必要があります。
反省の意思を示す
加害者の反省の意思を弁護士から被害者に伝えてもらいましょう。
単に「ごめんなさい」「二度としない」という文言だけではなく、自分が医療機関で治療し再犯防止を徹底する旨を伝えることも、反省の意思を示す有効な方法です。
早期段階で示談交渉する
被害者が警察へ被害届を出す前に、示談交渉を進めた方がよいです。
禁止命令を受けていない場合でも、弁護士に依頼し示談を進めれば、逮捕・勾留されるリスクを大幅に軽減できます。
ただし、加害者本人は、交渉中や交渉後に被害者に会ったり、連絡を取ったり、メールを送ったりするようなことは、一切行ってはいけません。
専門弁護士へ依頼する
示談交渉は刑事事件に実績のある弁護士に相談・依頼しましょう。実績があるかどうかは、まず法律事務所のホームページでチェックします。
次のような内容が明示されているかを確認しましょう。
- 刑事事件に関する具体的な実績(例:事務所設立から〇〇件)と明記されている
- 相談事例が豊富である
- ストーカー事件をはじめとした刑事事件のトピックがたくさん掲示されている
上記のような内容が記載されていれば、刑事事件に実績が十分ある法律事務所と判断できます。
自分のニーズに合った法律事務所を選んだら、なるべく早く弁護士と相談し対応を協議しましょう。
まとめ
今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、ストーカー被害者との示談方法、示談交渉で弁護士を立てる有効性等について詳しく解説しました。
加害者は示談を成立させることだけを考えるのではなく、被害者への謝罪はもちろん、再犯防止のための治療も必要です。示談が成立したからといって気を緩めるのではなく、同じ過ちを決して繰り返さない決意と行動が必要です。
ストーカー被害者との示談を望むのであれば、速やかに弁護士と相談し、交渉を依頼しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。