誹謗中傷で警察に行くべき?プロが解説する相談先と対処法
2024年11月23日
- 誹謗中傷で困っている。警察に相談すればよいアドバイスがもらえるだろうか?
- 誹謗中傷に関する犯罪を、警察が真剣に捜査してくれるのだろうか?
- 誹謗中傷の問題を解決するには、弁護士に相談した方がよいのだろうか?
名誉毀損等の犯罪に対する相談に対し、警察側は形式的に受け付けます。ただし、犯罪には至らない、私人間の争いと判断される可能性もあるでしょう。
誹謗中傷に関する犯罪の捜査を望むなら、被害者であるあなたが具体的な被害(例:売り上げの減少、社会的な地位が脅かされている等)を、警察に主張しなければいけません。
そこで今回は、誹謗中傷の問題の解決に携わってきた専門弁護士が、誹謗中傷を警察に相談しても捜査されない理由、相談する前に行う必要がある調査や手続き等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 誹謗中傷を警察に相談しても優先度が低く、捜査対象とならない可能性がある
- 警察以外の誹謗中傷に関する相談先はたくさんある
- あなたが誹謗中傷の被害者であれば、警察へ相談する前に専門弁護士と話し合い、対処方法を検討しよう
誹謗中傷は警察に相談にのってもらえる?
ネット上であなたが誹謗中傷を受けた場合は、警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」のオンライン受付窓口から相談が可能です。
SNSやネット掲示板サイトで名誉を毀損された、侮辱行為を受けたという場合、オンラインで気軽に相談ができます。
ただし、名誉毀損の場合、警察への相談から検挙に至った割合はわずか2%未満と言われており、相談しても必ず警察が捜査を開始するとは限りません。
誹謗中傷を警察に相談しても捜査されない理由
相談しても警察が捜査を開始しない理由として、名誉毀損や侮辱にあたる誹謗中傷は「親告罪」だからです。
被害者が警察へ「犯人に処罰を与えたい。」と明確な意思を示さない限り、刑事的な対応が進められません。その他にも、捜査されない理由が存在します。
憲法の「表現の自由」を守るため
憲法に規定された「表現の自由」(憲法第21条)を尊重するため、ネット上での誹謗中傷があっても、警察はすぐに捜査を開始しません。
表現の自由とは、全ての人が国家からの規制を受けずに、自由に意見を発表する権利です。
日本では歴史的に、国家による人々の自由な意見の表明を弾圧してきた経緯があります。その経緯を踏まえ、警察が誹謗中傷の問題へ積極的に動くのは憚られる状況となっています。
優先度が低い
誹謗中傷に関する罪は、殺人罪や傷害罪のような人の生命、身体に重大な影響を与える犯罪といえないためです。
そのため、被害者の損害が明白である犯罪よりも、誹謗中傷の犯罪は優先度が低くなってしまいます。
また、ネット上の誹謗中傷の場合、投稿した人物は匿名の場合が多く、まず誰が投稿したのかを明確にしないと捜査はできません。
誹謗中傷に関する警察以外の相談先
ネット上の誹謗中傷に対して警察だけではなく、官民の相談機関等が相談に対応しています。
誹謗中傷に関する専門の相談員が対応するので、有益なアドバイスを得られるでしょう。
違法・有害情報相談センター(総務省委託事業)
インターネットに関する専門知識を有する相談員が、被害者自身で行う削除対応の方法等をアドバイスするサービスです。
ネット上の誹謗中傷の書き込みで、名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害等に遭った場合、こちらのセンターに相談してみましょう。
また、有名な「バーチャルライバー」が、被害に遭ったときの対処法を動画で紹介するコンテンツ等も用意し、被害者自身で解決を図れるよう、様々な取り組みを行っています。
人権相談(法務省)
ネット上の投稿による名誉毀損や侮辱等、人権に関する相談を受け付ける窓口です。
被害者自身で行う削除依頼方法について、相談員(法務局の職員や人権擁護委員)がアドバイスを行います。
深刻な事案の場合は、法務局がプロバイダ等に対する削除依頼を行います。人権相談は他に、セクハラやパワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめに関する相談も受け付けています。
参考:人権相談|法務省
誹謗中傷ホットライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)
ネット上の誹謗中傷について被害者から連絡を受け付け、国内外のプロバイダ等へ利用規約に従った削除等の対応を促す団体です。ただし、相談対応は行っていません。
誹謗中傷ホットラインに連絡する場合は、次のような流れとなります。
1.誹謗中傷情報の保存:誹謗中傷投稿のスクリーンショット、投稿日時、投稿のURLを保存
2.ホームページにて「誹謗中傷ホットラインに連絡する」ボタンをクリック
3.氏名やメールアドレス、誹謗中傷投稿の説明、当該投稿を特定するための情報(投稿のURL等)について記入
4.「確認する」ボタンをクリック→送信へ
なお、連絡した内容は事務局が厳重に管理します。
参考:誹謗中傷ホットライン|一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)
誹謗中傷を警察へ相談する前にすべき対処法
警察へ相談する前に、誹謗中傷の投稿の拡散を防止するため、削除依頼や投稿者の特定を行いましょう。
法律の専門家である弁護士に依頼すれば、スムーズに様々な対応を図れます。
弁護士への相談
誹謗中傷する投稿を見つけ、どのように対処してよいかわからない場合は、ネット上のトラブルに詳しい弁護士へ相談してみましょう。
あなたのニーズに合った弁護士を選ぶときは、まず法律事務所のホームページにアクセスしましょう。
- ネット上のトラブル解決実績が具体的に明記されている:(例)解決件数累計〇万件等
- 誹謗中傷する投稿に関する相談事例、コラム等が豊富に掲載されている
- 誹謗中傷した加害者への法的措置、刑事責任を追及する手順が明示している
- 弁護士費用の目安が掲載されている
上記の内容がホームページから確認できれば、ネット上のトラブル解決に実績のある法律事務所といえます。
相談を受けた弁護士は、投稿内容を確認したうえで、次のようなアドバイスを提供します。
- 誹謗中傷の投稿がどのような罪にあたるか
- 投稿した加害者を特定する方法
- 削除依頼の方法
- 投稿の拡散防止の方法
- 示談交渉の有効性
- 法的措置を行う場合の手順
- 刑事告訴を行う手順
弁護士と相談し、自分の代わりに様々な措置を任せたいと考えたら、そのまま委任契約を申し出ても構いません。
発信者情報開示請求
警察に相談し刑事告訴を行う場合は、誹謗中傷を投稿した加害者が特定されていなければいけません。
加害者を特定するときは、「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」いずれかの手続きを行いましょう。
いずれもプロバイダ等に、発信者(加害者)氏名・住所・電話番号・メールアドレス等の情報開示を要求する方法です。
開示請求・命令それぞれ次のような特徴があります。
- 発信者情報開示請求:裁判所の関与なしでサイト運営元に任意開示請求が可能。最終的にはプロバイダを相手とし裁判所に、発信者情報開示請求訴訟を提起する(プロバイダ責任制限法第5条)。
- 発信者情報開示命令:最初から裁判所に申し立て、サイト運営元・プロバイダに情報開示を命じる方法(同法第8条)。
開示請求・命令のいずれを選んでも構いません。ただし、開示請求よりも開示命令の方が簡易迅速な手続きなので、スピーディーに加害者の特定が行えます。
削除依頼
誹謗中傷する投稿が拡散されないよう、削除依頼の要求を行いましょう。
自分を誹謗中傷する投稿があるSNSや掲示板サイトの運営側に、削除依頼が可能です(投稿者本人に請求できる場合もある)。
各SNS・掲示板サイト等では削除依頼フォームを用意している場合が多く、そこから申請ができます。
弁護士があなたの代理人として削除依頼を申請した方が、運営側や投稿者本人に大きなプレッシャーを与えられます。
ただし、誹謗中傷の証拠を保全し、投稿した加害者を特定したいならば、発信者情報開示請求・命令の手続きを優先しましょう。
示談交渉
加害者を特定できたら、警察へ相談し刑事告訴する前に、示談交渉を申し込んでも構いません。
刑事告訴をしない代わりに、加害者に誹謗中傷の投稿を削除させ、拡散防止と慰謝料請求を求めます。
加害者は捜査機関に逮捕・起訴される事態を非常におそれているので、示談交渉に応じる可能性があるでしょう。弁護士を交渉役にすると、理性的な話し合いが可能です。
交渉で取り決めた内容は「示談書」(2通作成)に明記し、1通ずつそれぞれが大切に保管します。
裁判
裁判で誹謗中傷の加害者に責任を追及する場合、次の2種類の方法があります。
- 刑事裁判:あなたが警察署に告訴状を提出し、捜査機関が加害者を逮捕・起訴した場合に開かれる裁判。裁判官が被告である加害者を無罪にするか、実刑判決または執行猶予付き判決を下すかについて判断する。
- 民事裁判:あなたが加害者の住所地を管轄する裁判所に、「損害賠償請求訴訟」を提起する。訴えたあなたは原告、加害者は被告となり、互いに主張・立証を行わなければいけない。原告勝訴の場合、被告に損害賠償を命じる判決が言い渡される。
刑事裁判中にあなたが民事裁判を起こしても構いません。弁護士を代理人にすれば、裁判手続きをスムーズに進められます。
誹謗中傷でお悩みなら春田法律事務所にご相談ください
今回は誹謗中傷の問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、誹謗中傷を警察に相談は可能だが、捜査の開始には加害者の特定、証拠の提示等も必要である点を詳しく解説しました。
春田法律事務所は、ネット上の誹謗中傷トラブルの解決に実績豊富な事務所です。まずは気軽に相談予約を行い、誹謗中傷に関する投稿の悩みや不安を、弁護士に打ち明けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。