誹謗中傷の裁判に備える!訴訟の理由・流れ・対応策を詳しく紹介

最終更新日: 2024年11月24日

誹謗中傷の裁判に備える!訴訟の理由・流れ・対応策を詳しく紹介

  • 他人を誹謗中傷して訴えられそうだ。穏便に解決できる方法はないだろうか?
  • 誹謗中傷した加害者に責任を追及したい。対応方法を知りたい。
  • 誹謗中傷の問題を解決するため、弁護士に相談した方がよいだろうか?

誹謗中傷した加害者は、重いペナルティを受ける可能性があります。一方、被害者は何らの対応もとらないと、社会的な信用を大きく損なうかもしれません。

誹謗中傷した加害者も被害者も、重大な事態を招かないため、迅速な対応が求められます。

そこで今回は、誹謗中傷問題に携わってきた専門弁護士が、誹謗中傷で裁判を起こすまでの流れ、裁判を起こすときの重要ポイント等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 誹謗中傷の解決のため裁判を起こすときは、まず加害者を特定する必要がある
  • 誹謗中傷で裁判を起こす前に、証拠の収集に努める必要がある
  • 誹謗中傷の加害者も被害者も、専門弁護士に相談し対応方法を話し合った方がよい

発信者情報開示・削除に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

誹謗中傷で裁判を起こす主な理由

誹謗中傷が原因で、あなたは精神的な苦痛を受ける可能性があります。

また、誹謗中傷を放置すれば、誹謗中傷の内容がどんどん拡散され、あなたの社会的な評価・信用は失われかねません。

誹謗中傷の加害者を特定し、法的措置を求め、刑事責任を追及すれば、誹謗中傷の拡大を阻止し、あなたの社会的な評価・信用の低下を防止できます。

発信者情報開示

ネット上で誹謗中傷された場合は、まず投稿者を特定しなければなりません。

投稿者を特定する方法として、「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」の2つの手続きがあります。

発信者情報開示請求とは、誹謗中傷した投稿者が利用したプロバイダに、投稿者の情報開示を求める手続きです(プロバイダ責任制限法第5条)。

一方、発信者情報開示命令は、裁判手続でサイトの運営元およびプロバイダに対する開示請求を、まとめて行う手続きです(プロバイダ責任制限法第8条)。

出典:プロバイダ責任制限法 | e-Gov法令検索

損害賠償請求

誹謗中傷した投稿者を特定できれば、不法行為を理由として、損害賠償(慰謝料)を請求できます(民法第709条)。

請求方法は次の2つです。

  • 損害賠償(慰謝料)請求の通知:内容証明郵便にする
  • 損害賠償請求訴訟:原則として、投稿者の住所地を管轄する裁判所に訴える

基本的に投稿者へ損害賠償(慰謝料)請求を通知し、無視されたら、裁判所に訴えを提起します。内容証明郵便で通知すれば、投稿者へ請求をしたという証明になります。

通知せずにいきなり損害賠償請求訴訟を提起することも可能です。投稿者の刑事裁判中に民事裁判を起こすこともできます。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

刑事処分

誹謗中傷した投稿者を特定後、あなたは警察署に刑事告訴が可能です。

捜査機関へ犯罪被害の申告をし、投稿者の処罰を求めましょう(告訴状提出)。誹謗中傷がどのように行われたかによって、投稿者が問われる罪は異なります。

  • 名誉毀損罪:公然と事実を摘示し、特定の個人・団体の名誉を毀損する罪(刑法第230条第1項)
  • 侮辱罪:公然と事実を摘示しないが、特定の個人や団体を侮辱する罪(刑法第231条)
  • 脅迫罪:特定の個人やその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えると告知し、脅迫した罪(刑法第222条)
  • 業務妨害罪:偽計や威力を用い、特定の個人や団体の業務を妨害した場合に適用される罪(刑法第233条、第234条)

脅迫罪や業務妨害罪は「非親告罪」のため、捜査機関が脅迫・業務妨害の事実を確認したときは、被害者からの告訴がなくとも、捜査を開始し告訴することが可能です。

誹謗中傷した投稿者が逮捕・起訴され、有罪判決を受ければ、懲役刑や禁錮刑、罰金刑等に処される可能性があります。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

誹謗中傷で裁判を起こすまでの流れ

誹謗中傷による精神的な苦痛からの解放と、社会的な評価・信用の低下防止のため、あなたは迅速に対応する必要があります。

誹謗中傷を発見したときは直ちに情報収集に努め、投稿者を特定しましょう。

証拠収集

まずは次のような誹謗中傷の証拠を揃えましょう。警察署への告訴状提出や、裁判を行うときの重要な証拠となるものです。

  • ネット上の誹謗中傷の場合:スクリーンショットで誹謗中傷の投稿・投稿URL・メッセージ履歴・投稿日時等を保存
  • その他:誹謗中傷の書面や音声・画像・動画等

投稿者に内容証明郵便で送った損害賠償請求の通知も証拠となるので、内容証明郵便の控え・配達証明書も大切に保管しておきましょう。

発信者情報開示請求

ネット上で誹謗中傷する投稿を見つけたときは、発信者情報開示請求・命令の手続きを速やかに進めましょう。

プロバイダのログが消える前に、手続きをしないと、投稿者の特定が不可能になってしまいます。プロバイダのログ保存期間は、通常3〜6か月です。

発信者情報開示請求の手順は、次の通りです。

  • 1.サイトの運営元に任意開示請求:投稿者の特定はこの段階では不可能だが、IPアドレスの開示で投稿者が利用したプロバイダを確認できる
  • 2.サイトの運営元が開示に応じないときは、裁判所に仮処分手続きを申し立て、IPアドレス開示を求める
  • 3.プロバイダが判明後、当該プロバイダに発信者情報開示請求訴訟を提起
  • 4.情報開示により投稿者の氏名・住所・メールアドレス等を確認

一方、発信者情報開示命令は裁判所に申し立て、サイトの運営元とプロバイダへの開示を、まとめて請求する方法です。

  • 1.裁判所に発信者情報開示命令を申し立てる
  • 2.裁判所が申立てを認めたときは、サイトの運営元に「IPアドレス提供命令」、サイトの運営元・プロバイダに発信者情報の消去を禁じた「消去禁止命令」が行われる
  • 3.裁判所がプロバイダに発信者情報開示を命じる
  • 4.情報開示により犯人の氏名・住所・メールアドレス等がわかる

情報開示・命令手続きのどちらで進めるかはあなたの自由です。開示命令の方が1回のみの裁判手続で情報開示が可能なため、迅速に投稿者を特定できます。

示談交渉

示談は、あなたと誹謗中傷をした投稿者が話し合いをして和解する方法です。

誹謗中傷をした投稿者は次のような理由で、あなたに示談を働きかけてくる可能性があります。

  • 被害者との示談が成立すると、逮捕を免れる可能性がある
  • 逮捕されても、検察官が不起訴処分とする可能性がある

名誉毀損罪や侮辱罪は「親告罪」なので、刑事責任を追及するためには被害者の告訴が必要です。示談が成立し被害者が告訴しなければ、捜査機関に逮捕される心配はなくなります。

投稿者が逮捕されても、被害者が告訴を取り下げれば刑事手続は進まず、起訴を回避できるのです。

一方、脅迫罪や業務妨害罪のような非親告罪に問われたときは、示談が成立しても、捜査機関によって逮捕され起訴される場合があります。

ただし、「被害者は加害者の処罰を望まない」旨の条項を入れた「示談書」を提出すれば、検察官が内容を確認し、不起訴処分にする可能性があります。

あなたが告訴をしないことを条件にして、損害賠償(慰謝料)の支払い請求や、投稿の削除・拡散防止の交渉をすることも可能です。

示談交渉では、誹謗中傷をした投稿者の謝罪や投稿の削除・拡散防止に取り組む旨、示談金額(慰謝料)・支払方法・支払期日、被害者が告訴しない(告訴した場合は取り下げる)旨を、取り決めます。

取り決めた内容は示談書(2通作成)に明記し、あなたと投稿者が1通ずつ保管しましょう。

裁判

示談交渉がうまくいかなかった場合は、民事裁判で損害賠償請求をし(民事裁判)、投稿者への処罰を求めることができます(刑事裁判)。

手順は次の通りです。

  • 民事裁判:示談交渉失敗→裁判所に損害賠償請求訴訟を提起
  • 刑事裁判:検察官が起訴処分→裁判所で刑事裁判が行われる

民事裁判では原告(あなた)、被告(投稿者)の主張・立証を総合的に考慮し、原告勝訴または敗訴の判決が言い渡されます。原告が勝訴すれば、裁判所から被告に損害賠償を支払うよう命じられます。

刑事裁判の場合、被告人(投稿者)に下される判決は、次の3つのいずれかです。

  • 無罪判決:被告人を無罪とする判決
  • 実刑判決:被告人を有罪とする刑罰が言い渡され、刑罰が執行される判決
  • 執行猶予付き判決:被告人を有罪とする刑罰が言い渡されるものの、執行が猶予される判決

被告人(投稿者)は判決に不服であれば、上級裁判所へ不服申立てが可能です。

誹謗中傷の裁判に必要な費用

誹謗中傷で裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する場合、かかる費用は主に「訴訟費用」と「弁護士費用」です。

訴訟費用は訴訟の目的価額(賠償額)に応じて異なり、弁護士費用も法律事務所ごとに違いがあります。

訴訟費用

訴訟費用は「裁判所手数料」「郵便切手代」です。

裁判所手数料は、収入印紙で納付します。訴訟の目的価額(賠償額)ごとの手数料は次の通りです。

  • 目的価額(賠償額)が100万円まで:10万円ごとに手数料1,000円
  • 目的価額(賠償額)が500万円まで:20万円ごとに手数料1,000円

たとえば目的価額(賠償額)が70万円の場合、「1,000円×70万円/10万円=手数料7,000円」となります。郵便切手代は裁判所によって異なりますが、6,000円程度です。

弁護士費用

弁護士費用、法律事務所が自由に設定できます。法律事務所間で費用額に大きな差が出る場合もあります。

弁護士費用は主に「着手金」「成功報酬」の2つです。

  • 着手金:弁護士との委任契約時に必ず支払う費用(示談交渉約20万円~、訴訟約30万円~)
  • 成功報酬:示談成立や勝訴したとき支払う費用(得られた利益の20%程度)

その他、実費や弁護士の日当を請求される場合もあります。

誹謗中傷で裁判を起こすときの重要ポイント

誹謗中傷されたあなたが裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する場合、迅速に証拠を揃え、裁判手続を進める必要があります。

スムーズに訴訟提起が行えるよう、法律の専門家である弁護士のサポートを得た方がよいです。

迅速な対応

損害賠償請求訴訟前に被告が誰かを特定しなければなりません。

ネットで誹謗中傷された場合は、投稿者が匿名であれば発信者情報開示請求・命令の手続きを行います。

プロバイダのログ保存期間は3〜6か月なので投稿者の特定を急ぎましょう。

また、損害賠償請求権には時効があります。

  • 損害や加害者を知った時から3年間行使しない
  • 不法行為の時から20年間行使しない

上記の期間が経過すれば、時効によって請求権は消滅します(民法第724条)。

ログ保存期間・損害賠償請求権の時効に気を付けながら、手続きを進めましょう。

個人で対応しない

あなただけの力で発信者情報開示請求・命令・損害賠償請求訴訟の手続きを進めるのは難しい作業です。

申立書や訴状・添付書類は多く、収集に手間取る可能性があります。

家族に協力を頼んでも、法律を熟知していなければ、思うように作業を進められないでしょう。スピーディーに書類収集や手続きを行うためには、法律の専門家である弁護士の協力が必要です。

弁護士への相談

発信者情報開示請求・命令の手続きと、損害賠償請求訴訟の準備を円滑に進めたいのであれば、弁護士に相談しましょう。

弁護士は誹謗中傷の内容を確認し、次のようなアドバイスをします。

  • 開示請求や命令の手順
  • 損害賠償額の算定
  • 必要書類の説明
  • 損害賠償請求訴訟の手順

弁護士に代理人を依頼すれば、開示請求・命令の手続き、訴訟の提起も全て委任できます。

誹謗中傷で裁判を起こされたときの対応策

あなたが誹謗中傷を行い、被害者から裁判を起こされた場合、訴状が送付されてきます。

訴状が自宅に届いたときは、慌てずに対応方法を検討しましょう。なるべく早く弁護士に相談し、アドバイスを受けた方がよいです。

答弁書への記載

まずは訴状の内容を確認しましょう。

同封されている書類は次の通りです。

  • 裁判所からの通知
  • 呼出状
  • 答弁書

答弁書は裁判所用・相手方用の2通を作成します。

原告(誹謗中傷の被害者)の請求を全てまたは一部でも争うときは、答弁書に原告の請求棄却を求める記載が必要です。

その他、訴状で記載されている誹謗中傷の内容が事実と異なる場合、その旨を記載し被告であるあなたの反論も明記しましょう。

提出期限(遅くとも第1回の裁判期日前)までに、答弁書を作成・提出する必要があります。

答弁書を提出しなければ、裁判所から被告側の反論がないとして、原告の主張通りの判決(欠席判決)が言い渡されるおそれがあります。

弁護士への相談

訴状を受け取ったときに、どのように対応すべきかわからない場合、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

弁護士はあなたの事情をヒアリングし、次のようなアドバイスをします。

  • 投稿が誹謗中傷に当たるか
  • 損害賠償額の算定
  • 答弁書の書き方
  • 損害賠償請求訴訟の手順

弁護士に代理人を依頼すれば、裁判での主張・立証も委任できるので安心です。

誹謗中傷での裁判なら春田法律事務所にお任せを

今回は誹謗中傷問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、誹謗中傷で裁判を起こすときの手順やポイント等について詳しく解説しました。

春田法律事務所では、初回相談を無料で行っています。まずは気軽に弁護士と相談し、誹謗中傷の問題をどのように解決していくのか協議しましょう。

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