覚醒剤で逮捕された後の流れとは?問われる罪とすべき対策も徹底解説
最終更新日: 2025年02月23日
- 警察から覚醒剤の所持を疑われているようだ。逮捕されたら自分はどうなってしまうのだろう?
- 覚醒剤を使用した場合、どのような罪になるのだろう?とても気になる。
- 覚醒剤で逮捕されそうなときは、どのような対応をとればよいのか教えてほしい。
覚醒剤は脳神経系へ作用し心身の働きを一時的に活性化させる反面、乱用すると依存を誘発し、中毒症状を起こしかねない危険な薬です。
覚醒剤取締法によって覚醒剤の所持や製造・摂取が厳しく規制されており、同法に違反すると逮捕される可能性があります。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、覚醒剤で逮捕された後の流れ、逮捕後に行わなければならない対策等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 覚醒剤で逮捕された場合も、通常の刑事手続が進められていく
- 覚醒剤の所持や摂取で現行犯逮捕されなくても、通常逮捕や緊急逮捕される可能性はある
- 覚醒剤取締法違反で逮捕されてしまうか不安なときは、速やかに弁護士と相談した方がよい
覚醒剤で逮捕された後の流れ
被疑者が覚醒剤取締法違反で逮捕された場合、警察や検察は通常の刑事手続に従って、事情聴取や証拠品の押収等を進めていきます。
ただし、逮捕後でも検察官が勾留する必要はないと判断した場合、釈放して任意捜査(在宅捜査)になる可能性もあるでしょう。
送検
警察が被疑者を覚醒剤取締法違反で逮捕・留置した場合、48時間以内に検察官へ送検します。
送検前に警察から取り調べを受けますが、送検された後も、検察官から覚醒剤に関する聴取を受けます。
送検後、検察官が「このまま釈放してしまうと、被疑者が覚醒剤の使用や逃亡、証拠隠滅を図るかもしれない」と判断した場合、勾留の継続を決めるでしょう。
その場合、検察官は24時間以内に、留置所へ拘束する「勾留」請求を裁判所に行います。
勾留
裁判所が被疑者の勾留を認めた場合、引き続き留置施設で被疑者の身柄拘束が可能です。
被疑者を勾留する期間は原則10日ですが、最長20日間にも及ぶ場合があります。
勾留期間中、警察や検察が再び被疑者を取り調べたり、覚醒剤等の証拠物の捜索・押収を行ったりします。
起訴・不起訴
覚醒剤に関する捜査を進めたうえで、検察官は被疑者を起訴するか、不起訴にするかを判断します。
- 起訴→刑事裁判に移行する
- 不起訴→被疑者を釈放、被疑者は自宅に戻れる
覚醒剤取締法違反の疑いがある場合、覚醒剤の所持・使用等の証拠が見つかっていると、初犯であっても起訴される可能性が高くなるでしょう。
刑事裁判に移行すると被疑者は「被告人」と呼ばれます。
刑事裁判
検察が起訴(公判請求)を決めた場合、しばらく経ってから被告人のもとに起訴状が送達されます(勾留中は留置場に送達)。
被告人は起訴状に記載された起訴内容をよく確認しておきましょう。起訴からおよそ1〜2週間後に、第1回公判期日のスケジュールが決定されるでしょう。
第1回公判期日は、起訴から約1〜2か月後となる場合がほとんどです。
すでに被告人が覚醒剤取締法違反の事実を認めている場合はば、計2回(第1回公判期日で結審、2回目は判決期日)で裁判は終了するでしょう。
第1回公判期日は次のように進められます。
2.検察官が起訴状を朗読する
3.裁判官から被告人に黙秘権があることを説明
4.罪状認否:起訴状に誤りがあるか否かを、被告人や弁護人に確認する
5.冒頭陳述:検察官が、証拠により被告人の覚醒剤取締法違反を立証しようとする事実を読み上げる
6.証拠調べ:供述調書等の証拠を調べ、被告人等に質問する
7.求刑・弁論:検察官が論告求刑を行い、弁護人は被告人について弁論する
8.結審:裁判官から被告人が意見する機会を与えられた後に結審する
裁判官は公判期日での検察側・弁護側の主張や証拠、事実等を総合的に判断し、判決を言い渡します。
判決
起訴(公判請求)された場合、刑事裁判は公開の法廷で行われます。
裁判官が被告人に言い渡す判決は次のいずれかになるでしょう。
- 無罪判決:無罪を言い渡す
- 実刑判決:有罪となり刑を言い渡され、かつ刑が執行される
- 執行猶予付き判決:有罪となり刑は言い渡されるが、刑の執行を猶予される
公判期日が2回程度の場合は約2〜3か月で裁判は終了となります。しかし、覚醒剤に関して争いのある事件、複雑な事件の場合は、裁判終了までに数年かかる場合もあるでしょう。
なお、判決に不服がある場合は、検察側・弁護側双方とも上級裁判所に対し控訴が可能です。
覚醒剤で逮捕につながる流れ
被疑者が巧妙に覚醒剤の所持や使用を隠そうとしても、いろいろなきっかけで発覚してしまう場合があります。
逮捕につながる主な原因としては「情報提供」「職務質問」があります。
情報提供
被疑者と何らかの関係がある者の情報提供で発覚するケースです。
次のような者からの情報提供が考えられます。
- 被疑者の家族や親族・知人等:被疑者が覚醒剤を使用しているのではと疑い、警察に相談
- 覚醒剤の購入者:購入者が逮捕され、被疑者から買ったと警察に告白
- 覚醒剤の売人:売人が逮捕され、被疑者に覚醒剤を売ったと告白
警察は真偽を確かめるため、被疑者を任意で呼び出す可能性があります。
職務質問
被疑者の関係者や第三者からの情報提供がなくても、警察の職務質問で発覚するケースです。
覚醒剤を最初はでき心で使用しても、使用回数や量はどんどん増えていく可能性があります。
自分の意志では止められず中毒症状となり、幻覚や妄想へ悩まされる状態になるかもしれません。
このような症状が現れている中で外を出歩くと、挙動不審で警察から職務質問される可能性があります。
覚醒剤で逮捕されるパターン
覚醒剤の使用や密売をしなくても、所持しているだけで逮捕される可能性があります。
逮捕されるパターンは、「現行犯逮捕」「通常逮捕」「緊急逮捕」の3種類です。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、犯人が現に犯行中または犯行直後であったときに逮捕する方法です。
たとえば、被疑者が覚醒剤を所持している・使用している・売買している現場で取り押さえ、そのまま逮捕します。
現行犯の場合は逮捕状がなくても逮捕可能です。覚醒剤所持の容疑で逮捕後、更に尿検査等を行い、覚醒剤使用の疑いで逮捕するのが一般的な手順です。
通常逮捕
通常逮捕とは、警察官等が裁判所に被疑者の逮捕状を請求し、当該令状を取得した上で逮捕する一般的な方法です。
たとえば、第三者からの情報提供をもとに、警察が内定捜査を開始し、証拠を掴んだ後、逮捕状をとって、被疑者の元に向かい逮捕するという手順になります。
通常逮捕は被疑者の居所をつかみ、被疑者が在宅している可能性の高い早朝に行われる傾向があります。
なお、逮捕状には有効期間があり、発行日の翌日から7日間有効です。
緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の重大な罪を犯した被疑者に対し、逮捕状を請求する時間がないときに行う逮捕の方法です。
たとえば、覚醒剤に関する指名手配犯を見つけたときに、いちいち逮捕状を請求していたら取り逃す危険性があります。
緊急な逮捕が必要なとき、まずは指名手配犯を拘束した後に、裁判所に逮捕状を請求する手順となります。
覚醒剤の逮捕で問われる罪
覚醒剤の使用や所持・密売をしていた場合は、覚醒剤取締法の規定に従い処罰される可能性があります。
覚醒剤取締法で処罰される行為は、主に次の通りです(懲役刑は2025年6月1日以降、拘禁刑に変更)。
- 覚醒剤をみだりに輸入や輸出し、製造した:1年以上の有期懲役(覚醒剤取締法第41条第1項)
- 覚醒剤を営利目的で輸入や輸出し、製造した:無期もしくは3年以上の懲役に処し、または情状により無期もしくは3年以上の懲役および1,000万円以下の罰金(同法第41条第2項)
- 覚醒剤をみだりに所持、譲渡、譲り受けた:10年以下の懲役(同法第41条の2第1項)
- 覚醒剤を営利目的で所持、譲渡、譲り受けた:1年以上の有期懲役に処し、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(同法第41条の2第2項)
- 覚醒剤を使用した等:10年以下の懲役(同法第41条の3)
覚醒剤取締法違反の罪で逮捕・起訴され、有罪になると、最悪の場合は無期懲役(無期拘禁刑)および1,000万円以下の罰金に処されます。
出典:覚醒剤取締法|e-GOV法令検索
覚醒剤で逮捕された後にすべき対策
覚醒剤取締法違反で逮捕されても、慌てずに今後の対応を検討する必要があります。
逮捕前に弁護士と相談しておけば、有益なアドバイスや逮捕後のサポートが得られるでしょう。
弁護士への相談
覚醒剤取締法違反で逮捕されそうなときは、弁護士に相談すれば、次のようなアドバイスが得られます。
- 覚醒剤に関して警察から呼び出しを受けたときの対応の仕方
- 覚醒剤取締法違反で有罪となれば、どれくらい重い罪に問われるのか
- 逮捕後の取り調べのポイント
- 自首を行う有効性
- 起訴された後の弁護活動の内容 等
相談のうえ逮捕前に私選弁護人を依頼すれば、弁護士は警察・検察への対応や、刑事裁判のときの弁護人として、弁護活動に尽力します。
なお、私選弁護人を依頼する前に逮捕されてしまった場合は、家族から依頼してもらうとよいでしょう。
正直に話す
警察から任意で呼び出された場合も、逮捕された場合も、取り調べでは覚醒剤の所持や使用等を素直に話す必要があります。
警察や検察の取り調べで、質問された内容にしっかりと答えていれば、裁判所は被疑者の姿勢や反省度を考慮し、執行猶予付き判決を言い渡す可能性があります。
もちろん、執行猶予付き判決を受けるには、初犯で常習性がなく更生の余地があること・覚醒剤の所持量がわずかであったこと等諸事情の説明が必要です。
再発防止策の提示
覚醒剤を使用していた本人が、弁護士を通じて再発防止策を提示します。
- 薬物依存の治療を行っている専門病院やクリニックで治療する
- 回復支援施設に入所・通所する
- 精神保健福祉センターや保健所に薬物使用の相談を行う
- 薬物依存症者の自助グループに参加し、ミーティング等を行う
覚醒剤依存からの脱却や生活環境の改善等を行い、社会復帰する意欲を示しましょう。
再発防止策を提示すれば、裁判所から更生の余地があると判断され、減刑や執行猶予付き判決を受ける可能性があります。
覚醒剤で逮捕されたら春田法律事務所までご相談を
今回は多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、覚醒剤で逮捕された後の対処法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は刑事裁判に実績のある法律事務所です。覚醒剤取締法違反で逮捕されそうなときは、今後の対応の仕方について弁護士とよく話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。