テナントの家賃滞納で立ち退きは可能?オーナーが知るべき手順とスムーズな進め方!

最終更新日: 2024年11月15日

テナントの家賃滞納で立ち退きは可能?オーナーが知るべき手順とスムーズな進め方!

  • テナントの家賃滞納に困っているが、立ち退きを要求する方法を知りたい
  • なるべく穏便な方法で立ち退きを要求したいが、立退料を検討した方がよいだろうか?
  • スムーズにテナントの立ち退きを進めたいとき、弁護士に相談した方がよいのだろうか?

家賃滞納が長引くテナントに、立ち退きを要求したいと思っている賃貸オーナーは多いでしょう。

立ち退きを要求するときは、事前にテナントへ家賃支払いを促す働きかけが必要です。

そこで今回は、家賃滞納トラブル解決に実績のある専門弁護士が、テナントへの立ち退き要求の方法、立ち退きを進めるときのポイント等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • テナントの家賃滞納を理由とした立ち退き要求には、事前に支払いを求める通知や催促が必要
  • 立ち退きを強制執行するためには、明け渡し請求訴訟を提起し勝訴する等、様々な手続きを要する
  • テナントに自主的な退去を促すため、オーナーが立退料を支払うのも1つ方法

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

テナントの家賃滞納で立ち退き要求はできる?

テナントの家賃滞納は、賃貸借契約違反になります。しかし、家賃を滞納しているからといって、オーナーの立ち退き要求が認められるわけではありません。

テナントは借地借家法で保護されており、立ち退きさせるためには様々な手続きが必要です。

賃貸契約の基本

賃貸借契約は、一般に契約期間を定めて締結されます。契約期間内である場合は、原則として契約の一方的な解除は認められません。

建物の賃貸借で期間の定めがある場合、契約期間が満了する1年前から6か月前までの間に、契約更新しない旨の通知を行う必要があります(借地借家法第26条)。

遅くとも6か月前までに更新しない旨の通知を行わなければ、同一の条件で契約を更新したとみなされてしまいます。

家賃滞納を理由とした契約の解除も、同様のタイミングで実施されるのが一般的です。

出典:借地借家法 | e-GOV法令検索

3か月以上の滞納で請求可能

オーナーが賃貸借契約解除後に立ち退きを要求しても、必ず要求が認められるとは限りません。

テナントの同意が得られずに裁判で解決を図る場合、通常、3か月以上にわたり家賃を滞納しているかどうかが、立ち退き要求が認められる1つの判断基準となります。

裁判所では、「滞納期間が3か月未満であれば、まだ家賃は支払われる可能性がある」と判断をする傾向があります。

そこで家賃滞納期間が3か月未満の場合は、テナントに家賃の支払いや自主的な退去の説得を試み、滞納期間が3か月以上となってから裁判所に訴えを提起した方がよいでしょう。

テナントの家賃滞納で立ち退き要求するための流れ

テナントが家賃滞納をしている場合は、まずは支払いを促す通知をして、テナント側の反応をみましょう。

テナントが家賃支払いや自主的な退去に応じないときは、最終的には強制執行による解決を図ります。

通知

家賃支払期日に入金を確認できなかった場合、まずは電話やメールでテナントに連絡しましょう。

毎月口座振替で支払われている場合は、仕事が忙しいために入金を忘れただけかもしれません。

連絡後、1週間以上経ってもテナントからの入金が確認できず、連絡もないという場合は「督促状」を送付しましょう。

督促状を送付してもテナント側の反応がないときは、督促状をもう一度送付した方がよいです。

最初に送付する場合の内容は、「入金が確認できないので、指定期日までに家賃を支払ってください」と、シンプルな内容にとどめます。

1か月経っても入金が確認できない場合は、2回目の督促状を送付します。家賃支払い要求の他、連帯保証人や保証会社に連絡する旨も明記しましょう。

2回目の督促状でもテナントが支払いに応じないときは、家賃滞納の事実を連帯保証人や保証会社に通知し、支払いを要求しましょう。

テナントが保証会社を利用している場合は、家賃滞納分を保証会社がすぐ立て替える可能性が高いです。

催促

テナントや連帯保証人が滞納分の家賃支払いを拒否するときは、催告書を内容証明郵便で郵送しましょう。

テナント・連帯保証人双方に催告可能です。催告書には、指定期日までに家賃を支払うべき旨と、期日までに入金が確認できない場合は賃貸借契約を解除し、法的措置を進める旨を明記します。

内容証明郵便は、テナント側に心理的なプレッシャーを与えるとともに、催告をした証明にもなります。

テナント側が賃貸借契約の解除や法的措置をおそれて、滞納分の家賃を支払えば、以後の立ち退き要求は不要です。

契約解除

内容証明郵便を送付しても、テナント側が家賃支払いを拒否し、何らの反応もしない場合は賃貸借契約を解除しましょう。

賃貸借契約を解除するときは、テナント側にその旨を通知します(内容証明郵便で送付する)。

なお、裁判所へ明け渡し訴訟を起こす前に、自主的な退去を促してもよいです。この場合、オーナー側が立退料を支払えば、テナントが立ち退きに応じる可能性もあります。

明け渡し請求訴訟

貸している店舗の所在地を管轄する裁判所に、「明け渡し請求訴訟」を提起しましょう。

裁判では、家賃滞納期間が3か月以上にわたり、何度交渉を試みてもテナント側が家賃支払いを拒否し続ける等のため、すでに信頼関係が崩壊していると判断された場合、オーナーの主張が認められる可能性が高いです。

オーナーが勝訴すれば、判決でテナントに賃貸物件の明け渡しが命じられます。テナント側が判決に不服がある場合は、判決日の翌日から2週間以内に控訴可能です。

強制退去

明け渡しを命じる判決が出ても、テナントが期限内に控訴することもなく、賃貸物件に居座り続けているときは、強制執行によりテナントを退去させましょう。

オーナーが強制執行を申し立て、裁判所が認めたときは、まず裁判所がテナントに催告書を送付します。テナントが催告書の指定期日までに立ち退かないときは、執行官が専門業者とともに店舗に向かい強制執行を開始します。

物件内の什器・備品を全て撤去し空にして、立ち退きは完了です。

テナントの家賃滞納で立ち退き交渉が難しいケース

オーナー側の管理に落ち度があった場合は、テナントとの賃貸借契約の解除や立ち退き要求が認められない可能性もあります。

たとえば、オーナー側の管理の不手際が原因で、テナントが利用中の物件で水漏れが発生し、通常通り使用できなくなったときは、家賃が減額または免除される場合があります。

テナントが物件を利用できない状態になったのであれば、家賃の支払いに応じなくとも、法律的に家賃滞納にはなりません。また、オーナーの立ち退き要求も通らないでしょう。

そのような場合は、オーナーが立退料を支払うか、別の物件を用意する等して、テナント側から何とか立ち退きの同意を得られるよう、働きかけを行う必要があります。

テナントの家賃滞納で立ち退きをスムーズに進めるポイント

テナントの家賃滞納は賃貸借契約違反であり、オーナーには立ち退きを要求する正当な事由があります。

しかし、裁判を起こし強制執行までして立ち退きを実現しようとすると、裁判費用や強制執行費用・弁護士費用等で、オーナーは総額100万円以上を負担しなければなりません。

一方、オーナーとテナントが交渉し、自主的な退去に成功すれば費用は安く済みます。

個別事情への配慮

テナント側が家賃を滞納する理由はいろいろあり得るので、個別の事情を把握して対応することが重要です。たとえば、次のような個別事情には配慮が必要です。

  • お客の利用が激減し、収益が大幅に下がってしまい家賃支払いが難しい
  • 従業員とトラブルが起き、営業できない状況となっている
  • 一時的に売り上げは減ったが、お客が戻ってきているので収益の回復が見込める 等

テナントに家賃滞納の理由を聞ける場合は、個別の事情によっては、家賃の分割払いに応じたり、支払いを猶予したりして、様子を見た方がよい場合もあるでしょう。

書面でやり取り

オーナーとテナントが交渉し、自主的な退去に合意した場合、合意内容を「合意書」として書面化しましょう。

合意書を作成しておけば、どちらかが合意した内容を履行せず、裁判になった場合に証拠として提出できます。

合意書には次の内容を明記しましょう。

  • 合意した当事者の氏名、住所
  • 合意した年月日
  • 合意内容:未払い家賃を免除する旨、立退料の金額、立ち退き期日等
  • 合意内容に違反した場合は法的措置をとる旨 等

合意書は2通作成し、オーナーとテナントが1通ずつ保管します。

立退料の提示

オーナー側が立退料を支払えば、テナントが立ち退きに応じる可能性があります。

たとえば、テナントの資産状態から移転費用すら支払えないケースもありますが、そのような場合は、未払い家賃の免除と引き換えに立ち退きを要求する方法も効果的です。

オーナーからすれば、「家賃滞納をしているテナントに、立退料を支払うなんて納得できない」と思うでしょう。

しかし、立退料を支払ってでも、立ち退きを実現させることができれば、裁判や強制執行を進めるより費用負担を軽減できる場合もあります。

立退料の金額は、当事者が自由に交渉して決めることが可能です。

オーナー都合での立ち退き要求のときは、立退料の目安は月額賃料の2〜3年分程度と言われていますが、家賃滞納はテナントの契約違反なので、立退料を抑えて提示してもよいでしょう。

立退料がテナントの引越し代程度に収まるのであれば、交渉に合意してもオーナー側の大きな損失とはなりません。

弁護士への相談

オーナーがテナントとの交渉に不安を感じるときは、立ち退き交渉に詳しい弁護士と相談してみましょう。

弁護士はオーナーの事情をヒアリングしたうえで、次のようなアドバイスをします。

  • テナントとの交渉のポイント
  • 立退料の決め方
  • 合意書作成の必要性
  • 立ち退き交渉が決裂した場合の対応
  • 弁護士に交渉を依頼する有効性

弁護士に交渉を依頼すれば、テナントと法律に則った理性的な話し合いが可能です。

弁護士が間にたって交渉することで、感情的にならず、双方が納得できる立ち退き条件で合意できる可能性も高まるでしょう。

テナントの家賃滞納で立ち退きをお考えなら春田法律事務所にご相談を

今回は家賃滞納のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、テナントを立ち退かせるためのポイント等について詳しく解説しました。

裁判手続きを経ればテナントの強制退去も可能です。しかし、問題解決が長引く他、強制退去にかかる費用は原則としてオーナーの負担となります。

テナントに自主的な退去を求めた方が、迅速な問題解決になり、費用負担も軽減できるでしょう。

春田法律事務所は、立ち退き交渉に実績豊富な事務所です。テナントの家賃滞納に悩んだときは、できるだけ早く弁護士と相談し対応を協議しましょう。

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