窃盗事件の弁護士費用を知りたい!活動の流れ・見極めポイントも徹底解説!
最終更新日: 2022年08月23日
・「窃盗事件起こし被疑者になってしまった」
・「窃盗事件を起こしたらどうなるのか」
・「弁護士に依頼をしたいのだが費用はいくらかかるのか」
令和2年度犯罪白書の統計によると、令和元年の窃盗事件の認知件数(被害届など警察が犯罪として認知した件数)は53万2,565件、このうち検挙数(被疑者を検挙した件数)は18万97件でした。検挙率は32%、約3人に1人が逮捕されていることになります。
窃盗事件には主に以下の種類のものがあります。
非侵入窃盗 | 万引き、置き引き、自販機ねらい、すり、ひったくり、車上ねらい 部品ねらい、仮睡者ねらい、色情ねらい(下着泥棒含) |
侵入窃盗 | 空き巣、忍び込み、事務所あらし、出店あらし |
乗り物盗 | 自転車、自動車、オートバイ |
窃盗事件といっても、その犯罪内容は様々で、その後の法的手続きが異なってきます。
そこで今回は、多くの窃盗事件を解決に導いてきた実績のある刑事事件専門の弁護士が、 窃盗事件の加害者になってしまった場合に、その後の刑事事件がどうなるのか、弁護士に依頼した場合はどれくらいの費用がかかるのかについて解説します。
窃盗事件を弁護士に依頼する費用を考えるための基礎知識
窃盗事件を弁護士に依頼する費用を考えるとき、以下の基礎知識が必要になります。
- 窃盗罪とは
- 窃盗罪での逮捕と起訴の可能性
- 示談が成立する場合は示談金も必要
それでは具体的に1つずつ解説します。
窃盗罪とは
窃盗罪とは、他人の物を盗む行為を罰する規定です。窃盗罪が成立すると、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます(刑法第235条)。
窃盗行為が常習化し過去10年以内に3回以上、懲役6か月以上の刑の執行を受けた、またはその執行の免除を受けたことがある場合は常習累犯窃盗として刑罰が重くなり、3年以上の有期懲役が科せられます。
窃盗罪は7年で公訴時効となり、この時期をすぎると検察官による起訴ができなくなります(刑事訴訟第250条)。
窃盗には様々な種類がありますが、どれも窃盗罪としての刑罰は同じです。
窃盗罪の初犯で逮捕され受ける刑罰は、執行猶予付きの1年以下の懲役刑、10万から30万の略式の罰金刑となる場合が多い傾向にあります。
初犯であっても被害金額が高額であったり、悪質な犯行手口のときには執行猶予無しの懲役刑など、実刑判決をうける場合もあります。
窃盗罪での逮捕と起訴の可能性
窃盗罪での逮捕と起訴の可能性はどのくらいあるのでしょうか。2020年に警察に認知された窃盗事件のうち逮捕に至ったのは32%です。窃盗で逮捕された後、勾留されたのは85%、さらにこのうちの60%が勾留を延長されています。
窃盗罪で逮捕されると48時間以内に検察庁へ送致されます。
2020年に検察庁で取り扱われた窃盗事件では、不起訴になった事件が58%、起訴された事件が42%でした。
起訴された事件のうち罰金刑の支払いを命じる略式請求が19%、公判請求は81%です。
窃盗の種類ごとに逮捕・起訴される可能性をまとめると次の表のようになります。
窃盗の種類 | 逮捕される可能性 | 起訴される可能性 |
万引き | 逃亡、否認時は高い | 初犯で少額、認めれば微罪処分、起訴猶予で不起訴の可能性が高い |
置引き | 低い | 示談が成立しなければ略式罰金になる可能性が高い |
すり | 極めて高い | 示談が成立しなければ公判請求される可能性が高い |
下着泥棒 | 高い | 示談が成立しなければ公判請求される可能性が高い |
空き巣 | 極めて高い | 示談が成立しなければ公判請求される可能性が高い |
事務所あらし | 余罪が無く金額が数万円以内で自白していれば逮捕の可能性は低い | 示談が成立しない場合、余罪が無く、金額が数万円以内であれば、略式裁判→罰金刑の可能性が高い |
キャッシュカード 不正引き出し | オレオレ詐欺の出し子は逮捕される可能性が極めて高い | オレオレ詐欺の出し子の場合、示談の成否にかかわらず、公判請求される可能性が高い |
窃盗事件を起こして逮捕されるのは、現行犯逮捕と後日逮捕、緊急逮捕の3つです。現行犯逮捕とは、被害者や目撃者が犯人の身柄をその場で拘束する逮捕です。
後日逮捕とは、現場に残された証拠や防犯カメラなどの映像から犯罪捜査を経て逮捕することです。
緊急逮捕は重大事件で逮捕状がなくても逮捕をすることが可能です。
いずれの場合も、逮捕と同時に刑事手続きが始まり、原則10日から最長23日間は身柄を拘束されます。この勾留を決める時間も最短で1日、最長でも3日しかありません。
勾留を阻止するためにも一刻も早い弁護活動が必要になります。
示談が成立する場合は示談金も必要
示談が成立する場合には示談金も必要になります。窃盗で逮捕された被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めるのは検察官です。
その場合に検察官が重要視するのが、示談の有無です。示談金が支払われ被疑者が謝罪、被害者も容認して示談が成立していれば、事件は不起訴になる可能性が高まります。
示談金は法律で金額が決められているわけではありません。示談金は弁護士と被害者の交渉により決定されますが、盗品の賠償金額に迷惑料が含まれた金額が相場とされています。
迷惑料は、単純な万引きや置引き事件でしたら、2万円から3万円が一般的です。また被害金額が大きかったり、捜査のために店が開けられず時間を要した場合などは、20万円から30万円の迷惑料が支払われるケースもあります。
窃盗事件に必要な弁護士費用の内訳と種類と実例
窃盗事件をおこして弁護士に事件の弁護を依頼するときに発生する費用は、逮捕前後、起訴前後などそれぞれの段階で異なります。ここでは費用と、その実例を以下の順番で解説します。
- 弁護士費用の構成
- 窃盗事件の弁護士費用の種類と実例
1つずつ見てみましょう。
弁護士費用の構成
弁護士費用には、主に以下の6つが含まれます。
相談料 | ・事件を弁護士に相談したときにかかる費用 ・相談料の相場は60分あたり1万円 ・相談料を無料にしている弁護士事務所もあり |
着手金 | ・弁護士に何らかの事件の対応を依頼したときに発生する費用 ・窃盗事件では、起訴前と起訴後の2回に分かれて着手金が発生 ・通常の窃盗事件であれば、着手金の相場は起訴前後あわせて 60万円から80万円が相場 ・事件が複雑であったり無罪主張をしたりするような場合は、 起訴前後あわせて100万円以上の着手金が相場 |
報酬金 (成功報酬) | ・事件が解決された場合にかかる費用 ・逮捕後の勾留から釈放された場合は10~20万円 ・起訴前の弁護により不起訴になった場合は30〜40万円 ・起訴され裁判の判決で執行猶予がつくと30〜40万円 ・判決が実刑になった場合でも検察の求刑より2割程度の減刑があれば10〜30万円 ・無罪判決の獲得では100万円以上 |
接見手数料 | ・弁護士が逮捕・勾留されている本人に接見するときにかかる費用。1回の相場は2〜3万円 ・拘置所が遠方などの理由により5万円程度になる場合もあり |
勾留執行停止、取消費用 | ・逮捕後に勾留の執行や取消など勾留を阻止するための弁護活動に別途発生する費用 ・弁護士事務所により着手金なしで不起訴になったときに、不起訴の報酬金として発生するだけの場合もあり ・費用の算出方法は弁護士事務所により異なる |
窃盗事件の弁護士費用の種類と実例
窃盗事件を起こしてしまった場合に早期解決をめざすには、弁護士による弁護活動が必要になりますが、本人がどのような状況に置かれているのかなどによって活動内容も異なり、費用も変動します。窃盗事件後、弁護士に弁護依頼をするとき、本人がおかれている状況は以下の3つに大別できます。
- すでに釈放されている
- 逮捕・勾留されている
- 裁判になった
では、具体的な事例を紹介します。
事例1:すでに釈放されている
1つ目は、すでに釈放されている場合の事例です。
依頼者はパチンコ店で台に置き忘れてあったパチンコのICカードを持ち去り、全額利用してしまいました。その約3か月後、警察から電話があり、防犯カメラからICカードを盗んだことはわかっていると告げられ、出頭を求められました。
逮捕はされませんでしたが被害者と示談をすべく弁護依頼がありました。
ICカードの残高は7千円ほどでした。弁護士が被害者と話し合ったところ、10万円であれば示談に応じるということでした。依頼者も了承したことから示談金10万円を支払い、示談が成立しました。
被害者は被害届を取り下げると警察に伝えたものの、警察はもう捜査は始まっているので書類送検はするということでした。
その後、書類送検はされましたが、検察官からの呼び出しもなく、不起訴処分(起訴猶予)となり本件は解決となっています。
ご請求を再度お考えになる場合は、またご相談ください。この場合においては、着手金として30万円、また示談が成立し不起訴処分となっているため、その成功報酬金として、20万円の費用が必要です。
事例2:逮捕・勾留されている
2つ目は、逮捕・勾留されている場合の事例です。
大学生の依頼者は友人と飲んで街中を歩いていたところ、酔いつぶれて路上で寝ている男性がいたので、友人と一緒に財布を抜き取りました。するとたまたま犯行を現認していた警察官にその場で現行犯逮捕されました。
母親から、息子が勾留されているので助けて欲しいと事務所に依頼がありました。
担当刑事によれば共犯者の友人はすでに逮捕に対しての不服申立てである準抗告が認容され、釈放されていました。
そこで、まずは裁判所に準抗告の申立てをして依頼者を釈放し、その後、被害者と示談交渉をする方針としました。勾留が続けば必修科目を落とし留年が確定する可能性があり、早期釈放の必要がありました。
依頼のあった翌日、裁判所に準抗告の申立てをしたところ、その日のうちに準抗告認容の決定が出て釈放されました。その後、被害者と10万円にて示談が成立し、翌月、不起訴処分となり本件は解決しました。
この場合は着手金として30万円、釈放・勾留短縮の成功報酬金として20万円、示談の成立ならびに不起訴処分の成功報酬金として10万円の費用が必要です。
事例3:裁判になった
3つ目は、裁判になった場合の事例です。
依頼者は執行猶予中にもかかわらず、再び万引きをして現行犯逮捕されました。拒食症のため勾留には身体が耐えられないと判断し、裁判官は検察官の勾留を認めず依頼者を釈放しました。執行猶予中の再犯のため、起訴されれば原則として実刑判決となってしまいます。
再び執行猶予を得るためには、今回の事件以前とは大きく異なる再犯防止、更生のための姿勢、環境を裁判所に示す必要があります。そこで、まずは万引きを専門的に治療する病院に3か月間入院し、退院後は別の医療機関に定期的に通院をしてもらいました。
そして、公判では入院中の治療経過を示し、医師の意見書も証拠として提出したうえで依頼者の更生のためには服役ではなく現在の治療を継続することが必要であると主張しました。
その結果、裁判所は最後のチャンスとして再び執行猶予を認め、依頼者は刑務所に入ることを免れました。
この場合は、まず着手金として30万円、釈放のための成功報酬金として20万円、再度の執行猶予の成功報酬金として50万円の費用が必要です。
窃盗事件で弁護士費用を支払うことに合意したあとの流れ
ここでは実際に窃盗事件を起こしてしまい弁護士に依頼することになった場合に、具体的にどのような手続きとなるのかについて解説します。
1.電話相談:事件の概要を大まかに弁護士に説明します。
弁護士介入の必要がある事件は、来所して詳細を相談することになるので、日程の調整などを行います。弁護士介入の必要がない事件や解決不可能な事件は、この時点で終了します。
電話相談は通常15分程度です。
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2.来所相談:事件の詳細を弁護士に説明し、今後の弁護活動の方針などを話し合います。
本人が勾留されている場合などは、その家族や関係者が来所して面談します。来所時の所要時間は通常1時間くらいです。
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3.依頼:弁護士への依頼を決めたら、弁護士事務所との委任契約が結ばれます。
弁護士が契約内容を説明して契約書に署名捺印をします。身分証明書の持参が必要です。着手金はこの時点で支払うこともでき、後日でも支払い可能です。
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4.弁護活動:依頼を受けた直後から弁護活動が開始します。起訴前であれば早急な弁護活動が不可欠です。
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5.公判:起訴された後は公判における弁護活動の方針を立てていきます。
起訴前と起訴後は弁護活動の内容も異なります。 以下にそれぞれ解説します。
起訴前
1つ目は、起訴前です。
窃盗で逮捕された後は原則10日間から最長23日間、身柄を拘置所に拘束されるリスクがあります。このリスクを最小限に抑えるためにも、逮捕後に検察に送致され勾留が決定する72時間以内に身柄を釈放してもらうための弁護が重要です。そのためにも被害者との示談交渉、警察や検察による取調べに対する対応を弁護士が行ないます。
起訴後
2つ目は、起訴後です。
検察官によって起訴の判断が下された場合には、略式起訴による罰金刑または、公判による懲役刑の処分が判断されます。身柄が拘束されている事件が略式起訴になった場合では、家族または弁護士が罰金を納付することで本人は釈放されます。
公判が行われる場合においては、弁護士は検察官がどのような証拠を公判で提出するのか、証拠を検討したり、その反論となる証拠を集めたりと、公判における弁護方針を立てていきます。公判は1回の審理で終わるものもあれば、1年以上続く場合もあります。
窃盗事件に弁護士費用を払ってでも依頼したい弁護士の見極めポイント
窃盗事件を起こしてしまった場合に、たとえ弁護士費用を払ってでも依頼したい弁護士の見極めポイントは、以下の3つです。
- 即日で動いてくれる
- 担当弁護士の携帯電話の番号を教えてくれる
- 最後まで粘り強く交渉してくれる
それぞれ解説します。
即日で動いてくれる
1つ目は、即日で動いてくれることです。
逮捕から検察送致、勾留まで一刻一秒を争う刑事事件では、何よりもスピードが重要です。
手遅れになる前に弁護士が即日に動いてくれるのか否か、依頼を見極めるうえでの大切なポイントです。
担当弁護士の携帯電話の番号を教えてくれる
2つ目は、担当弁護士の携帯電話の番号を教えてくれることです。
弁護士事務所の敷居は高そうで相談しにくいイメージがありますが、ちょっとした疑問にも対応してくれる環境があるのか否か、また刑事事件という不安に対して法的・心理的にサポートをしてくれるのかを確認することが大切です。
24時間対応と謳っていても電話の折り返しは翌日以降になるということも少なくありません。深夜であっても電話対応に応じてくれて不安へのサポートをしてくれるかは重要なポイントと言えます。
最後まで諦めずに粘り強く交渉してくれる
3つ目は、最後まで諦めずに粘り強く交渉をしてくれることです。
窃盗犯罪で被害者との交渉は難航する場合も多々あります。示談金の交渉でも全く受け付けてくれないときもあります。こうした難しい状況の中でも、交渉の知見や経験をいかして最後まで諦めずに情熱を持って弁護活動を継続してくれるのかどうか、何よりもここが一番大切なポイントとなるでしょう。
まとめ
今回は、窃盗事件の加害者になってしまったときに、その後の刑事事件がどのように進むのか、また弁護士に依頼した場合はどれくらいの費用がかかるのかについて解説しました。
逮捕された後に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めるとき、示談の成立の有無を重要視するといえます。示談交渉は経験のある弁護士に依頼することでその後の刑事手続きがスムーズに進むようになります。
示談金は法律で定められておらず、被害者の立場を考えて支払うことが重要ですが、加害者の家族や親族が交渉を行うと、なかなかうまくすすみません。ここはやはり示談交渉の経験と知見をもった弁護士に依頼するのが、事件解決への最も近道となることでしょう。
窃盗事件の加害者となってしまったときは、できる限り早期に刑事事件専門の弁護士に相談してください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。