トレントで「試しにダウンロード」しても著作権侵害になる?― 開示請求が届いたときの注意点と対処法を解説
2025年11月28日

トレント(Torrent)などのファイル共有ソフトを使い、「少しだけ試した」「すぐ削除したから大丈夫だろう」と思ってダウンロードした結果、後日プロバイダから「発信者情報開示請求に関する意見照会書」が届いた――。
こうしたケースは近年増えています。
結論から言えば、たとえ“試しにダウンロードしただけ”であっても、その過程で著作権侵害行為(特にアップロード)が発生していれば、法的な責任を問われる可能性が高いのが実情です。
この記事では、
- 「試しにダウンロード」でもなぜ“ばれる”のか
- 開示請求が届いたときの正しい対応方法
- 弁護士に相談すべき理由
について、わかりやすく解説します。
「試しにダウンロード」でも“ばれる”理由と法的責任
ダウンロードと同時にアップロードが行われる仕組み
トレントのようなP2P(ピア・ツー・ピア)型のファイル共有ソフトは、ファイルをダウンロードすると同時に他のユーザーへデータを送信(アップロード)する仕組みになっています。
日本の著作権法では、著作権者の許諾なく著作物を公衆送信する行為(アップロード)は著作権侵害にあたります。
そのため、「自分はダウンロードしただけ」と思っていても、実際にはアップロードが自動的に行われており、著作権侵害が成立している可能性が高いのです。
また、権利者側はトレント上で流通するファイルを監視し、アップロードの記録(IPアドレスやポート番号、日時など)をログとして保存しています。
このログをもとに、裁判所を通じてプロバイダに発信者情報開示請求を行い、契約者を特定します。
つまり、「試しに少しだけ」「削除したから大丈夫」という言い訳は、法的には通用しないということです。
開示請求が届いたときに注意すべき対応
プロバイダから意見照会書(開示請求に関する通知)が届いた場合、たとえ行為が軽微でも、絶対に放置してはいけません。
開示請求は、権利者側があなたを法的に特定しようとしている正式な手続きだからです。
請求内容を正確に確認する
意見照会書には、以下のような情報が記載されています。
- 対象となる著作物のタイトル
- 指摘された行為の日時・IPアドレス
- 開示を求めている理由(著作権侵害の疑い)
まずは、これらの内容を正確に読み取り、自分がどのような行為で指摘されているのかを把握することが重要です。
不明点があれば、早い段階で専門家に確認することをおすすめします。
弁護士への早期相談が重要な理由
「試しにやっただけ」と軽く考え、個人で判断して回答書を出したり、期限を過ぎてしまったりすると、後の交渉で不利になるおそれがあります。
弁護士に相談すれば、
- 開示に「同意すべきか」「拒否すべきか」
- 拒否する場合、どんな法的根拠を示せるか
- もし開示が避けられない場合、どのように示談を進めるか
といった対応方針を的確に立ててもらえます。
また、弁護士が代理人となることで、著作権者側との直接のやり取りを避けられるため、精神的負担も大幅に軽減されます。
よくある状況と対応例
例:「試しに1回だけ」のつもりが開示請求に発展
20代の男性会社員は、人気漫画を「トレントで少しだけ試してみよう」と思い、数本だけダウンロードしました。すぐに削除したため問題ないと思っていましたが、1年以上経ったある日、プロバイダから発信者情報開示請求の意見照会書が届きました。
最初は「自分は軽い気持ちでやっただけ」と放置しようとしましたが、不安になって弁護士に相談。たとえ直ぐに削除した場合であっても権利侵害が成立してしまうことがあることを理解しました。
弁護士が著作権者側代理人と交渉し、30万円の示談金で示談が成立。刑事告訴も見送られ、短期間で示談が成立しました。
例:「アップロードしていないのに…」という誤解
50代の男性会社員は、AV作品を「試しに1本だけ」ダウンロード。本人は「アップロードはしていない」と思っていましたが、実際にはトレントの仕組みにより、ダウンロード時に自動的に一部データが共有(アップロード)されていました。
その後、プロバイダから開示請求の通知が届き、弁護士に相談。権利侵害が成立することを理解し、示談交渉を依頼。
弁護士が著作権者側に対し交渉を行い、和解金50万円で示談成立。本人は「知らないうちにアップロードされていた」と深く反省し、以後トレントソフトを完全に削除しました。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
よくある質問(FAQ)
Q:「すぐ削除した」場合でも責任を問われますか?
A:はい、問われる可能性があります。
著作権侵害は「アップロードが行われた時点」で成立するため、後から削除しても責任は消えません。
削除の事実は裁判において賠償額を減らす材料になることはありますが、法的免責の理由にはなりません。
Q:「ダウンロードだけ」でアップロードはしていませんが?
A:トレントの仕組み上、ダウンロードと同時に断片的なデータが自動的にアップロードされています。
そのため、利用者が「アップロードしたつもりがない」としても、技術的には送信行為が発生しています。
権利者側はこのアップロードログを根拠に請求を行います。
Q:家族に知られずに対応できますか?
A:弁護士に依頼すれば、著作権者側からの連絡はすべて弁護士宛になります。
自宅に直接通知が届くことを防げるほか、プロバイダへの回答書作成も秘密保持に配慮した形で行うことが可能です。
まとめ
トレントを使って「少し試しにダウンロードしただけ」という行為でも、著作権侵害が成立するリスクがあります。
トレントはダウンロードと同時にアップロードが行われる仕組みのため、本人の意図に関係なく違法行為とみなされるケースが多いのです。
プロバイダから意見照会書が届いたら、
- 絶対に放置せず、内容を正確に把握する
- 早めに弁護士へ相談し、最善の対応策を立てる
ことが重要です。
弁護士に依頼することで、法的リスクの最小化・示談金の減額・刑事告訴の回避が可能になるケースもあります。
「試しにやっただけ」と軽視せず、早い段階で専門家に相談することが、トラブルを最小限に抑える最善の方法です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





