盗撮すると後日逮捕される?問われる罪・絶対に避けるべき行為と対策を徹底解説
最終更新日: 2025年02月21日
- 自分の欲望に負け盗撮をしてしまった。後日逮捕されるリスクはあるのだろうか?
- 盗撮で逮捕されると、どのような刑罰に処されるのだろうか?
- 盗撮で逮捕されない方法があるなら、是非教えてほしい。
暴力や詐術を用いない行為であっても、盗撮は自身の歪んだ欲望を満たす卑劣な犯罪です。
たとえ現行犯で逮捕されなくても、後日逮捕(通常逮捕)される可能性があります。
盗撮して、画像や動画を不特定多数に提供すれば、最悪の場合は5年の拘禁刑と500万円の罰金刑を併科されるおそれもあるのです。
そこで今回は、刑事問題に携わってきた専門弁護士が、盗撮で逮捕された場合に問われる罪、後日逮捕されないための対策等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 盗撮により現行犯で逮捕されなくても、防犯カメラや目撃者の通報等で逮捕に至る場合がある
- 盗撮に関する罪(撮影罪)で処罰される場合、重い刑罰を受ける可能性がある
- 盗撮して後日逮捕されそうになったときは、速やかに弁護士と相談しよう
盗撮で後日逮捕される可能性
盗撮は現行犯で逮捕される場合が多いですが、時間が経ってから犯人が特定され、後日逮捕される場合もあります。
「盗撮は現行犯でなければ逮捕されない」という考えは、安易な思い込みに過ぎません。
後日逮捕とは
後日逮捕は通常逮捕とも呼ばれます。
被疑者(盗撮犯)を逮捕する場合、次の要件を満たす必要があります(刑事訴訟法第199条)。
- 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある
- 裁判官が逮捕状を発した
後日逮捕するときは逮捕状を所持した警察官が、被疑者の自宅や居所を訪問し、身柄拘束後に警察署まで連行します。
逮捕される可能性
現行犯で逮捕されなくても、最長5年間は逮捕される可能性があります。
なぜなら、盗撮を処罰する法律である「性的姿態撮影等処罰法」は、最長5年の拘禁刑を定めているからです。
刑事訴訟法は、長期10年未満の拘禁刑に当たる罪の時効期間は5年と定めています(刑事訴訟法第250条第2項)
盗撮による後日逮捕で問われる罪
後日逮捕された場合、撮影罪・迷惑防止条例違反・軽犯罪法違反に問われる可能性があります。
また、盗撮した画像や動画を不特定多数に提供した事実が発覚すれば、より重く処罰されるでしょう。
撮影罪
「撮影罪」は、2023年7月に新設された盗撮を処罰する罪で、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」に規定されています。
撮影罪は非親告罪のため、被害者からの被害届や告訴状がなくても、警察が捜査に乗り出すケースがあります。
次のような行為は、拘禁刑や罰金刑に処される可能性がある行為です。
- 勝手に人の性的な部位(性器や肛門、乳首)や下着等を撮影した、撮影データを提供した:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(同法第2条、第3条第1項)
- 盗撮画像や動画を不特定多数に提供した等:5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金または併科(同法第3条第2項)
- 盗撮画像や動画を提供するため保管した:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(同法第4条)
- 盗撮画像や動画の消去命令違反:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第43条)
- 盗撮の事実を隠した等:50万円以下の罰金(同法第44条)
迷惑防止条例違反
盗撮は公衆に著しく迷惑をかける行為として、地方自治体の「迷惑防止条例」違反に該当する可能性があります。
迷惑防止条例は47都道府県全てで制定されています。条例違反行為は、被害者からの刑事告訴がなくても公訴の提起が可能です。
常習的に盗撮行為をすれば、迷惑防止条例違反として、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される場合もあります。
軽犯罪法違反
正当な理由がないにもかかわらず、浴場やトイレ等を盗撮したときは、「ひそかにのぞき見た者」に該当し軽犯罪法違反となる可能性もあります(軽犯罪法第1条23号)。
有罪となれば1日〜30日未満の拘留または1,000円〜1万円未満の科料が科される可能性があります。
盗撮で後日逮捕される主なケース
たとえ盗撮した相手に気づかれなかったとしても、防犯カメラの映像や目撃者からの通報で、後日逮捕されるおそれがあります。
犯人の所持品やデジタル機器から盗撮した画像や動画が発見されれば、決定的な証拠となるでしょう。
防犯カメラ
防犯カメラでとらえられた盗撮の様子が、盗撮犯特定の重要な手がかりとなり、後日逮捕されるケースです。
次のような不特定多数の人が行き交う場所には、多数の防犯カメラが設置されています。
- コンビニ
- 駅構内
- 家電量販店
- ショッピングモール、デパート
- パチンコ店
- 公園 等
防犯カメラが設置されていない場所を事前に確認して盗撮に及んだと思っても、路上や店舗の防犯カメラに犯行が映り込んでいる可能性もあります。
目撃者
盗撮された被害者が盗撮に気づいていない、または関わるのが嫌でその場を立ち去ったとしても、盗撮の様子を目撃していた第三者が警察に申告するケースです。
盗撮犯は盗撮する相手ばかりを意識し、周囲の人達から目撃されている状況に気づかない場合が多いでしょう。
盗撮犯の不審な行動や盗撮している模様をスマートフォン等で撮影しておけば、重要な証拠となります。
目撃証言や提出された証拠の映像、更には防犯カメラから盗撮犯が特定され、後日逮捕に至る可能性があります。
盗撮映像の発見
目撃証言や防犯カメラ等から盗撮犯を割り出し、所持品やデジタル機器から盗撮した画像や動画が発見されれば、動かぬ証拠となるでしょう。
また、次のようなケースでも後日逮捕となる可能性があります。
- 別件で押収したスマートフォンやカメラ等から、盗撮画像や動画が見つかった
- 警察官から不審な行動を疑われ、職務質問や所持品検査を受けたときに、盗撮画像や動画が見つかった 等
盗撮の後日逮捕に繋がる証拠
後日逮捕の決定的な証拠となるのは、盗撮の動画や画像です。
その他にも物的証拠や移動履歴等も証拠の1つとなります。
動画・画像
被害者を盗撮した動画や画像が発見できれば、重要な証拠となるでしょう。
同意なく全裸や性行為の撮影、スカートの下から下着をのぞきみる動画や画像の他、次のような記録が残っていれば犯行について特定しやすくなります。
- 動画や画像を撮影した日時
- (スマートフォンでの撮影の場合)位置情報 等
カメラ・スマートフォン本体
盗撮した動画や画像データだけでなく、撮影に利用したカメラ・スマートフォン本体も、犯行の証拠となり得るでしょう。
盗撮した動画や画像データが逮捕をおそれすでに消去されていたとしても、犯行に使用したスマートフォンさえあれば、専門的な解析により復元できる場合があります。
また、隠しカメラ自体が証拠となる可能性があります。
トイレ・更衣室等に設置するタイプのカメラは、設置時に犯人が映り込んでいる場合や、カメラに付着した指紋から盗撮犯を特定できる場合があるからです。
物的証拠
犯行現場に残った物的証拠も、盗撮犯を特定する手がかりとなります。
- 盗撮が発覚し逃亡中に落とした身元を特定できる物品(身分証等)
- 犯行に使用した鞄や靴に盗撮用の不自然な穴がある 等
ただし、物的証拠だけでは犯行の有力な証拠とならない場合があります。盗撮した動画や画像等と併せて、犯行が認定されることになるでしょう。
移動履歴
盗撮が駅構内で行われたときは、ICカード乗車証の履歴も証拠の1つです。
利用時間や移動の履歴を調べれば、犯行の特定に役立ちます。ただし、ICカード乗車証の履歴だけでは、「たまたま盗撮現場にいただけだ」と反論される可能性があります。
監視カメラの映像や盗撮動画や画像等と併せて、盗撮犯の特定を目指すことになるでしょう。
盗撮による後日逮捕後の流れ
盗撮犯(被疑者)が後日逮捕された場合、警察や検察から事情聴取を受け、証拠物も押収されます。
検察官が正式起訴(公判請求)を行った場合、刑事裁判が開かれます。
送致
警察が被疑者を逮捕し事情聴取した後、留置の必要性を判断した場合は、被疑者を48時間以内に検察官へ送致します。
検察庁に送られた被疑者は、検察官からの事情聴取を受けなければなりません。事情聴取後、検察官は次のような決定を行うでしょう。
- 警察の留置施設や拘置所に引き続き拘束する必要がある→24時間以内に裁判所へ被疑者の勾留を請求
- 被疑者を勾留する必要はないと判断→釈放して任意捜査(警察署等に出頭を求め捜査する方法)を行う
勾留
裁判所が勾留請求を認めた場合、被疑者は最長20日間にわたり留置施設や拘置所へ勾留されてしまいます。
勾留中に次のような捜査活動が進められることでしょう。
- 被疑者が警察官や検察官から、更に事情聴取を受ける
- 警察官や検察官が、被害者からも詳しく事情聴取や実況見分等を行う
- 証拠となる盗撮画像や動画等の収集
検察官は被疑者の言い分や被害者の主張、目撃者の証言や証拠の内容を確認し、起訴・不起訴を判断します。
起訴・不起訴
検察官が被疑者を不起訴とした場合、被疑者に前科は付かず、すぐに釈放されるので自宅へ戻っても構いません。
一方で検察官が起訴を決めたときは、次のどちらかの方法で起訴されます。
- 略式起訴:正式な裁判を経ず、書面の審理のみで罰金または科料を科す手続き
- 正式起訴(公判請求):裁判所に対し法廷での審理を求める手続き
正式起訴(公判請求)が行われると、裁判所で刑事裁判が開かれます。
裁判
被疑者は「被告人」と呼ばれ、刑事裁判に出廷しなければなりません。
裁判は一般に公開され、被告人や弁護人、検察官の主張を聴き、審理が進められます。
裁判官は一切の主張や証拠、事実等を総合的に考慮したうえで、次のいずれかの判決を言い渡すでしょう。
- 無罪判決:被告人を無罪とする判決
- 実刑判決:被告人を有罪とし、刑罰を言い渡しかつ刑罰が執行される判決
- 執行猶予付き判決:被告人を有罪とし、刑罰を言い渡すが刑罰の執行は猶予する判決
判決に不服があるときは上級裁判所へ不服申立ても可能です。
盗撮による後日逮捕時に絶対に避けるべき行為
後日逮捕される場合、次のような行動は絶対に避けましょう。
- 逮捕のとき激しく抵抗する→公務執行妨害の疑いで、現行犯逮捕される可能性がある
- 盗撮画像や動画データを消去する→警察や検察から証拠隠滅を疑われ、罪が重くなる可能性がある
後日逮捕されても、動揺せずに警察や検察の指示に従い、冷静に事情聴取を受け、証拠を提出しましょう。
盗撮で後日逮捕されないための対策
後日逮捕されるかどうか不安な場合は、速やかに弁護士と相談し対応を協議しましょう。
盗撮について自首し、被害者との示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性もあります。
弁護士への相談
弁護士と相談すれば有益なアドバイスが得られます。
- 相談者の行為が撮影罪に当たるかどうか
- 想定される刑罰
- 被害者と示談を行う必要性
- 逮捕された場合の対応
- 撮影罪で起訴された場合のリスク 等
なお、逮捕前に弁護士に依頼しておけば、私選弁護人として警察・検察への弁護活動や、被害者との示談交渉も委任できます。
自首
警察に自首すれば、後日逮捕されるリスクを軽減できる可能性があります。
自首とは、警察や検察から盗撮行為の発覚または犯人が特定される前に、自分が盗撮した事実を申告し、処分に服する意思表示です。
自首すれば、警察や検察に対し、逃亡・罪証隠滅のおそれはないと示せるので、逮捕を回避できる場合があります。
自分だけで自首するのが不安なときは、弁護士の同行も可能です。弁護士が同行するメリットは次の通りです。
- 弁護士から警察に対し、逃亡や罪証隠滅はしないと、説得力を持って説明できる
- 警察による事情聴取のときも、弁護士が待機し、返答に困ったときは助言を受けられる
- 弁護士がいるので、警察が激しい口調で問い詰めるリスクの軽減や、不利な供述調書への署名も避けられる
示談交渉
被害者との示談交渉を成功させる必要があります。
ほとんどの場合、盗撮の被害者とは面識がないでしょう。しかし、被害者が被害届や告訴状を警察署に提出している場合、被害者に連絡がとれる可能性はあります。
警察や検察に被害者と示談交渉をしたいと伝えましょう。警察や検察が被害者の意向確認を行い、被害者が交渉に応じれば示談を進められます。
弁護士を交渉役にすれば、被害者は交渉に応じるかもしれません。
示談交渉では弁護士と被害者が交渉し、次のような内容を取り決めます。
- 加害者は被害者に誠心誠意謝罪し、二度と盗撮行為をしない
- 示談金額、支払方法、支払期限
- 被害者は被害届や告訴状を取り下げる
- 被害者がら検察官あてに「嘆願書(寛大な処分を望む書面)」を提出する
- 加害者と被害者は以後、今回の問題を蒸し返さない
示談がまとまったときは、示談書を2通作成し、加害者・被害者が1通ずつ大切に保管しておきます。
撮影罪は非親告罪であるため、示談が成立しても、不起訴処分をするかどうかは検察官次第です。
ただし、初犯または前科1犯程度の場合は、盗撮画像・動画を不特定多数に提供した事実がなければ、不起訴処分となる可能性があります。
盗撮の後日逮捕でお困りのときは春田法律事務所まで
今回は刑事事件の示談交渉に尽力してきた専門弁護士が、盗撮で後日逮捕されないための対応方法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は刑事事件に関する示談交渉、裁判に実績豊富な法律事務所です。撮影罪で逮捕されそうなときは、対応方法を弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。