盗撮事件における被害届と慰謝料請求について

盗撮事件における被害届と慰謝料請求について

2020年02月19日

1 はじめに

盗撮事件の被害にあったときは、被疑者を捕まえてもらう、刑事処罰をしてもらうために被害者は警察に被害届を出すことが通常です。

そして、被疑者に対しては、刑事処罰だけでなく、盗撮事件で被った精神的苦痛に対する慰謝料の支払いも求めたいと考える被害者も多くおられます。

今回は、盗撮事件における被害届と慰謝料の請求についてご説明します。

2 盗撮事件における被害届の出し方

盗撮の犯人を現行犯逮捕したときは、逃げられないように周りの通行人や駅員、店員に応援を求めつつ、すぐに110番通報をします。

万一、犯人に逃げられてしまったときは、直ぐに犯行現場の最寄りの交番又は警察署に行って、盗撮の被害にあったことを申告しましょう。

被害申告をすると、警察官から、いつ、どこで、誰に、どのように盗撮をされたのか詳しく事情を聴取され、「被害届」にその内容の記入を求められます。

当日は用事があって警察署に行くことができないような場合もあるでしょう。しかし、事件発生から数週間も経ってしまうと防犯カメラ映像など重要な証拠が失われてしまう可能性が高まります。その場合、捜査のしようがないということで被害届を受け付けてもらえないことがあります。

ですから、被害届は原則として事件当日に出すことが重要です。

なお、被害届と似て非なるものに告訴状があります。被害届は単に盗撮事件という犯罪の発生を捜査機関に申告するだけですが、告訴状はその申告に加えて、加害者の刑事処罰を求める意思表示が含まれ、刑事手続における扱いも異なってきます。

3 盗撮事件で慰謝料を支払ってもらうには被害届を出すべき

被害届は、盗撮事件という犯罪が発生したことを警察に届けるものです。他方、慰謝料とは、盗撮行為という違法行為によって精神的苦痛を被ったことへの損害賠償です。

ですから、慰謝料と被害届は法的には何ら関連性はありません。つまり被害届を出さなくても法的には慰謝料の請求をすることはできます。

もっとも、加害者から慰謝料を支払ってもらう可能性を高めるためには被害届を出すべきです。

なぜなら、慰謝料を請求するためには請求する相手方が盗撮行為をしたことの証拠が必要ですが、被害届を出せば、捜査機関が加害者捜しや証拠の収集をしてくれるからです。

また、被害届を出せば加害者は最終的に起訴処分となり刑事罰を受けることになりますし、加害者が逮捕されているケースでは示談が成立しない限り釈放されない場合もあります。そのため、被害届を出せば、起訴処分となって刑事罰を受けて前科がつくことを避けるために、また逮捕されている場合には早期に釈放されるために、加害者が示談金として慰謝料を支払ってくる可能性が高まるのです。

加害者によっては示談金(慰謝料)を支払うから被害届は出さないで欲しいと懇願してくる方もいるかもしれません。そのような場合直ぐに支払ってくれるのであれば良いのですが、話し合いが長引くとその間に防犯カメラ映像などの証拠が失われ、後日、被害届を出すことが困難になりかねません。

ですから、そのような加害者の求めがあった場合には即日、翌日に示談金(慰謝料)の支払いがないときは被害届を出すべきでしょう。

被害届を出した場合、加害者に弁護士が付けば、通常、加害者の弁護士から示談交渉の申し入れがなされます。その示談交渉のなかで示談金(慰謝料)の金額についての話し合いがなされ、折り合いがつけば示談成立となり、慰謝料が支払われます。

他方、加害者から示談交渉の申し入れがないときは、民事で慰謝料を請求する必要があります。その場合は、被害者も弁護士に依頼して請求していくこととなります。

4 盗撮事件で被害届を出すデメリット

被害届を出すと、警察の捜査に協力することになります。具体的には、被害にあったときの状況などを事情聴取され、その供述調書を作成することに協力し、現場検証にも立ち会うこともあります。

このように被害届を出すと多くの時間を費やす必要があるというデメリットがあります。

また、加害者が捕まったときは、盗撮された画像、動画データを捜査員に見られることになるという心理的負担もあります。

5 盗撮事件において被害者に支払われる示談金(慰謝料)の相場

示談交渉の結果、加害者から被害者に支払われる金銭を示談金といいます。この示談金の内容は、被害者が盗撮事件から受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。なお、盗撮事件が原因で職場を休むことになった場合の休業損害についての損害賠償が含まれることもあります。

慰謝料とは被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。精神的苦痛は主観的なもので被害者以外の他人がその程度を客観的に量ることは困難です。

そのため、当該被害者が受けている精神的苦痛をお金に換算するといくらになるかと評価することは不可能ですから、被害者の年齢、盗撮行為の態様、被害者が心療内科に通院するようになったという事情、精神的ショックで会社や学校を休むことになった事情などの外部から見える客観的事情から精神的苦痛の大きさを推し量ることになります。

もっとも、これらの事情について各被害者によって多少の違いはありますが、よほど特殊な事情がない限りは、盗撮事件の慰謝料は概ね10万円から30万円ほどになります。
日本では慰謝料は思いのほか低く評価されるのです。

6 最後に

以上、盗撮事件における被害届と慰謝料の請求についてご説明しました。
盗撮事件の被疑者になったので被害者との示談交渉をお考えの方は、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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