盗撮犯を恐喝する「盗撮ハンター」への対応について

最終更新日: 2021年07月08日

はじめに

マスコミで「盗撮ハンター」という言葉を聞くことが増えました。盗撮ハンターの被害者自身も盗撮という犯罪行為をしていることから、盗撮ハンターから受けた被害を警察に申告することが難しいという特性があります。

そのような特性上、盗撮ハンターの犯行は表沙汰になりにくく、更に盗撮ハンターが増えていった結果、一部の盗撮ハンターの犯行について被害申告されるようになり、盗撮ハンターの犯行が表沙汰になるようになったものと考えられます。

我々弁護士も、盗撮ハンターに「示談金」の一部として数十万円を支払ったけれども、残金を支払わないと警察に通報されてしまうのかと相談を受けることはしばしばあります。

今回はこのような盗撮ハンターについて、その対処法も含めてご説明いたします。

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盗撮ハンターとは

盗撮ハンターとは、駅や街中でスマートフォンや小型カメラで女性のスカートの中を盗撮している人を捕まえて、被害者や警察に通報されたくなければお金を払うように脅して、盗撮犯にお金を払わせる人をいいます。

盗撮ハンターは、盗撮事件が多発する駅の階段、エスカレーター付近に張り込んで、盗撮犯が現れるのを待ちます。そして、いざ盗撮犯を見つけると声をかけ、盗撮を目撃したことを伝え、警察や被害者に言われたくなければ、口止め料を払うよう求めてきます。

実際には、「被害届を出されたくなければ、示談金を払え」と述べる盗撮ハンターが多いようです。盗撮ハンター自身は被害者ではありませんから被害届を出す立場にはありませんし、何ら被害を被っていないのですから示談金の支払いを受ける立場にもありません。

しかし「被害届」「示談金」という言葉を使うことで、あたかも被害者側の人間であるというような印象を与えられる、またそのような言葉を使う方が、犯罪行為をしたという盗撮犯の心理に付け込みやすいといったお金を取りやすくする狙いがあるようです。

そして、盗撮ハンターが要求してくる「示談金」は20万円~50万円、多い場合は100万円の場合もあります。その場で、財布にあるお金を出させて、会社の名刺や運転免許証の写真を撮られ、後日残金を支払うよう約束させたり、そのまま近くのATMやローンセンターで現金を用意させる場合もあります。

盗撮は都道府県の迷惑防止条例違反などに該当する犯罪行為ですから、盗撮犯を捕まえる行動自体は何ら悪くありませんが、以下ご説明しますとおり、たとえ相手が犯罪者であったとしても、それとは関係なく盗撮ハンターの行為もまた恐喝罪という犯罪行為に該当するのです。

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恐喝罪について

刑法第249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と規定しています。そして、「恐喝」とは、相手に対して、その反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加えて、財物の交付を要求することをいいます。

そして、この脅迫は、相手方を畏怖させるような害悪の告知をいい、告知する害悪の内容に制限はありません。

盗撮ハンターは恐喝罪に該当するのか

では、盗撮犯に対して、被害者や警察に通報されたくなかったらお金を出すよう脅す行為は、恐喝罪を構成する脅迫行為に該当するのでしょうか。

最高裁判所は次のとおり判示しています。
「恐喝罪において、脅迫の内容をなす害悪の実現は、必ずしもそれ自体違法であることを要するものではないのであるから、他人の犯罪事実を知る者が、これを捜査官憲に申告すること自体は、もとより違法でなくても、これをたねにして、犯罪事実を捜査官憲に申告するもののように申し向けて他人を畏怖させ、口止料として金品を提供させることが、恐喝罪となることはいうまでもない。」(最高裁判所刑事判例集8巻4号407頁)

このように盗撮犯に対して、盗撮したことを被害者や警察に通報されたくなかったらお金を出すよう脅す行為も恐喝罪を構成する脅迫行為に該当します。

盗撮ハンターに恐喝された場合の対応

盗撮ハンターに脅された場合の対応は、相手にしない、お金を一切払わないということに尽きます。

盗撮という犯罪行為をしてしまった手前、盗撮ハンターの言うとおりにしなければ、警察に逮捕されたり、会社や家族に盗撮をしたことが露見してしまうのではないかと心配になります。

しかし、盗撮ハンターの目的はお金を取ることにあり、盗撮犯を警察に通報するという正義の実現にあるわけではありません。警察に通報しても盗撮ハンターにとっては一円の得にもならないのです。

また、盗撮ハンターは、職業的に繰り返し恐喝行為をしていますので、1件失敗しても次に行けばよいことから、1件の回収に執拗に労力をかけることはしませんし、そのように1件に拘ることで自身の犯行が警察に露見してしまうことを恐れます。

盗撮ハンターに脅されている時は、恐怖のあまりこのように冷静に考えることは難しいかもしれませんが、「示談金」の一部を払ってしまった後に更に残金の支払いを求

められているような場合には、弁護士に相談をして冷静な対応をとりましょう。

根本的な対策としては、このような盗撮ハンターの被害に遭わないために犯罪行為である盗撮はやめましょう。

最後に

盗撮ハンターは何ら被害を受けた者ではありません。彼らに「示談金」を支払ったところで、現に盗撮の被害を受けた被害者に対しては何らの償いにもなりません。

もし盗撮ハンターに遭遇してしまったときには、正々堂々、自身の犯行を認め、被害者にきちんと謝罪と賠償をしたいから、是非警察に通報してもらいたいと言い返すくらいのことをしたいところですが、そこまでの対応をできる方はなかなかいないかもしれません。

盗撮ハンターから恐喝されている、盗撮をやめられないという方は刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

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