トレントで請求されたら裁判にすべき?専門弁護士が徹底解説!

2022年06月08日

トレントで請求されたら裁判にすべき?専門弁護士が徹底解説!

  • 発信者情報開示請求の意見照会書が届いたけど同意した方がいいの?
  • 身に覚えがないけど裁判で争って勝てるの?
  • 多額の損害賠償を請求されたけど裁判にした方がいいの?

近年、トレント(BitTorrent)を利用して著作権者から訴えられるケースが増えています。多くのユーザーは個人的に作品を楽しんでいただけなのに、ある日突然、訴えられて驚き、不安を覚えています。初めてのことでどのように対応するべきか分からなくて当然です。

今回は、トレントを利用して著作権者から訴えられた場合に、裁判にするべきなのかについて、訴えられるまでの流れから対応方法、裁判例についても専門弁護士が徹底解説します。

この記事を監修したのは

春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

トレントを利用して裁判をされる理由

まずは、トレントを利用したらなぜ訴えられるのか、トレントの仕組みから確認していきましょう。

  • トレントの仕組み
  • 著作権侵害になる理由

トレントの仕組み

トレント(BitTorrent)は、中央サーバーを介さず、P2P方式でネットワーク参加者同士でファイルを共有するクライアントソフトです。BitTorrent以外にもユーザーの多いクライアントソフトとしてμTorrentなどがあります。

例えば、ある作品をダウンロードする場合、多数のネットワーク参加者からそれぞれファイルの一部を送信してもらい、最終的にその作品の100%のデータを取得します。

こうしてファイルをダウンロードすると、今度は自分もその保有するファイルを、他のネットワーク参加者から要求があればいつでも自動的に送信する(アップロード)するようになります。

以上がトレントの仕組みの概要です。多くのユーザーはダウンロードするという意識はありますが、アップロードしているという意識はありません。

トレントを利用して訴えられるのは、このアップロード行為、作品のデータを送信可能な状態に置く行為が著作権侵害となるからです。

著作権侵害になる理由

誤解してはいけないのは、トレント自体は何ら違法なツールではないということです。トレントを利用して、アダルトビデオやアニメ、音楽などの著作権で保護された作品をダウンロードし、アップロードすることが違法となるのです。

作品を公衆に送信する権利は著作権者にあります。これを公衆送信権(送信可能化権)といいます(著作権法23条)。そのため、著作権者の許可を得ることなく作品をアップロードする行為は、著作権を侵害する違法行為となります。

先ほどご説明しましたとおり、多くのトレントユーザ―はアップロードしているということを自覚しておらず、知らず知らずのうちに著作権侵害をしてしまっているのです。

なお、一部のクライアントソフトは、利用開始にあたって、アップロードすることになる点を説明していますが、多くのユーザーは読み飛ばして同意ボタンをクリックしてしまっているようです。

(公衆送信権等)
第二十三条 著作権者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作権者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

トレント利用者への開示請求の裁判

以上のとおり、トレントを利用して作品をダウンロードすると著作権を侵害することになります。権利侵害を知った著作権者は、権利侵害者を特定する手続きを取ります。ここでは、その手続きと取るべき対応についてご説明します。

開示請求の裁判で取りべき対応について
  1. 発信者情報開示請求
  2. 情報開示は拒否して裁判にすべき?
  3. 拒否した場合は原則裁判に

発信者情報開示請求

著作権侵害の事実を知ると、損害賠償請求や刑事告訴をするために著作権者は権利侵害者を特定します。最近は、P2PFINDERなどのP2Pネットワークの監視システムを利用して、著作権侵害を探知し、権利侵害をしたIPアドレスが特定されることが多くなっています。

権利侵害者のIPアドレスを特定すると、次はそのIPアドレスを割り当てたプロバイダに対して、そのIPアドレスを割り当てた契約者の氏名や住所の開示を求めます。これを発信者情報開示請求といいます。

情報開示は拒否して裁判にすべき?

発信者情報開示を受けたプロバイダは、個人情報を開示しても良いか契約者にその意見を確認します(プロバイダ責任制限法第4条2項)。これが「発信者情報開示請求に係る意見照会書」です。

意見照会書に対する対応は、当該作品をダウンロードしたのが間違いなければ情報開示に同意するのが得策です。拒否をしても裁判で開示される可能性が高く、しかも裁判をされるとそれに要した弁護士費用全額の賠償まで求められることになるからです。

一方、ダウンロードした記憶がない、ダウンロードは絶対にしていないという場合には情報開示を拒否する選択を検討することになります。

しかし、著作権侵害を否定する主張をするだけでは裁判に負けてしまいます。タイムスタンプの日時にパソコンを利用していなかったのであればそのアリバイが必要になりますし、VPNでIPアドレスが偽装されたと主張するのであればそのことの証拠が必要となります。

このような証拠を提出できない場合には、情報開示に同意してできる限り和解金額を下げる交渉をするのが得策です。

拒否した場合は原則裁判に

情報開示を拒否した場合、それを踏まえてプロバイダは情報開示をするかどうか判断します。

安易に情報開示をすればかえってプロバイダが契約者から訴えられるリスクがありますので、契約者が情報開示を拒否した場合には原則として、プロバイダは請求者に情報開示はしません。

そのため、請求者は発信者情報開示を求めてプロバイダに対して裁判を起こします。

裁判を起こした場合、判決まで進むケースもあれば、裁判所の心証開示を受け任意にプロバイダが情報開示をするケースもあります。いずれにしても裁判を起こせば多くのケースで発信者情報は開示されます。

なお、請求者がIPアドレスを特定した根拠として、裁判所もその信用性を認めるP2Pネットワークの監視システム「P2PFINDER」を挙げる場合には、情報開示を認めるプロバイダもあります。

トレント利用者への損害賠償請求の裁判

発信者情報開示請求を経て権利侵害者の氏名や住所を特定すると、いよいよ著作権者は損害賠償請求をしてきます。

ここでは、損害賠償の金額や損害賠償請求に対して和解と裁判いずれを選択すべきかについてご説明します。

損害賠償の金額

損害賠償請求の内容は著作権侵害をしたことによって失われた利益、調査費用、弁護士費用です。先ほどもご説明しましたとおり、情報開示を拒否して裁判を起こされた場合にはその裁判に要した弁護士費用の全額も請求されます。

著作権侵害によって失われた利益については、著作権法第114条1項に推定規定があります。これによると、ダウンロード回数×販売利益という計算式によって損害賠償額が算出されます。なお、ダウンロード回数×販売価格という計算で過大な請求をしてくる著作権者もいます。

このように計算されますので、請求金額は数百万円、数千万円、場合によっては1億円以上と高額になります。

和解すべき?裁判にすべき?

著作権者は自身に有利な解釈をして最大限に大きい金額を請求してきますが、それがそのまま裁判でも認められるということではありません。先ほどの計算式でいえば、ダウンロード回数、販売利益いずれも一義的ではなく解釈の余地があるケースが多くあります。

そのため、請求を受けた側としては裁判所がどのような解釈をするか見通しをつけ、勝算がある場合には強い姿勢で交渉をして最大限の減額を求めていくべきです。

そして、著作権者が十分な譲歩をしない場合で、裁判にしてもらった方が弁護士費用を考慮しても支払金額が少なくなるという場合には、和解はせずに裁判にするべきでしょう。

トレントに関わる裁判例

最後に、トレントに関わる裁判例をいくつか見ておきましょう。

トレントの仕組みを説明する裁判例

まずは、東京地裁令和3年1月26日判決(令和2年(ワ)20960号)です。トレントの仕組みについて分かりやすく説明していますので、ご一読ください。

「ビットトレントにおいては、中央サーバーを介さず、個々の使用者の間で相互に直接ファイルが共有される。すなわち、ビットトレントにおいて、特定のファイルを入手した使用者は、ピアとしてファイルの提供者の一覧であるトラッカーに登録され、他の使用者から要求を受けた場合には、自己の使用する端末に保存した当該ファイルを送信して提供しなければならない。

具体的には、特定のファイルをダウンロードし、自己の端末に保存すると、当該端末の電源が入っていてインターネットに接続されている限り、当該ファイルの送信を要求した不特定の者に対し、当該端末に保存された当該ファイルを自動的に送信する状態となる。

ビットトレントにおいて特定のファイルを得ようとする場合には、インデックスサイトと
呼ばれるウェブサイトに接続して、当該ファイルのトレントファイルを入手する。そして、
トレントファイルに含まれるリンクからトラッカーを管理するサーバーに接続して、当該ファイルの提供者であるピアのアイ・ピー・アドレスを入手し、これに接続して、当該ピアから、当該ピアが使用する端末に保存した当該ファイルの送信を受ける。」

アップロードについて過失を認める裁判例

次に、知財高裁令和4年4月20日判決(令和3年(ネ)10074号)です。

裁判所は、著作物を正当な権利者からダウンロードしているわけではないことは当然に認識し得るのだから、トレントを利用するにあたっては違法行為をしないよう慎重になるべきで、雑誌やインターネットに掲載された記事からトレントの仕組みを容易に知ることができることからすれば、ダウンロードしたファイルを送信可能化したことについて少なくとも過失があると判断しました。

このように、アップロードされるとは知らなかったという主張は通らないと考えるべきです。

損害額を大幅に減額した裁判例

上記と同じ知財高裁令和4年4月20日判決(令和3年(ネ)10074号)です。

多数の権利侵害者を当事者とする訴訟で、著作権者は数千万円から1億円を超える損害賠償を主張していました。損害額はダウンロード回数×販売価格という計算式で算出されます。

裁判所は、ダウンロード回数について、権利侵害者が著作物のファイルをダウンロードした日からトレントの利用を停止した日(プロバイダから意見照会を受けた日)までの期間のダウンロード回数と判断しました。また、販売価格についてはDVDやBlu-rayではなく、ダウンロード又はストリーミング形式の販売価格と判断しました。

その結果、各権利侵害者が賠償すべき金額は1万円から5万円ほどという結論となりました。

まとめ

以上、トレントを利用して著作権者から訴えられた場合に、裁判にするべきなのかについて、訴えられるまでの流れから対応方法、裁判例についても解説しました。

プロバイダから意見照会書が届いた時点で、裁判にすべきなのか、示談とすべきなのか判断をして対応をしていく必要があります。

意見照会書が届いたら、一日でも早く当事務所の専門弁護士に無料でご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

この記事を監修したのは

春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

インターネットの記事一覧へ戻る