横領罪と窃盗罪の違いや逮捕・示談について専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月26日

横領罪と窃盗罪の違いや逮捕・示談について専門弁護士が解説

  • 会社のお金を使いこんでしまって、警察が動いている。
  • パチンコ店に落ちていた財布を拾ったら、窃盗罪だと言われて警察から呼び出しが来ている。

自分が支配している他人の財物を、自分のほしいままにしてしまった場合の罪状について、刑法は横領罪という刑罰をもって処罰しています。しかしながら、横領罪だと思っていたら、窃盗罪が成立すると言われる事案もよくあります。
特に、軽い占有離脱物横領罪だと思っていたのに、重い窃盗罪で捜査される事例も少なくないのです。

そこで、ここでは、一般人の感覚からはわかりにくい横領罪と窃盗罪の違いについて解説しながら、これら罪状に触れる行為に関する弁護士の活動内容について詳しく説明していきます。
早速、見ていきましょう。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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横領罪と窃盗罪の違い

横領罪と窃盗罪、いずれも自分の物ではない他人の財物をほしいままにする犯罪である点において共通していますが、実際には区別が容易ではないこともあります。
そこでまずは、横領罪と窃盗罪について簡単に説明し、両罪の違いについても解説していきます。

  • 横領罪について
  • 窃盗と何が違うのか
  • 横領と窃盗をどのようにして区別しているのか

横領罪について

実は、一言に「横領」と言っても、

  • 単純横領罪(刑法252条1項)
  • 占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)(刑法254条)
  • 業務上横領罪(刑法253条)

の3つに分けられます。
法定刑としては、占有離脱物横領罪が1年以下の懲役又は10万円以下の罰金と最も軽く、単純横領罪は5年以下の懲役のみ、業務上横領罪が10年以下の懲役のみと最も重く処罰されています。

いずれにしても横領罪が成立しうる場面としては、被害品を誰かに預けている状態や、どこかに落としてしまっている状態であるなど、財物の所有者は、物理的に被害品を「所持」しているわけではありません。

他方、横領を行う立場の者からみれば、当該被害品は、自分の「所有物」ではないけれども、目の前にある被害品を支配しているのは自分自身であり、盗もうと思えば、盗むことができる状況にあります。これを実際に盗んでしまうことを「横領」と言います。

窃盗と何が違うのか

これに対し、窃盗は、他人の占有を侵害して、被害品を盗む行為を言います。つまり、他人が「所持」している被害品を、その意思に反して盗むことが窃盗になるのです。

窃盗罪成立のポイントとなる被害者の「占有」とは、ポケットや携行中のバッグなどに被害品がある場合も含みますが、法律的には一般的な感覚とは異なり、もっと広い概念であると考えられています。

物理的に被害品と接していなかったとしても、被害者の支配領域に被害品が所在していれば、被害者の「占有」が認められているのです。

具体的には、コンビニエンスストアなどの棚に陳列されている商品は、責任者が物理的にこれを所持しているとは言えないけれども、「占有」があると解釈されています。また、責任者が、従業員に現金を保管させているような場合も、従業員に占有があるのではなく、責任者にあるとされています。

横領と窃盗をどのようにして区別しているのか

「占有」を侵害したかどうかが、窃盗罪成立のポイントになり、「占有」を侵害したと認められない場合には横領罪の成否が問題となってきます。

基本的には、被害者が物理的に所持している被害品を、自分の支配下に移してしまえば、「占有」を侵害したと言うことができるので、窃盗罪が成立することになります。

他方、自分の支配下にある被害品(現金など)を持ち出して、自分のために使ってしまうと横領罪が成立することになります。

しかしながら、実際のところ、「占有」を侵害したかどうかの判断はそれほど簡単なものではありません。一見すると、その被害品を支配しているのは自分以外におらず、横領となりそうなところ、窃盗罪が成立してしまうという運用もしばしばみられます。

たとえば、よくある事例として、パチンコ屋に置き忘れた財布を盗んだ場合が挙げられます。普通に考えますと、被害者が置き去りにしてしまったものを取ってしまったのですから占有離脱物横領罪が成立しそうですが、一般的には、窃盗罪が成立すると解釈されています。なぜなら、被害者が財布を置き忘れた時点で、パチンコ店にその財布の支配が及び、パチンコ店に占有があると解釈されているからです。

この場合、パチンコ店の財布に対する占有を侵害したとして、窃盗罪が成立します。

この例からもわかるとおり、被害品の所有者=占有者である必要は必ずしもないのです。

もう一つ具体例を挙げると、コンビニエンスストアのアルバイトが店の売上金を持ち出した場合があります。この場合、アルバイトが売上金を支配しているのですから、横領罪が成立しそうです。
しかし、前述したとおり、売上金について占有があるのは、従業員ではなく、責任者にあると解釈されているので、売上金を持ち出したアルバイトは、責任者の占有を侵害したとして、窃盗罪が成立します。

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横領罪や窃盗罪の事件の流れ

横領や窃盗で検挙された場合、どのように捜査が行われ、最終的にどのような処分を受けることになるのでしょうか。以下、弁護士が具体的な事件の流れについて、解説します。

  • 横領と窃盗が在宅で捜査されている場合
  • 横領と窃盗で逮捕されている場合

横領と窃盗が在宅で捜査されている場合

横領罪でも窃盗罪でも、被害品の金額がそれほど大きくないのであれば、あまり逮捕されることもありません。特に、占有離脱物横領罪が問題となる場合に、まず逮捕される例はないでしょう。

在宅捜査が行われる期間は、警察署が多忙かどうかにもよりますが、早くとも、1か月程度の捜査を行い、検察庁に事件を送致することになります。

その後、検察庁において、さらに1か月程度の捜査を遂げて、起訴するかどうかを判断します。

警察と検察が捜査を遂げるまでの間、2~4回ほど、取調べのための出頭を要請されます。取調べのための出頭要請に正当な理由なく応じないと、逮捕される可能性もありますので、必ず要請に応じて、捜査協力をすべきです。

横領と窃盗で逮捕されている場合

横領や窃盗でも、被害金額が高額であったり、犯情が悪質であったりすると、逮捕される事例もあります。

逮捕された場合、検察官において10日間の勾留請求をするかどうかを判断します。
検察官が勾留請求をした場合、裁判所がその勾留請求に理由があると判断すれば、勾留決定を出すことになります。勾留には延長が認められており、最大20日間まで行われます。

もっとも、勾留の必要がない事案であれば、検察官・裁判所と交渉して、勾留決定を阻止したり、勾留期間を短縮することが可能です。

勾留の効力が失われて、身柄解放された後は、前述した在宅捜査と同じ処理になります。

勾留により身柄拘束が続く場合、勾留の満期までに検察官が起訴・不起訴の判断に必要な捜査を遂げて何らかの結論を出します。窃盗であれば、特に前科がない限り、略式起訴という処分によって罰金を科されて終了することになります。

他方、検察官が公判請求を行った場合、刑事裁判手続きにおいて、刑罰を決めることになります。この場合に身柄を開放するには、保釈請求の手続きを取る必要があります。保釈をするためには、保釈保証金の納付も必要です。

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横領罪や窃盗罪における弁護士の活動内容

次に、横領や窃盗の事件について依頼を受けた弁護士の活動内容について、詳しく見ていきます。

  • 横領や窃盗の被害者との示談交渉
  • 身柄解放に向けた弁護士の活動

横領や窃盗の被害者との示談交渉

横領や窃盗には、必ず財産的被害を受けた被害者がいます。検察官としては、被害者の処罰意思を重視して、起訴するかどうかを決めることが多いでしょう。
そこで、不起訴処分を目指すのであれば、被害者との示談交渉が欠かせませんので、横領や窃盗の事件で依頼を受けた弁護士としては、示談交渉が重要な弁護活動となります。

ここで、弁護士に依頼せずとも、自ら示談交渉を行ってもよいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、被害者は、弁護士を選任しなければ、そもそも話し合いにも応じないこともあります。

また、被害者本人との直接の交渉ができたとしても、示談の話が進まなかったり、不当に高額な示談金を要求されることもありますので、良い結果を望むのであれば、弁護士に示談交渉を依頼した方が安全です。

ただし、スーパーや、ドラッグストアなど、示談を一切受け付けない店舗もあります。示談に応じるかどうかは、店舗の完全な自由であるため、示談協議に応じるよう、強制することは弁護士でもできません。

とはいえ、示談に応じない場合であっても、被害品の買取りや、被害弁償であれば応じるという対応をする店舗もあります。窃盗などの犯罪では、経済的損害の回復が不起訴の重要な判断材料となることもあるので、示談は無理でも、被害回復に必要な弁護活動は積極的に進めるべきです。

身柄解放に向けた弁護士の活動

横領や窃盗で逮捕された場合、最悪の場合、長期間の身柄拘束を受けてしまう可能性もあるので、身柄解放に向けた弁護士の活動が必要となります。

検察官との交渉によって、勾留請求がなされずに釈放される事案もあります。検察官の勾留請求がなされたとしても、勾留決定を出す裁判官との交渉によって、検察官の勾留請求を却下させることができます。

さらに、裁判所の勾留決定に対して、準抗告という勾留決定に対する異議を申し立てることによって、勾留決定を取り消すことも可能です。

身柄拘束されてしまっている事件の場合、検察官は、勾留期間の満期までに起訴か、不起訴かの結論を出します。もし、不起訴処分の獲得を狙う場合において、勾留満期までに示談交渉が間に合わず、事件を起訴されてしまったら、不起訴処分を得ることは不可能になります。

他方で、身柄拘束をされていたものの、勾留がとかれて在宅捜査に切り替わった場合、示談交渉の結果が出るまで、検察官において処分を待ってくれることが多いので、身柄解放に向けた弁護活動は非常に重要です。被害金額が大きいと示談交渉に時間がかかることもありますから、釈放によるメリットは非常に大きいといえます。

まとめ

横領罪と窃盗罪、いずれも身近な犯罪類型ではありますが、両罪を区別する「占有」という概念を理解することは非常に難しく、どちらの犯罪が成立するのかは、専門家でないと判断ができない部分があるのです。

しかしながら、どちらの犯罪も被害品を失った被害者がいるという点では共通しており、被害弁償をすべき事案です。

横領罪あるいは窃盗罪を犯してしまい、警察から連絡が来たという場合、速やかに弁護士に相談し、適切な対応をするべきでしょう。

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