熟年離婚で財産はどう分ける?共働き・専業主婦でも老後資金を守る方法
最終更新日: 2025年06月04日
熟年離婚では、財産分与が大きな争点になります。
「共働きだったけど、自分の老後資金は大丈夫?」「専業主婦なのに財産をもらえるの?」
そうした不安を抱える方は少なくありません。
実は日本の法律では、婚姻中に築いた財産は、共働き・専業主婦を問わず原則「2分の1ずつ」に分けることが基本とされています。
名義や収入差に関わらず、老後の生活設計に影響する財産はしっかり確認・分割する必要があります。
この記事では、熟年離婚における財産分与の基本、老後資金に関する主な財産(退職金・年金・不動産)の扱い、共働きでも損をしないためのポイント、実際の事例やよくある質問まで、わかりやすく解説します。
そもそも財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が結婚生活の中で築いてきた財産を、離婚時に公平に分け合う制度のことです。
「収入が多かった」「名義は夫」などにかかわらず、婚姻中に形成された財産は「共有財産」とされ、原則として2分の1ずつに分けるのがルールです。
この原則は、共働き夫婦でも専業主婦家庭でも同じです。家計に貢献した形が異なるだけで、家庭を支えていたことに変わりはないと考えられているからです。
共働きでも1/2ずつが原則な理由
たとえば、夫が年収800万円、妻が年収300万円だった共働き家庭でも、家計の支出や生活設計において協力していたことに変わりはありません。
また、片方が家事・育児・介護を担っていた場合、その労働も「見えない貢献」として評価されます。
つまり、稼ぎの多寡ではなく、「婚姻中に協力して築いた財産かどうか」が重視されるのです。
対象となる財産の種類
熟年離婚では、次のような財産が分与の対象になります。
- 預貯金・証券・保険解約返戻金
- 不動産(土地・家屋・マンションなど)
- 退職金(将来受け取る予定のものも含む)
- 車や高級腕時計などの高価な動産
これらは名義に関係なく、共有財産として半分に分けられるのが原則です。「私の名義だから全部自分のもの」は大きな誤解です。
よくある誤解と注意点
「名義は自分」でも分けなければならない?
はい。財産がどちらの名義かは関係ありません。
婚姻期間中に蓄えられたものなら、片方の配偶者のみの名義であっても共有財産と見なされます。
「生活費を多く払っていたから多くもらえる」は誤解
夫婦の間で生活費の負担割合に差があったとしても、それが財産分与の割合に直接影響することはほとんどありません。
2人の協力によって家庭が成り立っていたことが重要です。
熟年離婚ならではのポイント
退職金
熟年離婚では、退職金が大きな財産になることが多く、分与対象となるかどうかで揉めることもあります。
ポイントは、「すでに支給されているか」「確実に支給される見込みがあるか」。
支給されることが確実である場合や、退職までの期間が短い場合などには、財産分与の対象財産として評価される可能性が高くなります。
年金分割
厚生年金は、年金分割制度により、婚姻期間中の納付実績を原則2分の1ずつの割合で、離婚後に分けることができます。
これは配偶者が年金受給額で損をしないために非常に重要です。
年金分割には離婚後2年以内という期限があるため、早めに申請しましょう。
老後資金と住まい
熟年離婚では、離婚後の生活設計も視野に入れた分与が必要です。
持ち家にどちらが住むか、売却して現金化するか、将来的な生活費や医療費をどう確保するか――慎重な計画が求められます。
財産隠しに注意
相手が口座や保険、退職金の存在を隠しているケースも少なくありません。特に熟年層は長年の信用から、配偶者の財産管理に無頓着なこともあります。
財産分与の公平性を確保するには、通帳・証券口座・勤務先情報などの確認が不可欠です。
実際の相談事例
共働きの妻が退職金の存在に気づかず
結婚25年の50代夫婦。夫が給与や資産を妻に一切共有していなかったことから、妻は夫にどんな財産があるのか全く分からない状態であったが、離婚を機に弁護士が退職金の支給予定額を調査。
結果、約800万円のうち400万円を分与対象として確保。
夫が名義を使い分けて預金を隠していた
60代男性が預金通帳を妻に見せず、妻が把握していなかった口座に退職金を一部移していた。
弁護士が夫名義の通帳を精査するなかで不審なお金の動きがあることが発覚したため、取引内容の確認や資料開示を求め、調停で夫の財産がほかにもあったことが明るみに。
結果、妻が適正額の分与を獲得。
まとめ
熟年離婚では、退職金や年金、不動産など多くの財産が関わってくるため、財産分与は慎重に行う必要があります。
「名義が自分だから」「共働きだから多くもらえる」「専業主婦だからもらえない」といった思い込みは、正しい判断を妨げる原因になります。
法律上は、共働きでも専業主婦でも、婚姻期間中に協力して築いた財産は、原則として2分の1ずつ分けるのが基本。
トラブルを避け、自分にとって最良の選択をするためにも、まずは専門家に相談して状況を整理しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:定年前の退職金も分ける必要がありますか?
将来の支給が確実とみなされる場合等、定年前であっても分与の対象になります。
退職金がまだ支払われていない段階でも、会社からの見込額をもとに財産分与の対象となる金額を計算することになります。
Q:年金分割って必ずしなければいけないの?
義務ではありませんが、将来の老後資金を安定させるうえで非常に重要です。
特に年金額に格差がある場合、分割しないと一方が生活に困る可能性もあります。年金分割を拒否されたとしても、年金分割の審判を申し立てれば認められるケースが多いことから、離婚時点で合意ができない場合でも、離婚後に年金分割の手続きをすることが考えられます。
Q:不動産や株の名義が相手でも、私に権利はある?
はい。名義にかかわらず、婚姻中に築かれた財産であれば、共有財産として財産分与の対象になります。
Q:熟年離婚後、老後の生活が不安です。どんな対策が必要?
年金分割・退職金・不動産の分け方によって、離婚後の生活が大きく変わります。
分与対象を正確に把握し、将来の生活設計も含めて交渉することが大切です。必要に応じて専門家の支援を受けましょう。
Q:夫(妻)が財産を隠しているかもしれません。どうしたら?
弁護士を通じて通帳や保険、証券口座の開示請求などが可能です。
調停・訴訟では資料の提出によって対象財産があることを示す必要があるため、早めに法的サポートを受けることが有効です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。