別居と離婚における6つの注意点を弁護士が解説!流れやメリット・デメリットも紹介
最終更新日: 2024年11月08日
- 離婚前に別居するメリットは何か?
- 離婚前に別居するデメリットは何か?
- 離婚前に別居するときの注意点を知りたい
夫婦が離婚に至る経緯はさまざまです。片方が離婚を決意してもなかなか合意に至らないことがあります。感情的になってしまい、冷静な話し合いができないことなどを理由に、離婚前に一度別居を選択することは珍しいことではありません。
本記事では、実際に別居するにあたってのメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚における別居のメリットは「冷静な話し合いが期待できる」「離婚の本気度を伝えることができる」「離婚事由をつくることができる」などがある
- 離婚における別居のデメリットは「復縁が難しい」「離婚事由にあたる証拠を集めにくい」「悪意の遺棄を問われる可能性がある」などがある
- 離婚前に別居する注意点は「別居の定義を理解する」「別居する前に双方の合意を取っておく」「親権を望む場合は必ず子どもを連れていく」「離婚事由に必要な別居期間を理解する」「別居前に入念な準備をしておく」の5つがある
離婚における別居のメリット
ここでは、離婚における別居のメリットを以下の3点から解説します。
- 冷静な話し合いが期待できる
- 離婚の本気度を伝えることができる
- 離婚事由をつくることができる
それでは1つずつ、見ていきましょう。
冷静な話し合いが期待できる
離婚における別居のメリット1つ目は、冷静な話し合いが期待できることです。
別居することで、夫婦間の緊張やストレスが軽減し、冷静に話し合える可能性があります。また、自分自身の想いや考えを整理し、論理的に相手に伝える準備もできるでしょう。
離婚にはさまざまな形式がありますが、いずれの場合もお互いが結論に対して納得している状態が、わだかまりもなくベストです。互いに冷静になり建設的な話し合いを経て、こじれることなく離婚に向けて歩んでいくためにも別居は有益だといえます。
離婚の本気度を伝えることができる
離婚における別居のメリット2つ目は、離婚の本気度を伝えることができることです。
コストがかかっても、別居を選択することで、相手に対して離婚への本気度がより伝わります。また、夫婦間に適切な距離が生まれると、相手に頼っていた部分が明らかになり、離婚後の生活がよりリアルに感じられます。そのため、話し合いに真剣に臨む姿勢が醸成されるでしょう。
離婚はどのような形であれ、話し合いのうえに成立します。別居によって、お互いの本気度や真摯な姿勢を確認することは重要です。
離婚事由をつくることができる
離婚における別居のメリット3つ目は、離婚事由をつくることができることです。
合意に至らず裁判離婚となっても、民法で定められている離婚事由に当たらなければ離婚は認められません。離婚事由の1つに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がありますが、長期間の別居はこれに当たると判断される可能性があります。
離婚事由にあたる具体的な別居期間は、夫婦の同居期間や子どもの有無なども絡み、ケースバイケースです。気になる方は、弁護士に相談してみることをお勧めします。
離婚における別居のデメリット
ここでは、離婚における別居のデメリットを以下の3点から解説します。
- 復縁が難しい
- 離婚事由にあたる証拠を集めづらい
- 悪意の遺棄を問われる可能性がある
それでは、1つずつ見ていきましょう。
復縁が難しい
離婚における別居のデメリット1つ目は、復縁が難しいことです。
別居することで、復縁が難しくなる可能性があります。 別居によって一度距離をおくことで、気持ちが再燃する可能性もありますが、住まいを別にすることで復縁に向けたコミュニケーションが困難になるためです。
別居をするにあたって、一定の覚悟が必要なことはいうまでもありません。
離婚事由にあたる証拠を集めづらい
離婚における別居のデメリット2つ目は、離婚事由にあたる証拠を集めづらいことです。
相手に不貞行為やDV・モラハラなど、離婚事由にあたる行為があっても、別居によって距離ができると証拠を集めるのが困難になります。
財産の動きを追いかけることも難しくなるため、財産分与を考えるのであれば別居開始までに財産の状況をしっかりと把握しておくことが重要です。
悪意の遺棄を問われる可能性がある
離婚における別居のデメリット3つ目は、悪意の遺棄を問われる可能性があることです。
民法752条は、
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない
と定めています。もしあなたが互いの同意や合理的な理由がないままに、別居を強行した場合、離婚事由にあたる「悪意の遺棄」とみなされかねません。
悪意の遺棄とみなされた場合、離婚の有責者となり、不利な立場に立たされる可能性があります。
別居から離婚成立までの期間とその影響
法律に「〇年間、夫婦が別居状態ならば離婚できる」という規定はありません。
別居期間を理由とした離婚は、別居が5年未満続いただけでは、認められない可能性が高いです。
配偶者の不貞行為やDV等が原因で別居状態となった場合は、別居期間が1年程度と短くても離婚が成立する可能性があります。
ただし、不貞行為やDV等を行った配偶者は「有責配偶者」とされ、有責配偶者は原則として離婚訴訟を家庭裁判所に提起できません。
夫婦の別居が5年以上長期間継続している場合は、裁判所から「婚姻の継続は困難」と判断される可能性があります。
ただし、単に別居の期間が長いというだけでは、離婚が必ず認められるわけではありません。裁判所は次のような事実も考慮します。
- 婚姻期間に対する別居期間の割合
- 子どもの養育に支障がないか
- 離婚しても夫婦の一方の生活が困窮する事態にならないか 等
こちらの事情を考慮して問題があれば、離婚は認められない可能性があります。
別居から離婚までの流れと準備
離婚を決心すると感情的になり、勢いで離婚手続きを進めるかもしれません。
しかし、離婚が成立するまでは1つ1つのステップを確実に進めていくために、冷静に対応する姿勢が求められます。
別居の決断と準備
配偶者にいきなり離婚を切り出すのではなく、入念に離婚の準備を進めていきましょう。
次のような内容を検討し、必要となるあなたの住居や離婚条件を定めていきます。
- 別居の方法:実家に戻るか、新たに賃貸住宅を探すか
- 財産分与:夫婦の共有財産の分与割合
- 慰謝料:配偶者が原因で離婚する場合は、希望する慰謝料の金額
- 子どもの親権:子ども親権はどちらが持つか
- 子どもの養育費:養育費の金額、受取期間
- 面会交流:親権がない親が子どもと面会する日時
- 年金分割:婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金の分割割合
別居方法や離婚条件を考慮するときは、弁護士に相談し、アドバイスを受けながら進めていくことがおすすめです。
婚姻費用の請求
あなたが離婚の意思を固め別居した場合は、婚姻費用の分担を配偶者に請求しましょう。
あなたが専業主婦(主夫)やパート従業員で安定した収入の確保が難しいときは、離婚成立までの間、不足する生活費等の支払を求められます。
請求された配偶者は、不満を持つかもしれません。しかし、民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と明記されています(民法第752条)。
離婚協議中でも、互いに生活を保持する義務は残るので、あなたの収入が低ければ収入の高い配偶者に請求するのは当然の権利です。
あなたが実家に戻る等して、生活が困窮しないのであれば、婚姻費用の分担を請求しないという選択肢もあります。
離婚に向けた話し合い
配偶者と離婚の協議を開始します。お互い感情的にならず、冷静に離婚条件を話し合いましょう。
ただし、あなたがのぞむ離婚条件に配偶者が同意し、離婚が成立するとは限りません。冷静にお互いの主張の隔たりを埋め、条件も調整しながら合意を目指しましょう。
合意に達したら、市区町村役場に離婚届を提出します。
お互い感情的になり話し合いが進まない場合は、弁護士を代理人にたて、配偶者との交渉をまかせた方がよいでしょう。
離婚事由の証拠収集
配偶者との協議がうまくいかない場合は、離婚手続きを進めるため、証拠を収集しましょう。配偶者が原因(DVや不貞行為を行った等)で離婚する場合、原因を証明できる証拠が必要です。
たとえば、配偶者からのDVや不貞行為が原因の場合、次の証拠書類・画像・動画等を収集します。
- DVの場合:配偶者がDVを行う画像・動画・音声、医師の診断書等
- 不貞行為の場合:配偶者と不倫相手の性行為または性行為を推認できる画像・動画・音声等
DVや不倫に関する画像・動画・音声は、別居・離婚準備を進める前に保存しておく必要があります。
特に不貞行為の証拠は、粘り強い尾行や張り込みや高性能の撮影機材・撮影技術が求められます。そのため、調査のプロである探偵に調査を依頼した方がよいでしょう。
離婚調停の申立
配偶者との協議がうまくいかなかった場合、相手方の住所地または夫婦が合意して決めた家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」を行います。
調停は非公開で、基本的に夫婦双方の出席が必要です。調停では調停委員が、夫婦の主張の隔たりを埋められるよう、さまざまな助言・解決案を提示します。
夫婦が離婚条件に合意すれば、話し合われた内容の要領等をまとめた調停調書が作成されます。ただし、双方が無理に合意する必要はありません。
調停でも話し合いがつかなければ調停不成立となり、裁判で解決を図ることになります。
調停不成立の場合は離婚裁判へ
離婚裁判は、原則として夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所に、訴訟の提起が必要です。
裁判では、原告・被告となった夫婦それぞれが、自己の主張や証拠を提示します。その後、裁判官が原告・被告の主張や証拠、その他の一切の事情を考慮し、判決を言い渡します。
裁判所が必要と判断した場合は、和解案を勧める場合もありますが、和解案を受け入れるかどうかは夫婦次第です。
離婚成立後の手続き
離婚が成立したときは、離婚届の提出が必要です。
夫婦の協議で離婚に合意した場合、期限は決まっていませんが速やかに市区町村役場へ離婚届を提出しましょう。
調停・裁判で離婚を決めたときは、調停成立日・判決確定日または和解成立日から10日以内に離婚届の提出が必要です。
離婚届に次の書類を添付し、提出します。
- 調停の場合:調停調書の謄本
- 裁判の場合:判決書謄本 ・確定証明書(和解に合意:和解調書謄本)
離婚前に別居すべきケース
離婚前に別居するときは、メリット・デメリットの双方をしっかりと把握してよく検討してから実行に移すべきです。
しかし、明らかに離婚前に別居すべきケースもあります。ここでは、そのようなケースとして以下の3点をご紹介します。
- DVやモラハラを受けている
- 相手が不倫している
- 子どもに異常が見られる
それでは1つずつ、見ていきましょう。
DVやモラハラを受けている
離婚前に別居すべきケースの1つ目は、DVやモラハラを受けている場合です。
DV(家庭内暴力)やモラハラを受けている場合、別居することを考えるのは当然です。心身にダメージを受けている状態では冷静な思考や行動がとれないうえに、離婚を切り出すことで被害が一層ひどくなってしまう可能性があります。
まずは身の安全を確保し、しかるべきサポートを受けたうえで離婚の手続きに入った方がいいでしょう。
このような場合は、別居を切り出すこと自体が危険な可能性もあります。弁護士や行政・民間の支援団体など、専門家による早めのサポートを受けることを強くおすすめします。
相手が不倫している
離婚前に別居すべきケースの2つ目は、相手が不倫している場合です。
不倫が発覚した場合、夫婦間の信頼や愛情が揺らぎ、時には著しい精神的ストレスを感じることもあるでしょう。民法第770条は、不倫(不貞行為)を離婚事由として認めています。
動画や画像・メール・音声など不倫を立証する証拠を押さえることができていれば、相手の有責で離婚請求することも可能です。自身の感情や考えを整理するための時間を確保するためにも、別居した方がいいでしょう。
子どもに異常がみられる
離婚前に別居すべきケースの3つ目は、子どもに異常が見られる場合です。
子どもがいる場合、同じ屋根の下で生活する子どもは両親の様子を敏感に感じ取っている可能性があります。実際、2021年に3歳から6歳の子どもを持つ母親を対象に行われた調査によると、夫婦間の葛藤と子どもの問題行動の多さが比例することが報告されています。
2人が揃うことで、子どもに過剰なストレスがかかり心身に異常が見られるのであれば、相手や子どもとよく話したうえで、一度距離を取った方がいいかもしれません。
出典:夫婦関係と養育態度が子どもの問題行動に及ぼす影響|幼年教育研究年報 第44巻
離婚前の別居における6つの注意点
離婚前に別居をするときには、把握しておくべきさまざまな注意点があります。ここでは、別居を後悔しない為に、以下の6つの注意点を紹介します。
- 別居の定義を理解する
- 別居する前に双方の合意を取っておく
- 親権を望む場合は必ず子どもを連れていく
- 離婚事由に必要な別居期間を理解する
- 別居前に入念な準備をしておく
- 無断で行動しない
それでは、1つずつ見ていきましょう。
別居の定義を理解する
1つ目の注意点は、別居の定義を理解することです。
離婚紛争における別居は、夫婦としての共同生活を否定するものです。単身赴任や入院など、円満な夫婦関係が続く中で居住地を別にする場合は、離婚紛争における別居ではありません。
離婚に至った場合、別居開始日が財産分与の基準日にあたるため、重要な意味を持ちます。自分は別居のつもりであったが実際には別居と認められない場合は、あなたにとって不利な状況になる可能性があるため、しっかりと別居の定義を理解しておきましょう。
う。
別居する前に双方の合意を取っておく
2つ目の注意点は、別居する前に双方の合意を取っておくことです。
DVやモラハラなどの明確な離婚事由にあたる行動がない場合は、別居は双方の合意を原則としています。合理的な理由なく、あなたが別居を強行した場合、夫婦における同居義務に違反したとみなされて離婚の責任を問われる可能性があります。
可能な限り、配偶者の合意を取り付けて別居しましょう。
親権を望む場合は必ず子どもを連れていく
3つ目の注意点は、親権を望む場合は必ず子どもを連れていくことです。
親権は、離婚によって子どもが受ける影響の最小化や、これまでの監護者が主に誰だったかなどを考慮して決められます。あなたが子の親権を望むのであれば、子どもと一緒に別居し監護実績を積んでおくことで有利になる可能性があります。
ただし、配偶者の合意なく子どもを連れて別居してしまった場合は、違法性を問われることもあるため注意が必要です。
離婚事由に必要な別居期間を理解する
4つ目の注意点は、離婚事由に必要な別居期間を理解することです。
相当な期間別居をし夫婦関係が破綻しているとみなされれば、他に離婚事由がない場合でも離婚できる場合があります。離婚に必要な別居期間は3年から5年と言われることもありますが、ケースによって幅があり、一概に目安を提示することは難しいのが実状です。
さまざまな背景が影響するため必要な別居期間を知りたい場合は、専門の弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
別居前に入念な準備をしておく
5つ目の注意点は、別居前に入念な準備をしておくことです。
別居するときは、生活費の確保を最優先としましょう。これまで、収入の多くを相手に頼っていた場合はなおさらです。同居している段階から費用のシミュレーションなどを詳細に行っておく必要があります。
また、別居前に離婚事由をできるだけ集めておくことも重要です。もし、別居したあとにサポートしてくれる身内の人や友人がいるのであれば、事前に理解を得ておきましょう。
専門弁護士に事前に相談しておけば、事前に準備しておくべきことや、利用できる可能性のある助成金の案内も受けられます。
無断で行動しない
6つ目の注意点は、無断で行動しないことです。
あなたが別居する場合、配偶者に別居する旨を告げてから行動しましょう。
夫婦には同居義務があるため、離婚が成立していないにもかかわらず、夫婦の一方が家を出てしまうと、同居義務違反となります。
同居義務に違反しても罰則はありませんが、調停や裁判で、配偶者から「無断で別居した」と主張され、不利な状況となる可能性があります。
まとめ
今回は離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、別居と離婚をスムーズに進めるポイント等について詳しく解説しました。
法律事務所の中には、初回相談を無料で受け付けているところもあります。まずは気軽に相談し、弁護士へ別居等に関する不安や悩みを打ち明けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。