泥酔してタクシー運転手に暴行したときの対処法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月07日
飲み会で泥酔して、帰宅するためにタクシーを捕まえたことまでは覚えているが、気が付いたら警察署にいたというケースがあります。また、そこまで泥酔はしていないものの、酔った状態でタクシー運転手と口論になり、手や足が出てしまったというケースもあります。
タクシー運転手ではありませんが、駅員に対する暴力事件もよく良く耳にするかと思います。
これらの事件は犯罪とは縁も所縁もない普通の会社員も加害者となることが多い事件です。
今回は、万が一にもご自身や家族が酔っ払い、タクシー運転手への暴行の加害者となってしまった場合、その後の流れはどうなるのか、またどのように対応するべきなのかという点についてご説明いたします。
酔っ払いのタクシー運転手への暴行は犯罪?
まずは泥酔してタクシー運転手に暴行をした場合に適用される犯罪や刑事罰について確認しましょう。
暴行罪?傷害罪?
タクシー運転手を殴った、蹴ったなどの暴行を振るった場合、暴行罪(刑法第208条)に該当します。暴行罪では、2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留又は科料のいずれかの刑罰が科されます。
また、暴行を振るった結果、タクシー運転手が怪我をした場合には、傷害罪(刑法第204条)に該当します。傷害罪では、15年以下の懲役、50万円以下の罰金のいずれかの刑罰が科されます。
なお、手で殴った、足で蹴ったなどの打撃ではありませんが、タクシー運転手に対して唾を吐いたという場合も、暴行罪になることがありますので注意が必要です。
刑務所に入るのか?
同種の前科がなければ、暴行罪であれば、不起訴処分になることも多く、起訴されたとしても略式手続で罰金刑に処せられる可能性が高いです。
傷害罪の場合も初犯であれば罰金刑となる可能性が高いですが、全治数か月などの重い傷害結果であれば、例え初犯であっても略式手続による罰金刑ではなく、正式な裁判(公判)で懲役刑を求刑され、ケースによっては数年間、刑務所で懲役刑に服する重い刑罰となる可能性もあります。
このように処分は様々ですので、起訴される可能性、罰金や懲役いずれの刑罰になる可能性が高いかについては、一度、専門弁護士にご相談ください。
酔っ払いがタクシー運転手への暴行で逮捕されたら
タクシー運転手に暴行を振るった場合、警察が駆け付け、その場で現行犯逮捕となるケースが多いです。
その後は、警察署において被害者、加害者それぞれの取り調べが行われるとともに、現場周囲の防犯カメラやタクシーのドライブレコーダーに暴行の一部始終が映っていないか確認されることとなります。
逮捕されるとその後48時間以内に警察から検察庁に事件送致するか釈放するかの判断がなされます。
48時間以内に釈放された場合
逃亡や罪証隠滅の可能性は低いだろうと警察が判断すると48時間以内に釈放され、その後、何度か警察に出向いて取り調べなどの捜査を受けます。
警察での捜査がひととおり終わると、事件は検察庁へ送られます。その後、検察庁から呼び出しを受け、処分が決まります。
事件発生から最終的に処分が決まるまで通常ですと2、3か月ですが、警察が多忙な場合などには半年以上かかる場合もあります。
48時間以内に釈放されなかった場合
48時間以内に釈放されず検察庁に事件送致された場合には、事件送致後24時間以内に検察官は、裁判官に勾留請求をするかどうかの判断をします。
勾留の請求がなされなければ釈放となります。勾留の請求がなされた場合には、裁判官は勾留するかどうかの検討し、勾留しない場合には釈放され、勾留する場合には10日間勾留されることとなります(その後さらに10日間、勾留期間が延長されることが多いです。)。
釈放された場合は、前記⑴と同様に、警察や検察庁に何度か出向いて取り調べを受け、その後処分が決まります。他方、勾留された場合には、勾留の最終日に起訴か不起訴かの処分が決まります。
逮捕・勾留を回避できないのか
逮捕・勾留の要件は、逃亡の可能性と証拠隠滅の可能性です。そのいずれも可能性が低いと判断されれば釈放されることになります。
タクシー運転手に対する暴行事件では、ドライブレコーダーなどの客観的な証拠は既に押収されていますし、加害者がタクシー運転手に接触を図って供述を曲げさせることは現実的に難しいでしょう。
ですから、弁護士が捜査機関や裁判官を説得すれば、逮捕・勾留を回避できるケースは多くあります。
泥酔してタクシー運転手に暴行したら示談を
酔っ払い、タクシー運転手に対して暴行を振るってしまったのであれば、被害者に対して謝罪をして、慰謝料などの賠償金をお支払いして示談するべきでしょう。
稀に加害者と直接、示談交渉をしてくださるタクシー運転手もいるようですが、大抵は弁護士でなければ加害者側との示談交渉に応じていただくことはできません。
賠償金ですが、慰謝料の他に、事件当日、営業を中断して警察署で取り調べを受けていますので、その間の営業損害相当額の賠償を求められることがあります。また、暴行の際にタクシーの車内や外装を毀損した場合にはその賠償も当然必要となります。
示談金の金額としては10万円から30万円に収まることが多いですが、怪我が酷い場合にはそれ以上の賠償金となる可能性もあります。
謝罪、損害賠償をして被害者から許しを得た場合、同種前科があったり、重大な傷害結果が生じていない限り不起訴処分となり、刑罰を受けない可能性が高いです。
最後に
以上、タクシー運転手に対して暴行をしてしまった場合の逮捕・勾留や示談についてご説明しました。
普段全く警察のお世話になったことがないような普通の会社員の方でも、お酒に酔って加害者となり、刑罰を受ける可能性があります。
早期の釈放と被害者との示談をご希望の場合は、専門弁護士にできるだけ早くご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。