雇用契約書を専門弁護士が解説!企業のための書き方・リスク・ポイントを詳しく紹介
最終更新日: 2024年01月31日
- 私は人事担当者ですが、雇用契約書の作成で悩んでいます。専門家に相談したいです。
- 雇用契約書で見落としがちな問題点があれば是非知りたいです。
- 雇用契約書を作成するとき、弁護士に相談すればどのようなサポートが得られるのでしょうか?
雇用契約書は企業側に法的な作成義務がないので、口頭のみで雇用契約しても違法ではありません。
しかし、口頭だけで済ますと、後々労使間で「契約のときにこう言った」「言わない」等のトラブルに発展する可能性が高くなります。
やはり雇用契約書で詳細に契約条件を明記し、トラブルの発生を未然に防止する配慮が必要です。
そこで今回は、多くの雇用問題に携わってきた専門弁護士が、雇用契約書の書き方、雇用契約書を作成する場合の注意点等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 雇用契約書の作成に法的義務はないが、契約書がないと後日トラブルに発展するおそれがある
- 雇用契約書には業務内容や就業時間、休日、賃金の決定や計算方法等を明記する
- 雇用契約書に不安がある場合は、弁護士と相談し助言を得た方がよい
雇用契約書を弁護士が解説
雇用契約書とは、企業と労働者との間で労働条件の重要事項を明らかにして取り交わす契約書類です。契約書は2部作成するのが一般的です。
雇用契約の内容について双方が合意したところで契約書に署名捺印をし、企業と労働者が1部ずつ保管します。
雇用契約書を作成しておけば、業務内容や賃金、契約期間等をすぐに確認できます。
契約書の内容がしっかりしていれば、労使間の争いも未然に防ぎやすくなるでしょう。
雇用契約書と労働条件通知書の違いを弁護士が解説
雇用契約書も労働条件通知書も、労働条件を記載する点では同じです。
しかし、雇用契約書の作成に法的義務はありませんが、労働条件通知書の交付は法的義務です(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)。
双方の違いは下表の通りです。
比較項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
目的 | 企業と労働者が記載内容について合意した旨を証明 | 企業から労働者に記載内容を通知 |
法的義務 | なし | あり |
交付方法 | 双方が署名・捺印し、契約締結 | 企業から労働者へ一方的に交付 |
労働者の取得 タイミング | 原則として内定日や入社日 | 原則として内定日や入社日 |
雇用契約書の書き方を弁護士が解説
雇用契約書は雇用形態に応じて記載する内容が異なってきます。
こちらでは、雇用契約書の書き方について説明します。
雇用形態の区別
雇用形態は大きく分けて次の3種類があります。
- 無期雇用契約:正社員
- 有期雇用契約:契約社員
- パート、アルバイト契約
雇用契約書には、基本的に給与や就業場所、時間、業務内容、昇給、退職等の事項が記載されます。
有期雇用契約やパート・アルバイト契約の場合、労働者と雇い止めに関するトラブルが発生しないよう、契約の更新回数や雇用期間等について明記する必要があります。
記載内容
雇用契約書を作成する場合、主に以下の項目を個別に定めていきます。
- 雇用期間
- 労働時間
- 給与
- 人事異動
- 退職
- その他
それぞれの項目について説明します。
雇用期間
まず、企業と労働者がどのような雇用契約を結び、いつまで契約が継続するのかについて明記します。
次のような期間を記載しましょう。
- 無期雇用か有期雇用か:有期雇用ならば契約期間の満了日および再雇用の有無を明記
- 試用期間
- 定年:再雇用についての基準を明記
契約社員やパート、アルバイトの雇用契約では、契約の継続・終了に関する規定を必ず明記しましょう。更新の有無・雇用期間をしっかりと記載すれば、雇い止めに関するトラブルを回避できます。
労働時間
勤務日はいつか、1日の労働時間はどれくらいか、休日はどれくらいあるのか等を明記します。
- 出勤日
- 休日
- 休暇
- 始業時刻と終業時刻
- 休憩時間
- 残業の有無
なお、次のような勤務体制をとっている場合、その内容も記載が必要です。
- 裁量労働制→始業および終業の時刻、所定時間外労働の有無に関する事項欄に「裁量労働制」を明記、労使協定で定めた内容に基づき労働時間を記載
- フレックスタイム制→始業および終業の時刻、所定時間外労働の有無に関する事項欄に「フレックスタイム制」を明記、フレキシブルタイムやコアタイムがあるなら当該時間帯の開始~終了の時刻を記載
給与
給与についても、正社員、契約社員、パート、アルバイトに応じた基本給、手当等を明記します。
- 基本給
- 諸手当
- 割増賃金の計算:固定残業代の有無等
- 賃金から控除される費目
- 給与の締め日と支払日
- 昇給および降給
- 賞与
- 退職金
人事異動
就業場所の固定の有無、配置転換があるのか等について記載します。
- 就業場所が特定の場所か否か
- 業務の固定の有無
- 配置転換や転勤の有無
有期雇用契約を結んだ労働者でも業務が固定されていない、配置転換や転勤があるという場合、業務内容や職責が正社員とほとんど同じと判断されます。
このような労働者を雇い止めにすれば、裁判になったとき無効と判示される可能性があります。
そのため、雇用契約書では就業場所、業務の固定について明記する必要があるでしょう。
退職
退職に関する内容を明記します。雇用契約書には退職申出の期限(申出は2週間前まで定めるのが一般的)を規定します。
また、退職時に返還すべき資料の提出や、データの返還方法等も定め、企業の内部情報の漏洩を抑制しましょう。
その他
就業規則で定められている内容を、改めて雇用契約書に記載すれば、労働者に注意喚起を徹底する効果があります。
また、労働者が自社の業務に携わり退職後、得たノウハウを利用して類似事業を行う可能性があります。
類似事業をされては困る場合、雇用契約書に退職後、当該事業を行わない義務(競業避止義務)も明記しておきましょう。
雇用契約書のリスクを弁護士が解説
契約締結後、労働者とのトラブルをできるだけ避けるため、雇用契約書を作成しましょう。
こちらでは、特にトラブルとなりやすい契約内容を取り上げます。
時間外労働
雇用契約書では時間外労働に関する内容をしっかりと明記しましょう。
時間外労働があると、労働者のモチベーションに影響の出る可能性があります。そのため、割増率を明確にしておく必要があります。
労働基準法で定められた割増賃金を支払う場合は、次のように明記します(労働基準法第37条)。
- 時間外労働、深夜労働の1か月の合計が60時間まで:通常の労働時間の賃金の25%(60時間を超える場合は50%)
- 休日労働:通常の労働日の賃金の35%
また、企業が「みなし残業代(固定残業代)」を導入している場合は注意が必要です。
みなし残業代とは、前もって一定時間の残業を見込み、当該時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。
たとえば、残業手当を含む25万円が月給と記載されても、25万円の内いくらが残業代に該当するのか、労働者にはよくわかりません。
この場合は、「通常の労働時間の賃金に相当する部分」「残業代に相当する部分」と、明確に分けて記載します。
【例】通常の労働時間の賃金と残業代とを合わせて25万円の場合
- 通常の労働時間の賃金に相当する部分:20万円
- 残業代に相当する部分:5万円
契約更新有無
労働者と有期雇用契約を締結する場合、契約更新の判断基準が不明確だと後々トラブルに発展する可能性があります。
契約更新の基準も雇用契約書に明記しましょう。
たとえば、「契約更新には出勤率〇%以上が必要」「ミスやクレームの回数が〇回を超えると更新しない」等、労働者も納得できる判断基準を明示します。
有休取得
雇用契約書で有給休暇(年次有給休暇)についての記載がないと、本当に取得できるのか労働者が不安を感じることでしょう。
労働基準法では、労働者の雇用形態にかかわらず有給休暇の取得が可能です(同法第39条)。
労働者に周知するため、雇用契約書に有給休暇の取得を明記し、勤務期間6か月以上、かつ定められた労働日の8割以上の出勤で取得できる旨を記載しておきます。
雇用契約書のポイントを弁護士が解説
企業側が雇用契約書の作成に不安を感じているならば、労働問題に詳しい弁護士へ相談し、アドバイスを求めましょう。
実態に合わせた作成が必要
契約する労働者が正社員か契約社員かそれとも、パート・アルバイトかでも、雇用契約書に記載する内容は異なります。
また、企業でフレックスタイム制や、裁量労働制を採用しているのか、労働者は基本的に出勤せずフルリモートワークを行っているかでも、記載内容は違ってくるでしょう。
弁護士に雇用契約書のチェックを依頼すれば、契約書が企業の現状に合っているかを確認し、問題点があれば改善策の提案を行います。
弁護士への相談
雇用契約書の作成を弁護士に相談した場合、弁護士は雇用に関する裁判事例を踏まえ、労働者とのトラブルを避けるための作成ポイントについてアドバイスします。
労働問題に詳しい弁護士と顧問契約を締結すれば、継続的に法改正や企業の現状を考慮し、雇用契約書をチェック・見直しの提案も可能です。
雇用契約書作成・見直しなら当事務所にご相談を
今回は多くの雇用問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、雇用契約書を作成するポイント等について詳しく解説しました。
労働者との間でトラブルが起こらないよう、契約内容を可能な限り明確化し、周知する必要があります。
弁護士の助力を受け、雇用契約書の作成や見直しを進めましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。