アスベストの給付金は遅い？早めるには？専門家が解説
最終更新日: 2024年04月29日
アスベストの給付金はどれくらい時間がかかるのか
できる限り支給を早めるにはどうすれば良いのか
アスベストに起因する疾病を患っている場合、建設アスベスト給付金、労災保険給付、石綿健康被害救済制度の給付の支給を受けられる可能性があります。
しかし、いずれについても支給が遅いという噂を聞いたことがある方や、実際に請求をしたけれどもいつまで経っても支給されないという方もおられるでしょう。
本コラムではアスベストの補償について詳しい弁護士が、給付金等の支給が遅いことやスムーズに手続きを進めるポイントについて説明をします。
アスベストの給付金は労災保険も救済制度も遅い
アスベスト関連の給付金制度には、労災保険給付、石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金と救済給付、建設アスベスト給付金制度があります。
まずは、労災保険給付と石綿健康被害救済制度による給付の支給に要する期間について説明します。
労災保険給付
労災保険給付は通常の怪我・疾病などの場合には1か月ほどで速やかに支給されるケースが多いです。しかし、アスベストの場合には3か月から半年ほどかかるケースが多く、通常よりも支給が遅い現状にあります。
通常のケースであれば事故からさほど期間が経っていない段階での申請ですから、調査にさほど困難を伴いません。
しかし、アスベスト関連疾患は、発症までの潜伏期間が10年から50年と非常に長期です。そのため、数十年も前に従事していた業務の調査は簡単ではなく、疾患と業務の関連性を調査することに困難が伴います。そのため、通常よりも長期の調査が必要となり給付の支給が遅いのです。
救済制度の給付
石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金の要件は労災保険給付と基本的に同じですから、給付の支給までに労災保険給付と同じくらいの期間を要します。
他方、石綿健康被害救済制度の救済給付は、アスベストによる疾病であればよく、石綿ばく露作業に従事していたことは要件ではありません。そのため、労災保険給付よりは給付の支給が早いですが、それでも3か月はかかることが多いようです。
建設アスベスト給付金の支給はもっと遅い
次に建設アスベスト給付金制度についてです。本制度は前記の労災保険制度や石綿健康被害救済制度とは全く別の制度ですから、労災保険給付や救済制度の給付の支給を受けている場合にも請求することができます。
審査期間の長期化
建設アスベスト給付金制度は令和4年1月に始まった制度ですが、開始当初から審査に半年以上を要しており、近時は1年以上も要しているケースが増えています。
建設アスベスト給付金制度も過去の石綿ばく露作業への従事の証明がポイントとなる制度ですからその点の審査に時間を要します。また、月に1度、認定審査会が開催され、各回200、300件と多くの請求について審査がなされており、審査側の負担が大きくなっていることも審査期間の長期化の原因となっているようです。
給付金の支給が遅くなることの弊害
建設アスベスト給付金を請求した後、認定通知を受けるまでの間に請求者が死亡してしまった場合、当該請求は無効となります。
請求が無効となった場合、遺族がいれば遺族が改めて請求し直す必要があります。ところが、請求権のある遺族がいない場合には当該事案について給付金は支給されない結果となってしまいます。
特に中皮腫は進行が早く、発症から1年以内に死亡するケースも少なくありません。給付金の審査が遅く1年以上も要している場合、請求者が死亡して請求が無効となる可能性が高まる弊害があります。実際、各回の認定審査会の議事要旨によれば、多いときには5件前後の請求無効の審査結果が出ています。
アスベストの給付金の遅い支給を早めるには？
それでは、このように遅いアスベストの給付金の支給を早める方法はあるのでしょうか。
何よりのポイントはやはり、審査担当者が判断を下しやすい審査書類を提出することです。
被害者や遺族が自分で請求手続を行ったものの、書類の不備や不足で何度も当局から修正、追完を求められ、審査期間が長くなるケースが多いようです。提出すべき資料も多いですし、証拠で証明するということに不慣れなのが普通ですからスムーズに行かないこともやむを得ません。
このような書類の不備、不足がなければ請求側の落ち度で審査が遅れることはありません。加えて、証拠による証明という観点で審査担当者が認定の判断を下しやすい資料を作成することが重要となります。
このように質の高い請求手続を行うためにはやはり、専門家である弁護士の協力は必須となるでしょう。
ご本人やご家族における請求事務の負担が軽減され、しかも給付金の支給までの期間が早まる可能性は高いですから、弁護士費用こそかかりますが給付金の請求を弁護士に依頼してみてはいかがでしょうか。
まとめ
以上、アスベストの給付金等の支給までの期間やスムーズに支給されるためのポイントについて説明をしました。
アスベストの給付金等の支給を受けるためには多くの資料の収集や作成が必要となりますし、法的観点から有効な証明が必要となります。できる限り速やかに、給付金等の支給を受けるためにアスベスト被害の補償に詳しい弁護士に無料でご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
