家賃滞納で強制退去は可能?流れ・費用・すべきことを徹底解説
最終更新日: 2024年11月18日
- 賃借人の家賃滞納に困っている、なんとか賃貸物件から出て行ってもらう方法はないか?
- 賃借人を強制退去させたいが、どのような条件を満たす必要があるのだろう?
- スムーズに強制退去を進めたいとき、やはり弁護士に相談した方がよいのだろうか?
賃借人の家賃滞納に困っている賃貸人は多いことでしょう。
ただし、家賃滞納を理由とした強制退去には、いろいろな条件を満たす必要があります。
そこで今回は、不動産問題の解決に携わってきた専門弁護士が、家賃滞納で強制退去できるケース・できないケース、強制退去の手順等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 家賃滞納で強制退去を行えるのは長期間の滞納があり、賃貸人と賃借人の信頼関係が破綻している状態である場合に可能
- いきなり強制執行はできず、事前に連帯保証人への連絡や裁判等、様々な手続きを要する
- 不動産トラブルに詳しい弁護士からアドバイスを受けつつ、強制退去に関する手続きを進めた方がよい
家賃滞納を理由に強制退去させられるケース
強制退去とは、賃借人を現在入居している物件から強制的に退去させる方法です。
強制退去を実行すると、賃借人の生活に重大な影響を与えます。そのため、短期間の滞納があったからといって、安易に強制退去は行えません。
3か月以上の滞納
家賃滞納がある程度長期間にわたらないと、賃借人の強制退去は認められない可能性が高いです。
裁判所の判決では家賃滞納が3か月以上継続している状況の場合、強制退去を認める判断が一般的となっています。
3か月間にわたり、何度家賃を払うよう催促しても、支払う意思がないと認められる場合は、強制退去もやむを得ないと判断される傾向があります。
信頼関係の破綻
3か月以上の滞納に加え、賃貸人と賃借人の信頼関係がすでに損なわれている必要もあります。
たとえば、賃貸人の家賃の催促に対して賃借人が無視している、または「必ず家賃を支払う。」と言うがいっこうに支払おうとしない等のケースです。
一方、3か月以上の滞納があっても不可抗力などやむを得ない事情がある場合には、未だ信頼関係が破壊されているとまではいえないと判断される可能性があります。
ただ、滞納が長期化しているなら、賃貸人であるあなたは強制退去の準備を進めた方がよいでしょう。
家賃滞納を理由に強制退去させられないケース
賃借人が賃貸借契約のときに取り決めた約束を破った場合、賃貸人は速やかに賃借人に退去してもらいたいと考えるでしょう。
しかし、3か月以上の滞納の事実に加え、法的な手続きを経なければ、強制退去は認められません。
3か月未満の滞納
3か月に満たない滞納期間の場合、強制退去は認められない可能性が高いです。
確かに家賃滞納が発生していたら、賃借人は賃貸借契約に違反している状態です。しかし、短期間であれば、以前のように家賃の支払いを再開する可能性もあるでしょう。
賃借人が病気・ケガで入院した、就職先を探している等、何らかの理由で一時的に収入がなくなる事態はよくあるケースと言えます。
家賃滞納が一時的と見込まれる間は、強制退去の実行は難しいでしょう。
自己救済にあたる場合
賃貸人が法的な手順や裁判を経ずに、強制退去を実現しようとする行為は認められません。主に次のような行為は、賃貸人の不法行為や犯罪となる場合があります。
- 賃借人の部屋の鍵を勝手に交換し、入室できないようにした
- 無断で賃借人の部屋に入り、家財等を売却・撤去した
- 賃借人に対し、同じ日に何回も電話したり訪問したりしてプレッシャーをかけた
- 賃借人の部屋の玄関に「家賃払え!」と督促の張り紙をした
- 連帯保証人以外の人に督促をした 等
賃貸人であるあなたが家賃支払いを求める行動であったとしても、賃借人側から嫌がらせと判断され、深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
家賃滞納から強制退去までの流れ
賃借人に家賃滞納があったとしても、いきなり賃貸人が実力を行使するような強制退去はできません。
支払いの催促・内容証明郵便、連帯保証人への連絡等、様々な対応を経たうえで、最終的に強制退去が可能となります。
支払いの催促
まずは手紙やメール・電話等で家賃を支払うよう伝えましょう。
賃借人にこれまで滞納歴がない場合は、電話で伝えるだけでも構いません。
手紙やメールで催促する場合「期日までに支払いが確認できないときは、連帯保証人に請求する」という文言を記載しましょう。
賃借人は連帯保証人にも影響が出ると考え、迅速に家賃を支払う可能性があります。
手紙やメール・電話をかけても反応がない場合、直接部屋を訪問して支払いを催促します。
ただし、手紙やメール・電話・直接訪問いずれの場合も、1日何度も催促する方法は避けましょう。賃借人を精神的に追い詰める状況となってしまいます。
連帯保証人への連絡
賃借人との連絡が取れない、賃借人が支払いを無視または拒否している場合、賃貸借契約のときに設定されていた連帯保証人へ家賃支払いを請求します。
連帯保証人となるのは主に賃借人の親・兄弟が一般的です。連帯保証人宛に、支払い期日・振込先の口座番号について記載した手紙等を送付しましょう。
連帯保証人が家賃支払いに応じたなら、強制退去に関する手続きは行いません。
一方、賃借人は家賃保証会社を利用し、賃貸借契約を締結している場合があります。
この場合、家賃保証会社に家賃滞納事故が発生した連絡を行います。家賃保証会社ならば、賃借人の滞納した家賃を迅速に振り込むので安心です。
内容証明郵便
家賃滞納から1か月以上経過し、賃借人や連帯保証人いずれからも支払いがされない場合は、賃貸借契約解除について予告する内容証明郵便を、賃借人に送付しましょう。
内容証明郵便とは、郵便の内容・発送日・相手が受け取った日付等を郵便局が証明するサービスです。
内容証明郵便で賃借人に督促すれば、後日、裁判所に強制退去を申し立てるとき、「すでに賃借人へ督促をした。」という事実を証明できます。
内容証明郵便は地方郵政局長が指定した集配郵便局で申し込みます。窓口に提出するとき、同じ内容の書類を賃借人用・郵便局の保管用・自分用、計3部用意しましょう。
なお、提出のとき、郵便局員による内容確認のため封はしません。
契約解除
内容証明郵便で賃貸借契約解除を予告したにもかかわらず、指定した期日前に家賃を支払わない場合、予告通り賃貸借契約の解除を行います。
契約解除通知(賃貸借契約の解除)を受け、賃借人が反省し未払い家賃の支払いや退去する可能性もあります。
ただし、契約解除後も賃貸物件に居座る場合は、裁判所へ明け渡し請求訴訟を提起します。
裁判
賃貸物件の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所(賃貸物件の財産上価額が140万円以下の場合に可能)で、明け渡し請求訴訟の提起を行います。
訴訟提起のとき、必要な提出書類は主に次の通りです。
- 賃貸借契約書
- 内容証明郵便:送付した支払い催告・解除通知
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書
- 予納郵便切手、収入印紙
訴訟提起前に弁護士と話し合い、訴訟方法や以後に必要な手順についてよく確認しておきましょう。
強制執行
明け渡し請求訴訟で賃借人に立ち退き判決が言い渡されても、なおも判決に従わない場合は強制執行を申し立てましょう。
申し立てが認められれば、裁判所は賃借人に対し、期日までに立ち退きするよう要請する催告書を送付します。
期日までに賃貸物件を明け渡さない場合、裁判所の執行官が強制執行を開始します。執行官・専門業者が賃貸物件に向かい、部屋の中にある賃借人の家財を撤去します。
執行日を記載した催告書・公示書を掲示し、賃貸物件の鍵を交換したら強制退去は完了です。
家賃滞納による強制退去にかかる費用
強制退去にかかる費用は、全体で100万円程度に上る可能性があります。基本的に賃貸人であるあなたが負担しなければいけません。
費用の内訳および目安は次の通りです。
- 内容証明郵便の費用:1,300円程度
- 明け渡し請求の訴訟費用:81,000円程度(予納金65,000円、予納郵便切手代6,000円、印紙代10,000円)
- 弁護士費用:60万円~70万円
- 強制執行費用(執行官の出張費、業者に支払う費用等):30万円前後
高額な費用負担となります。そのため、家賃滞納のリスクを考慮し、賃貸借契約を締結するときは、賃借人にまず家賃保証会社と賃貸保証契約を結ぶよう要求しましょう。
家賃滞納で強制退去させるためにすべきこと
家賃滞納で賃借人を強制退去させる方法は、賃貸人であるあなたにも重い負担となります。
賃貸人と賃借人が穏便に問題を解決できるよう、法律のプロである弁護士のアドバイス、サポートも受けながら対応していきましょう。
話し合いによる解決を目指す
賃貸人と賃借人が粘り強く話し合い、家賃滞納の問題解決を目指しましょう。
支払日が過ぎても、ある程度待てばなんとか賃借人が家賃を支払える場合は、延期に合意する等して柔軟な対応が必要です。
また、「立退料」を渡す条件に、賃借人の自主的な退去を求める方法があります。確かに未徴収の家賃があるうえ、立退料の支払いも負担する場合、賃貸人にとって少なくない損失です。
ただし、裁判を起こす場合と比較して少ない費用に収まり、短期間で退去が完了できる場合もあります。
専門弁護士への相談
不動産の賃貸借トラブル解決に実績のある弁護士と話し合いをしましょう。
弁護士は家賃滞納の状況をヒアリングしたうえで、次のようなアドバイスを提供します。
- 家賃滞納問題の解消方法
- 裁判所に訴えるメリット・デメリット
- 強制執行までの流れ
- 弁護士を代理人にたてる有効性
弁護士が早い段階で賃貸人の代理人となれば、賃貸人に代わり賃借人と交渉し、自主退去が実現する可能性もあるでしょう。
弁護士が交渉に当たると、賃借人の方もいずれは訴えられてしまうと判断し、滞納問題の解決へ前向きになる場合があります。
家賃滞納で強制退去させたいなら弁護士へ相談を
今回は不動産問題の解決に携わってきた専門弁護士が、強制退去までの手順等を詳しく解説しました。
賃借人が家賃を滞納しているからといって、強引に賃貸物件へ入り込み家財を撤去する「自力救済」は認められません。様々な手続きを経たうえで、強制退去の実行が可能となります。
法律事務所の中には初回相談を無料で提供するところもあります。家賃滞納に悩んだら、まずは気軽に弁護士と相談し有益なアドバイスを受けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。