誹謗中傷の特定方法と流れ!被害者・加害者が知るべき対処策も解説

最終更新日: 2024年12月16日

誹謗中傷の特定方法と流れ!被害者・加害者が今すぐ知るべき対処策も解説

  • ネット掲示板で誹謗中傷を受けた。誹謗中傷した者を特定したい。
  • 誹謗中傷した者を特定するには、どのような方法があるのだろう?
  • ネット掲示板で誹謗中傷をしたが、どのような罪に問われるのか不安だ。

ネット上のSNSや掲示板で、特定の個人や法人を誹謗中傷する投稿が数多く存在します。

誹謗中傷の投稿をした者の特定は可能です。特定後は投稿者に対し損害賠償請求や、刑事告訴を行えます。

そこで今回は、ネット上の誹謗中傷問題の解決に携わってきた専門弁護士が、誹謗中傷した投稿者を特定する流れ、特定するときの注意点等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 誹謗中傷した投稿者を特定する方法として、「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」がある
  • 誹謗中傷する投稿者の特定には時間がかかる可能性もある
  • 誹謗中傷した投稿者も投稿された者も、専門弁護士に相談し対処方法を話し合おう

発信者情報開示・削除に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

誹謗中傷した投稿者は特定できるか

ネット上のSNSや掲示板で誹謗中傷された場合、投稿者に損害賠償請求や、刑事告訴を行えます。

ただし、その前に投稿者を特定している必要があります。特定する方法は「発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)」「発信者情報開示命令(同法第8条)」という手続きです。

出典:プロバイダ責任制限法 | e-Gov法令検索

発信者開示請求で可能

誹謗中傷した投稿者を特定する方法は次の2つです。

  • 発信者情報開示請求:ネット上のSNS・掲示板運営者に、IPアドレスの任意開示請求を行い、IPアドレス情報からプロバイダを特定後、プロバイダに投稿者の個人情報開示を求める方法。
  • 発信者情報開示命令:はじめから裁判所に個人情報開示の申立てを提起し、仮処分・発信者情報開示請求を一度に実行できる非訟手続き。

発信者情報開示請求・命令どちらの手続きで開示を求めるかは、あなた次第です。

開示請求・命令いずれかの手続きを経た後、投稿者の個人情報を保有するプロバイダから、投稿者氏名・住所等が開示されます。

特定できる人

発信者情報開示請求・命令を行うのは、基本的に誹謗中傷の投稿をされたあなたです。

次のようなケースでは、あなた以外の人が代わりに開示請求・命令を実行できます。

  • 自分以外の人に開示請求を任せたい→家族等を代理人にする
  • 誹謗中傷されたあなたが未成年→親権者を代理人にする
  • 法律のプロに開示請求を任せたい→弁護士を代理人にする

あなた以外の人を代理人としてたてる場合、弁護士を除き「委任状」の作成が必要です。あなたが作成し、開示請求・命令を申請するとき、代理人が委任状を提出します。

委任状には代理人氏名・住所・生年月日の他に「委任者〇〇は、〇〇を代理人と定め権限を委任する」と記載し、委任内容も明記しましょう。

忘れずに、委任した年月日・委任者(あなた)氏名・住所・連絡先を記載し、押印(実印が好ましい)を行い完成です。

開示請求で判明すること

発信者情報開示請求・命令で次のような発信者の情報がわかります。

  • 氏名
  • 住所
  • メールアドレス
  • 電話番号
  • 発信者IPアドレス、IPアドレスと組み合わされたポート番号
  • スマートフォンのインターネット接続サービス利用者識別番号
  • SIMカード識別番号
  • タイムスタンプ

ただし、発信者情報開示請求の場合、ネット上のSNS・掲示板運営者は発信者の氏名、住所、メールアドレスは把握していません。

IPアドレス判明後、発信者の契約プロバイダに開示を求める必要があります。

誹謗中傷した投稿者を特定する流れ

あなたが発信者情報開示請求を進めるならば、まずSNS・掲示板運営者に任意開示請求を実行します。

それだけではなく、発信者の契約プロバイダに開示を求めなければいけません。

IPアドレスの特定

まず、SNS・掲示板運営者に任意開示請求を求めます。

請求では誹謗中傷の投稿内容、投稿の証拠、侵害された権利等を、運営者に提示します。なお、投稿内容が消去されないように「ログ保存」も忘れずに依頼しましょう。

ただし、任意の開示請求なので運営者から拒否される可能性もあります。

運営者が開示に応じた場合、誹謗中傷の投稿に関するIPアドレス・タイムスタンプ等の情報が得られることでしょう。

IPアドレスが判明すれば、投稿者が契約しているプロバイダを特定できます。

プロバイダ特定

プロバイダが判明したら、投稿者の氏名・住所・メール等の開示を請求しましょう。

ただし、プロバイダに請求しても、すぐにあなたの要求には応じません。

まずプロバイダは投稿者に「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を通知します。意見照会書を通じて、投稿者に開示してよいかを尋ねます。

投稿者が開示に同意した場合は、プロバイダはあなたの開示請求に応じ、個人情報を開示します。

仮処分申し立て

SNS・掲示板運営者が任意開示に応じない場合、運営者を相手として「発信者情報開示仮処分」を裁判所に申し立てます(ログ保存なら、ログ保存の仮処分申立)。

申し立てのときは仮処分申立書や誹謗中傷の投稿の証拠、担保金等を準備しなければなりません。

あなたの申し立てが認められたなら、運営者は開示に応じる必要があります。ただし、開示されるのはIPアドレスやタイムスタンプ等です。

訴訟の提起

投稿者がプロバイダの通知した「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を確認し、開示拒否の回答をした場合、プロバイダもあなたの開示請求に応じない可能性が高いです。

その場合は、投稿者の契約プロバイダを相手として、裁判所に「発信者情報開示請求訴訟」を提起しましょう。

あなたの主張が認められれば、裁判所はプロバイダに投稿者の個人情報開示を命じます。

一方、発信者情報開示命令の場合は、最初から裁判所に申し立てる(非訟手続き)ので、仮処分・発信者情報開示請求を一度に実行可能です。

申し立てが認められたら、裁判所がSNS・掲示板運営者とプロバイダにログ保存(提供)命令、プロバイダに情報開示命令を行います。

情報開示

プロバイダからあなたに対して、投稿者の個人情報が開示されます。

あなたは投稿者の氏名や住所、メールアドレス、電話番号等を把握後、投稿者に損害賠償請求や刑事告訴が可能です。

なお、電話番号はSNS・掲示板を利用するときに登録していた場合、SNS・掲示板運営者から得られるケースもあるでしょう。

誹謗中傷した投稿者を特定するときの注意点

あなたが発信者情報開示請求・命令を行ったとしても、必ず投稿者が特定できるとは限りません。

IPアドレス等の保管期間、開示請求・命令が認められるまでの期間、費用面をよく検討しておく必要があります。

特定できないケースもある

開示請求の手続きがなかなか進まないと、IPアドレス等が消去されてしまう可能性もあるので注意しましょう。

SNS・掲示板運営者のIPアドレス保管期間は、一般的に約3〜6か月です(プロバイダのアクセスログの保管期間も同様に約3〜6か月)。

あなたが開示請求の手続きに手間取っていると、投稿者の個人情報が特定できなくなるかもしれません。

発信者情報開示請求の場合、運営者が任意開示請求・ログ保存に応じるなら、手続きはスムーズに進むことでしょう。

しかし、運営者に拒否された場合は、裁判所に発信者情報開示仮処分の申し立てが必要です。IPアドレスが開示されるまでに、約2週間〜2か月はかかります。

そのため、IPアドレスが判明したら、すぐにプロバイダに開示請求・訴訟を提起しなければいけません。

また、法律の素人が無理に開示請求の手続きを進めると、裁判所から「あなたの主張には理由がない。」「提出書類等に不備がある。」と指摘され、申し立てが認められなかったり、書類の追加を指示されたりする可能性があります。

「自分だけで開示請求の手続きを進めるのは難しい。」と感じたら、法律の専門家に頼む必要があるでしょう。

特定に時間がかかる

発信者情報開示請求・命令の手続きには裁判所が関与するため、投稿者の特定までに時間を要する可能性があります。

開示請求・命令の手続き開始〜プロバイダが情報開示を行うまでの期間は、概ね次の通りです。

  • 発信者情報開示請求:約半年~1年
  • 発信者情報開示命令:約3か月~半年

個人情報の開示は裁判所による慎重な審理が必要となり、いずれの手続きも数か月はかかってしまいます。

費用もかかる

投稿者の開示請求を行う場合、費用がかかる点に注意しましょう。

また、発信者情報開示請求と発信者情報開示命令では、かかる費用がそれぞれ異なります。

発信者情報開示請求:総額約20〜32万円(担保金含む)

発信者情報開示請求の場合、SNS・掲示板運営者とプロバイダが任意の開示に応じれば、裁判所の関与も不要なので、費用負担はほとんどかかりません。

しかし、実際は運営者・プロバイダいずれも、あなたからの開示請求を拒否する可能性が高いです。

そのため、あなたは発信者情報開示仮処分、発信者情報開示請求訴訟に関する費用を準備する必要があります。

発信者情報開示仮処分の費用は次のとおりです。

  • 申立手数料:1件につき2,000円分の収入印紙
  • 郵便切手:約3,000~6,000円
  • 担保金:約10~30万円

仮処分を申し立てる場合は、担保金を裁判所に納付します。担保金は仮処分命令が却下されたとき、運営者側への損害賠償の担保として納めるお金です。

裁判所にあなたの請求が正当であると認められた場合、担保金は返還されます。

発信者情報開示請求訴訟の費用は次のとおりです。

  • 申立手数料:1万3,000円分の収入印紙
  • 郵便切手:約6,000円

発信者情報開示命令:総額約4,000~7,000円

開示命令は非訟手続きなので、費用はとてもリーズナブルです。

  • 申立手数料:1件につき1,000円分の収入印紙
  • 郵便切手:約3,000~6,000円

なお、開示請求・命令の手続きを弁護士に任せた場合、弁護士費用として約50〜100万円を負担する必要があります。

法的な知識が必要

発信者情報開示請求・命令を行うには、ある程度の法律の知識が必要です。

法律の知識がないと、手続き時に必要な書類収集にも時間がかかってしまうことでしょう。

投稿者の特定は時間との勝負なので、トラブルもなく迅速に手続きを進めたいならば、弁護士に協力を求めた方がよいです。

誹謗中傷で特定されたら問われる罪

あなたがネット上のSNSや掲示板で誹謗中傷を書き込んだ場合、いずれ相手からあなたの個人情報を特定されてしまう可能性があります。

特定後、あなたは加害者として刑事告訴され、「名誉毀損罪」「侮辱罪」に問われるおそれもあるでしょう。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、特定の個人や団体の事実(主に誹謗中傷となり得る情報)を公然と摘示し、名誉を侵害する罪です。

投稿された誹謗中傷が本当であっても嘘であっても、具体的な内容でかつ、投稿をされた個人・団体の社会的評価が低下した場合、本罪が適用されます。

名誉毀損罪にあたるケースを紹介しましょう。

  • 「有名人〇〇は〇〇大学に親のコネで裏口入学した。あいつは漢字もろくに書けないバカのくせに。」
  • 「化学薬品会社〇〇はテロ国家に化学兵器を密輸している。あの会社は非常に危険だ。」

あなたが名誉毀損で有罪判決を受けたならば「3年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日〜拘禁刑に統一)又は50万円以下の罰金」に処されます(刑法第230条第1項)。

侮辱罪

侮辱罪とは事実を摘示しないものの、公然と特定の個人・団体を侮辱する罪です。

具体的事実を伴わず、特定の個人・団体に対し、たとえば「低学歴人間」「クソじじい・クソばばあ」「ブラック企業」「ダメ企業」等と投稿した場合が該当します。

あなたが侮辱行為で有罪判決を受けたならば「1年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日~拘禁刑に統一)若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます(刑法第231条)。

誹謗中傷を特定された後の対処策

あなたがネット上のSNSや掲示板で誹謗中傷を書き込んだ後、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が通知された場合、相手が個人情報の特定を進めている状況であるとわかります。

意見照会書をみて「自分の個人情報が特定されるのは時間の問題だな。」と感じたら、なるべく早く弁護士に相談した方がよいでしょう。

弁護士への相談

あなたの自宅に意見照会書が届き、今後の対応に悩んだら、速やかに弁護士と相談しましょう。

弁護士は意見照会書の内容を確認したうえで、次のような助言を行います。

  • 意見照会書で記載されている事実に誤りはないか
  • 相手の主張に反論したい部分がないか
  • 意見照会書に回答する場合のコツ
  • 意見照会書返送後の流れ
  • 相手との示談の重要性

相談の中で「弁護士に代理人を任せたら、最悪の結果は避けられそうだ。」と思ったら、委任契約を締結しても構いません。

弁護士には意見照会書の作成・回答の代行の他、示談交渉、訴訟や刑事告訴への対応を任せられます。

意見照会書への回答

あなたの自宅に、プロバイダから意見照会書が届いたとしても(メールで届く場合もある)、照会書の回答・返送は任意です。

つまり、開示請求に同意・拒否の回答をするかはあなた次第ですし、返送自体を拒否してもペナルティは受けません。

ただし、あなたが拒否回答または返送自体を拒否しても、いずれプロバイダは裁判所から開示を命じられてしまうことでしょう。

あなたが誹謗中傷の投稿をしたと自覚しているなら、同意する返送をした後、弁護士と今後の対応を協議した方がよいです。

一方、請求拒否の回答をするならば、相手方の主張のどのような部分が、自分の主張と相違しているので応じられないという旨を、明確に示す必要があるでしょう。

誹謗中傷の特定なら春田法律事務所にお任せを

今回はネット上の誹謗中傷問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、誹謗中傷した投稿者を特定する方法・手順等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は開示請求手続きやネット上のトラブル解決に豊富な実績を有する事務所です。まずは弁護士に誹謗中傷で悩んでいる事実を告げ、今後の対応を協議していきましょう。

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