開示請求でどこまでわかる?問われる罪・被害者・加害者が取るべき対応を徹底解説
最終更新日: 2024年11月30日
- ネット上で誹謗中傷の書き込みをされた。投稿者の特定は可能だろうか?
- 誹謗中傷の投稿者の情報開示が可能と聞いた。投稿者の情報はどこまでわかるのだろう?
- 私は誹謗中傷の投稿をした。投稿した相手に個人情報が特定されないか不安だ。
ネット上のSNSや掲示板に、個人や団体に関する誹謗中傷の投稿がある場合、誹謗中傷された側は投稿者を特定できます。
投稿者を特定するには、法律で規定された手続きを進めることが必要です。
そこで今回は、ネット上のトラブル解決に豊富な経験を持つ専門弁護士が、投稿者の開示請求をするとどこまでわかるのか、被害者・加害者それぞれの対処方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下の通りです。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 投稿者(加害者)の特定には「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」いずれかの方法を行う
- 特定された投稿者(加害者)は、刑事責任や民事責任を追及される可能性がある
- 誹謗中傷の被害者も加害者も、専門弁護士に相談し対処方法を話し合った方がよい
開示請求でどこまでわかるのか
開示請求が認められた場合、投稿者(加害者)の次の情報がわかります。
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- 電話番号(2020年8月から追加)
- 発信者IPアドレス、IPアドレスと組み合わされたポート番号
- スマートフォンのインターネット接続サービス利用者識別番号
- SIMカード識別番号
- タイムスタンプ
ただし、上記の情報が一気に開示されるわけではありません。
「発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)」の場合、SNS・掲示板の管理者(運営者)は発信者の氏名、住所、メールアドレスは把握しておらず、IPアドレス・タイムスタンプが判明します。
ただし、SNS・掲示板の利用時に電話番号が登録されている場合、管理者(運営者)から電話番号の開示も受けられる可能性があります。
IPアドレスが判明すると、投稿者(加害者)の契約しているプロバイダがわかるので、今度はプロバイダに開示請求を行えば、発信者の氏名や住所、メールアドレス、電話番号がわかります。
なお、プロバイダが投稿者(加害者)の情報開示を拒否する場合は、裁判所へ「発信者情報開示請求訴訟」を提起しましょう。
裁判所があなたの主張を認めれば、裁判所はプロバイダに投稿者(加害者)の情報開示を命じます。
一方、「発信者情報開示命令(同法第8条)」は、はじめから裁判所に個人情報開示の申し立てを行う非訟手続です。
裁判所があなたの申し立てを認めた場合、仮処分・発信者情報開示請求を一度に実行できます。
開示請求でどこまでわかるかを判断する基準
発信者情報開示請求・命令を申請したからといって、必ず投稿者(加害者)の個人情報が開示されるわけではありません。
情報開示を要求できるところはどこか、誰が開示請求できるのかも、よく確認しておきましょう。
開示相手側
開示を要求できる相手側は、「特定電気通信」を扱う事業者です。
ネット上のウェブサイトで、誰でも閲覧が可能な情報発信を行う事業者が対象です。具体的には次の事業者へ開示請求ができます。
- コンテンツプロバイダ:SNSや掲示板サイトの管理者(運営者)
- インターネットプロバイダ:インターネット通信業者
発信者情報開示請求・命令では、管理者(運営者)からIPアドレスの開示があれば、投稿者(加害者)の契約しているインターネットプロバイダが判明します。
投稿者(加害者)の契約中のプロバイダの情報開示により、氏名・住所・メールアドレス等の特定が可能です。
開示請求する側
開示請求できるのは誹謗中傷の投稿によって、自己の権利を侵害されたとする者です。
権利を侵害された個人はもちろん、法人や権利能力なき社団等も開示請求ができます。
なお、個人は本人だけでなく弁護士や家族を代理人にして請求が可能です(ただし、弁護士を代理人にする以外は委任状が必要)。
正当な理由の存在
権利を侵害されたあなたが、開示請求を行う場合には正当な理由が必要です。
主に次のような理由が、正当な理由といえます。
- 投稿者に削除要請をしたい
- 投稿者に損害賠償請求をしたい
- 投稿者を刑事告訴したい 等
一方、「誹謗中傷を行った投稿者に報復してやる。」「投稿者を社会的に葬ってやる。」という報復的な理由では、開示請求は認められません。
投稿者(加害者)の個人情報の開示が、自らの権利回復につながる旨を主張する必要があります。
開示請求でわかった相手が問われる罪
投稿者(加害者)の個人情報が特定できた場合、あなたは刑事告訴や損害賠償請求が可能です。
投稿者(加害者)には、主に次のようなペナルティを受ける可能性があります。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、あなたの事実(主に誹謗中傷となり得る情報)を公然と摘示し、あなたの名誉を侵害する罪です。
投稿された誹謗中傷があなたにとって真実でも虚偽でも具体的な内容であり、あなたの社会的評価が低下したならば、本罪が適用されます。
たとえば「〇〇(あなた)は自動車事故で対向車に乗っていた家族全員を死亡させている。それにも関わらず、自分は悪くないといって金銭賠償を拒んでいる。人間のクズだ。」という誹謗中傷が該当します。
投稿者(加害者)が名誉毀損で有罪判決を受けたならば、「3年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日から拘禁に統一)または50万円以下の罰金」が言い渡されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
侮辱罪とは、事実を摘示しないものの、公然とあなたを侮辱する罪です。
具体的事実はSNSや掲示板サイトに投稿しないものの、あなたに対して「低学歴」「価値のない人間」等と侮辱した場合が該当します。
投稿者(加害者)が侮辱行為で有罪判決を受けたならば、「1年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日から拘禁に統一)若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が言い渡されます(刑法第231条)。
肖像権侵害・プライバシー侵害
肖像権侵害・プライバシー侵害いずれも、刑法に規定されている罪ではありません。
ただし、あなたは投稿者の不法行為責任を理由に、「損害賠償請求」が可能です(民法第709条・710条)。
- 肖像権侵害:第三者が許可なくあなたの顔、容姿の画像や動画を投稿した
- プライバシー侵害:あなたの私生活に関する情報を勝手に投稿した
上記の権利侵害は、あなたと投稿者の話し合いで解決できますが、投稿者の住所地を管轄する裁判所に「損害賠償請求訴訟」も提起できます。
開示請求でどこまでわかるか被害者が取るべき対応
迅速に発信者情報開示請求または発信者情報開示命令の手続きを進めたい場合、前もって十分な証拠収集・保管を行いましょう。
SNSや掲示板サイトの管理者(運営者)、プロバイダ、裁判所に開示請求を申請する場合、証拠の提示が必要です。
証拠保管
あなたを誹謗中傷する内容がSNSや掲示板サイトに投稿された場合、該当する投稿をすべてスクリーンショットで撮影し、証拠を保管しましょう。
主に次の内容の保管が必要です。
- 誹謗中傷の投稿内容
- 投稿された日時
- 投稿と関連する前後の投稿
- 投稿されたスレッド 等
なお、パソコン画面の方がスマートフォンの画面より大きく、スクリーンショットでの撮影もしやすいです。
弁護士への相談
発信者情報開示請求または発信者情報開示命令の手続きを、自分の力だけで進めていくのが不安ならば、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
弁護士は誹謗中傷の投稿内容・拡散状態を確認し、次の助言を行います。
- 誹謗中傷の投稿がどのような罪にあたるのか
- あなたに対する権利侵害となっているのか
- 発信者情報開示請求と命令それぞれ手続きの説明
- 開示請求を申請するポイント
- 手続きに手間取ると想定され得るリスク
相談するうちに、「開示請求は弁護士に任せた方がよい。」と感じたら、そのまま委任契約を締結しても構いません。
弁護士はあなたの代わりに、開示請求に関する申請書の作成や、管理者(運営者)、プロバイダ、裁判所との対応を進めていきます。
開示請求でどこまでわかるか加害者が取るべき対処法
あなたが誹謗中傷の投稿を行ったなら、いずれ相手から個人情報が特定され、刑事責任や民事責任を追及される可能性があります。
誹謗中傷問題を穏便に解決したいなら、投稿者であるあなたも積極的に行動する必要があるでしょう。
投稿削除
誹謗中傷に該当しそうな投稿を、あなた自身がすべて削除しましょう。
投稿を削除すれば、誹謗中傷の拡散防止が可能です。また、投稿者であるあなたが、積極的に問題解決に動いていると相手方へアピールできます。
投稿削除を行っていけば、あなたが示談を申し出るとき、相手も交渉を前向きに検討することでしょう。
示談交渉
あなたが相手と示談を成立させれば、裁判所に損害賠償を訴えられたり、刑事告訴されたりするリスクを回避できます。
示談交渉時に取り決める事項は、主に次の通りです。
- あなたが反省し誹謗中傷した相手に謝罪、二度と悪質な投稿をしないと宣誓すること
- あなたが今後も投稿の削除、拡散防止に努めること
- あなたが相手に支払う示談金額、支払方法、期日
- 相手が損害賠償の訴えを提起しない、刑事告訴をしない(すでに告訴している場合は取下げる)旨
- あなたも相手も示談成立後は問題を蒸し返さないこと
- あなたが示談で取り決めた事項に違反すれば、法的措置を受ける旨
ただし、あなたが直接交渉をすれば相手方と口論となったり、相手方から交渉を拒否されたりするおそれがあります。
理性的かつ迅速に示談成立を目指したいなら、弁護士を交渉役にたて、相手と話し合った方がよいでしょう。
弁護士への相談
あなたが誹謗中傷の投稿の対応に悩んだら、ネット上のトラブルの交渉・裁判に詳しい経験豊かな弁護士と相談しましょう。
弁護士はあなたの行った誹謗中傷の投稿内容、どのように解決したいかをよく聴き、次の助言を行います。
- 投稿が誹謗中傷にあたるか
- あなたが特定された場合のリスク
- プロバイダから「意見照会書」が届いた場合の回答ポイント:プロバイダの情報開示に同意するか拒否するかの返答
- 相手との示談交渉の必要性
- 示談交渉が決裂した場合のリスク:損害賠償請求訴訟や捜査機関から逮捕される等
相談後、弁護士に代理人を依頼すれば、相手方との示談交渉はもちろん、裁判所や捜査機関への対応も委任できます。
開示請求でどこまでわかるか気になる場合は弁護士に相談を
今回はネット上のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、開示請求をするとどこまで投稿者の情報がわかるのか等について詳しく解説しました。
春田法律事務所では初回相談を無料で行っています。まずは気軽に弁護士と相談し、問題の解決につながる有益なアドバイスを受けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。