大麻の売人が捕まったらどうなる?逮捕から判決までの流れと対処法を解説!
最終更新日: 2025年04月01日
- 大麻を所持している。逮捕されてしまうとどうなるのか不安で仕方がない。
- 大麻の売人をやっているが、営利目的は罪が重いと聞いた。捕まったら一生牢屋に閉じ込められるのだろうか?
- 大麻に関する罪で逮捕されても減刑を目指したい。よい方法があれば知りたい。
大麻に関する法律は大幅に改正されており、大麻の栽培や製造、輸出入の他、譲渡・譲受、所持、施用(使用)も規制対象となりました。
大麻に関する主な規制法は、栽培は「大麻草の栽培の規制に関する法律」、栽培以外は「麻薬及び向精神薬取締法」の2つです。
これらの法律に違反して大麻を営利目的で扱った場合、非常に重い罰を受けることになるかもしれません。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、大麻の売人に科される刑罰、大麻に関する罪による逮捕後の刑事手続等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 大麻に関する罪で有罪となれば懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑。以下同じ)に処され、罰金刑が追加される可能性もある
- 大麻の売人は営利目的該当を理由として起訴される可能性が高い
- 大麻の売人でも減刑を目指したいのであれば、なるべく早く弁護士と相談した方がよい
大麻の売人に科される懲役刑
大麻の所持等は、自分や仲間内で施用(使用)・栽培する目的であっても、懲役に処される可能性があります。
大麻を売人として営利目的で施用(使用)・栽培すると、罪はさらに重くなります。
営利目的の使用
大麻は、2024年12月12日以降、麻薬及び向精神薬取締法の「麻薬」と位置づけられ、新たに大麻の施用(使用)が禁止されました。
大麻の売人として、営利目的での施用(使用)が発覚し有罪となれば、次のいずれかの刑が科されます(麻薬及び向精神薬取締法第66条の2第2項)。
- 1年以上10年以下の懲役
- 情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金
ケースによっては、懲役に加え、300万円以下の罰金に処されることもあります。
営利目的でない単純施用(使用)の場合は、7年以下の懲役となるでしょう(同法第66条の2第1項)。
営利目的の栽培
医療上の研究等のため大麻草の栽培を行う必要があるときは、厚生労働大臣や都道府県知事等から特別な免許を受けなければなりません。
免許も受けずに営利目的で大麻を栽培し有罪となれば、次のいずれかの刑が科されるでしょう(大麻草の栽培の規制に関する法律第24条第2項)。
- 1年以上の有期拘禁刑
- 情状により1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金
ケースによっては懲役に加え、500万円以下の罰金に処されるおそれもあります。
一方、営利目的ではない単純栽培の場合は、1年以上10年以下の拘禁刑となるでしょう(同法第24条第1項)。
大麻の売人が懲役刑に処されるまでの流れ
大麻の売人が逮捕されると、他の罪と同じ手順で刑事手続が進められます。
大麻の売人の場合は、通常、営利目的で大麻を扱っているので、捜査機関から早期に釈放される可能性は極めて低いでしょう。
逮捕
大麻の売人が逮捕されるきっかけは、主に次の3つです。
- 大麻購入者からの密告や警察の捜査で売人が特定されたのち、警察官から売買の現場を警察官におさえられて現行犯逮捕、または令状を持った警察官によって後日逮捕される
- 家族や近所の人から、大麻を大量に栽培しているらしいと警察へ通報されて、営利目的による違法な栽培が発覚し逮捕される
- 警察が繁華街を巡回中、たまたま不審者を発見し、販売目的で大量の大麻を所持していることを確認したため、現行犯逮捕される
逮捕された売人(被疑者)は、警察署で厳しい取り調べを受け、大麻を違法に扱った動機や経緯等を質問されます。
早期に釈放されなければ、警察署の留置施設に身柄を拘束されるでしょう。
通常、大麻に関する罪で被疑者が逮捕された場合、48時間以内に検察へ身柄を送致されます。
身柄送致
検察に身柄送致後、検察官からも大麻を違法に扱っていた動機等について取り調べを受けます。
検察官が「営利目的で大麻を扱っていた可能性が高い」と判断したときは、被疑者に他の大麻の隠し場所を問いただすため、引き続き身柄の拘束を決める可能性が高いです。
身柄拘束が必要と判断したときは、逮捕後72時間以内、かつ被疑者を受け取ったときから24時間以内に、検察官は裁判所に被疑者の勾留請求を行う必要があります。
勾留
裁判所が検察官の勾留請求を認めると、被疑者は留置施設で引き続き身柄を拘束されます。
勾留期間は原則10日です。ただし、やむを得ない事由がある場合、検察官の請求によりさらに10日間延長できます(刑事訴訟法第208条)。
勾留中、被疑者は捜査機関から取り調べを受け、証拠物の押収のため家宅捜索が行われる等捜査が進んでいきます。
起訴
大麻に関する捜査終了後、検察官は被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。
営利目的の場合、起訴される可能性が高いですが、次のような場合は不起訴になる可能性もあります。
- 被疑者が大麻を違法に扱っていなかった→嫌疑なし
- 大麻を違法に扱っていた証拠が乏しい→嫌疑不十分
犯罪の事実は明白でも、情状酌量の余地があるときは「起訴猶予」となる場合もあるでしょう。
ただし、違法に大麻を扱っていたことがある場合、起訴猶予は認められない可能性が高くなります。
起訴された場合は刑事裁判に移行し、被疑者は「被告人」と呼ばれ、公開の法廷に出廷しなければなりません。
刑事裁判
第1回公判期日の流れは次の通りです。
2.検察官が起訴状朗読
3.裁判官から被告人に黙秘権が認められる旨を告知
4.起訴状の内容が誤っているか否かを確認(罪状認否)
5.冒頭陳述(被告人が大麻を違法に営利目的で扱っていた旨、被告人の経歴・前科等を検察官が述べる)
6.供述調書等の証拠調べ・被告人等に質問(証拠調べ)
7.検察官が論告求刑・弁護人は被告人を弁論
8.裁判官が被告人へ意見陳述の機会を与え結審
被告人が大麻の密売等を認めている場合は、概ね2回の公判期日で裁判は終了するでしょう。
しかし、被告人が大麻に関する罪を否認しているときや、事実関係が複雑なときは公判期日が何回も行われ、判決までに1年以上かかるケースもあります。
判決
公判期日における検察側・弁護側の主張内容、提出された証拠等を考慮し、裁判官が有罪か無罪かの判決を言い渡します。
判決内容は、次のいずれかになるでしょう。
- 実刑判決:被告人は刑事施設に刑期を終えるまで収容される。
- 執行猶予付き判決:被告人が執行猶予期間中(1年〜5年程度)、通常の社会生活を送れる判決。当該期間が無事に経過すれば、裁判官からの刑の言渡しは効力を失う。
- 無罪判決:被告人が刑罰を受けない判決。
ただし、執行猶予付き判決を受けても前科は付くので、大麻に関する罪が消えるわけではありません。
なお、検察側・弁護側双方とも、判決に不服がある場合は、上級裁判所へ控訴できます。
大麻の売人として逮捕された場合の対応策
大麻の売人として逮捕された場合でも、動揺せずに今後の対応を検討しましょう。
弁護士と相談できる状況であれば、迅速に的確なアドバイスやサポートを得られます。
弁護士への相談
大麻の売人が「警察に逮捕されてしまうかもしれない」と不安を感じたときは弁護士に事情を話し、今後の対応の仕方を相談してみましょう。
弁護士は事情を聴いた後、次のようなアドバイスを行います。
- 大麻の売人として罪を問われた場合、どのくらいの刑に処されるか
- 取り調べを受けるときの注意点
- 大麻に関する罪で逮捕後、どのような弁護活動を行うか
- 起訴され刑事裁判となったときの流れ
- 営利目的でも減刑を得る方法
弁護士は減刑を得るための手段として、自首や捜査協力、再発防止策等を提案します。
弁護士に私選弁護人を依頼しておけば、逮捕されてもすぐに弁護士と面会できるでしょう。
ただし、大麻に関する罪で現行犯逮捕されたときは、本人が弁護士に相談したり、私選弁護人を依頼したりする余裕はありません。
その場合は、警察官に家族へ連絡したいと申し出て、家族から弁護士に依頼してもらうとよいでしょう。
反省の態度の主張
自分の罪を軽くするには、大麻に関する法律違反を後悔し、反省する必要もあります。
自分で実際に施用(使用)してはいなくとも、営利目的で大麻を扱っている以上、本人が反省の意を示さないと、捜査機関や裁判所の心証はよくなりません。
反省の意を強く示して積極的に捜査機関の取り調べに応じ、大麻等の証拠物のありかを自供すれば、裁判所が減刑する可能性も出てくるかもしれません。
犯罪関与者との関係の断ち切り
大麻の売人は反社会的勢力とつながっているケースも少なからずあるでしょう。
逮捕された本人が捜査機関や裁判所に、反社会的勢力との関係を断つと明言すれば「社会復帰できる可能性がある」と判断され、減刑されるかもしれません。
その場合、反社会的勢力だけではなく、大麻の密売を本人に勧めた友人や知人、恋人等犯罪関与者との関係を断ち切ることも重要です。
再犯防止策の作成・実行の決意
大麻との関係を断ち切る説得力のある再発防止策を明確に示せれば、減刑を得られる可能性があります。
家族が反社会的勢力との関係を断ち切るよう監視するのも、有効な再発防止策の1つです。
また、逮捕された本人が大麻に依存していた場合は、本人が依存から脱却するための治療も欠かせません。
そのため、薬物依存者専用の回復支援施設でのリハビリや、専門医療施設の通院治療を受ける説得力のある計画を立て、実行する決意を裁判官等に伝えましょう。
自首の検討
警察からの逮捕を待つよりも、自分から自首することを検討してみましょう。
自首とは、大麻を違法に扱っている事実や密売人が特定されていない段階で、捜査機関に犯行を申告する方法です。
被告人が自首して捜査に全面的に協力したことを、裁判官が斟酌し、減刑を決める可能性もあります。
大麻事件の刑事罰を軽くするための弁護士の活動
大麻の売人が減刑を得るためには、弁護士の助けが必要です。
弁護士は、依頼者のために減刑を目指し、弁護活動を進めていきます。
事実の確認
弁護士は大麻で逮捕された状況や経緯等を慎重に確認し、的確なアドバイス・サポートを行います。
- 大麻の密売を認めている場合
捜査機関に大麻の入手ルートを本人が詳しく打ち明けるよう指示、弁護士は本人が更生プログラムを受けることを捜査機関に説明(大麻に依存していた場合) - 大麻の密売を否認している場合
犯していない罪を本人が自白しないように指示、弁護士は本人から警察官の職務質問等の状況をヒアリングし違法性がないか確認して必要な主張をする
弁護士は、本人が売人として大麻に関わった事実の有無や、逮捕時の状況等を詳しく聴き、ケースに応じた弁護活動を展開していきます。
取り調べ対応のアドバイス
弁護士は、取り調べを受けるときの注意点についてアドバイスします。
- 黙秘権や供述拒否権がある旨
- 供述調書をよく確認し、事実と異なる内容があれば署名・押印を拒否すべき旨
- 取り調べのとき虚偽を述べることは不利益となる旨
捜査機関が取り調べを行ったときに被疑者の供述を記録した供述調書は、起訴後の刑事裁判で重要な証拠となります。いったん供述調書が作成されると、調書内容を覆すのは非常に困難です。
そのため、弁護士は本人に対し、取調官の誘導尋問や威圧的な取り調べに屈することなく、不利な自供を行わないよう助言します。
取り調べを受けるときに弁護士が警察署内にいれば、警察側も違法な取り調べを行いにくくなるでしょう。
更生・治療方針の相談
本人が大麻に依存していたときは、弁護士が更生のための相談に乗ります。
弁護士が大麻依存から脱却するための専門医療機関や更生支援団体を知っている場合は、紹介することもあるでしょう。
専門医療機関での治療や更生支援団体でリハビリを受ければ、大麻の施用(使用)等を再び繰り返すリスクを軽減できる可能性があります。
また、専門医療機関での診断書・カルテ、更生支援施設の入所証明書等を検察官や裁判官に提出すれば、更生する決意をアピールできます。
自首の相談
自分一人で自首する勇気がないときは、弁護士と相談してみましょう。
弁護士が自首に付き添う「自首同行」を依頼できる場合もあります。弁護士は、自首する手順をアドバイスするだけでなく、自首する前に準備する自首報告書等の作成も代行します。
自首先の警察署の担当者との調整も弁護士に任せられるので安心です。
警察署に出向いたら、弁護士から事前に聞いていた取り調べのときの注意点をよく思い出し、大麻を扱った動機や経緯について申述しましょう。
大麻に関する刑事事件なら春田法律事務所まで
今回は数多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、大麻の売人が減刑を得るための方法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、刑事事件の弁護活動に力を入れている法律事務所です。大麻の売人をしていて逮捕されるのが不安なときは、弁護士と対応の仕方をよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。