任意同行は断れる?拒否のリスクと正しい対応方法を弁護士が解説

2026年06月02日

任意同行は断れる?拒否のリスクと正しい対応方法を弁護士が解説

突然、警察官から「署まで話を聞かせてほしい」「任意同行をお願いします」と声をかけられたとき、あなたはどう対応すべきでしょうか。

「断ったらもっと怪しまれる?」「断ることはできるの?」——このような疑問を持つ方は多いです。

結論から言えば、任意同行は法律上断ることができますただし、断り方・状況によってはリスクが生じることもあります。

この記事では任意同行の法的性質・断り方・注意点を弁護士が詳しく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士

「家族が逮捕された」「示談したい」など、300件以上の刑事事件のご相談に対応してきました。(※2026年3月時点)これまでの実務経験をもとに、法律のポイントを分かりやすく解説しています。

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目次

任意同行とは何か?

任意同行の法的性質

任意同行とは、警察官が犯罪捜査のために容疑者・参考人に対して「警察署まで同行してほしい」と依頼することです。

法律上は任意(自由意思による同意)が前提であり、逮捕とは明確に異なります。警察官職務執行法第2条では、警察官は「質問するため、その者を付近の警察署に同行させることができる」と定めていますが、「強制的に同行させることができる」とは書かれていません。

また刑事訴訟法第198条は、被疑者が「取調べに応じなければならない」とは定めておらず、任意同行はあくまで協力要請です。

逮捕との違い

任意同行は「お願い」であり、逮捕は「強制的な身柄拘束」です。両者の違いは以下のとおりです。

項目

任意同行

逮捕

法的根拠

警職法2条・刑訴法198条

刑訴法199条・210条等

強制力

なし(任意・協力要請)

あり(強制)

断れるか

原則断れる

断れない(逃亡は罪になる)

退出できるか

原則いつでも退出可能

退出できない(身柄拘束)

令状

不要

令状(逮捕状)が原則必要(現行犯を除く)

所持品検査

任意に限る

強制捜索が可能

 

任意同行と「実質的な逮捕」の境界線

注意が必要なのは、実際の現場では任意同行と逮捕の境界が曖昧になるケースがあることです。たとえば複数の警察官に囲まれた状態で「任意同行をお願いします」と言われると、実質的に断れない状況が生まれることがあります。

このような「外形上は任意だが実質的には強制」の状態を「実質的逮捕」と呼び、令状なく行われた場合は違法捜査となります。弁護士に相談することで、こうした違法捜査への対応も可能になります。

任意同行は断れる?

法律上は断ることができる

刑事訴訟法第198条第1項は「被疑者は、逮捕または勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、または出頭後、何時でも退去することができる」と定めています。

つまり任意同行の要請を断ること・途中で退出することは法律上の権利です。警察官がこれを強制することは違法です。

ただし現実には断りにくい場面がある

とはいえ、複数の警察官から直接「一緒に来てほしい」と言われると断りにくいのが現実です。特に以下の状況では断ることがリスクになる場合があります。

  • 警察がすでに逮捕状を取得しているが、まず任意同行を試みている場合
  • 断ることで「逃走のおそれあり」「証拠隠滅のおそれあり」と判断されて逮捕状が取得されやすくなる場合
  • 協力的でないと判断され、捜査が不利な方向に進む場合

これらのリスクを踏まえた上で「断るかどうか」を判断するためには、弁護士のアドバイスが不可欠です。

任意同行を求められたときの正しい対応

まず弁護士に連絡する

任意同行を求められたら、その場で「弁護士に相談してから判断します」と伝えましょう。弁護士への相談を理由に断ることは正当な権利です。警察官が弁護士への連絡を妨害することは違法です。

弁護士に連絡できない場合は「少し時間をください」と伝え、時間を確保してください。

刑事事件で弁護士に相談・依頼するメリットや費用については、以下の記事で詳しく解説しています。

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弁護士と状況を確認する

弁護士のアドバイスを受けた上で、同行するかどうかを判断します。弁護士は以下の点を確認します。

  • 逮捕状が取得されているかどうか(取得済みなら断っても逮捕される)
  • 参考人としての呼び出しか、被疑者としての呼び出しか
  • 同行した場合の取調べのリスク
  • 同行を断った場合のリスク

同行する場合は取調べ対応の指示を受ける

弁護士が取り調べに立会いできない場合でも、取調べ前に「黙秘権の行使」「供述調書への署名拒否の方法」「いつでも退出できること」などの権利内容を教えてもらえます。

警察の事情聴取で供述する際の注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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任意同行中の権利

いつでも帰れる

任意同行中はいつでも「帰ります」と言って退出できます。警察官が実力で引き止めることは違法です。帰ると告げた後に逮捕状なしで引き止められた場合、それは実質的な逮捕であり違法捜査になる可能性があります。

黙秘権を使える

任意同行中の取調べでも黙秘権(供述拒否権)は行使できます。「弁護士の指示がある前に話しません」「この質問には答えません」と伝えることは権利です。黙秘したことを理由として不利益に扱うことは法律上禁じられています。

警察からの呼び出しへの適切な対応や黙秘権については、こちらの記事をご覧ください。

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供述調書への署名を拒否できる

取調べ中に作成された供述調書(取調官が記録した話の内容)への署名・押印を拒否できます。内容に誤りや不本意な記述がある場合は、必ず修正を求めてから署名・指印するか、署名・指印を拒否してください。一度署名した調書は後から取り消すことが非常に困難になります。

弁護士への電話は認められる

任意同行中でも、弁護士への電話・連絡は原則として認められます。「弁護士と話すまで待ってほしい」と伝えることができます。

任意同行を断った場合のリスク

逮捕状が取得されるリスク

正当な理由なく任意同行を断り続けると、逃亡の恐れ及び罪証隠滅の恐れがあると認められてしまい、警察が逮捕状を取得して逮捕に踏み切る可能性が高まります。逮捕状が取得された後は、令状に基づいて強制的に連行されます。

心証が悪くなるリスク

任意同行を断ることで「証拠を隠そうとしている」「逃げようとしている」「反省していない」と捜査官に判断される場合があります。これが後の処分判断に影響する可能性は否定できません。

断り方が重要

任意同行を断る場合は「弁護士に相談してから判断します」という理由で断ることが最も安全です。理由なく強硬に断ると不審に思われます。弁護士への連絡は、その場で認めてもらう権利があります。

よくある状況と対応例

突然の任意同行要請に戸惑ったケース

状況

30代会社員男性。職場の駐車場に警察が来て「詐欺事件に関係して話を聞かせてほしい」と言われた。同僚の前で断ることができず、そのまま署まで同行してしまった。取調べが3時間に及び、調書に署名を求められた。

対応

取調べ終了後に家族から弁護士事務所に連絡。弁護士が即日面談し、署名した調書の内容を聴取すると、不利な供述をしたことが分かったため、次回以降の取調べは弁護士が対応方針を指示することとした。

→ 結果:その後の取調べは「弁護士の指示がある前に話しません」と伝え黙秘。在宅のまま捜査が継続されたが、最終的に不起訴処分となった。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

「断れる」と知らずに何度も任意出頭したケース

状況

20代男性。在宅で窃盗事件の捜査を受けており、警察から「また話を聞きたい」と呼ばれるたびに断れることを知らず出頭していた。計5回の取調べで調書に署名を繰り返しており、読み上げられた書面の内容が事実と異なる箇所があると後から気づいた。

対応

弁護士に相談し、弁護士が警察に「今後の任意出頭は弁護士の同行または事前確認を条件とする」と連絡。これまでの調書の信用性を争うため、録音・証人確保を進めた。

→ 結果:調書の任意性・信用性を争う主張が一定程度認められ、処分保留で釈放。最終的に起訴猶予となった。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

任意同行を断ったら逮捕状が取得されたケース

状況

傷害事件で任意同行を求められたが、弁護士未選任のまま自己判断で「行かない」と断った。翌日、警察が逮捕状を持って自宅に来た。

対応

逮捕後に当番弁護士を呼び、その後私選弁護人として受任。「任意同行を断った事情」を弁護士が整理。被害者との示談交渉を最優先に進めた。

→ 結果:被害者と示談成立。示談書を情状証拠として提出し執行猶予付き判決を獲得。任意同行を断った経緯は量刑に大きな影響を与えなかった。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

参考人として呼ばれたが被疑者扱いに変わったケース

状況

「参考人として話を聞きたい」と任意同行を求められ署に行ったが、取調べが長時間化し、次第に「あなたが犯人ではないか」という内容に変わっていった。途中で帰れるのかわからなくなり、混乱した状態で家族に電話。

対応

家族から弁護士に連絡し、弁護士が警察署に電話。「参考人として来た人物を被疑者として取り調べるなら弁護士の立会いを求める」と伝えた。弁護士が即日対応し退出を実現。

→ 結果:翌日に弁護士同行で任意出頭。不当な誘導を防いだ上で事情説明を行い、最終的に参考人として捜査が終結。本人は不起訴処分となった。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

任意同行の後、在宅事件として捜査が続く場合の呼び出し時期や流れについては、以下の記事で解説しています。

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任意同行に関するよくある質問(FAQ)

Q:家族が任意同行された場合、すぐに面会できますか?

A:任意同行中は逮捕されていないため、本人が同意すれば会いに行けます。ただし警察署内で自由に話せる状況は限られます。弁護士であれば原則いつでも接見できます。まず弁護士に連絡することをお勧めします。

Q:任意同行中に逮捕されることはありますか?

A:あります。取調べ中に犯罪の疑いが強まった場合、その場で通常逮捕される場合があります。また、任意同行に応じるために警察署に来ている最中に逮捕状が執行されることもあります。

Q:取調べで「黙秘したら怪しまれる」と言われました。黙秘してよいですか?

A:黙秘権は憲法38条で保障された権利です。黙秘したことを「有罪の証拠」として裁判所が使うことは禁じられています。取調官が「黙秘すると不利になる」と言うのは威圧的な表現であり、法的根拠はありません。

Q:任意同行の要請を電話で受けた場合も断れますか?

A:はい、電話での要請も断ることができます。「弁護士に相談してから折り返します」と伝えることが最善です。電話での要請には特に強制力はありません。

Q:職場・学校に警察が来た場合、その場で断れますか?

A:断ることは権利として認められますが、職場・学校という状況では周囲の目もあり、強く断りにくいケースがあります。「弁護士に相談してから返答します」と伝え、その場を離れることが現実的な対応です。

まとめ:任意同行は断れるが、弁護士への相談が最善策

任意同行は法律上断ることができますが、拒否の仕方・タイミングを誤ると逮捕リスクが高まります。

正しい対応のポイントをまとめます。

  • まず弁護士に連絡
    「弁護士に相談してから」と伝えて時間を確保する
  • 黙秘権を行使する
    任意の取調べでも黙秘権は認められる
  • 調書への署名を急がない
    内容を確認し、不本意な記述には署名しない
  • 退出は権利
    「帰ります」と言えばいつでも帰れる
  • 断り方が重要
    理由なく強硬に断ると逆効果になる場合がある

「任意同行を求められた」「取調べが続いている」という状況では、まず弁護士に相談してください。

起訴された後の流れや生活への影響、取るべき対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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