高額な離檀料を請求されたら裁判?対処法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月08日
墓じまいをしようとしたらお寺から拒否されている
高額な離檀料を請求されたらどうすればいい?
離檀料の相場は?
近年、墓じまいが増えており、それに伴いお寺と檀家との間で離檀料をめぐって揉めるケースも増えています。
今回はお墓や離檀料についての専門弁護士が離檀料の基礎知識や対処法について解説します。
離檀料などで弁護士によくある相談
お墓が公営墓地ではなく寺院墓地にある場合、墓じまいにあたり、墓地管理者である住職とトラブルになるケースはよくあります。
ここではどのようなトラブルがあるのか、弁護士によるあるご相談についてみていきたいと思います。
- 高額な離檀料の請求
- 遺骨を引き渡さない
- 未納管理費等を遡って請求
高額な離檀料の請求
しばしばメディアで見聞する問題に、墓じまいの際に住職から200万円、300万円の離檀料を求められたというものがあります。
この離檀料のトラブルについては、後ほど詳しくご説明します。
遺骨を引き渡さない
高額な離檀料の請求はないけれども、墓じまい、離檀に反対して住職が墓じまいに協力をしてくれず、遺骨の引き渡しを拒否するというトラブルもしばしば見聞します。
この点も、高額な離檀料と同様の妨害行為です。後ほど詳しくご説明します。
未納管理費等を遡って請求
墓じまいをするケースの中には、長年管理費の支払いもなくお墓が放置されており、お寺から墓じまいを求められるというケースはよくあります。
この場合、高額な離檀料の請求や、遺骨の引渡拒否はなくとも、滞納していた数年分の管理費を一括で支払うよう求められることはよくあります。
墓地管理費は支払期日から5年間を経過することで消滅時効にかかりますので、法的には、それ以前まで遡って支払う義務はありません。
もっとも、後腐れなく墓じまいをするためには、消滅時効にかかわらず、滞納していた管理費を支払うことも検討されてよいでしょう。
離檀料でもめたときの対処法を弁護士が解説
近年墓じまいが増加していることにともない、墓じまいの際にお寺とトラブルになるケースが非常に増えています。
その多くの場合が、離檀料にかかわるトラブルです。ここでは、離檀料に関して基礎からご説明します。
- 離檀料の基礎
- 高額な離檀料を請求された場合の対応
- 高額な離檀料を請求した寺院の法的責任
- 埋蔵証明書に代わる書面の提出
- なぜお寺とのトラブルが多発しているのか?
離檀料の基礎
離檀料とは、寺院墓地のお墓を墓じまいし、お寺との檀家関係を解消する場合に、檀家からお寺に支払うお布施のことをいいます。お世話になったお寺に対する謝礼のようなものと考えてよいでしょう。
離檀料の金額は、お寺によって異なりますし、檀信徒における立場やお寺との付き合いの長さなどによっても金額は異なることがあります。離檀料の相場は、概ね10万円から30万円ほどです。
墓地使用契約や寺院墓地規則に離檀料の定めがない限り、離檀料について明確な法的根拠はありません。そして、離檀料について契約や規則に記載されていることはほとんどありません。
そのため、原則として、離檀料を支払う法的義務はありません。
もっとも、この点については指針となる裁判例が未だありません。そのため、裁判になった場合に、相場の金額の離檀料であれば、慣習や条理などを法的根拠として、その支払いを命じられる可能性は否定できません。
高額な離檀料を請求された場合の対応
墓じまいは墓地使用者が自由に行えるものです。
ところが、離檀を申し入れたところお寺から高額な離檀料を請求され、それを納めない限り埋蔵証明書は交付しない、遺骨を引き渡さないという対応をとられるというケースがしばしばあります。
埋蔵証明書がなければ原則として改葬はできませんし、改葬はせず手元供養をする場合も遺骨を引き渡してもらえなければそれもできません。
住職と話し合った結果、納得のいく離檀料の金額に落ち着いたとしても、指定石材店がお寺の意向を組んで相場よりも高額なお墓の解体費用を請求してくることがあります。
このような妨害にあった場合に、住職に事前に通知することなく、自身で依頼した石材店に工事を強行してもらうことはできるのでしょうか。
墓地使用者には墓地の通行権がありますし、墓石や焼骨の所有権は墓地使用者にあります。
そのため、このような強硬手段をとったとしても基本的に違法行為にはなりませんが、工事の際に寺院側とトラブルが発生する可能性がありますのでお勧めはできません。
適正な手続きで対応するには、弁護士に依頼をして交渉をする、それでも寺院が応じない場合には、遺骨返還請求訴訟を提起することが必要となります。ほとんどの場合、裁判までは至らずに交渉で解決されています。
高額な離檀料を請求した寺院の法的責任
墓地使用者には信教の自由があります。
高額な離檀料を求め、埋蔵証明書を交付しない、遺骨を引き渡さないという対応は、墓地使用者の信教の自由を侵害する不法行為となり、損害賠償責任が発生しかねませんのでお寺としても注意が必要です。
埋蔵証明書に代わる書面の提出
改葬するときは、原則として、お寺から埋蔵証明書を交付してもらう必要があります。
もっとも、お寺がそれに応じてくれない場合には、埋蔵証明書に代わって、「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」(墓埋法規則第2条2項1号)を提出することが認められています。
どのような書面が必要になるかは市町村によって異なりますので、市区町村役場の担当部署に確認しましょう。
ただし、このように法律上、埋蔵証明書に代わる書面の提出が認められており、また行政の通達でも同様に解釈されているにもかかわらず(昭和30.2.28衛環第22号)、役所の担当者があくまで埋蔵証明書を提出するよう求めるケースが多いのが現状です。
離檀料などの問題を避けるには?
墓じまいをしようとしたら、お寺から高額な離檀料を請求された、遺骨を引き渡してくれないといったトラブルが近年、多発しています。
昨今、お寺の経済事情が厳しいので、お寺が収入源を失う墓じまいに抵抗しているというような論調も見られます。
確かに、そのような考えも全くないとは言い切れませんが、このようなトラブルの主たる原因は、お寺と檀信徒との付き合いに関する考え方のギャップにあります。
若い世代は、お寺との付き合いを大切にしてきた祖父母の世代とは信仰心、価値観が大きく異なります。そのため、お盆にもお寺に顔を出さず、お墓は放置され、管理費も滞納されているというケースが多々あります。
長年お寺に足を運ばず、墓地の管理費も滞納が続いていたところ、突如、墓じまいをしたいと言われれば、お寺としてもそんな非礼なことはないだろうと思うのは当然でしょう。
また、代々、先祖を供養してきたお寺に対して何ら感謝の気持ちを示すことなく、マンションの解約のようにドライな対応をされればお寺としても快くはないでしょう。
お寺と檀信徒、いずれが他方の考え方に歩み寄るべきなのかは一概には言えませんが、弁護士の立場から言えることは、無用なトラブルを回避するために、檀信徒としては、お寺に理解を示し、長年、先祖を供養してくれたことに対する感謝を示しつつ、墓じまいのお話を進めるべきでしょう。
まとめ
以上、離檀料のトラブルについて解説しました。
お寺と離檀料などで揉めてしまったときは、専門弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。