不倫・浮気問題における求償権について

不倫・浮気問題における求償権について

2019年07月15日

はじめに

夫や妻の不倫が発覚し浮気相手に不貞慰謝料請求するときには、浮気相手の「求償権(きゅうしょうけん)」に注意が必要です。

求償権のことを考えておかないと、せっかく不貞慰謝料を支払ってもらっても後からお金を取り戻されてしまうおそれがあります。

今回は不倫問題における「求償権」についてご説明します。

求償権とは

不倫行為は、民法の不法行為にあたり、不倫をした二人は共同不法行為者となります。そして、二人は、不倫をされた配偶者に対して、連帯債務者して不貞慰謝料を支払う義務を負います。

この不倫をした二人には、不倫行為について責任の割合があり、一方が自分の負担すべき割合を超えて不貞慰謝料の支払いをしたときには、他方に対して負担割合を超えた支払った金額の支払いを請求(求償)することができます。これが「求償権」です。

以下、詳しくご説明します。

不倫慰謝料は配偶者と浮気相手の連帯債務

求償権について理解するためには前提として、不倫行為に関する法的理解が必要です。

不倫行為においては、不倫をした配偶者と浮気相手が加害者、不倫をされた配偶者が被害者という構図になっています。
つまり不倫をした配偶者と浮気相手は共犯者という立場にあり、ともに不倫行為について責任を負う立場にあります。そのため、不倫をした二人は、連帯債務者として、不倫をされた配偶者に対して「連帯して」不貞慰謝料を支払う義務があるのです。

連帯債務と求償権

この「連帯して」というのは例えば、不倫をされた配偶者が被った精神的苦痛に対して支払われるべき不貞慰謝料が100万円のケースを考えると、不倫をされた配偶者は、自身の配偶者に100万円全額を請求することも、浮気相手に100万円全額を請求することも、それぞれに50万円ずつを請求することもでき、それぞれへの請求金額を自由に決められます。

もっとも、二人から100万円ずつの支払いを受けることはできず、例えば、不倫をした配偶者の方が既に60万円を支払っているのであれば、浮気相手は残り40万円を支払えば済むということになります。

不倫の責任割合に関する判例

レイン対債務者である不貞配偶者と不貞相手との責任割合について、多くの判例は、不貞配偶者に第一次的な責任があり、不貞相手の責任は副次的と判断しています。

例えば、東京地判決平23(ワ)32980号は、
「婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務,協力義務によって維持されるべきものであり,不貞行為あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞行為を働いた配偶者にあるというべきであって,不貞行為の相手方において自己の優越的地位や不貞配偶者の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて不貞配偶者の意思決定を拘束したような特別の事情が存在する場合を除き,不貞行為の相手方の責任は副次的というべきである。」と述べています。

そのため、求償請求の場面においては、連帯債務者である不貞配偶者と不貞相手との責任割合は6:4と判断されることが多いでしょう。もっとも、不貞配偶者の執拗な働きかけによって不倫関係が始まった場合などには不貞配偶者と不貞相手との7:3と判断されることもあります。

求償されるとどのような問題があるのか

不倫不貞慰謝料を請求した後に求償権が行使されると、どのような問題があるのでしょうか?

配偶者と離婚しない場合

不倫が発覚した後、不倫をした配偶者と離婚はせずに、夫婦関係を続けていく場合、ほとんどの夫婦は、家計を一つにしていますので、自身の配偶者に対して求償をされると家計から浮気相手にお金が出ていくことになります。

せっかく納得のいく金額の不貞慰謝料を支払ってもらっても、その後に、そのうちの半分ほどの金額が家計から浮気相手に出ていくとなると、不貞慰謝料を支払ってもらった意味が半減ししてしまいます。

配偶者と離婚する場合

不倫が原因で不倫をした配偶者と離婚する場合、求償権は大きな問題にならないことが通常です。離婚するなら不倫をした配偶者とは家計が別になるからです。

もっとも、不倫をした配偶者から離婚の不貞慰謝料や財産分与金を払ってもらう前に浮気相手から求償をされると、その支払いによって不倫をした配偶者の預貯金が減少し、自身に対する財産分与や不貞慰謝料の支払いに支障が生じる可能性はあります。

求償権行使を防止する方法

不倫不貞慰謝料を請求するとき、後に浮気相手が夫や妻に求償権を行使しないようにできないのでしょうか?

浮気相手による求償権の行使を防ぐために、浮気相手との和解書の中に、単に「乙は、甲の夫に対し、求償しないことを誓約する」、「乙は、甲の夫に対する求償権を放棄する」と定めている和解書が散見されます。しかしながら、これだけでは求償権の行使を防ぐことはできません。

求償権は、浮気相手が不倫をした配偶者に対して持つ権利ですから、不倫をした二人の間で求償権を放棄する内容の契約書を作成すれば、もはや求償をすることはできなくなります。

ところが、浮気相手が不倫をされた配偶者に対して誓約したとしても、求償権を放棄したことにはならないのです。

確かに、実際に求償権を行使すれば、不倫をされた配偶者との関係で契約違反とはなりますが、求償を受けて支出をすることになるのは不倫をした配偶者ですから、不倫をされた配偶者に損害はなく、契約違反について損害賠償を請求することもできません。

ですから、上記のような定めに加えて、「乙が、甲の夫に対して求償をした場合には、乙が甲の夫から受け取った金額と同額を違約金として甲に対して支払う。」といった定めをする必要があります。

不倫相手に求償権を放棄させる方法

求償権は法律上認められる権利ですから、浮気相手にそれを放棄させることは容易でないことが多いです。不貞慰謝料の金額を下げることなく求償権を放棄させるためには、交渉のパワーバランスや様々な交渉材料を用いて交渉する必要があります。

そのような交渉は、不倫不貞慰謝料請求の交渉の経験が豊富な弁護士に依頼すると効果的です。不貞慰謝料請求する際に浮気相手からの求償が心配なときは、一度弁護士までご相談下さい。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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