不倫の慰謝料請求の仕方を専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月09日

不倫の慰謝料請求の仕方を専門弁護士が解説

  • 配偶者が浮気をしたときの慰謝料請求の方法を知りたい!
  • 不倫相手が慰謝料を払わないときは裁判にした方がいいの?
  • 慰謝料請求は弁護士に依頼をした方がいいの?

初めて不倫の慰謝料請求をする場合、どのように始めたらいいのか、また交渉、裁判をどのように進めたらいいのかわからなくて当然だと思います。

今回は、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が不倫の慰謝料請求の方法について解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫の慰謝料請求の仕方

まずは基本的な慰謝料請求の仕方と慰謝料金額について説明します。

交渉、訴訟

不倫の慰謝料請求をする際、まずは不倫相手に対して慰謝料を支払うよう連絡をします。その連絡の方法は、電話でも、面会でもLINEなどのメッセージでも構いませんが、内容証明を送ることが通常です。

慰謝料請求をしますと請求した満額が支払われることもありますが、減額交渉をしてくることが多いです。その場合、金額について不倫相手と交渉し、合意に達すれば和解となります。

和解するときは、示談書、和解書を作成します。分割払いになるときには公証役場にて公正証書を作成しましょう。

一方、和解に至らなかったときは法的手続をとります。法的手続には調停と訴訟があります。いずれの手段をとるべきか、また裁判をすべきなのかについては後ほど、ご説明します。

精神的苦痛の評価は難しい

不倫の慰謝料請求をするにあたり、請求金額はどのように決めたら良いのでしょうか。不倫の慰謝料は、不倫で受けた精神的苦痛への損害賠償金です。

このような精神的苦痛をお金で評価することなどできるのでしょうか。この辛い思いは100万円だと評価することは不可能ではないでしょうか。また、自分ではどれくらい辛いのか自覚することができますが、他人である裁判官はそれを感じることはできません。

そのため、裁判官は、客観的な事実と証拠から精神的苦痛を把握するよう努め、過去の判例と比較しながら、慰謝料の金額を決定します。

交通事故の慰謝料の場合、実務上、入通院期間から慰謝料金額を計算する方法が確立されていますが、不倫の慰謝料については、このような計算方法が未だありません。そのため、裁判官の主観によって慰謝料の金額について多少のばらつきがあります。

不倫慰謝料の相場

不倫が発覚した後、夫婦が離婚する場合には慰謝料は200万円、離婚しない場合には100万円が相場です。

そして、婚姻期間の長さや、不倫期間の長さ、不倫によって妊娠、出産したかなどの様々な事情を考慮して最終的な慰謝料金額が決まります。いずれの事情があれば幾ら増減するという明確な基準がなく、感覚的なところがあります。

また、請求する金額は相場以上でも相場以下でも構いません。離婚しない場合であっても200万円を請求しても300万円を請求しても構わないのです。

ただし、相場とかけ離れた金額を請求しますと、不倫相手が争ってきて解決までに時間がかかる可能性がありますので、早期に解決したいという場合には相場に近い金額を請求するのが得策です。

離婚後における不倫の慰謝料請求の仕方

離婚する際に配偶者との間で離婚協議書を作成した場合には、配偶者が不倫をしていたことを離婚後に知ったとしても、原則、離婚後に配偶者に慰謝料請求をすることはできません。

それでは、離婚後に不倫相手に対しては慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。

不倫を離婚前に知った場合

離婚前の時点で配偶者の不倫を知っていたときは、離婚前にも離婚後も不倫相手に慰謝料請求をすることができます。離婚をしたからといって、慰謝料請求権がなくなることはありません。

離婚後に不倫を知った場合

それでは、離婚した後に不倫の事実を知った場合はどうでしょうか。

不倫で慰謝料を請求することができるのは、不倫が民法上の不法行為だからです(民法第709条、第710条)。不倫は、婚姻共同生活の平穏を侵害するので不法行為に該当します。

離婚前に不倫の事実を知れば、配偶者と不倫のことで喧嘩になり婚姻共同生活の平穏が侵害されることは明らかです。しかし、婚姻中は不倫の事実を知らなかったとしても、知らないうちに婚姻共同生活の平穏が侵害されていたことに変わりはありません。

よって、不倫の事実を離婚後に知った場合にも、不倫相手に対して慰謝料請求をすることは可能です。

内容証明による不倫の慰謝料請求の仕方

さて、ここからは具体的な慰謝料請求の方法についてご説明します。まずは、不倫相手に連絡をして慰謝料請求をスタートする際によく使われる内容証明について見て行きましょう。

  • 内容証明とは?
  • 内容証明の送り方
  • 交渉で内容証明を使うメリット
  • 内容証明に書く内容
  • 内容証明の送り先
  • 不倫相手の氏名・住所がわからない場合

内容証明とは?

よく内容証明、内容証明といいますが、正確には内容証明郵便といいます。

内容証明郵便とは、誰が、誰に、いつ、どのような内容の文書を送ったのかということについて、郵便局が証明をしてくれる文書の郵送方法です。

発送したことや相手が受領したことを証明できる郵送方法には、特定記録や簡易書留、レターパックなどがあります。しかし、いずれの方法も文書の内容までは証明してくれません。

このように、文書の「内容」を証明してくれる点に内容証明郵便の特徴があるのです。郵便局において、送った書面の謄本は5年間保存してもらえます。

内容証明の送り方

内容証明は、郵便局の窓口で発送する方法とインターネットで自分のパソコンから発送する電子内容証明の方法があります。

近時は24時間365日手続き可能な電子内容証明が主となっています。窓口で発送する場合には契印や訂正方法など手続きが多少煩雑です。

いずれの発送方法も1ページあたりの文字数制限や使用文字の制限がありますのでご注意ください。詳細は下記郵便局のWEBサイトをご確認ください。

交渉で内容証明を使うメリット

内容証明郵便のメリットは、書面の発送と受領、書面内容の証明にあるとご説明しました。

もっとも、不倫の慰謝料請求において内容証明を利用するのは、これらの証明のメリットというより、内容証明の事実上の効果を期待してという側面があります。

普通の人は日常生活において、内容証明を送られることはありません。内容証明を受け取ったときには訴えられたと驚き、動揺することが通常です。

つまり、法的な請求を受けた、訴えられた、「事件」になったと不倫相手に自覚させることで、プレッシャーを与えて交渉を有利に進められるという効果を狙っているのです。

内容証明に書く内容

次に、不倫の慰謝料請求において内容証明を送る場合にどのような内容を書くのか見て行きましょう。

不倫の指摘

まず、不倫があったことを指摘します。例えば、「貴方は私の配偶者と、令和2年1月から令和3年5月まで性交渉を含む不貞行為に及びました。」などと書きます。

正確な時期がわからない場合もあるでしょう。そのような場合には、不正確な時期を書きますと証拠がないと不倫相手に知られてしまいますので時期は書かないでおきましょう。

その他にも頻繁に密会していた事実や、妊娠、出産の事実など悪質さを示す事情があれば、それらについても書くことを検討します。

夫婦関係への影響

その次は、不倫が原因で夫婦関係はどうなってしまったのかについて書きましょう。

例えば、配偶者と別居することになったことや、離婚したこと、離婚に向けた話し合いをしていることなどを書きます。

その他にも夫婦関係への悪影響について具体的に書くことができる事情があれば、それらについても盛り込むことを検討します。

不倫による精神的苦痛

精神的苦痛に対する慰謝料を請求するのですから、このような不倫、夫婦関係への影響によって、それほど辛い思いをしているのか書きましょう。

気持ちをそのまま書いても良いですし、心身への影響について書いても良いでしょう。

慰謝料請求の内容

以上を踏まえて、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料として幾らを請求するのか書きます。内容証明を見た相手が請求金額をそのまま振り込んで来ることもありますので、振込先口座は正確に記載しておきましょう。

締めの言葉

最後に締めの言葉を書きます。この締めの言葉はその後の交渉を左右する重要な箇所です。

よく決まり文句のように払わなかったら法的手続を検討しますなどと書かれていますが、あまりにもテンプレートのような文句で迫力に欠けますので、工夫すべきです。

もちろん、支払わなかったら危害を加える、会社や自宅に乗り込むと書きますと脅迫罪、恐喝罪になりますので書いてはいけません。

内容証明の送り先

内容証明を送る先は通常は、不倫相手の自宅です。しかし、自宅住所は不明で職場のみがわかっているときには、職場に送る他ありません。

職場に送りますと他の従業員の目に触れる可能性があります。職場に送る他なかったのですから、仮にそうなったとしても名誉毀損の責任を問われる可能性は低いです。

とはいえ、余計な争いを生まないためには、内容証明ではなく本人限定受取郵便を利用することも検討しましょう。

不倫相手の氏名・住所がわからない場合

一方、不倫相手の住所も勤務先もわからない、更には不倫の氏名もわからないという場合もあります。この場合、内容証明を送ることができませんので調査が必要です。

不倫相手の携帯電話番号や車のナンバーがわかるときは、弁護士に依頼をすれば、弁護士会照会という制度を利用して携帯電話会社や運輸局に照会することで、不倫相手の氏名と住所を調査することが可能です。

法的手続による不倫の慰謝料請求の仕方

以上のように内容証明を作成して、不倫相手に送り、慰謝料金額や不倫解消などの条件について交渉をしますが、交渉が決裂した場合には、次は法的手続をとることになります。

法的手続には調停と裁判がありますが、いずれの方法が良いのでしょうか。

調停とは?裁判とは?

裁判は原告と被告がお互いに主張と証拠を提出して、勝敗について白黒を付けます。

一方、調停では、調停委員が間に入って、話し合いを進め、最終的に双方が納得する合意ができれば和解成立となりますし、和解ができないときには調停は不成立で終了します。

調停にすべき?裁判にすべき?

では、不倫の慰謝料請求の方法として調停と裁判といずれを選択すべきなのでしょうか。

結論としては、早期解決とできる限り高い慰謝料を求めるのであれば裁判を選択し、証拠がない、不十分な場合は調停を選択することが良いでしょう。

何か月も調停をしたにもかかわらず和解ができなければ時間が無駄になります。また、調停では双方が譲歩する必要がありますので、慰謝料を請求する側も慰謝料金額について譲歩が必要です。

そのため、早期解決とできるだけ高い慰謝料を求めるのであれば調停ではなく裁判を選択すべきです。ほとんどの方はその両方を求めるはずですから、不倫の慰謝料請求の方法として普通は裁判を選択します。

不倫の慰謝料請求において敢えて調停を選択する場合というのは、証拠がない、証拠が不十分なために裁判にすれば敗訴してしまう場合です。

不倫の慰謝料請求の仕方として裁判を選ぶべき?

交渉が決裂した場合、次は裁判をすることになります。しかし、ケースによっては裁判をすべきではない場合もありますので、以下確認しておきましょう。

裁判をすべき場合

裁判にすべき場合は、以下の3つの場合です。

不倫相手から応答がない場合

不倫相手に内容証明を送ったものの、慰謝料の支払いも返答もないことがあります。無視をしておけば何とかなると甘い考えをもっていることが多いようです。

この場合、応答を催促しても時間の無駄ですから、即、裁判にします。裁判を無視すればこちらの主張が全面的に認められてしまいますので、裁判を無視する人は稀です。

不倫の事実を否定している場合

次に、不倫の事実を否定している場合です。この場合、交渉での和解の余地はありませんので、即、裁判にすべきです。

相場より低い慰謝料を提示する場合

3つ目は、減額交渉をしてきた不倫相手が提示する慰謝料金額が相場よりもかなり低い場合です。

不倫の慰謝料相場が100万円であるのに30万円しか払わないというのであれば、裁判をした方が多くの慰謝料をとれますので、裁判にすべきです。

裁判をすべきでない場合

次に、裁判にすべきではない場合です。以下の3つの場合が挙げられます。

証拠がない場合

1つ目は、不倫の事実を証明する証拠がない場合です。裁判では不倫の事実を証明できなければ敗訴してしまうからです。

ただし、探偵の調査結果など物的証拠はないものの、配偶者や不倫相手が不倫を認めている場合には、その自白が証拠になる場合があります。その自白によって不倫を証明できるかどうか弁護士に相談をしてうえで、裁判にすべきか判断しましょう。

既婚者とは知らなかった場合

2つ目は、既婚者の認識が不倫相手になかった場合です。独身と信じていた場合には、不倫相手から慰謝料をとることはできませんので、裁判でも敗訴してしまいます。

ただし、既婚者と知っていたことや、既婚者ではないかと疑っている内容のメッセージなどの証拠があれば、故意、過失を証明できる可能性がありますので、弁護士に相談をしましょう。

不倫相手にお金がない

3つ目は、不倫相手にお金がない場合です。例えば、不倫相手が学生や専業主婦の場合、慰謝料を支払う財産も収入もない可能性があります。

このような場合、裁判をして法律上で勝訴したとしても、相手方に判決に基づき差し押さえる財産も収入もなく、慰謝料を回収できない可能性が高いのです。そうすると弁護士費用や裁判費用だけ赤字となってしまいますので、裁判をするかどうかは慎重に判断すべきです。

不倫の慰謝料請求の仕方として弁護士に依頼が良い?

最後に、不倫の慰謝料請求は難しい法律を扱うわけではありませんので、インターネットで調べるなどして自分でやろうと思えばできなくもありません。

とはいえ、弁護士に不倫の慰謝料請求を依頼するメリットがありますので、以下ご説明します。

慰謝料を最大限に取ることができる

インターネットで検索をすれば自分のケースでは慰謝料相場が概ねどれくらいなのかは見当がつきます。しかし、不倫相手に請求金額をぶつけるだけでは、不倫相手から相場の金額を得ることもままなりません。

交渉は様々な事実と情報を踏まえた戦略、交渉術が必要となり、それによって相場以上の慰謝料を取れる場合も多くあります。また、裁判では判決までの流れを予測した主張、証拠の提出方法を検討する必要があります。

このように一見簡単そうな不倫の慰謝料請求も最大限に慰謝料を得るためには、専門的な知識経験が必要となりますので、弁護士に依頼するメリットがあります。

不倫相手の不誠実な対応を防止する

自分で内容証明を送ったら無視されたということはよくあります。また返答があった場合にも不倫を否定された、慰謝料の支払いを拒否されたということはよく耳にします。

弁護士から内容証明を送った場合にもこのような対応を100%防止することはできませんが、最初の連絡の内容について工夫することで、そのような対応を取られる可能性を相当下げることは可能です。この点も弁護士に依頼をするメリットです。

法的効力があり漏れのない示談書をつくる

不倫相手と合意に達したときは示談書、和解書を作成します。ところが、自分で示談交渉をして示談書をつくったところ、後日、不倫相手から示談書は無効だと主張され、慰謝料の支払いが受けられないケースがしばしばあります。

また、インターネットのひな型を見て自分で作成したり、行政書士に依頼をして作成してもらった示談書に抜け道があり、予想外の事態になるケースも見られます。

このような事態を避け法的に有効で、漏れのない示談書を作成するという点で弁護士に依頼をするメリットがあります。

まとめ

以上、不倫の慰謝料請求の方法について解説しました。

不倫の慰謝料請求をしたいけれども上手くできるかわからない、できる限り高い慰謝料を取りたい、このようなご要望がある方は、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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