老朽化した建物をそのままにしていて大丈夫!?建て替えや改修工事の問題点を解説します
最終更新日: 2022年09月14日
・建物が老朽化してきて不安を感じている
・建物が老朽化することで賃貸借にどのような影響を与えるか整理したい
・建物の老朽化に伴う問題に対して講じるべき対策を知りたい
一度建てた建物を、解体も建て替えも行わずに使い続けていくと老朽化が進みます。建物の老朽化を放置すると様々な問題が生じるものです。特に賃貸借に与える影響は少なくないため、賃貸借を行っている建物の老朽化には注意が必要です。
そこで今回は、建物の老朽化に関する問題を数多く解決に導いてきた弁護士が、建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題とその対策について解説します。
建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題
ここでは、建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題を4つ紹介します。
- 設備・配管などの劣化が原因で賃借人に損害を与える可能性
- 耐震強度不足による賃貸物件倒壊の可能性
- 賃借人との修繕要求トラブルに巻き込まれる可能性
- 建物老朽化による収益の低下
それでは、1つずつ解説します。
設備・配管などの劣化が原因で賃借人に損害を与える可能性
建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題の1つ目は、設備・配管などの劣化が原因で賃借人に損害を与える可能性です。
賃貸人は建物の修繕義務(民法606条)を負っています。この義務を怠ったことにより賃借人に損害を与えた場合、相当の損害賠償を支払わなければならない恐れがあります。
たとえば、建物の配管が金属腐食を起こして水道水の水質が悪化したとします。これを放置して、水質が悪化した水道水を使い続けた賃借人に健康被害が生じたときは、建物の修繕義務違反とみなされる場合があります。
また、賃借人以外の人に損害を与えたときも、工作物責任(民法717条第1項)を問われることがあります。たとえば、コンクリートブロック塀や屋根の劣化を放置し、それらが倒壊・崩落して近隣住民や通行人にケガを負わせた場合は損害賠償が必要となる可能性があります。
耐震強度不足による賃貸物件倒壊の可能性
建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題の2つ目は、耐震強度不足による賃貸物件倒壊の可能性です。
特に注意しなければならないのは、旧建築基準法が適用される建物です。1981年6月1日以降の建物に適用されている現在の建築基準法は、震度6強〜7程度の地震で倒壊しないことが基準となっています。一方で、それ以前の旧建築基準法では、震度5強程度の地震で倒壊しないことが基準となっています。
日本は地震が多い国です。国土交通省の発表によると、「南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)」とされています。そのため、旧建築基準法が適用される建物では、耐震強度不足による賃貸物件倒壊の可能性に、より注意しなければなりません。
賃借人との修繕要求トラブルに巻き込まれる可能性
建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題の3つ目は、賃借人との修繕要求トラブルに巻き込まれる可能性です。
建物の老朽化による劣化は物理的劣化だけでなく、機能的劣化や社会的劣化があります。機能的劣化とは、新築時には最新の設備であったものの、技術の進歩で新たな設備が誕生したことで価値が下がることです。社会的変化とは、賃借人のライフスタイルや社会的ニーズの変化により、建物が賃借人のニーズに応えられなくなって価値が下がることです。
建物の劣化を受けて修繕を行うときは、原則として賃貸人が行う必要があります(民法606条第1項)。このとき、賃借人からの要求があるにもかかわらず必要な修繕をせず放置すると、賃料の減額請求や支払い拒否など、思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
建物老朽化による収益の低下
建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題の4つ目は、建物老朽化による収益の低下です。
建物の老朽化により収益が低下する要因としては、以下があります。
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- 修繕コストの増加
老朽化した建物を維持するには、定期的な改修工事や修繕が必要になります。老朽化が進むほど、改修工事や修繕の頻度を増やす必要が出てきたり、規模が大きくなったりします。そのため、余計に修繕コストがかかり収益が低下します。
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- 空室率の増加
老朽化が進んだ建物は、一般的に不人気になることが多いです。そのため、空室率が増加して収益を上げられなくなります。また、空室率を減らすために、多くの場合賃料を下げることになります。その点でも収益が低下する要因になります。
建物の老朽化に伴う問題への対策
ここでは、建物の老朽化に伴う問題への対策を3つ紹介します。
- 改修工事や修繕
- 建て替えを理由とする立ち退き交渉
- 老朽化建物の解体を理由とする立ち退き交渉
それでは、1つずつ解説します。
改修工事や修繕
建物の老朽化に伴う問題への対策の1つ目は、改修工事や修繕です。
改修工事や修繕を行うことで老朽化の進行に対策します。主な改修工事や修繕の方法として2つ紹介します。
再塗装
塗装は紫外線や風雨から建物を守ってくれます。しかし、古い塗装だと建物を守る効果が低減し、老朽化がより進行してしまいます。そのため、新たに塗装することで建物を守る効果を高め、老朽化の進行を防ぎます。
設備のリニューアル
建物の老朽化による機能的劣化や社会的劣化を、設備のリニューアルにより建物の価値を高めることで防ぎます。空室率の増加を防ぎ、賃料の低下を回避できれば、よりよい経営が可能になります。
建て替えを理由とする立ち退き交渉
建物の老朽化に伴う問題への対策の2つ目は、建て替えを理由とする立ち退き交渉です。
たとえば、建物の規模を拡大して賃料をアップさせた方がメリットが大きいと判断した場合や改修工事や修繕では不十分な場合は、建て替えも選択肢になります。
ただし、一般的に建て替え工事は改修工事や修繕より費用が大きくなります。また、賃借人への立ち退き交渉も必要で、それにかかる時間や費用も必要になります。建て替え費用を確保できないときは、不動産会社による不動産買取を検討することも一つの手段です。
なお、老朽化したアパートの建て替えについては、こちらの記事もご覧ください。
老朽化建物の解体を理由とする立ち退き交渉
建物の老朽化に伴う問題への対策の3つ目は、老朽化建物の解体を理由とする立ち退き交渉です。
老朽化した建物を今後使用しないなら、解体も選択肢になります。老朽化した建物を解体する場合は、立ち退き交渉を行って賃借人の立ち退きが完了してから解体します。
解体工事には費用がかかる上に、業者の手配にも手間や時間がかかります。それでも、立ち退きが完了した老朽化建物を解体せずに放置して、空き家にしてはいけません。空き家には、不法侵入・放火被害・地域の景観悪化など、様々な問題があります。
また、空き家を放置し続けると、自治体により強制的に解体が行われる行政代執行が実施されることがあります。行政代執行の費用は賃貸人に請求され、場合によっては自己の財産が差し押さえられる可能性があります。そのため、老朽化した建物の立ち退きが完了したら早めに解体し、トラブルや損失を防ぎましょう。
建物の老朽化に伴い法的な問題が発生したら弁護士に相談
法的な問題が発生したら、建物の老朽化に伴う問題を専門とする弁護士に相談しましょう。法的な問題を法律知識のない者がスムーズに解決するのは困難です。
弁護士に依頼すれば、賃貸人が主張する立ち退きの正当事由を精査してもらう、過去の裁判例から具体的な立退料を提案してもらう、ということができるため、立ち退き交渉を有利に進められます。
費用はかかりますが、弁護士へ依頼した方が早く確実に問題解決できる可能性を考えると、結果的にはメリットが大きいことが多いです。
まとめ
今回は、建物の老朽化が賃貸借に与える深刻な問題とその対策について解説しました。
賃貸人と賃借人双方にとって、建物の老朽化は様々な問題をもたらします。場合によっては近隣住民や通行人など、第三者にまで影響を及ぼすこともあります。そのため、適切な対策を講じて問題を未然に防ぐ、もしくは問題を大きくしないことが必要です。
しかし、建物の老朽化に伴う問題に関する法律を知らなかったために、問題解決に余計な労力や費用を費やしてしまうことも多々あります。法律上少しでも不安なことがあれば、まずは専門の弁護士に相談してみるとよいでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。