リフォーム工事請負契約を交わすにあたって気を付けたい点
最終更新日: 2023年11月03日
はじめに
近年のリフォーム工事需要の増加により、リフォームを行う業者も非常に多くなってきました。
しかしながら、請負業者が増加する一方で、十分な施工技術や、法的知識のないリフォーム業者も増えていることから、リフォーム工事契約をめぐるトラブルが絶えなくなっているのが、業界的な問題となっております。
そこで、どのようにすればリフォーム工事のトラブルに巻き込まれずに済むのか、また、これからリフォーム工事を発注する方であれば、リフォーム工事業者を選ぶにあたり、どのような点を確認し、かつ、気を付けなければならないのかについて、今回はご説明します。
まずは、リフォーム工事請負契約書を作成してくれるか確認しましょう。
請負業者が大手の建設会社の場合、リフォーム工事請負契約書が詳細に規定されているものになることが多いです。
一方で、請負業者が小さな工務店であるような場合、数ページにわたるようなリフォーム工事請負契約書を作成することは稀で、工事内容を特定するための情報と工事代金の金額といった最低限の情報しか書かれていない場合が普通です。
さらにいえば、請負契約書が存在するのはまだよい方で、請負契約書を作成せずに、注文書と発注書のやり取りしかない場合も多くあります。
大きな金額になりがちなリフォーム工事契約において、しっかりとした請負契約書を作成しないことの当否について議論の余地があるものと思われますが、少なくとも建築実務では請負契約書が作成されないことが多く、裁判においてもそのような建築実務の実情を反映してか、請負契約書がないという理由だけで、当該リフォーム工事契約が直ちに無効とはされません。
リフォーム工事契約書が不明確な場合、どのように工事内容は特定されるのか
契約書だけでは工事内容が明確でないケース
リフォーム工事請負契約書がない、あるいは契約書での取り決めが不十分であれば、工事内容を特定することが困難で、紛争となった場合にも紛争解決のために依って立つ基準が曖昧となってしまいます。
たとえば、追加工事の代金請求が問題となった場合、当該請求に係る工事の金額が、本工事に属するのか、あるいは追加工事に属するのか、裁判で確認されなければなりません。
この場合、リフォーム工事請負契約書に本工事の内容を特定する記載が一切ないことも珍しくなく、追加工事かどうかを確認する方法が問題となります。
リフォーム工事請負契約の内容を特定する資料
契約内容及び工事内容を特定するための情報がリフォーム工事請負契約書の記載だけでは全く足りていないというケースが非常によくあります。
そのため、裁判実務上は、約款、見積書、図面、当事者間でなされた打合せ議事録・メールなど、全ての書類を参考に契約内容及び工事内容を特定することになります。
当事者間で作成された全ての書類が有利にも、不利にも証拠となります。
当然、建築の案件では、書類の量も膨大になりがちなので、どの証拠を用いれば、最も有利になるのか、資料の確認にも相応のノウハウが必要となります。
なお、発注者が一度も見たこともないような図面などでも、それを契約内容特定のための資料として訴訟で提出された場合、特段の異議を述べなければ、契約書と一体の資料として判断資料にされてしまいかねませんので、きちんと書類の内容を確認するなどの注意が必要です。
請負工事契約の標準約款について
また、建築契約においては、「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款・契約書類」(民間工事請負契約約款)が広く使われており、同約款が契約書に添付・引用されていることもあります。
これについては、民法改正に伴い「定型約款」の規定が新設され、請負業者が定めた定型約款に合意したものとみなされ、請負契約の内容となることもあります。
もっとも、約款を作成していれば必ず適用されるわけではなく、「定型約款を契約の内容とする旨の合意」と定型約款準備者が「あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示」することが必要です。
リフォーム会社の選び方
リフォーム工事においてトラブルになる3つの要因
前述のように、近年、リフォーム工事需要の増加に伴い、悪質なリフォーム会社も増えていますので、これから住宅などのリフォームをする方にとって、リフォーム会社の選び方は非常に重要になってきます。
リフォーム工事においてトラブルになる要因を分析しますと大きく分けて3つあります。
すなわち、
- 契約内容が不明確であることに起因するトラブル
- 請負業者の支払能力が不十分なことに起因するトラブル
- 請負業者に十分な施工能力がないことに起因するトラブル
です。
リフォーム会社を選ぶ際には、これらのトラブルになる可能性があるかどうかという点に注意する必要があります。
リフォーム工事請負契約の内容が不明確
特に多いのが、いわゆる「一式見積書」に起因する追加工事請求の事件です。
「一式見積書」とは、見積書を見ると分かるかと思いますが、「〇〇工事一式」のように工事項目の詳細が記載されていない見積書をいいます。
これでは、本工事の内容が全く分からないので、注文者としては、施工業者から追加工事として追加料金を請求されたとしても、その工事は本工事に含まれていると考えることが多いでしょう。
このような、追加工事をめぐるトラブルは非常によくあります。
このようなトラブルを回避するには、見積書を精査する時点において「一式見積書」を用いているかどうかを確認するのが無難です。
請負業者の支払能力が不十分
注文者が施工会社に工事代金の全部あるいは大部分を支払い終わった後に、施工の瑕疵・不手際等が判明し、支払った代金の返金を求めたところ、施工会社の経営が芳しくなく、返金に応じられないというケースがあります。
法的には請求できる損害賠償請求権が発生していても、施工会社においてそれに対応できる経済力がなければ、その支払いに応じられません(場合によっては、請負業者に施工の意思が全くないようなリフォーム詐欺の事案もあります。)。
工事着手の時点で、ほぼ全額に近い工事代金の支払いを求めてくる請負業者には特に注意すべきです。
工事を急がなければならないような事情でもない限り、より良い業者を探した方が安全です(可能であれば、着手金の割合は低い方が望ましく、着手金としては工事代金の30%程度が相当でしょう。)。
なお、最近はリフォームローンの利用も増えています。
リフォームローンの場合、工事が完了しない限り、ローンが実行されない運用となっていますので、リフォーム代金だけ持ち逃げされるという危険が少なく、消費者にとっては安全で利用しやすい制度といえます。
施工能力が不十分
施工業者の施工能力については、契約前の情報だけでは、なかなか正確に判断することが難しいです。
前記(1)と(2)の観点で施工業者を確認するだけでも、トラブルに巻き込まれるリスクをかなり抑えることができますが、きちんとした施工会社であると判断した業者でさえ、いざ蓋を開けてみると、施工能力が不十分であったということもあります。
これは、近年のリフォーム工事の需要の増加により、職人が圧倒的に不足し、優秀な職人を安定的に準備できないことも要因かと思われます。
最後に
リフォーム工事請負契約は、最近、一般の消費者でもトラブルに巻き込まれやすい案件になりつつあります。
そして、リフォームトラブルは建築事案という専門性の高い紛争である性質上、一般の方だけで解決することが非常に難しい問題となっています。
トラブルに巻き込まれた場合、目の前にある問題とどのようにして向き合っていき、最適な解決方法を探っていくのかが最も重要ですが、一般の方が最善の解決策を見出すのは難しく、弁護士に相談するのが望ましいといえます。
悪質な施工業者と契約してしまった場合、残念ながら、支払った代金を全て使い込んでいることが通常ですので、弁護士を入れても解決が困難な場合もあります。
そのため、リフォーム工事請負契約をめぐる紛争に巻き込まれないようにするためには、予め業者を十分に選定することが非常に重要です。
今回ご説明しましたポイントに着目して、慎重に、信用できるリフォーム工事業者かどうかを確認するようにしてください。また、施工業者と契約をするにあたり、事前に問題がないか確認したいという場合には、建築問題に明るい弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。