リフォーム工事代金の回収

リフォーム工事代金の回収

2019年10月17日

1 はじめに

リフォーム工事契約において請負人を悩ませる問題として、工事代金の債権回収の問題があります。

工事の内容に満足していないから支払いができないというご相談、発注者の側に金銭的な問題が生じたために支払いが滞ったというご相談など、相談理由は様々ですが、現実問題として、工事代金の債権回収に関して、請負人の方が弁護士に相談するケースは非常に増えております。

以下では、相談を受けた場面ごとに分けて、弁護士としてどのような対応をするのが適切なのか、具体的に説明します。

2 総論

リフォーム工事契約に関する工事代金の支払い義務について、民法の原則を確認しますと、仕事の完成が必要であるとされています。

ここでいう「仕事の完成」とは、建物の新築で言えば、建築の完了まで必要であると考えられています。

とはいえ、資材の購入、大工の手配など請負人には、工事完成までに膨大な経費を負担しますので、工事代金が一切入らないまま建築を完了させなければならないというのは現実的ではありません。

そこで、実際には、個々のリフォーム工事契約において工事代金の支払い方法を細かく規定していることが通常です。

一般的にご相談のケースで多いのは、契約金あるいは着工金名目で総工事費の30%、棟上時に30%、完了引渡時に残金といった支払方法が多いと思われます。

どのようなリフォーム工事契約であれ、請負人の立場からすれば契約前に工事代金全額を支払ってもらいたいと考えますし、発注者であれば工事が完成するかどうかわからない状況ではできる限り工事代金を支払いたくないと考えるのが通常です。

請負人としては、発注者の立場にも配慮しつつ、工事の節目節目で確実に工事代金を回収しながら工事を進めるのが重要と言えます。

3 リフォーム工事契約前の相談

ご相談の類型としてはあまり多くない内容ではありますが、新規の契約を締結されるに際して、当該契約の債権回収に関するご相談を受けることも稀にあります。

これから契約を締結しようとしているという段階で「もう弁護士?」と思われるかもしれませんが、工事代金の債権回収の戦いは、契約前から始まっていると言っても過言ではありません。

一般に弁護士とは、何か問題が起こった後に裁判等を行い、当該問題を解決することが役割であると思われていますが、必ずしもそれだけが弁護士の役割ではありません。

弁護士は、日々、紛争に介入し、その紛争が始まるに至った原因を見ているので、どの点に気を付けていれば当該紛争が生じなかったのか、重要なポイントを熟知しており、未然に紛争を防止するためのアドバイスにも長けています(これを弁護士の予防法務ということもあります。)。

そのため、契約前から弁護士を介入させ、専門的な意見を踏まえた契約交渉をすることは非常に重要です。

問題が起こってから弁護士に案件を依頼するという発想も間違いではありませんが、事後的解決となると必然的に弁護士費用等のコストが多くなってきますし、最悪、弁護士費用をかけたものの、全く工事代金を回収できないというケースも珍しくありません。

初めから弁護士に相談しておくことで、「あのタイミングで工事代金の支払いをさせていれば問題は起きなかった」ということもよくありますので、簡単な相談を受けておくだけでも、損害の発生を避けることができたというケースは非常に多いです。

工事代金の金額が大きい事案や、発注者の支払い能力に不安が残る事案は、予め弁護士に相談するのが無難です。

4 工事契約締結後~工事中の相談

弊所が受けるご相談の類型として、最も多いのが、契約を締結した後、工事を行っている最中における債権回収の問題です。

よくあるご相談としては、発注者が、工事の途中、請負人側の施工能力に不安を感じ、工事代金残金の支払いを拒否し始める例があります。

発注者を説得の上、工事代金を支払ってもらう覚書を交わすなど、お互いに納得のいく方向に向かうことができれば弁護士が入る必要もありませんが、弊所にご相談に来る時点において、既にこじれにこじれてしまい、弁護士によっても手が付けられなくなっている事案は大変多いです。

弁護士に相談しなければ話が進まないという事案にまで至った場合の一般的な回答としては、当該リフォーム工事契約を解除する方向に持っていくのが最も交渉しやすい方法かと思われます(発注者の意向を無視して、工事完了を目指してもいいのですが、おそらく工事代金を支払わないので、工事完了させる意味がありません。)。

ただし、契約解除後、未払いの工事代金を支払ってもらえるかどうかは、工事の状況、請負人の帰責性にもよりますので、契約締結後~工事中のご相談の場合に、どのような方針で進めていくのが適切かは、実際に弁護士にご相談いただくのが賢明でしょう。

5 工事引渡後の相談

次に、工事引渡後の債権回収に関するご相談です。

工事自体は終了してしまっているため、残代金の回収方法だけを考えればよい非常にシンプルな問題ではありますが、シンプルな問題ゆえに債権の回収方法も非常に限られてしまっています。

これは、工事を引き渡してしまっている以上、発注者としては問題のある残代金支払いの動機がほとんど残っておらず、また、請負人の方から積極的に支払いを強いる動機を作り出すことも困難な状況になっているからです。

このような場合の有効な債権回収方法としては、残念ながら、裁判しかありません。

発注者の目ぼしい資産(売掛金、不動産、給料)などを事前に把握していれば、差押え(場合によっては、本裁判前の仮差押え)によって当該資産を残代金の支払いに充てることができるため、裁判が非常に有効な回収方法となることもあります。

債権の執行手続までを含む裁判手続は、専門的な債権回収方法となってきますので、弁護士にご相談するのが望ましいでしょう。

6 下請負人の工事代金の回収方法に関する相談

その他ご相談類型としては、下請負人が工事をしたにもかかわらず、元請負人から工事代金の支払いがないための債権回収のご相談です。

下請負人は、一般に資金力が弱いため、その債権回収方法は、喫緊の課題であるといえます。その分、下請法によって、下請負人による工事代金の回収が後押しされています(一方で、あからさまに下請法に違反する態様での工事代金の支払い拒否事案は減少しています)。

そのような状況であっても最近増えているのが、元請業者側において損害賠償請求権があるから工事代金を支払わないという相談です。

前述のとおり、資金力の弱い下請負人は、本来、裁判をすれば勝てる事案であっても、裁判の結果が出るまで待っていられないという実情があり、交渉力が弱いのが通常です(他方、元請負人側は、裁判所の判決などが出ない限り、工事代金を支払わないでしょう。)。

リスクがあるものの、工事途中であれば工事の拒否、元請負人側の売掛金を把握していれば仮差押えなどが考えられますが、いずれも強硬手段であり、できれば用いらないのが望ましい手段といえます。
下請負人が損をしないためには、どのような条件で工事を受注するか、契約前の準備が非常に重要となってきます。

7 最後に

工事代金の債権回収の問題は、ご相談に係る問題が起こった時期、その時期における工事状況または工事代金の支払い状況ごとに、当事者の交渉力が様々に変化します。

我々、弁護士も、個々のご相談の具体的事案ごとに、債権回収の戦略を練り、何が最も適切な債権回収方法なのかを導き出します。

発注者によっては残工事代金の未払いを残したまま破産する方もいます。
そのような事案では、残念ながら、弁護士費用をかけて裁判所の確定判決を得たとしても債権回収することは困難ですので、弁護士に工事代金の回収を依頼する実益も少ない事案があります。

いずれにしても工事代金の回収問題は、個別具体的な事案の状況によって、適切な債権回収方法は全く違ってきます。

経験のある弁護士でなければ適切な解答を導くことが難しい問題ですので、早い段階で弁護士に相談するべきでしょう。

この記事を書いたのは

弁護士篠田 匡志
東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
金沢市にて総合法律事務所勤務
春田法律事務所入所

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