誹謗中傷で訴えられる基準とは?被害者・加害者の対処法を解説!
最終更新日: 2024年12月20日
- ネットの掲示板で誹謗中傷された。法的措置を取る方法について知りたい。
- ネットの掲示板で悪口を書いたら、どのような罪に問われるのだろう?
- 誹謗中傷を解決するには、弁護士に相談した方がよいだろうか?
インターネットを利用した誹謗中傷が社会問題になっています。
個人や団体を誹謗中傷すれば、加害者は重いペナルティを受ける可能性があるでしょう。
そこで今回は、ネット等による誹謗中傷問題の解決に携わってきた専門弁護士が、誹謗中傷で訴えられる罪状、訴えられた場合の対応方法等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 誹謗中傷をすれば名誉毀損罪・侮辱罪・脅迫罪に問われる可能性がある
- 誹謗中傷された場合は、情報開示請求や損害賠償請求が可能
- 誹謗中傷の加害者となった場合は、弁護士へ速やかに相談した方がよい
誹謗中傷で訴えられる罪状は
特定の個人や団体を誹謗中傷し有罪となった場合、加害者は厳しいペナルティを受ける可能性があります。
どのような罪に問われるかは、誹謗中傷の内容によって個別に判断されます。
あなたが特定の個人・団体に対する評価を、ネット掲示板等に投稿した場合、内容によっては罰せられるおそれがあるので注意しましょう。
概要
刑法に「誹謗中傷罪」という罪はありません。ただし、誹謗中傷の内容によっては次のような刑事罰に該当する可能性があります。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
- 偽計業務妨害罪
- 威力業務妨害罪
誹謗中傷で被害者から刑事告訴され、起訴されて刑事裁判で有罪になれば、次のような刑罰を受けるでしょう。
- 懲役刑:加害者を刑事施設に収容し、強制的な労働に就かせる刑
- 禁錮刑:加害者を刑事施設に収容するが、強制的な労働はさせない刑
- 罰金刑:加害者に一定の金額を国へ納めさせる刑罰
また、加害者には前科が付いてしまう他、勤務先から懲戒解雇され、周囲から非難を受ける等、社会復帰後の生活に大きな影響が出る可能性もあります。
名誉毀損罪にあたる場合
名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、特定の個人や団体の名誉を毀損する罪です。
事実の摘示には真実の情報の他、嘘の情報も含まれます。真実であれ虚偽であれ、特定の個人や団体の社会的評価を失墜させる事実を示せば、本罪に該当するので注意しましょう。
たとえば「〇〇社の社長は部下にセクハラをしている」などと、ネットの掲示板等に投稿する行為は名誉毀損罪にあたります。
名誉毀損罪で起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪にあたる場合
侮辱罪は、公然と事実を摘示しないが、特定の個人や団体を侮辱する罪です。
具体的な事実を述べず、特定の個人や団体を侮辱した場合は本罪に該当します。
たとえば「〇〇はブサイクで、見ていて不愉快だ」と、ネットの掲示板等へ投稿すれば侮辱罪にあたるので注意が必要です。
侮辱罪で起訴され有罪判決を受けた場合、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます(刑法第231条)。
脅迫罪にあたる場合
脅迫罪は、特定の個人およびその親族の生命や身体、自由、名誉、財産に害を加えると告知し、脅迫した場合に適用される罪です。
ネットの掲示板に投稿して脅迫する方法の他、電話やメール等を利用した脅迫も本罪に該当するので注意しましょう。
たとえば「〇〇や〇〇の家族の自宅に火をつけ、全員を殺す」と、ネットの掲示板に投稿する行為、相手に電話やメールで告知する行為が脅迫罪にあたります。
脅迫罪で起訴され有罪判決を受けた場合、「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます(刑法第222条第1項)。
偽計業務妨害罪にあたる場合
偽計業務妨害罪とは、偽計により特定の個人や団体の業務を妨害した場合、適用される罪です。相手の業務へ何ら影響が生じなくとも、偽計業務妨害罪に問われます。
ネットの掲示板に投稿して虚偽の情報を拡散させる他、特定かつ少数の人たちへ伝える行為も本罪に該当します。
たとえば「〇〇社の製品に毒を入れた」と、ネットの掲示板等へ虚偽の予告を投稿する行為が、偽計業務妨害罪です。
偽計業務妨害罪で起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される可能性があります(刑法第233条)。
威力業務妨害罪にあたる場合
威力業務妨害罪とは、威力を用い、特定の個人や団体の業務を妨害した場合に適用される罪です。相手の業務へ何ら影響が生じなかった場合でも、威力業務妨害罪に問われます。
人の意思を制圧するに足りるような行動は、本罪にあたるおそれがあります。
たとえば「〇〇の店を爆破する」とネットの掲示板等へ投稿した場合、威力業務妨害罪に該当する可能性があります。
威力業務妨害罪で起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される場合があるでしょう(刑法第234条)。
誹謗中傷で訴え可能な場合にすべきこと
あなたがネット掲示板等で誹謗中傷され、誹謗中傷の加害者に刑事罰が適用できると判断したときは、加害者を特定する措置や、刑事告訴の他に損害賠償請求の準備も進めましょう。
ネット掲示板で加害者が匿名で投稿していたとしても、加害者を特定できる方法はあります。
情報開示請求
ネット上で誹謗中傷を受けた場合は、加害者が利用したプロバイダ等に、加害者に関する情報開示を求めれば特定が可能です。
情報開示請求には大きく分けて2つの方法があります。
- 発信者情報開示請求:サイト運営元に任意開示の請求や裁判所への仮処分申立てを行う等して、IPアドレスからプロバイダを特定し、当該プロバイダに発信者情報開示請求訴訟を起こす方法(プロバイダ責任制限法第5条)
- 発信者情報開示命令:裁判所に開示命令を申立て、裁判所がサイト運営元とプロバイダに発信者情報開示命令を行う方法(同法第8条)
発信者情報開示命令の手続きを利用できる場合には、手続きが簡素化されているので、迅速に加害者の特定が図れます。
損害賠償請求
加害者を刑事告訴する他に、民事裁判で損害賠償(慰謝料)請求できる可能性があります。
加害者が有罪判決を受け罰金刑に処されたとしても、罰金は国に支払われるもので、被害者が受け取るものではありません。
そこで被害者は、加害者の不法行為責任を理由として、損害賠償請求を裁判所に提起できます(民法第709条)。
加害者は減刑や不起訴を目指し、被害者であるあなたへ示談金(慰謝料)による解決を申し込んでくる場合もあるでしょう。
いわゆる「お金で解決する方法」ですが、示談交渉に応じるかどうかはあなた次第です。
誹謗中傷で訴えられたらどうなるのか
加害者であるあなたが刑事告訴された場合、有罪判決を受けて刑に服するだけではなく、これまで築きあげてきた実績や信用も失われてしまうおそれがあります。
あなたは法的責任に加え、社会的・道義的責任も負うことになるでしょう。
逮捕
あなたは捜査機関によって逮捕されるおそれがあります。逮捕後は厳しい取り調べを受ける事態となるでしょう。
名誉毀損罪・侮辱罪は「親告罪」で、被害者が警察署に告訴後に捜査が開始されます。
逮捕を免れるためには、なるべく早く被害者へ謝罪し和解に持ち込み、告訴を思いとどまらせる必要があります。
一方、脅迫罪や偽計・威力業務妨害罪は「非親告罪」です。非親告罪に該当する場合は、たとえ被害者が告訴をしなくとも、捜査機関により捜査が開始される可能性があります。
いずれの罪であっても、逮捕され起訴されれば、刑事裁判で有罪判決を受けるおそれがあります。
慰謝料請求
あなたは被害者から慰謝料を請求される可能性があります。
慰謝料請求の方法は、通知による場合の他、裁判所に損害賠償(慰謝料)請求訴訟を提起される場合もあるでしょう。
請求額は、誹謗中傷の悪質性や被害の状況によりますが、100万円以上となることもあります。
あなたは刑に服するだけでなく、多額の金銭賠償を背負う事態になるでしょう。
前科が付く
有罪判決を受けた場合「前科」が付きます。前科は一生消えないので注意が必要です。たとえ執行猶予付きの有罪判決を受けても同様です。
前科が付けば社会復帰できたとしても、周囲から冷ややかな視線を受けたり、就職活動に深刻な影響が出たりする可能性もあります。
また、前科があると一定期間にわたり就けない職業(例:公務員、弁護士、司法書士、行政書士、医師等)もあるので注意しましょう。
解雇
誹謗中傷を理由に逮捕・起訴され、有罪判決を受けた場合、勤務先から解雇される可能性があります。
解雇されるかどうかは、勤務先が定めている就業規則次第です。就業規則に起訴や有罪判決が解雇原因と明記されている場合、解雇させられるでしょう。
あなたが不起訴になったとしても解雇されるリスクは残ります。
たとえば、就業規則で「逮捕されたとき」と規定されていれば、あなたが容疑を認めてしまうと、逮捕された時点で解雇になる事態もあり得るでしょう。
誹謗中傷で訴えられたらすべきこと
あなたが告訴されたり・訴訟を提起されたりした場合、誹謗中傷したという自覚があってもなくても、冷静に今後の対応を考えなければいけません。
自分の力だけではなく、弁護士のアドバイスやサポートを受けながら、問題の解決を図りましょう。
証拠収集
速やかに、あなたが相手を誹謗中傷したとされる投稿等を確認しましょう。
誹謗中傷に該当する投稿を発見した場合、誹謗中傷されたと主張する相手や捜査機関に、事実を正しく説明するため保存が必要です。
投稿の保存は、スクリーンショットで投稿内容やメッセージ履歴、投稿日時等がわかるように記録しましょう。
示談交渉
被害者が告訴しそうだ、またはすでに告訴されてしまったという場合、なるべく早く被害者に謝罪し、示談を申し込みましょう。
示談は、加害者・被害者間で話し合い問題解決を図る、簡易・迅速な和解手段です。
ただし、加害者・被害者が直接話し合うと、双方が感情的になってしまう場合もあるので、弁護士を立てて示談を図りましょう。
法律の専門家である弁護士を交渉役にすれば、被害者と冷静な交渉が可能です。
取り決める示談の条件は次の通りです。
- 加害者が被害者に謝罪し、以後、誹謗中傷はしないと誓う
- 被害者に支払う示談金(慰謝料)の金額や支払方法・支払期限
- 被害者が加害者を告訴しない、すでに告訴した場合は取下げる旨
- 加害者の処罰を望まない旨の条項
- 今後、加害者・被害者双方が誹謗中傷の問題を蒸し返さない
示談が成立したときは、証拠として「示談書(合意書)」を作成しましょう。示談書(合意書)に条件をまとめておけば、後日合意内容について認識の食い違いが生じることを回避できます。
弁護士への相談
あなたが加害者の場合でも、弁護士に相談しサポートを依頼すれば、被害者と和解できる可能性が高くなります。
弁護士はあなたの希望や不安をヒアリングし、問題となった誹謗中傷の投稿を確認後、次のようにアドバイスを行います。
- 誹謗中傷とされる投稿がどんな罪にあたるのか
- 被害者から告訴や損害賠償請求を受けるリスク
- 逮捕された場合の弁護士の対応
- 示談交渉を進める手順やポイントの説明
- 示談交渉が決裂した場合の対応方法
警察によって逮捕される前に弁護士と話し合い、示談の対応や弁護活動を任せた方が、最低限の損失で問題解決につながる可能性が高くなるでしょう。
誹謗中傷で訴えられるか不安ならすぐに弁護士に相談を
今回はネット等での誹謗中傷問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、誹謗中傷で責任を追及された場合のリスクや対応方法等について詳しく解説しました。
加害者であるあなたが誹謗中傷の責任を問われたときに、何もしなければどんどん立場が不利になっていきます。
被害者から告訴や訴訟を提起されても、焦らずに弁護士と相談し、今後の対応を協議しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。