SNSでの名誉毀損トラブルを解決するには?すべきこと・問われる罪・効果的な対処方法も紹介
最終更新日: 2023年12月29日
- SNSで誹謗中傷を受け愕然としてしまった。ひどい投稿を削除したい。
- SNSで投稿者から名誉毀損されたときの法的対応について知りたい。
- SNSで誹謗中傷されたとする人から、名誉毀損の責任を追及されている。どうすればよい?
近年、「X(旧Twitter)」「インスタグラム」「Facebook」等のSNSが登場し、世界中の人達とつながる機会が増えました。
SNSは匿名性で自由に投稿可能なメリットがある反面、特定の個人や法人を誹謗中傷する被害があとを絶ちません。
誹謗中傷された個人や法人は、さらなる権利侵害を避けるため適切に対処すべきです。一方、誹謗中傷を投稿した人は、なるべく穏便に問題を解決したいものです。
そこで今回は、SNSに関する法的トラブルに対応してきた専門弁護士が、名誉毀損された場合の対処法、トラブル解決のポイント等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- SNSでの名誉毀損に当たる投稿への対応は、SNS管理者に削除依頼するだけでは根本的な解決にならない
- 発信者情報開示請求や命令、法的措置等、様々な対応を駆使し、投稿の拡散を防止する
- SNSで名誉毀損された被害者も、名誉毀損した加害者も、なるべく早く弁護士に相談した方がよい
SNSでの名誉毀損に対してすべきこと
SNSで誹謗中傷され名誉毀損された場合、SNS管理者(管理会社)に依頼し、投稿の削除が可能です。
しかし、投稿削除するだけでは、同じ投稿者から再び悪質な投稿をされたり、他の投稿者から悪質な投稿が拡散されたりする事態を防げません。
そこで、投稿者の身元の特定や法的措置を行い、これ以上、名誉毀損されないような対策を取ります。
発信者情報開示請求・命令
投稿者の身元を特定する方法です。この開示請求・命令を行っただけでは、誹謗中傷は阻止できません。
しかし、投稿者の氏名や住所等を特定すれば、その後の法的措置(慰謝料請求、刑事告訴)につなげられます。
発信者情報開示請求
プロバイダ責任制限法で従来より法定されている開示請求方法です。
SNS管理者(管理会社)に、まず発信者情報開示請求(任意開示)を行い、悪質な投稿者のIPアドレスを特定します。
IPアドレスがわかれば、投稿者が利用している経由プロバイダがわかります。
IPアドレスがわかったときは、経由プロバイダを相手に発信者情報開示請求訴訟を提起しましょう。
訴訟で被害者の言い分が認められれば、裁判所は経由プロバイダに、投稿者の氏名・住所等の開示を命じます。
本請求ではSNS管理者および経由プロバイダへ別々に、請求や訴訟を提起しなければいけません。
発信者情報開示命令
改正プロバイダ責任制限法の施行(2022年10月1日)で、新たに設けられた開示請求方法です。
裁判所に発信者情報開示命令を申立てれば、一度にSNS管理者と経由プロバイダへの請求ができます。
申立て後、裁判所は次のような命令を下します。
- 対SNS管理者→IPアドレス提供命令
- 対経由プロバイダ→発信者情報消去禁止命令
開示命令は一括請求する方法なので、より迅速に投稿者の身元の特定が可能です。
慰謝料請求
発信者情報開示請求・命令で投稿者を特定したら、慰謝料(損害賠償)請求ができます。
慰謝料請求を受けた投稿者(加害者)は慰謝料の支払いと身元が特定されたというプレシャーで、被害者への悪質な投稿を控える可能性が高いです。
慰謝料に関しては、まず被害者と加害者の話し合い(示談)で解決することが一般的です。
ただし示談交渉のときは、被害者も加害者も弁護士をたてて交渉した方がよいでしょう。
なぜなら、当事者が直接会って話し合うと、感情的になり交渉がうまくいかなくなるおそれもあるからです。
弁護士をたてて話し合いが行われれば、理性的に示談条件をまとめて、穏便に名誉毀損トラブルの解決が図れます。
刑事告訴
捜査機関(警察)に名誉毀損をした投稿者の刑事告訴が可能です。
SNSの誹謗中傷に関する刑罰として「名誉毀損罪」「侮辱罪」があります。いずれも親告罪なので、被害者の告訴がなければ警察の捜査は開始されません。
名誉毀損罪や侮辱罪で投稿者が逮捕・起訴されたら、最悪の場合懲役刑・禁錮刑を受け、刑事施設に収容されてしまいます。
刑事告訴されれば、投稿者は個人や法人の名誉毀損をした軽率な行為について後悔し、二度と悪質な投稿を行わないことでしょう。
SNSの名誉毀損で問われる罪
個人や法人の名誉毀損をした投稿者は、被害者から開示請求等により氏名・住所等が突き止められた場合、次のペナルティを受ける可能性があります。
名誉毀損罪
投稿者がSNSで公然と個人や団体の事実を摘示し、社会的評価を失墜させた場合、名誉毀損罪に問われ、刑事告訴される可能性があります。
たとえば「有名人〇〇〇〇は親のコネで大学に裏口入学をしていた」等の投稿は名誉毀損罪です。投稿された内容がたとえ事実であっても、本罪が適用されます。
投稿者が検察官に起訴され、刑事裁判で有罪になれば「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
投稿者がSNSで事実を摘示しなくても公然と個人や団体を侮辱した場合、侮辱罪に問われ、刑事告訴される可能性があります。
たとえば、個人や団体に対し「能無し」「カス」「クズ」等と投稿した場合は侮辱罪です。
投稿者が検察官に起訴され、刑事裁判で有罪になれば「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます(刑法第231条)。
不法行為による損害賠償
投稿者がSNSで名誉毀損したために、特定の個人や団体に損害が生じた場合、不法行為責任を問われる可能性があります(民法第709条)。
不法行為責任の追及だけでは刑罰を受けませんが、金銭による賠償を求められます。まず和解交渉(示談交渉)で損害賠償(慰謝料)の金額を取り決めます。
ただし、交渉が決裂したならば、被害者は損害賠償請求訴訟を裁判所に提起し、解決を図る可能性が高いです。
想定される賠償金額(慰謝料額)は名誉毀損の場合10〜50万円程度(法人50〜100万円程度)で、侮辱は1〜10万円程度です。
ただし、被害者が悪質な投稿で深刻な損害を受けていた場合、賠償金額は数百万円に上る場合もあります。
財産以外の損害の賠償
SNSで名誉毀損され財産的な損害が発生した場合だけではなく、名誉感情が侵害されたならば、被害者は不法行為責任(民法第710条)による賠償請求を行う可能性があります。
被害者は、無許可で顔や容姿等が撮影されSNSに使用・公表する投稿には「肖像権侵害」を、私生活の情報をSNSに無断で投稿する行為には「プライバシー権侵害」の主張が可能です。
肖像権侵害やプライバシー権侵害により請求される賠償金額(慰謝料額)は、10〜50万円程度が想定されます。
SNSで名誉毀損が認められるケース
SNSでの名誉毀損が認められるためには、「公然性」「事実の摘示」が確認できなければいけません。
こちらでは、それぞれの内容について説明します。
公然性
「公然性」とは、不特定多数の人に名誉毀損の投稿が閲覧可能な状態を指します。
被害者が加害者から自分の醜聞や弱みをメールで送りつけられても、公然性に当たらないので注意しましょう。
なお、SNSに投稿されたとき、アカウント名の明示はあったものの、いったい誰の事なのか不特定多数の人にわからなければ、名誉毀損には該当しません。
ただし、実名投稿によらなくてもイニシャルやペンネーム等から、不特定多数の人が容易に誰であるのかを特定できるなら名誉毀損となります。
事実の摘示
SNSで示された事実が、証拠によって真偽を確認できるなら事実の摘示に当たります。
つまり、投稿された内容が真実か嘘かは関係なく、具体的な事実内容を示したかが判断されます。
たとえば、「会社員〇〇〇は部下〇〇と不倫をしている」という投稿は、証拠によって真偽の確認が可能なため事実の摘示です。
一方、「バカ」「アホ」といった言葉には真偽を確認する証拠がなく、事実の摘示とはいえません。
SNSでの名誉毀損トラブルを解決するポイント
SNSによる投稿で名誉毀損を追及したい被害者も、名誉毀損を行った加害者も、円滑に問題解決を図りたいものです。
こちらでは、SNSの名誉毀損トラブルを解決するコツについて説明します。
和解
当事者で和解(示談)を目指す場合は、裁判所が関係する法的措置を伴わないため、簡易で迅速な解決が図れます。
ただし、双方とも弁護士をたて示談条件について話し合った方が、理性的に交渉を進められます。
和解(示談)交渉で取り決める条件は次の通りです。
- 投稿者(加害者)が被害者へ謝罪し、これ以上の名誉毀損を行わない
- 今後、加害者が名誉毀損を行ったならば刑事告訴する
- 被害者に支払う慰謝料(損害賠償金)の金額、支払方法、支払期限
- 被害者は加害者の告訴をせず、すでに告訴した場合は取り消す
和解(示談)が成立したら、弁護士は和解の証拠として「示談書(合意書)」を作成します。
損害賠償金の交渉
和解(示談)交渉を成立させるためには、慰謝料(損害賠償金)の金額の取り決めが最も重要です。
しかし、被害者・加害者だけでその金額を話し合うと、適正な金額がどれ位かもわからず、揉めてしまう可能性があるでしょう。
弁護士は、名誉毀損のケースに応じた適正な金額を把握しています。
被害者からの請求が高すぎれば、加害者側の弁護士が減額を働きかけ、双方が納得できる金額を目指します。
弁護士への相談
SNSの投稿が原因で名誉毀損トラブルになった場合、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
被害者の場合
SNSで名誉毀損された場合、自分で何とかしようとする前にまず弁護士へ相談します。
弁護士は被害者の状況や希望をヒアリング後、次のような助言を行います。
- 名誉毀損にあたるかどうか
- 名誉毀損にあたる投稿の削除の仕方
- 投稿者を特定する方法
- 和解(示談)で解決する方法
- 法的措置等の手順
弁護士に問題解決を任せた方がよいと判断したら、委任契約を締結しましょう。
加害者の場合
被害者が開示請求した場合、経由プロバイダから投稿者(加害者)に意見照会書が通知されます。
意見照会書は「発信者情報開示請求に係る意見照会書」と呼ばれ、被害者に投稿者の氏名・住所等を開示してよいかを尋ねる書類です。
意見照会書が届いた場合、まず弁護士に相談し対応を協議しましょう。
弁護士は投稿者(加害者)の状況や希望をヒアリング後、次のような助言を行います。
- 名誉毀損を行った覚えがある場合の対応、無い場合の対応
- 和解交渉(示談交渉)を進める必要性
- 訴訟を提起されたときどうすればよいか
- 刑事告訴されたときの弁護士対応
弁護士のサポートのもと、和解や法的措置への対応を行った方が、最低限の損失で済ませられる可能性が高いです。
SNSでの名誉毀損に困ったなら当事務所へ相談を
今回はSNSの法的トラブル解決に携わってきた専門弁護士が、名誉毀損の投稿にどう対処すべきか等を詳しく解説しました。
被害者も加害者も迅速かつ理性的に問題解決を図るため、弁護士をたて、和解を進めていきましょう。
弁護士のサポートを受けながら、慎重に解決策を話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。