SNSの削除はできる?できないときの対処法・実施すべきことを解説
最終更新日: 2023年12月30日
- SNSで誹謗中傷を受けている、悪意のある投稿をなるべく早く削除したい。
- 自分がSNSに投稿した内容が、相手への誹謗中傷に当たるかもしれない。投稿を削除できないだろうか?
- 悪意のある投稿が削除できないとき、どのような対処方法があるのだろう?
SNS(ソーシャルネットワークサービス)は、数多くの方々が気軽に交流できるサービスの一つです。
しかし、SNSを通して個人や企業の誹謗中傷が行われる場合もあり、社会問題化しています。
SNSで自分の権利侵害が確認できた、または自分の投稿で他人の権利を侵害してしまったという場合、速やかにSNSの投稿を削除したいものです。
そこで今回は、掲示板やサイト、SNSの法的トラブルに対応してきた専門弁護士が、SNSの投稿を削除する方法、削除できないときの対処方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- SNSの投稿を削除できるケースは個人や企業の権利侵害(名誉毀損、侮辱等)が発生している場合である
- SNSの投稿を削除できないなら、発信者情報開示請求や命令等を行う
- SNSに関するトラブルが発生したら、弁護士へ相談し対応を検討する
SNSの削除ができるケース
SNSの投稿を削除できるケースは、主に「名誉毀損」「侮辱」「肖像権侵害」「プライバシー侵害」を内容とするものが該当します。
名誉毀損に値する場合
公然と個人や法人の事実を摘示し、社会的評価を低下させた場合は「名誉毀損」に当たり、投稿の削除が可能です。
また、名誉を毀損された被害者に告訴され有罪になると、名誉毀損罪が成立し「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処されます(刑法第230条第1項)。
SNSの投稿で名誉毀損罪が成立するには、次の要件に該当しなければいけません。
- 公然と:不特定の人たちが閲覧できるSNS上に投稿した
- 事実を摘示:具体的な事実内容を示した(真実であるかどうかは問われない)
- 人の名誉を毀損:名声、信用等の社会から受ける客観的評価を低下させた(個人の他、法人や団体も含まれる)
- 違法性阻却事由がない:公共の利害に関する事実ではなく、公益を図る目的もなく、真実であると認める理由に値しない
要件の一つである「事実を摘示」とは、次のように具体的な事実内容を示す行為です。
- 「中学校教諭〇〇は、教え子の〇〇と日ごろから性交渉をしている」
- 「部長の〇〇〇は、女性従業員にセクハラをしてお金で揉み消した」 等
具体的な事実内容の真実に関わらず名誉毀損となります。
なお、SNSで悪意のある投稿がされた場合、アカウント名は明示されていても、誰のことなのか第三者にわからなければ名誉毀損には該当しません。
ただし、実名による投稿でなくとも、イニシャルやペンネーム等から、第三者が容易に個人や法人を特定できるならば名誉毀損となります。
侮辱が見られる場合
事実を摘示せずに公然と、個人や法人を侮辱した場合に成立します。こちらも削除の対象です。
また、侮辱された被害者に告訴され有罪になると、侮辱罪が成立し「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます(刑法第231条)。
SNSの投稿で侮辱罪が成立するには、次の要件に該当しなければいけません。
- 公然と:不特定の人たちが閲覧できるSNS上で投稿した
- 事実を摘示せず侮辱:具体的事実を伴わず、「馬鹿」「セクハラ野郎」「デブ」「ブラック企業」等と誹謗中傷した
実名による投稿でなくとも、イニシャルやペンネーム等で、第三者が容易に個人や法人を特定できるならば侮辱となります。
肖像権侵害している場合
本人の許可なく顔や容姿等の撮影や、撮影した画像・動画を使用・公表する行為は肖像権侵害に当たります。SNSで投稿されたら削除対象です。
肖像権には3つの権利が含まれています。
- 撮影拒否権:顔や容姿を許可なく撮影されない権利
- 使用公表の拒絶権:撮影された顔や容姿を勝手に使用・公表されない権利
- パブリシティ権:顔や容姿の利用に対し、本人の財産的利益を保護する権利
撮影拒否権や使用公表の拒絶権は有名・無名にかかわらず、誰にでも認められなければいけない人格的利益の一つです。
一方、パブリシティ権は財産権であり、有名人(芸能人やスポーツ選手等)は顔や容姿が経済的利益を有するので、この権利が認められます。
許可なく撮影された本人が肖像権侵害を主張した場合、投稿の削除依頼だけではなく、「不法行為責任」により投稿者(加害者)へ、損害賠償(慰謝料)請求を行う可能性があります(民法第709条・710条)。
損害賠償(慰謝料)の金額は、概ね10〜50万円程度が目安です。
なお、どのような場合でも肖像権を主張し、SNSで投稿された自分の顔や容姿等の画像の削除が可能なわけではありません。
特定の人物に焦点を当てず撮影された画像であるならば、肖像権侵害になりにくいケースといえます。
たとえば、公共の場(公園や道路、駅等)で撮影された画像に、たまたま自分が映り込んでいたという場合です。
プライバシー侵害に当たる場合
他人の私生活に関する情報を、みだりにSNSに投稿すればプライバシーの侵害に当たり、投稿内容は削除対象となります。
次の3つの要件に当てはまると、プライバシー侵害となる可能性が高いです。
- 私事性:私生活上の事実、または事実と受け取られる可能性のある事柄
- 秘匿性:一般的な感覚を基準にすれば、公開は好まないと認められる事柄
- 非公知性:私生活上の事実が一般の人にまだ知られていない事柄
個人に関する情報を無断で公開された場合、プライバシー侵害に当たるケースは以下の通りです。
- 顔写真(個人の特定が容易な物)や住所(番地、部屋番号等)
- 犯罪歴、指紋データ
- 運転免許証番号、マイナンバーの番号
公開された本人がプライバシー侵害を主張した場合、投稿の削除依頼の他、「不法行為責任」により投稿者(加害者)へ、損害賠償(慰謝料)請求を行う可能性があります。
損害賠償(慰謝料)の金額は、概ね10〜50万円程度が目安です。
SNSを削除できないときの対処方法
SNSの投稿で自分が権利侵害を受けた場合や、自分の投稿が特定の個人や団体の誹謗中傷に該当する内容だったという場合は、投稿を削除したいものです。
しかし、ケースによってはSNSの投稿が削除できないおそれもあります。
こちらでは、自身の投稿の場合、他者の投稿の場合に分け説明しましょう。
自身の投稿の場合
自分がSNSに投稿した内容が、特定の個人や団体の権利侵害に当たる場合、後日、刑事告訴(名誉毀損罪、侮辱罪)や不法行為による賠償請求を受ける可能性があります。
まずは削除を試みる
自分がSNSに投稿した記事や画像・動画は削除できます。ただし、投稿内容を他の人が確認する前に、すぐ削除しましょう。
そうしないと、投稿内容を他の人が保存し拡散してしまうおそれがあります。このような事態になると削除はまず不可能です。
拡散されてしまった記事や画像・動画が投稿されるたび、SNSの管理者に頼んで削除してもらいましょう。
身に覚えのない投稿があった場合
自分が他人の権利侵害となるような記事、画像・動画を投稿したわけではないのに、自分のSNSアカウントから身に覚えのない投稿がされているケースもあります。
この場合は、自身のアカウントが乗っ取られた可能性を疑いましょう。
アプリの中には、SNSのアカウントと連携を行うサービスがあります。このアプリ連携を悪用し、スパム投稿や他人を誹謗中傷する投稿が可能な、「アカウントを乗っ取るアプリ」が存在するのです。
乗っ取られた段階では、どのようなアプリが原因なのか判別がつかないケースも多いため、全てのアプリの連携解除を行います。
解除後はパスワードの再設定を行いましょう。パスワードは英数字を含めた複雑で長いものを設定します。
もしもアカウントを乗っ取った人物がパスワードを変更し、ログインができない状態なら、SNS管理者やサポートチームへ速やかに連絡を行います。
そして、自分のSNSのアカウント情報を伝え、アカウントが乗っ取られてパスワードを変更された旨を伝えましょう。その後、管理者等の指示に従い対応していきます。
和解交渉
自分が他人の権利侵害となるような記事や画像・動画を投稿したら、SNS管理者や経由プロバイダ(例:NTT等)から、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が送付されてくる場合もあります。
意見照会書とは、権利侵害を受けたと主張する人が求める発信者(投稿した人)の情報開示請求に対して、個人情報を開示してよいかどうかについて尋ねる通知です。
意見照会書を放置すれば、プロバイダ側から個人情報が開示され、被害者が法的措置を行う可能性もあります。
そこで、意見照会書が届いたら速やかに弁護士へ相談し、和解交渉(示談交渉)による解決を依頼しましょう。
交渉では次のような内容が話し合われます。
- 慰謝料(示談金)の金額、支払い方法、支払期限
- 加害者が権利侵害となるような記事や画像・動画を削除する
- 投稿が拡散された可能性もあるので、加害者も投稿の削除に協力する
- 被害者は加害者を許し、告訴をしない(または告訴を取り消す)
和解交渉(示談交渉)が成立すれば、被害者から損害賠償訴訟を提起されたり、刑事告訴されたりする事態を回避できます。
他者の投稿の場合
自分の権利侵害となるような記事や画像・動画が投稿された場合、SNS管理者に削除依頼が可能です。しかし、なかなか削除しないケースも想定されます。
このような場合は別の方法を検討しましょう。
発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、SNS管理者や投稿者の利用する経由プロバイダに、投稿者の情報開示(氏名や住所等)を求める手続きです(プロバイダ責任制限法第5条)。
本請求が認められれば、権利侵害をした投稿者の氏名・住所等の特定ができます。
SNS管理者に専用フォームまたは発信者情報開示請求書を送付(任意開示)し、IPアドレスの開示を受け(拒否されたら裁判所に仮処分申立て)、その後に経由プロバイダへ発信者情報開示請求訴訟を提起します。
発信者情報開示命令
発信者情報開示命令は2022年10月1日に新設された開示方法です。
裁判所に発信者情報開示命令の申立てをすれば、SNS管理者・経由プロバイダ双方に対する請求を一括で行えます。
いずれの方法を選んでも構いませんが、発信者情報開示請求も発信者情報開示命令も、投稿者への法的措置を前提として行う手続きです。
本開示請求・命令を行っただけでは、悪意のある投稿を阻止できないので注意しましょう。
法的手段の実行
SNS管理者が権利侵害となっている投稿をなかなか削除しない場合、裁判所に投稿記事削除仮処分命令の申立てを行いましょう(民事保全法第23条第2項)。
申立てが認められれば、裁判所はSNS管理者に投稿記事削除を命じます。裁判所から命令を受けたら、SNS管理者は投稿記事の削除を行う可能性が高いです。
ただし、記事の削除を行っただけでは、投稿者が再び権利侵害となる投稿を行う可能性もあります。
そのため、発信者情報開示請求・命令で得た情報をもとに、法的措置の検討も必要です。
法的措置には「損害賠償請求」や「刑事告訴」があります。
(1)損害賠償請求
投稿者(加害者)へ金銭による賠償を求める方法です。和解交渉で解決しても構いませんが、交渉が不成立ならば裁判所に訴訟を提起します。
SNSによる投稿が原因で、被害者に重大な損害が生じたときは、数百万円以上の賠償金額が認められる場合もあります。
ただし、一般的に賠償金額は数万円〜数十万円程度となるケースがほとんどです。
(2)刑事告訴
投稿者(加害者)を処罰してもらうため、捜査機関(警察)に告訴します。親告罪なので、被害者が告訴しなければ検察官は投稿者を起訴できません。
捜査により投稿者の行為が違法であると認められたら、投稿者は逮捕されます。起訴された場合、「名誉毀損罪」または「侮辱罪」で有罪となる可能性があります。
SNS削除トラブルを防ぐために実施すべきこと
SNSは気軽に全世界のユーザーとつながれる便利なサービスです。しかし、その使い方を誤れば、取り返しのつかない事態となる点に注意しましょう。
こちらでは、SNSでのトラブルを未然に防ぐ方法、自分が加害者・被害者となった場合の対応について説明します。
違法性の確認
自分がSNSに載せるコメントや画像・動画を、投稿前によく確認しておきましょう。
個人や法人を傷つける内容となっていないか、他人のプライベートを撮影した画像・動画ではないか、しっかりとチェックします。
少しでも権利侵害に当たる可能性があれば、投稿はやめましょう。
弁護士への相談
SNSの投稿で権利侵害をされた側(被害者)も、権利侵害をした側(加害者)も、自分の力だけで解決しようとせず、なるべく早く弁護士に相談し対応を協議しましょう。
弁護士は当事者の事情や状況をヒアリングしたうえで、次のように的確なアドバイスを行います。
- 被害者:投稿の削除方法や開示請求、命令、法的措置等の手順を説明
- 加害者:権利侵害の投稿を積極的に削除する必要性、和解交渉(示談交渉)の有効性を助言
法律事務所に相談するとき、初回相談を無料にしている法律事務所も存在します。
SNS削除をスムーズに進めたいなら弁護士に相談しよう
今回はSNS等の法的トラブルへ対応してきた専門弁護士が、SNSの投稿を削除できるケース等について詳しく解説しました。
投稿する内容が、個人や法人への権利侵害とならないかよく確認してから、SNSへ投稿しましょう。この基本的な心がけこそ、SNSのトラブルを防止する最良の方法です。
弁護士のアドバイスやサポートを受けながら、冷静にSNSトラブルへの対応を考えてみてはいかがでしょうか。