妊娠中の離婚は可能?リスクと手続き・支援を解説

最終更新日: 2025年08月21日

妊娠中の離婚は可能?リスクと手続き・支援を解説

妊娠中に離婚を考えるのは、とても勇気のいる決断です。体調の変化や出産への不安、夫との関係悪化などが重なると、どこから手をつけていいのか分からなくなってしまうこともあるでしょう。

妊娠中でも離婚は可能ですが、体調や生活への影響、経済的なリスクもあるため、注意して進める必要があります。

この記事では、妊娠中に離婚する際の注意点、リスクとその回避方法、親権や養育費などの取り決め方、利用できる支援制度、弁護士に相談するメリットを分かりやすく解説します。無理のない方法で離婚を進め、出産と新しい生活の両方を安心して迎えられる準備を整えていきましょう。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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妊娠中でも離婚はできる?

合意すれば離婚は可能

妊娠中であっても、夫婦が話し合いで合意すれば離婚は可能です役所に離婚届を提出すれば、法律上は成立します。

ただし妊娠中は体調が変わりやすく、役所への移動や手続きの負担も大きくなります。時間や体力に余裕をもって準備を進めましょう。

話し合いが難しい場合は調停や裁判も

夫婦どちらかが離婚に同意していない場合、家庭裁判所での調停や裁判で解決することになります。

しかし妊娠中は長期化する手続きが体に負担となることも多く、専門家に相談しながら無理のない進め方を選ぶことが大切です。

親権の扱いに注意

出産前の胎児に親権はありません。出産後は、母親が自動的に親権者となるのが一般的です(民法819条3項)。

妊娠中に離婚した場合、出産後に改めて養育費について話し合う必要があることは理解しておきましょう。

妊娠中に取り決めておきたいこと

離婚後の生活を安定させるためには、以下のような項目をあらかじめ取り決めておくと安心です。

親権と養育費

出産後、誰が子どもの親権を持つのかは非常に重要な問題です。

養育費は子どものためのお金であり、離婚後も父親に支払い義務があります。金額の目安や支払い方法は文書に残しておくことで、将来のトラブルを防げます。

財産分与と慰謝料

婚姻中に築いた貯金や不動産などは、夫婦の共有財産として分け合うことができます。

また、夫の不倫や暴力などが離婚原因の場合は慰謝料請求も可能です。証拠として日記や写真、診断書などを整理しておきましょう。

住居と生活費

離婚後の住まいをどうするかは生活の基盤に直結します。実家に戻るのか、賃貸住宅を借りるのかによって必要な準備は変わります。

役所や自治体にはひとり親向けの住宅手当や支援制度があるため、事前に確認しておくと安心です。

妊娠中に離婚するリスク

妊娠中の離婚にはいくつかのリスクがあるため、事前に理解して備えておくことが大切です。

体調への影響

妊娠中はホルモンバランスの変化で心身ともに不安定になりやすい時期です。離婚協議や引っ越しなどのストレスが体調に影響し、早産や体調不良のリスクが高まることがあります。

出産準備の遅れ

離婚後の住居や経済的基盤が整っていないまま出産を迎えると、育児用品の準備や病院の手配に支障が出る可能性があります。特に実家に頼れない場合は計画的な準備が重要です。

経済的不安と孤立

収入の確保や支援体制の整備が間に合わないと、一時的に生活が不安定になりがちです。パートナーやその家族からの支援が得られないことで、精神的な孤独感や育児への不安も強くなることがあります。

DVやモラハラがある場合の対応

妊娠中にDV(暴力)やモラハラ(精神的な嫌がらせ)を受けている場合、まず身の安全を確保することが最優先です。

  • 警察へ通報する
  • 配偶者暴力相談支援センターへ連絡する
  • シェルターなど一時避難できる場所を利用する

また、弁護士に依頼すれば、接近禁止命令や保護命令の申立ても可能です。安心できる環境を確保したうえで離婚を進めることが、母子の健康と将来のために重要です

弁護士に相談するメリット

妊娠中の離婚は体調面・精神面への負担が大きいため、専門家のサポートが役立ちます。

弁護士に依頼する主なメリット:

  • 親権・養育費・財産分与・慰謝料の条件を有利に進められる
  • 夫との直接交渉を避けられ、精神的なストレスが減る
  • DVやモラハラの証拠収集や法的対応が可能
  • 書類作成や役所への提出などの手続きを代行してもらえる

妊娠中だからこそ、無理せず専門家に頼ることが重要です。

離婚後に利用できる主な支援制度

離婚後はひとり親家庭として、さまざまな支援制度を利用できます。

  • 児童扶養手当:子どもを育てるひとり親家庭に支給
  • 医療費助成:子どもの医療費の一部を助成
  • 保育園の優先入所:仕事復帰しやすい環境
  • 住宅手当・生活支援:自治体によって異なる独自制度もあり

これらの制度を上手に活用することで、経済的な不安を軽減し、育児に専念しやすい環境を整えることができます(支援制度の詳細はお住まいの各自治体の相談窓口でご確認ください。)。

よくある質問(FAQ)

Q. 妊娠中でも離婚できますか?

はい、可能です。妊娠中でも夫婦が合意していれば離婚届を提出するだけで成立します。ただし、体調や出産時期を考慮して無理のない進め方を選ぶことが大切です。

Q. 妊娠中に別居しても問題ありませんか?

母体と胎児の安全を守るため、別居はよくある選択肢です。特にDVやモラハラがある場合は早めに安全な場所に避難しましょう。

Q. 離婚後の出産費用は夫に請求できますか?

状況によっては可能です。離婚後も元夫に扶養義務が認められる場合や、妊娠中に離婚原因が夫にある場合は、費用の一部負担を求められることがあります。具体的には、弁護士に相談して請求の可否を判断してもらうのがおすすめです。

Q. 妊娠中の離婚で親権はどうなりますか?

出産前には胎児に親権はありません。出産後は原則として母親が親権者になります(民法819条3項)。出生届は、母親が行います(戸籍法52条1項)。

Q. 妊娠中の体調で手続きに不安があります

弁護士に依頼すれば書類作成や交渉を代行してもらえます。体調を優先し、無理をせずサポートを活用しましょう。

まとめ

妊娠中の離婚は心身に大きな負担がかかりますが、リスクを理解し、支援制度や専門家を上手に活用することで乗り越えることが可能です。

親権や養育費、生活基盤の確保などを早めに準備し、弁護士に相談することで、より安心して手続きを進められます。

大切な出産と新しい生活に向けて、無理をせず、サポートを受けながら一歩ずつ進んでいきましょう。

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