夫のDVから逃れたい!決別するための別居の進め方

最終更新日: 2023年02月21日

    • 夫のDVから逃れるために別居はありなのか?
    • 別居を考えてもよいDVにはどのような種類があるのか?
    • DVに耐えられなくなったらどのように別居を進めるとよいか?

夫のDVに耐えられないと考えていても、いざ行動に移そうとすると、さまざまな疑問や不安が湧いてきてしまい、別居に踏み切れないこともあるでしょう。それでも、DVからあなたや子どもを守ることを最優先した場合、速やかに別居することをおすすめします。

そこで今回は、DVの基礎知識・種類・よくある状況・別居の進め方について解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 夫のDVから逃れるためには、別居も視野に入れた方が良い
  • 別居を考えてもよいDVは、主に「身体的暴力」「社会的暴力」「経済的暴力」「性的暴力」の4つ
  • DVから逃れるためには「住む場所を確保する」「公的機関の支援を確認する」「専門家に相談する」の3つが大切

DVとは?別居も状況に応じて視野に入れよう

そもそも「DV」とは、「ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)」を省略したもので、明確な定義はありません。日本においては「配偶者や恋人などの親密な関係にある、または過去その関係にあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されています。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(以下、配偶者暴力防止法)が制定され、「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である」と断じています。

「被害者」とは男女を含みますが、多くの場合女性です。そして、「配偶者」とは法律婚の配偶者・事実婚のパートナー・離婚後の元配偶者を含みます。

この法律によって、相談や支援制度が整備されています。DVを防止する手段として、別居も視野に入れていきましょう。

出典:配偶者からの暴力被害者支援情報|内閣府 男女共同参画局

別居を考えてもおかしくないDVの種類

DVは目に見える傷だけではなく、心に傷を負うようなものまでさまざまな種があります。ここでは、別居を考えてもおかしくないDVの種類を、以下の4つから解説します。

    • 身体的暴力
    • 社会的暴力
    • 経済的暴力
    • 性的暴力

1つずつ見ていきましょう。

身体的暴力

別居を考えてもおかしくないDVの種類の1つ目は、身体的暴力です。

身体的暴力とは、体に直接傷が残るような行為をいいます。たとえば足で蹴る・物を投げつけるなどが挙げられます。

これらは、刑法第204条の「傷害」・刑法第208条「暴行」に該当する違法な行為であり、それが配偶者間で行われたとしても処罰(懲役・罰金・拘留・科料など)の対象になります。

身体的暴力を受けたときは、証拠を残しておきましょう。必ず、傷や火傷跡などの負傷箇所を写真に撮っておきます。また、軽度のケガであっても病院で治療を行い、診断書を作成してもらいます。写真・メモなどで状況を記録し、診断書をDVの客観的証拠として補強しましょう。

社会的暴力

別居を考えてもおかしくないDVの種類の2つ目は、社会的暴力です。

社会的暴力とは、加害者以外の人間と交流を絶たせようとすることをいいます。具体的には、次のような行為です。

    • 実家・友人・職場の人間関係などをすべて断たせようとする
    • 電話やメールを細かくチェックする
    • GPSなどで居場所を追跡・確認しようとする
    • 外出を制限・禁止する

このような行為には、ボイスレコーダーなどに音声を録音しましょう。また、配偶者からのLINEメッセージなどの文言は消去せずに保存します。

保存していることを知られないように、フリーアドレスを持ち、証拠画像を保存する専用メールアドレスにして保存先をクラウドにしておく方法があります。

経済的暴力

別居を考えてもおかしくないDVの種類の3つ目は、経済的暴力です。

経済的暴力とは、お金のコントロールをして、夫婦間・家庭内に上下関係を生み出し、加害者が被害者よりも優位に立とうとすることです。具体的には、次のような行為です。

    • 生活費をまったく、または不十分な額しか渡さない
    • 仕事を制限し、辞めさせる
    • 妻の独身時代の貯金を使う・妻名義の借金をする
    • 妻のものを壊す・捨てる
    • 遊興費など身勝手な浪費をする

この場合、生活費が不十分であることや夫の浪費を証拠をとして確保します。銀行通帳・家計簿・配偶者の借金の契約書や督促状、クレジットカードの利用明細や領収書などを保存し、壊された物品などは、写真に残しておきましょう。

性的暴力

別居を考えてもおかしくないDVの種類の4つ目は、性的暴力です。

性的暴力とは、望まない性的行為や性交渉を強要する行為で、刑法第177条「強制わいせつ罪・強制性交等罪」に当たる場合があります。

具体的には、次のような行為です。

  • ポルノ映像など見たくないものを見るよう強要する
  • 望んでいないのに性交を強要する
  • 病気で辛いのに性交を強要する
  • 叩く、首を絞めるなどの暴力的な性交を強要する
  • 避妊を拒否する
  • 中絶を強要する
  • 裸体や不快なポーズを強いられ、写真や動画を撮られる

この場合は、メモなどに日時・場所・暴力の内容・時間・加害者の言動・被害状況などを詳細に記録します。夫に知られないよう保存方法に注意が必要です。

DVされても別居できない人によくある状況

DVをされていても別居に踏み切れない人には特徴・理由があります。ここでは、DVされても別居できない人によくある状況を、以下の3点から解説します。

    • 加害者が怖い
    • 深刻さに本人が気づけない
    • 進め方がわからない

1つずつ見ていきましょう。

加害者が怖い

DVされても別居できない人によくある状況の1つ目は、加害者が怖いことです。

DVによる被害が深刻であるほど、加害者に恐怖心をもち、「別居先に追いかけられるかも」、「さらにDVが酷くなるかも」などと不安に思うことがあるでしょう。

しかし、不安や加害者が怖いという気持ちが強いほど、別居をして逃げることを優先することをおすすめします。

DVが続くと被害者は、恐怖感・無力感によって心身ともに衰弱し、加害者の思うように支配され従属せざるを得なくなってしまいます。別居によって加害者との間に物理的な距離ができれば、DVの危険性を最小限に抑えることができるでしょう。

深刻さに本人が気づけない

DVされても別居できない人によくある状況の2つ目は、深刻さに本人が気づけないことです。

DVと夫婦喧嘩の境界がわかりにくいこともあります。しかし、夫婦喧嘩では夫婦の関係は対等ですが、DVでは加害者が被害者を支配し、対等な関係ではありません。

また、加害者の要求に応えて自分を犠牲にしたり、自分さえ我慢すればと無気力になったりする場合があります。一方で、加害者との関係を自らの努力で解決できる、加害者との結婚が失敗だったと認めたくない、と考えてしまうこともあるでしょう。

別居ができないのは、本人が被害の深刻さに気づけていないことも、理由の1つといえます。

進め方がわからない

DVされても別居できない人によくある状況の3つ目は、進め方がわからないことです。

DVがつらい、別居したいと思っても、お金がない、どうしたらよいかわからないということもあるでしょう。このような場合、まずは、DVの被害者であること、一人で解決しようとせずに他者に助けを求めてよいことをあなたが受け止めましょう。

DVの被害が続くと、逃げたり誰かに相談する、という考えも浮かばなくなり、その結果冷静な判断ができず、心身に不調をきたす恐れもあります。

DVの被害者であることを自覚し、まずは別居を検討することをおすすめします。

DVに耐えられない場合の別居の進め方

DVに耐え続ける必要はありません。耐えられなくなったら「別居」も視野に入れていくことがおすすめです。ここでは、DVに耐えられない場合の別居の進め方を、以下の3点から解説します。

    • 住む場所を確保する
    • 公的機関の支援を確認する
    • 専門家に相談する

1つずつ見ていきましょう。

住む場所を確保する

DVに耐えられない場合の別居の進め方の1つ目は、住む場所を確保することです。

別居先には、実家・親戚・友人の家などが考えられます。一時的に夫婦間の距離を置き、加害者へ改善を促すことが期待できます。また、すでに離婚を望んでいるのであれば、住まいを借りる方法がありますが、費用負担は大きくなります。

他にも、個人情報が保護されるシェルターに避難する、という手段があります。シェルターとは、「民間団体によって運営されている暴力を受けた被害者が緊急一時的に避難できる施設」です。

シェルターでは、「相談への対応」「被害者の自立へ向けたサポート」をはじめ、DV被害者に対するさまざまな支援をしてくれます。被害者の安全の確保を重視している点から、所在地は非公開になっているので、問い合わせをする必要があります。

いずれにしても、DVの危険性が高く、別居先への連れ戻しや危害が及ぶ恐れがあれば、自宅近くや加害者に知られている場所は避けなければなりません。

出典:民間シェルター | 男女共同参画局

公的機関の支援を確認する

DVに耐えられない場合の別居の進め方の2つ目は、公的機関の支援を確認することです。

都道府県や市町村は、次のような被害者の支援を行っています。

    • 相談や相談機関の紹介
    • カウンセリング
    • 被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護
    • 自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助
    • 被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助
    • 保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助

出典:民間シェルター | 男女共同参画局

現在住んでいる自治体が、すべてを行っているとは限らないため、事前に電話して確認しましょう。

専門家に相談する

DVに耐えられない場合の別居の進め方の3つ目は、専門家に相談することです。

別居を進めるには、DVの危険性・費用負担(引っ越し費用や家賃など)・育児や子どもの教育・家族のサポート度合いなど、状況を考慮して最適な別居先を決めることが重要です。

あらかじめDVの証拠を集め、加害者の夫に妻が勝手に家出したと主張されないようにし、別居後は生活費の請求など相手方と交渉しなければなりません。

別居の前に、DV被害の経験値が高い弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受け、交渉を優位に進めることができます。

まとめ

今回は、DVの基礎知識・種類・よくある状況・別居の進め方について解説しました。

DVが続くと加害者である夫から逃げることを考えたり、誰かに相談するという手段が浮かばないまま心身に不調をきたしていくことがあります。DVは一人で悩んだり耐えたりしようとせずに、他者に助けを求めてよいのです。

DVを受けているなら、離婚をするか否か決めていなくても、まずは別居をして距離を置くことをおすすめします。これからのことを冷静に考えるうえでも、DVの危険性や育児などあなたの状況に最適な別居先に移り、夫と交渉していかなければなりません。

別居を切り出す前に、まず経験値の高い弁護士から適切なアドバイスを受け、生活再建を確実なものにしましょう。

離婚に強い弁護士はこちら

離婚のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。